特別編 結城 創真の暗殺教室×ロクでなし魔術講師と忍ばない暗殺者 前編
「…………………旨いねぇ」
ソファーに座っている少年…………名は結城 創真…………は、コーヒーを飲みながら呟いた。
「はぁ……………相変わらず苦い…………」
コーヒーの苦さを嘆いているのは、月城 碧海…………………同居しているが、別に彼女でもなんでもない。そういう関係だ。
「苦いのが良いんだよ。さて、暇だから何か世間話をしよう。何かネタがある人~?」
「なら、俺様の出番だな!」
名乗りをあげたのは、キバット……………しゃべり特殊なこうもりだ。
「俺様が今日町中で見たんだぜ。何をかって?巨乳で可愛い撫子をな!もっと詳しく言うと………」
「次行こうか。他は?」
遮られたキバットはムッとした表情を見せたが、結局口を閉ざした。
「あ、そーだ!なら、デュオのお話が良いよ!ほら、ルミアちゃんたちとの事!」
話のネタを紹介したのは、ホリー……………聖霊だ。
「別に構わんぞ。あれは俺がアルゼーノ帝国と言う場所の担当になった時の事だ………………」
男は追われていた。
何にか?
『暗殺者』にだ。
「くそ…………最悪だ!まさか『闇夜』に狙われるとは!」
男は走り、なんとか逃げようとする。が、しかし。奴はもうすぐそばまで迫っていた。
男が左に曲がるとそこは
「!!行き止まりだと!?くそ!!」
そして、背後から殺気。振り向くとそこには全身黒コートの男が立っていた。
「逃げ足だけは速いな」
暗殺者…………………通称ノーネームはゆっくり近づく。
「く、来るな!!何故俺を狙……………」
「依頼受けたんだよ。てか、お前孤児を買って奴隷のように扱ってたんだろ?死んだ者もいたそうだな?」
「ち、違う!俺はそんなこと……」
「もう喋んな。死んでそいつらに詫びてこい」
ノーネームは携えていたナイフを男に向けて刺そうとした………………!!
「!?」
ノーネームは何かを感じ、刺そうとしたナイフの手を止めて空を仰いだ。そして、上空から何かが降ってくるのを視認した。ノーネームはバックステップで避ける。
そして、降ってきた何かに目を向けると
「…………………………」
全身黒コーデの少年が立っていた。黒い外套に、首には鎖型のネックレス。手には巨大な鎌。
(誰だこいつ………………?)
勿論、ノーネームの知り合いではない。取り敢えず話し掛けてみようと思い、口を開こうと思った瞬間だった。
ブオン!!
少年はいきなり鎌をぶん回した。いきなりの攻撃に、ノーネームは反応が遅れたが、間一髪避けた。
「誰だか知らないが、そっちが殺る気なら容赦はしないぜ」
「別に殺る気はない。ただ、こいつを殺すのを辞めてもらいたいだけだ」
「そいつを庇うなら、容赦はしないぜ?」
「いや、そう言うことじゃなくてな……………そろそろか」
「ウッ!あ、ぐ、ガァァァァ………………!!」
急に男が苦しみ出した。
「お、おい!?」
「苦しい……………た、助けてくれぇ!!ァァァァァ………ァァ………………ァ…………」
男は胸を押さえながら後ろに倒れた。そして、ピクリとも動かなくなった。
「おいおい、まさか」
ノーネームが男の首元を触り、脈をはかり全てを悟った。
「お前が殺ったのか?」
「いや。そいつは毒で死ぬ運命だった。そしてその通り死んだ」
「何?どういう事だ」
「悪いが、詳しくは話せん。俺が言えるのはここまでだ…………………確かお前がノーネームだな。この世界の前任から聞いたことがある。死神の予定を何度も狂わしかけたバカと。あと、あんま強くなさそうとも」
「誰がバカだ!!それに、俺は弱くねぇし、予定を狂わすってどういう意味だ!!」
「………………………」
デュオは何も言わずに消えていった。
「あの野郎……………にしても、何者だ?」
町から離れた森の奥で、1人の少年は勾玉に向けて喋っていた。
