結城 創真の暗殺教室   作:音速のノッブ

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ちなみに、タイトルに深い意味はありません。ただ、文ストが好きだったからってだけです。てなわけで、王女編ラストをどうぞ!


セツナの愛

椚ヶ丘の講堂は熱い熱気に包まれていた。予定されていたディベート大会が開催され、レア王女は熱狂的な歓迎を受けていた。レアがスピーチする番になり、壇上に立つ。レアは横目で1番左の列にいる彼等───────E組の面々に目をやる。無論、本来彼等はこの場にいる筈が無かったのだが、それでもこうして彼等が参加しているのは創真のお陰である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『じゃあ、理事長。1つお願いがあります』

 

 

『何かな?』

 

 

『僕らE組をディベート大会に参加の許可を貰いたい。これが僕からのお願い、です』

 

 

まぁ、前回のラストでこう言う会話があった訳である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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そんな中、レアはE組の中でも最後尾の方にいる創真と目があった。創真はフッと笑みを浮かべ、頑張れの意を込めてサムズアップしてみせる。それを見たレアはニコッと笑い、緊張のほぐれた様子でマイクを使って喋り出す。

 

 

『国際平和は、一国で成し遂げられるべきではありません。まず、平和の重要さを皆で共有することが大事です。戦争はすべてを破壊します。家族も、財産も文化も戦争によって破壊されてしまいます。大切なものを守るために平和が必要なことを、世界で共有しようではありませんか』

 

 

レアの語り口は分かりやすく、それでいて堂々としていた。聞くものの耳を傾けさせるだけでなく、心をとらえた。スピーチが終ると、会場は大きな拍手に包まれた。レアの論戦相手として、浅野が壇上に上がった。浅野はキビキビとした調子で、レアに反論を仕掛ける。

 

 

『確かに戦争はさまざまな破壊をもたらします。いくら広く浅く平和を宣伝したところで、一般人は戦争について意思決定できません。自らが社会の支配者となり、戦争が富を生むシステムを破壊しなければ戦争がなくなることはありません』

 

 

浅野はレアの論を持ち上げることなく、真っ向から否定に掛かった。

 

 

「浅野君、王女に真っ向から勝負に挑んでる………」

 

 

「あいつらしいけどな………」

 

 

碧海と隼は攻撃的な姿勢に呆れ気味。創真は黙って何も言わないが、面白そうな表情を浮かべていた。今度はレアが浅野に反論する。

 

 

『一見、現実的な論も一皮むけばただの逃げてあることは多くあります。社会が一部の支配者だけに動かされるというのは、デモクラシーの根幹を破壊されることを意味し、ただの現状容認に過ぎません。現実には、理想をかかげることで社会は変わってきたのです………』

 

 

レアは浅野に好戦的な視線を送りながら言葉を畳み掛けた。英語につていけない者も、その攻撃姿勢はよく伝わった。そんな中、何処からかすすり泣く声が創真、碧海、隼の耳に入ってきた。振り向けば、ハンカチで顔を覆っている変装した殺せんせーが立っていた。

 

 

「青春ドラマですねぇ。月9ドラマなんて目じゃありません」

 

 

「何言ってんだよ………」

 

 

創真はアホか、と言いたげな目で殺せんせーを見る。

 

 

「とにかく、ここじゃ目立つちゃうよ」

 

 

碧海がそう言い、殺せんせーを講堂の隅に連れていく。創真と隼も何となくついて行く。パチパチと拍手が鳴る。ディベートが終わったところだ。だが、殺せんせーの涙は止まらない。

 

 

「おいおい、いつまで泣いてんだよ。王女、もう席に着いたぜ?」

 

 

隼が呆れ口調で云う。そこへ、矢田と岡島がやって来た。

 

 

「殺せんせーも見てたんだ?」

 

 

「てか、何でそんなに泣いてんだよ?」

 

 

「何か青春ドラマが繰り広げられてるのを見て泣いてるっぽい」

 

 

泣いてる殺せんせーの代わりに創真が答えた。

 

 

「良いですねぇ。あんなの見せつけられたら、先生の妄想小説の執筆に意欲が湧きます」

 

 

「何、その妄想小説って…………」

 

 

「知りたいですか碧海さん?いえ、皆さんも知りたいでしょうし教えましょう。妄想小説と言うのは、先生が君たちがイチャイチャラブラブチュッチュッしてる所を見たいが余り、どんどんカップルが成立してそれを巡る恋の三角関係や駆け引きに奔走するのを妄想して執筆した実録恋愛小説の事です。ちなみに、岡島君と矢田さんはもう新婚で」

 

 

知らない間に小説を書かれていた矢田は悲鳴をあげる。

 

 

「いや、やめてー!それ、実録じゃないし!」

 

 

岡島の方は満更じゃなさそうな表情をしており、垂れてきた鼻血を手で拭った。

 

 

「ったく、いつまで泣いてるのかしら、このタコ」

 

 

講堂の隅でディベートを見守っていたビッチ先生も呆れている。創真は未だに解消していなかった疑問を思いだし、ビッチ先生に尋ねた。

 

 

「そう言えば、ビッチ先生は何で大使館にいたんです?片岡さんよりも早くいたそうだけど」

 

 

「そんなの簡単だよ、創真。どーせ、王族と楽しいことしようとしてたに決まってんじゃん!」

 

 

いつの間にか来ていた中村が断言する。

 

 

「ええい、うるさいわねガキ共!」

 

 

ふやけ顔の殺せんせーもいつも以上にニヤニヤしながら云う。

 

 

