それでは、どうぞ!
創真side
クラスの雰囲気が重い。
この竹林のE組脱出を打診したのが理事長なのは当然。まぁ……竹林を利用して、僕らはこの学校では二軍ということを改めて認識させるため……って言うのが真の目的かな?
「皆さん、おはようございます」
夏休みぶりの真っ黒殺せんせー登場。
「また日焼けしたのか?」
「正解です、隼君。ついでにマサイ族とメアド交換してきました」
─────────何故に?
僕の心境を察したのか、殺せんせーは言葉を続ける。
「この日焼けは竹林君のアフターケアのためです。先生には彼が馴染めているのか見守る義務がありますからね。これなら先生は忍者の如く行動できます」
「殺せんせー……不審者としてポリスメンのお世話になることになるよ。隠れ方に無理がある」
「にゅや!?そんなことないでしょう!先生は忍者当然!これ以上に上手い隠れ方がこの世にあるわけが無いでしょう!」
「上手い隠れ方、ね。殺せんせー……僕をよーく見てな」
そう言いながら、僕はスマホの画面をタップする。
「「「!?」」」
皆は突如、僕の頭の上に止まっているマシンドラゴンフライが現れたのに気づき、驚きの表情を見せた。
「マシンドラゴンフライ……光学迷彩を使えるんだ。生憎武器は付いてない、隠密偵察用だが」
「よ、良かった………武器付きなら、下手すれば死んでたかもしれません。さて、話が逸れましたがまぁ、そう言うことです。これは先生の仕事なので、皆さんはいつも通り過ごしてください」
殺せんせーはそう言うが……皆の反応は違った。
「俺らもちょっと見に行ってやるか。すこし気になるし」
前原がポツンと言った。それに賛成するように、陽菜乃も口を開く。
「竹ちゃんが理事長に洗脳されちゃうのはやだな~」
「何だかんだ同じクラスだった訳だしな」
「あいつ、ちょっと危なかっしいしな」
結局、皆行くようだ。
「殺意が結ぶ絆………ってやつかな。しゃーない、僕も行くか」
「結局気になってたんだな、創真」
「さてさて、どうでしょー?」
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創真のお願いにより、氷室はA組にマシンドラゴンフライを潜入させるために、準備していた。
「さて、潜入開始と行きますか」
マシンドラゴンフライは音をほとんど立てず飛び立ち、光学迷彩を発動。氷室は画面を見ながら操作していく。そして、すぐにA組の教室前に着いた。どこから侵入するかを考えていると、タイミング良く、A組に先生が入っていった。ドアが閉まる直前に滑り込みで侵入する。そのまま教室の後方に着陸させ、録画を開始する。
(後は、授業が終わるまで待つのみ……そう言えば、この学校の特進クラスはどんな授業をするのでしょうかね?)
氷室は画面を見ながら、A組の授業に耳を傾けた。
1時間後、マシンドラゴンフライは氷室によって回収され、それを持って氷室はE組の校舎に帰ってきた。
そこへ創真がやって来る。
「氷室さん、どうでしたか?」
「潜入は成功しました。録画も高画質でしっかりと」
「ご苦労様でした。すみません、変なこと頼んで」
「いえいえ」
氷室はE組校舎へ足を進めながら、A組の授業を振りかえる。
(………A組の授業は………E組では一学期でやったところ。さらには効率も悪く、生徒の都合は一切無視。………これが特進クラスですか。殺せんせーの授業の方が断然良いですね)
氷室と同じく竹林も同じように考えていたのは、誰も知らない。
放課後
(殺せんせーの授業の方が良かったのかもしれないな……僕はE組を抜けて本当に良かったのだろうか……)
竹林がA組への不信感を抱いていると、窓の外からの視線に気付いた。
(カモフラージュが下手すぎる……それに創真の手にあるコントローラー……まさかここに何か潜んでるのか?)
竹林は教室を見回すが、特に何も見受けられない。
(……何故他人になった僕のことを知ろうとする?そもそも………僕は何を学びにここに来たんだ……?)
