「え……」
周囲だけではなく、選ばれた本人も驚いていた。しかし、創真は何となくその選択は間違ってないと思った。
「僕も賛成だな。もし、僕が烏間先生と同じ立場なら、同じ選択をする……………渚君、君なら出来る。だから安心してナイフを受け取りな」
渚は目をつぶり、スッと息を吸った後……目を開け、ナイフを手に持った。
「やります」
────────殺ったれ渚。
創真はそう心の中で激励を飛ばし、自身は皆の所へ戻る。
「よりによってそんなちびを選ぶとはな……目が曇ったものだな烏間」
鷹岡はなめた様子だった。烏間は幾つか渚にアドバイスし、離れた。
「なぁ、当てられると思うか?渚のナイフ」
「無理だよ……訓練してれば嫌でも分かる」
「まぁ、みんな見てなって。僕の予想通りなら、面白いことが起きる……………」
皆が不安そうな中、創真だけは意味深な事を言った。
「さぁ、来い!公開処刑だ!」
鷹岡が高らかにバトルの開始を宣言した。
烏間は渚にこう言っていた。
(鷹岡はナイフ術を熟知している。本気で振らないと掠りすらしないぞ。それに鷹岡にとっては戦闘、たが君にとっては暗殺だ。一度でも当てれば君の勝ちだ。強さを見せつける必要はない。鷹岡はしばらく君に好きに攻撃させるだろう。つまり反撃の来ない最初の数撃が最大のチャンス。君ならそこを突けると思う)
一方、創真はこの戦いを以下のように読んでいた。
(……本物のナイフで刺したら人は死んじゃう……それが鷹岡の狙いだろう。だから普段の力を発揮できずに自分が勝つ……なーんて思ってるんだろうな……でもこの勝負は……渚にとっては戦闘じゃない。殺せばいい。そう………)
((殺せば勝ちなんだ))
渚は笑って普通に歩いて近づいた。まるで通学路を歩くみたいに。気づいたときには渚は鷹岡の前にいた。
そして、渚はナイフを全力で振る。
鷹岡はぎょっとして体を大きく反らした。ようやく自分が殺されかけていることに気づいたようだ。渚は鷹岡の服を引っ張り、転ばせて、後ろへ回り……
ナイフを当てた。刃の方ではないが。
「………お見事」
創真は満足そうな表情だった。他の皆は驚いていた。
「勝負ありのようですね」
殺せんせーはナイフをひょいと取り上げ、ボリボリ食べ始めた。
「凄げぇな、おい……渚の奴、マジでやりやがった………」
隼は皆に揉みくちゃにされている渚を見て一人呟いた。
「創真様。あなたはもしかしてこの結末を描いてましたね?彼に、『暗殺の才能』があることを、あなたは見抜いていた」
「………………さてさて、どうでしょーね?」
創真は誤魔化すような口調で、面白そうに言った。すると、漸く我に返った鷹岡が青筋を立てて怒りの表情で口を開く。
「このガキ……まぐれの勝ちがそんなに嬉しいか!?もう一度だ!今度は油断しねぇ!!」
「確かに次やったら僕が負けます。でもこれではっきりしました。僕らの担任は殺せんせーで、僕らの教官は烏間先生です。僕はプロに徹する烏間先生の方が温かく感じます。本気で育てようとしてくれたのには感謝してます。でもごめんなさい。出てってください」
隼も渚の隣に並んだ。
「おい、出てけよ。男に二言はないんだろ?あんたそう言ってたよな?」
「うるせぇ……!!」
鷹岡は目の前の二人を殴ろうとしたが、そこに間に入ったのはあの2羽だった。
「んな!?何で来た…………」
創真、氷室は飛び出したが、到底間に合わない距離。2羽に拳が──────────
──────当たろうとしたその時、鷹岡の手が止まった。
(ッッ!何だ、手が……………何故動かない…………誰か止めてるのか?いや、違う…………)
それだけではなく、もう1つ鷹岡は気付いた。
(拳が震えてる……………!?な、何で………)
混乱する鷹岡。ふと、前を見ると鳥が2羽いた。
鷹岡は、その鳥からとてつもなく恐ろしい物を感じた。
(これは……………殺気?俺は、たかが鳥ごときにびびっているのか…………………!?)
