では、どうぞ!
6時ぴったりに創真は起きた。
「……………隼、起きてるかな?」
「行きますか?」
氷室が着替えながら尋ねる。
「勿論行くに決まってますよ」
「なら急いで行きましょう。神崎さんも呼ばなければ。今日も学校はありますからね」
「じゃ、起きてるかだけ見て、神崎さんと学校に行くか」
ホテルを出て、受付の人に聞くと、ちょうど今起きたと言う報せを創真らは受け取った。隼の部屋に行くと、ちょうど氷室の友達の医者と鉢合わせた。
「あれ?創真君、学校は?」
「ちょっと様子を見てすぐに行くので大丈夫です」
「そっか。ちょうど今様子を見てきたんだけど、なかなか元気そうだよ。それじゃ、僕は他の人の診察の準備があるから失礼」
そう言い残して、足早に去っていった。
「じゃ、失礼します、っと」
創真が勢いよくドアを開ける。隼は神崎と話している最中だった。
「………創真?」
「そうだが。やれやれ、朝から阿呆面をかましてんじゃないよ」
「俺は阿呆じゃねぇ!」
「そのツッコミを入れれる辺り、元気そうでなりよりだ」
「だが、1週間も入院だぜ。暇ったらありゃしねぇ」
「どーせ暇なら勉強でもして、少しは賢くなれ」
「へいへい、言われなくてもそうしますよーだ」
テンポの良い会話をする2人。それを氷室は楽しそうに。神崎は少し妬け気味の表情を浮かべていた。
「さーて、隼が通常運転通りだった所で、そろそろ家に戻って学校の支度しなきゃ」
「…………あ!」
神崎は学校の事をすっかり忘れてたパターンのようだ。
「ホリーが運ぶので、1分以内に着くよ。氷室さんはデュオが。僕はホリーにもう一度来てもらって行く。ちなみにキバットはさきに学校に行ってる。暇だから、だそうで。神崎さん、準備したりする時間は足りる?」
神崎に創真は尋ねる。
「それなら大丈夫………ホリー君、よろしくね」
「うんうん、任かせといて!」
なお、ホリーの心は今、幸福に満たされている。神崎と言う美女を運べるからだ。
「じゃ、僕らは学校に行くんで」
「そうか。じゃ、また来いよ」
「暇だったらね」
その時部屋のドアがノックされた。
「おはよう…………隼」
訪ねてきたのは碧海だった。
「碧海……………!今さらなにしに来た?」
敵意丸出しの隼に、碧海は少し戸惑ってたが─────
「ごめん!あんなことしちゃって!」
頭を下げて謝った。当の隼は謝られるのは意外だったのか、暫く言葉がでなかった。
「ら…………らしくねぇな。てめぇが謝るなんて………………頭打ったか?」
「んな!?失礼しちゃうなぁ!べ、別に変じゃないでしょ…………」
──────────なんだこの微妙な会話?
不思議な会話を聞いた創真は胸の内でそう思った。
「じゃ…………失礼するね」
碧海は出ていった。
「…………なんだ、あいつ?あ、待てよ。もしや創真、なんか言ったの…………ってもう居ねぇじゃねーか!いつの間に行きやがったんだよ!」
「月城さん、声が大きいです!」
「す、すんません……………」
看護師にも怒られ、独りぼっちになった隼君は、出された朝食を3分で完食したらしい。やけ食いである。
創真side
家に帰り、身支度を済ませ、氷室と定刻通りに家を出た。
「はぁ…………行ったら質問攻めかな?」
「ありえますね…………それとさっき本人に聞いたのですが、碧海さんは今日退院の方向だそうで」
「もうこれ以上、ややこしいトラブル持ってこなきゃ、それで良いですけどね……ま、本人も懲りただろうから、無いとは思うけど」
そう言いながら、座席に大きくもたれかかった。
「おい、創真!隼はどうだった!?」
「大変元気ですよ」
「お前、神崎さんと寝たのか!?」
「寝ねぇよ」
「創真君、観光してきた~?」
「あ、いや………そんな時間ないけど……」
陽菜乃は能天気すぎる。
「て言うかさ、あの女…………隼のお姉さんなんだよね?」
「………その通りだよ、カルマ君。彼女は隼のお姉さんだ」
「あの女、どうなるの?殺せんせーを知ってるっぽいよね?」
「…………さぁね。ここに来るんじゃない?」
「はぁ!?冗談じゃねぇよ!なんであんな危険な女をここに来させるんだよ!?逆に俺らが危ねぇよ!」
前原君の意見に皆が同意する。
「確かに…………私も信用ならない」
「実の弟を利用するなんて、酷すぎるよ」
片岡さんと矢田さんが言うことはごもっとも。しかし、ね。
「でもさぁ、根はいい人だろ彼女。多分ね」
「………それは何を根拠に言ってるんだ?」
「実際、昨日話してそう感じた。彼女はただ、弟が好き過ぎた余り、道を外れた行為に出てしまっただけだよ。ま、本人はかなり反省しただろうし、良いんだけど」
「ケッ、どーだかな」
寺坂がアホか、と言いたげな様子。
「自分で言うのもアレだが、僕の人を見る目はかなり正確だとは思ってる。だから、彼女の本質は優しいと言うのもあながち間違いじゃないだろうし、もしこのクラスに来ることになったとしたら、僕は歓迎するけどね」
「けどな………」
前原が反論しようとしているところに、殺せんせーが来た。
「おはようございます。どうしたのですか、皆さん?何やらピリピリしてますねぇ」
「人を見る目について話してただけ」
「…………そうですか。では、出席を取りますかね」
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放課後
「おい、創真。お前、大丈夫なのか?」
「あ?」
帰りのフェラーリの中で経済新聞を読んでいると、鞄に入り込んでいるキバットが話し掛けてきた。
「大丈夫って、何がよ」
「朝の事だよ。お前が彼女を庇おうとしてたから、皆お前の事を不信がってたぜ」
「別に庇ったんじゃなくて、事実を言っただけなんだけどねぇ。まぁ、僕の言葉を信じるか否か当人達の勝手だろうし、別に気にしてもないけど………………ん?」
スマホからメールの着信音が聞こえて来た。確認してみると─────────
「何?ふーむ……………………氷室さん。横浜駅へ行ってもらっても良いですか?」
氷室さんはチラッと僕の携帯に表示されているメールを読む。
「まぁ、このあとは特に予定はありませんし、構いませんよ」
「ありがとうございます……………一体何の用だ…………?」
『今日、学校が終わったら横浜駅に来てくれないって、碧海が言ってたぜby 隼』
果たして、碧海は何故にメールを送ったのか………?
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