それではどうぞ!
ガストロが付けた照明により、逆光が発生。そのせいでステージが見づらくなった。
「やっぱ今日も………銃がうめぇ!」
そう言って放った弾丸は、速水の顔すれすれで通過した。
(嘘!?席との間を通して撃った!?)
速水は慌てて身を隠すが、隣にいる創真は動揺している様子がない。むしろ余裕そうに笑う。
「俺は軍人上がりだ。この程度の一対多数戦闘は何度もやってる。ジュニアごときに負けるかよ。さーて、お前らが奪った銃はあと1つあったはずだが……」
プロはやはり強い。皆がそう感じていると………
「速水さんは待機!千葉君、今撃たなかったのは賢明です!先生が指示するまで待つんです!」
「この声………あのタコだな。どこから喋って……」
ガストロは席の最前列の席に置いてあった殺せんせーと目があった。
「なにかぶりつきで見てやがんだ!」
ガストロは殺せんせーの球体に向かって連射するが、全て結晶の壁に阻まれた。
「中学生がプロに挑むんです。これくらいの視覚ハンデ、別に良いじゃないですか」
「ふん……どうやって指揮をとるつもりだ」
「では……木村君は5列左へ!寺坂君と吉田君もそれぞれ右左へダッシュ!」
(ちっ……シャッフルか。だが、その戦法では俺にも名前を明かしてるのも同然だぜ)
そんなことは、殺せんせーもとっくに知っている。だから、ある程度シャッフルした後─────────
「出席番号12番!右に1つで準備!そしてそのまま待機!」
「え?」
ガストロは思わず間抜けな声を出してしまった。お分かりの通り、殺せんせーは呼び方を名前から出席番号に変えたのだ。
「4番、5番はターゲットを律さんを通して撮影!そして千葉君に伝達!」
「ポニーテールは左前列に前進!バイク好きも左前に2列へ!発明家も右前列に前進!」
発明家──────呼ばれた本人は悪くない、と言った表情。
「ムーンキャッスルは右に4つ!」
「ダサいから英語で呼ぶんじゃねぇ!」
隼の呼び名がダサいのは否めない。残念。
「竹林君のメイド喫茶にはまりかけた人!撹乱のため、大きな音を立てて!」
「なんで知ってやがるんだ、テメー!」
そんな感じで、色んな呼び方で生徒を呼んでいき、シャッフルを進めていく殺せんせー。もうガストロはついていけない。
(くそ……もうどこにどいつがいるか分からねぇ。特効覚悟の近接戦に持ち込まれたら不利だ。千葉って奴を早く見つけねーと……)
ガストロも流石に焦りを感じ始めた頃、殺せんせーが千葉達に声を掛けた。
「お待たせしました千葉君。先生の合図の後、撃ってください。速水さんは状況に合わせてフォローが役目です」
2人の緊張感は一気に高まる。
「待て、殺せんせー。僕が言っておきたい事がある」
「創真君?……分かりました」
創真は2人に向かって喋りだした。
「さて……………君達はいま凄く緊張しているね?君らは殺せんせーの狙撃に失敗したから腕に自信を失ってる。でも君達は今、緊張する必要は元より無いんだよ。何故か?それは、君達には同じ訓練と失敗を経験している仲間がいるから。だから、例え君らが外しても、次は誰が撃つか分からない戦法を選べる。君達はE組で最高、最強のスナイパーコンビだ。それは僕が保証しよう。いつも通り殺れば、あんな奴なんて余裕だよ…………さぁ、あいつをぶっ倒しちゃえ!」
創真のアドバイスは、2人の緊張感を軽減し、迷いを無くさせた………少なくとも天井から見ていたホリー達にはそう見えた。しかし、ガストロもただこの長いアドバイスを聞いていた訳ではない。
(よし……この間に目星がついた。出席番号12番って奴が待機の指示からずっと動いてねぇ。しかも何かを企んでるのか呼吸が荒い。他も警戒するが、そいつのマークが最優先だ。絶対外さねぇ……!!)
「では……出席番号12番!立って狙撃!」
(やっぱな!ビンゴォ!)
先に撃ったのはガストロだ。撃った弾は頭に直撃した。
「………大外れです」
氷室の呟き通り、ガストロが撃ったのは…………
(人形!?しまった、罠か!)
その瞬間、千葉の銃の発砲音が響いた。
「……外しやがったな。これで2人目も」
言い終わる前に、ガストロの背中に強い衝撃が走った。ガストロは柱に叩きつけられる。
(吊り明照の金具を………くそが……!!)
千葉に銃を向けるが、それは速水の放った弾丸に阻まれた。力尽きたのか、ガストロは床に倒れ込む。当然、すぐに簀巻である。
「よくこんな危ない戦いをさせたな……あの先生は」
天井から見ていたホリーはぼそりと呟く。
「生徒の成長の為、高い壁にぶつからせ、さらに良い仲間を揃える……そう言う教育なのか」
とんでもない教育だと、デュオ も思ったが、千葉と速水がどこか良い表情だったのを見て、それも悪くないと心の中で呟いた。
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創真のスピーチ長かったな…………原作通りだけど。