「竹林君?」
「!!ああ、浅野君か……」
「突然だけど、理事長がお呼びだ。ちょっといいかい?」
竹林は浅野と共に理事長室へと移動し始めた。
創真side
「おい、創真!早く追いかけろ!」
「今やってるから静かにしてろ、隼」
喋りながらもコントローラーを操作する。結果から言えば、理事長室への侵入は簡単に成功。
「ふーん。色々盾があるんだな……」
カメラを通して理事長室に飾られている何気なく盾などを見ていると………
「やぁ。まずは座ってくれ」
現れた理事長はカーテンを閉め、そう促す。
「くそ、見えねぇ!創真、頼むぞ!」
「はいはい、分かってるよ杉野」
創真達はスピーカーから聞こえてくる音に注目する。
『明日また集会があるんだ。その時にまたスピーチをしてもらいたい。ご家族も喜ぶだろうね』
『はぁ………』
『浅野君、原稿を。………ふむ、まぁ良い。ちょっと見てくれ、竹林君』
創真はドラゴンフライのカメラをズームさせ、内容を覗き見する。
「はぁ!?なんだこの内容!?」
前原が声を上げるのも無理もない。そこには、我々E組を侮辱する内容、そして、E組管理委員会という新しい委員会の設立を問うものだった。
『これは君を強者としての振る舞いを身につけるための儀式だ。かつての友を支配することで、それらの振る舞いは自然に身に付く』
「あの理事長………………そこまでするか…………」
竹林はフラッと立ちあがり、やります、と言った。しかし、その声から明らかに動揺や躊躇いの意が入っているいるのが全員の目に見えた。竹林が理事長室を出ると同時に、マシンドラゴンフライも外に出て、皆がいるところに戻ってきた。
「どうしよう、殺せんせー。あんな内容のスピーチをさせるなんて、竹林君が可愛そうだよ」
渚の言葉に皆は首を縦に振る。
「ああいう奴を狩っとくべきだった」
「やめろデュオ。物騒なことを言うんじゃないよ。どうする、殺せんせー?」
「……今日の夜、竹林君に会ってすこしアドバイスをしてきますが………彼が明日、そのスピーチを読まないという確証はありません。あとは彼次第です……」
皆は心配だったが、とりあえず解散し、帰路に着くのだった。
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翌日。
竹林は檀上に再び立った。理事長や殺せんせーら全員が見守るなか、彼は喋り出す。
「……僕のいたE組は、学力という強さがなかった為に、差別待遇を受けています。要するに僕が言いた事は…………
そんなE組がメイド喫茶の次くらいに居心地が良いのです」
「「「!?」」」
竹林の発言に皆に衝撃が走った。
「E組の中で役立たずだった僕を、皆は見に来てくれた。彼等は、皆が認めなかった僕と対等に接してくれた」
この辺りで、隠れて見ているホリーの目には涙が………あったそう。
「社会が認める強者を目指す皆は正しいです。でも、僕は……強い者の首を狙う弱い立場の方が……楽しい」
ここで、浅野が乱入する。
「撤回しろ竹林!さもないと……」
浅野は竹林の手にある物を見て、驚きの表情を浮かべた。
「この盾は理事長室からくすねてきました。理事長は強いです。すべてが合理的だ」
竹林はナイフに鉄をつけたものを振り下ろした。ガラスの盾は粉々に砕け、床に落ちる。
「さて……合理的に考えれば……E組行きですね。僕も」
言いたいことを言い終わったのか、ポカーンと間抜けな顔をしている本校舎の生徒たちを置いて、檀上の袖にスタスタ歩いていった。
「………救えないな、君は。折角強者になれるチャンスをもらったのに」
「そうかい?強者ではなく、ただ逃げてるようにしか見えなかったどね」
竹林が静かに返し、去っていくのを浅野はただ睨んでいた。
場所は変わって数日後のE組校舎。
「さて、今日から爆薬を使った暗殺も取り入れる」
勿論寺坂達のような使い方は禁止と、烏間先生は釘を指す。
「さて、この取り扱い書を覚えてくれる人はいるか?」
──────────誰も手を挙げない。
(やれやれ、あんな分厚い本達を覚えるなど容易い。じゃ、僕が……)
「勉強には使えないですが、今後、役立つかもしれませんね」
僕よりも一歩早く名乗り上げたのは、竹林だった。
「暗記出きるか?竹林君」
「二期OPの替え歌にすれば、すぐに出来ますよ」
竹林は眼鏡をクイッとやって、言うのだった。
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