創真side
「もうすっかり梅雨ですね」
運転席の氷室さんが話し掛けてきた。
「そうですね……………じめじめするからあんま好きじゃないんですよねー」
「私も同じくです……………そう言えば創真様はクラスにすっかり溶け込んでますね」
「ま、あそこは良い連中ばかりですから。前の学校とは大違いだ」
「前の学校では友達と呼べる人は居なかったのですか?」
うーん……あ、いたな。
「いましたよ。月城 隼って言う奴が。しかも今椚ヶ丘にいます。テストのランキングに載ってて驚きましたよ」
「………………それはとんでもない偶然ですね」
「偶然にも程がありますよ……………氷室さん、ちょっとそこのコンビニ寄ってくれますか?」
「お?もしや、噂の隼君がいたのですか?」
残念ながら──────
「いや、ここに美味しいケーキがあると倉橋さんから紹介してもらったことがあるので……」
──────隼じゃない。
「ありがとうございました!」
店員の良い声が店内に響いた。
「ふむ、美味しそうだな…このケーキは。明日倉橋さんにお礼を言わないと」
しかし、500円とは意外と高い。
「お待たせしました氷室さん。行きましょう」
「創真様、あれは神崎さんでは?あそこの路地裏で誰かに絡まれてませんか?」
氷室さんが指した方向を見ると……ああ神崎さんだね、うん。
───────なんて呑気に言ってる場合じゃない!
「助けるのならお任せあれ。私がボコボコにしてきましょう」
「いや、流石にボコボコは不味いですって………」
その時、僕はある人物が路地裏に入っていったのに気付いた………………噂のあいつだ。
「いや……どうやら僕らが手を下す必要は無さそうですよ」
「ほう?」
「噂のあいつの、おでましです…………」
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「俺らと遊ぼうぜ~姉ちゃん」
「いや…あの…」
神崎は帰ってる途中手を掴まれ、この路地裏で男二人組に口説かれていたのだ。
「絶対楽しいって!さ、行こ行こ!」
手を掴み、停めてある車へ入れさせようとする。
神崎も抵抗してるのだが、力が強いため、どんどん引っ張られていく。
(誰か助けて……!!)
そんな願いが通じたのか、誰かが近寄ってきた。
「やめな、お兄さんら。そんな強引じゃ、モテないぜ?」
「あ?中防は黙ってな。女の前でカッコつけようとすんなよ!」
「言いたいことはそれだけか?」
彼はみぞにパンチをお見舞いした。男は声にならない悲鳴をあげ、倒れた。
「最近の中学生は……いろいろ習ってんだよ。お前もやるか?」
恐れをなしたのか、もう一方の男はうずくまってる仲間を連れて車で逃げていった。
彼は神崎に声をかけた。
「大丈夫?」
「は、はい。それよりありがとうございました。私は神崎 有紀子と言います」
「え、あ……………お、俺は月城 隼。あ、お、同じ椚ヶ丘なんだ。また会うかもね。じゃ、き、気を付けてね」
噂の隼は颯爽と(?)去っていった。
「ほほう。かっこいいですね、彼は」
「ま、あいつこういうのは得意だからな」
その時、フェラーリの車の窓がノックされた。創真はけだるそうな様子を見せながら窓を開ける。
「どちら様ですかー?田中さんですかー?」
「田中じゃねーよ!そもそも誰だよ田中って?ったく…………久しぶりだな創真」
「精々3ヶ月位だろ。まぁ、良い。久しぶり、隼」
「おう。てか、お前見てただろ?」
隼の追及に創真は笑みを浮かべながら答える。
「あぁ、見てたとも。うちのクラスメートを助けてくれてどーも、田中さん」
「なんで田中の名前が出てくるんだよ!ほんと、誰だよ田中って!?……………あーお前と話してると疲れる疲れる。俺はそろそろ帰るわ。じゃ、また今度な」
弄られて疲れたのか、隼は手をヒラヒラ振りながら去っていった。
「彼は中々戦闘力が高いですね?」
氷室の問い掛けに創真はええ、と言って続ける。
「彼は色んな武術を習ってましたからね。まぁ、いくら強いと言えども、僕には及びませんね」
相変わらずのNo 1アピールの創真に、氷室は苦笑した。
「さて…………帰りますか」
「そうですね。帰ったらケーキを食べよっと♪」
to be continue……
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