「閻魔大王。無事に魂の回収は終わりました」
『ご苦労だったデュオ。あと、11人だがお前1人で大丈夫か?」
「問題ありません」
『ならば良し。頼んだぞ』
そう言って、勾玉からの声は消えた。デュオと呼ばれた少年は手帳に目をやり、次の標的の確認をする。
「にしても、やはり前任から聞いてた通り、あいつは厄介だな。あと少し遅ければ、彼は殺されて死んでいた。男の死因を狂わす所だった」
デュオの手帳には、さっき殺った男の顔や名前の住所が載っていた。死因の所には、『毒死』と綴られている。
「ノーネーム…………奴は警戒した方が良さそうだな……………」
デュオは光る満月を見つめながら呟いた。
ルークside
翌日
「………………………」
俺の名はロークフィル。皆からはルークと呼ばれている。しかし、その正体はさっき出てきたノーネームと呼ばれる殺し屋だ。ふぅ……………………さて。
(あの野郎、あんま強くなさそうとか舐めやがって……………!!)
確かに俺でも敵わない奴はこの世界にはいるかもしれない。だがな……………初対面の奴に言われたらめっちゃ腹立つんだよ!!
「どうしたのルーク?今日いつもと様子が変だよ?」
話し掛けてきた少女はティンジェル。お嬢様だ。
「そうか?いつも通りだと思うが」
「でも、いつもと様子が違うような………何か悩みがあるなら私で良ければ聞くよ?」
「別に大したことじゃないから大丈夫だ」
「なら良いけど…………あ、そうだ!」
「?」
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「ほら、こっちこっち!」
ティンジェルの言葉に引きずられるようにして、ルークは足を進める。放課後、ルークはティンジェルに、今日新しく出来た珈琲専門店に(結構強引に)誘われた。
「そんな開店初日に行ったら激こみだろ………」
ルークの言う通り、席は客で埋まっている。
「どうしよう…………何処かあいてないかな………」
ティンジェルが席を探してる間、ルークは珈琲の注文をしている。
「うーん……………あ!あった!」
そこは3人席ですでに1人いるが、ティンジェルは近寄って声を掛ける。
「あのーすみません。席、一緒でも良いですか?」
新聞を読んでいた少年は顔をあげ、ティンジェルを見た。そして回りを見回して察したのだろう。
「別に構わないが」
「良かったー!ありがとうございます!えーっと………」
「俺の名はデュオだ」
「デュオさんですね。私の名はティンジェルと申します」
「そうか。1人だけか?」
「あ、もう1人いるんですけど………大丈夫ですか?」
「別に問題ないぞ」
デュオは珈琲硯ながら答える。
「おーい、ティンジェル。席見つかったか?」
そこへルークが。
「うん。先にデュオさんがいたけど、私たちもここで構わないって」
「デュオさん?」
「俺の名だ」
ルークがデュオを見た瞬間…………脳裏に昨日会った少年の声が過った。
(こいつ………………まさか…………!?)
結局、ルークは店で自分から話を振ったりすることはなかった。デュオを観察していたのだ。どんな奴なのか…………などなど。振られた話にも、そこまで深く突っ込んだりしなかった。
「…………ルークどうしたの?さっきから黙りこくって?」
「わりぃ!ちょっと用事思い出した。ちょっと先帰るな!」
「え、ちょっと!?」
ティンジェルが止める時間も与えず、ルークは去っていった………………………
と、思ったら何故か戻ってきた。
「それと、悩んでた事も解決策が見つかったよ。誘ってくれてありがとな!」
「え、そうなの?なら良かったわ」
「そんじゃ、また明日な!」
今度こそルークは去っていった。
さて………ルークは何しに行くのか。
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