「良く分かりませんが、隙あり!!」
氷室が鷹岡の顔面に蹴りを喰らわせた。
「グハ!!」
鷹岡はスローモーションで倒れる。
「な、何だ今の…………?」
「創真君の鳥から……………殺気?」
そこへ烏間先生が来て、みんなの方に体を向けた。
「俺の身内が迷惑を掛けてすまなかった。後の事は任せてくれ。俺が一人で教官を努めれるように上と交渉する」
「「「烏間先生!」」」
「させるか…!!俺が先に掛け合って……」
「あなたもしつこいですね…………」
顔面に靴の跡がついている諦めの悪い鷹岡に、氷室が呆れたようにため息をつく。
「その必要はありません」
その声の主は理事長だった。
「全て拝見してました。鷹岡先生、結論から言えばあなたは首です。あなたの授業はつまらなかった。教育には恐怖は必要ですが、暴力でしか恐怖を与えられないような三流以下の教師はここに必要ない。ああ、それともうひとつ。ここの教師の任命権はあなた方防衛省にはない。全て私の支配下ということをお忘れなく」
理事長は鷹岡の口に解雇通知らしき物を詰めて去っていった。鷹岡は解雇通知をおいしく(?)頂きながら走り去っていった。
「「「よっしゃあ!!」」」
皆は歓声に湧く。
「あー、良かった良かった……………だがしかし、だ。鷹岡を怯ませる殺気を放った君達2羽………只者じゃないな…………」
創真は肩に止まっている2羽に話し掛けるが、何の事、と言いたげに2羽は首をかしげる。
「おい、創真。今からスイーツタイムだ。町で甘いものを食いまくるぞ!」
隼は烏間先生が財布を出して甘いものを奢ってくれ事を説明した。
「おー、烏間先生も太っ腹ですな」
「ほんとだよ、あんなデブ野郎よりも太っ腹だぜ、まったく……………にしても、俺も1発やり返したかったぜ」
「ハハッ、まーまた機会があればやれば良いんじゃない?」
「そんな機会、あんのかよ…………」
「隼君」
隼が振り返ると、そこには神崎がいた。
「さっきはありがとう。守ってくれて」
「え?あ、い、いやいや、い、良いんだよ別にそれくらい」
「そーそ。何なら、これからも身代わり役として使っても良いんだよ、神崎さん」
「うっせぇ!創真、テメーは引っ込んでろ!!」
「……………彼か」
隼と創真が話してるのを、こっそり空から見ている存在がいた。
「みたいだねー。中々面白そうな奴じゃん」
彼は手にもつ紙をチラッと見る。そこには、結城 創真=護衛対象と書かれていた。
「さぁ、俺様たちも………キバって行くぜ!!」
コウモリの正体が遂にわかりましたね?
ちなみにこのコウモリ一匹はある方からリクエストのメッセージが来ましたので話に入れることにしました。
……と言うか僕的にもちょうど良かったです。
明るくて面白い系のキャラを入れようと思ってたので。
僕はこのキャラを入れるに当たって、あることを意識して書こうと思っています。
それは、『知らない別のアニメのキャラでも問題なく楽しく読める』
だからこのコウモリの正体が分かった方は、原作の設定は全てないと思ってください。皆さんに分りやすく、そして都合よく新たに自分で設定し、また紹介をします。
いやぁ……懐かしいな……。
おっと、長くなりましたが……メリークリスマス!
次回、急展開です。
ここで……
・SF要素ありのタグが使われるかも?
・急展開注意
・この作品史上、1番現実からかけ離れすぎてます!
ということをご承知下さい。もしかして次の話が気に入らない人もいると思いますが、見守ってもらえたら嬉しいです!
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