「イケメンといやらしい展開に持っていこうとしてたんですよ、ね?」

 

 

「エロダコは黙れ!あんた達が王女に会えなくて落ち込んでたから会えるように手配しようと思っただけじゃない、なによ」

 

 

ウソつけ、どんな色仕掛けであのデータを手にいれたの、と盛り上がるE組。それを少し離れた所で創真は微笑浮かべながら見つめているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────それから1週間後。レアがノルゴへ帰国する日になった。レアを見送りに、浅野や創真らE組の面々が空港を訪れていた。

 

 

『本当に楽しかったわ!お土産もたくさん買えたし、色んな所に観光に行けて良かったわ』

 

 

『なら良かったよ。にひても、お土産に関しては爆買いの域を越えてるね………』

 

 

創真は護衛の人間20人程がが両手に大量のお土産でパンパンの袋を何個も両手に抱えているのを見ながら云う。表情には出さないが、中々重そうだ。

 

 

『今回、皆には本当に助けられたわ。皆がいなければ今頃どんな目に遭ってたのやら……………改めてお礼を言わせて貰うわ』

 

 

『いやぁ、やめてください王女様。美しきレディを守るのは男の役目と云う物ですから』

 

 

『そうそう。役目と云うか、宿命みたいなもんですから』

 

 

相変わらずのかっこつけの前原とホリーに、デュオを筆頭に皆はやれやれ、とため息をつく。

 

 

『また日本に来たいですか?』

 

 

『勿論よガクシュー。必ず皆に会いに来ます』

 

 

『嬉しいことを言ってくれるね~』

 

 

創真は嬉しそうに云った。

 

 

『王女、そろそろお時間です』

 

 

『あ、待って。最後に1つソウマに話しておきたい事があったから』

 

 

『僕?』

 

 

創真はキョトンと首を傾げる。レアは構わず続ける。

 

 

『ソウマ、大使館で私は大切な『友達』って言ってたわよね?』

 

 

『………………』

 

 

『それで、よーく考えてみたら……………7年前にあなたのお父さんが、創真が私にプロポーズしたって言ってたんだけど、アレって嘘って言うか、おふざけで言ったよのよね』

 

 

『(あ、やっと気付いてくれた…………本気で信じてたっぽかったから自発的に気付いてくれて良かったわ………)ほんと、ごめん。うちの父が変なことを言ってしまって。何なら、ノルゴで元大使みたいにちょん髷姿にして見せ物にしても良いよ』

 

 

『別に良いのよ。ジョークとは考えずに真に受けちゃった私にも責任はあるもの。まぁ、ちょん髷にするのはしてみたい気持ちもあるけど』

 

 

そう言ってレアはクスッと笑う。創真も同じく笑う。

 

 

『じゃあ、ソウマはあそこにいる、ヒナノと付き合ってるって事ね?』

 

 

『まぁ、そうだね。……………僕は彼女が好きだよ』

 

 

実質、創真はレアを振った。

 

 

『…………そっか。ソウマにも、大切な人が出来たんだね』

 

 

どうやら、レアは創真から身を引くようだ。

 

 

『じゃあ、私は行くね。皆、またいつか会おうね!』

 

 

レアはそう言って護衛と共に登場待合室に向かおうとす

 

 

『あっ!もう1つソウマに言い忘れてた事があったわ!』

 

 

『まだあったんだ……………』

 

 

慌ててレアは創真の元に駆け寄る。

 

 

『ねぇ、ソウマ』

 

 

『なぁに、レアちゃん』

 

 

『………………』

 

 

レアは─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真の首に手を回し、その唇に接物(キス)をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「!??!」」」

 

 

突然の展開に、倉橋は顔を赤くし、隼はジュースを吹き出し、碧海はおぉ、と感嘆し、カルマと中村はスマホを取り出して撮影するなどさまざまな反応を見せた。

 

 

接物(キス)は僅か10秒程だった。ちなみに、大人のである。レアは創真に向けて云う。

 

 

『言っておくけど、私はまだソウマの事諦めた訳じゃないから。いつか、あなたが心の奥底から私を好きだって思わせてみせるから覚悟しておいてね♪』

 

 

『……………………』

 

 

創真は無言だったが、その顔は赤くなっていた。

 

 

『ちょ、ちょっと!?レアちゃん、創真君の事諦めたんじゃなかったの!?

 

 

『あら、ヒナノさん。私はソウマを諦めるなんて一言も言ってないわよ』

 

 

『うっ……………』

 

 

『よし、これで言いたいことは全部言えたかな。それじゃあ今度こそ、お別れね。また会おうね!』

 

 

レアは満足気な様子でスキップしながら搭乗待合室に消えていった。未だに呆然としている創真にホリーとデュオが話し掛ける。

 

 

「やれやれ、最後の最後まで自由気ままなお姫様だ」

 

 

「でも良いねぇ。創真を巡る三角関係かぁ…………ねぇ、創真。レアちゃんのキス、どうだった」

 

 

「ノーコメ」

 

 

と言いつつ、実際はと言うと

 

 

(めっちゃキステク凄かった…………)

 

 

やはり創真も男である。まぁ、そんな本音を言うと自分の彼女が怒るだろうと思い、これは墓場に持っていこうと創真は心の中で決めた。

 

 

「おうおう、モテ男はつらいねぇ、創真さんよ」

 

 

「レアちゃんのキスめっちゃ上手かったんでしょ?めっちゃ顔赤いけど~?」

 

 

中村とカルマが創真をいじる。男子は羨ましいぞ!とか、このモテ男が!とか、リア充は死すべし!とか様々な声を上げる。暫くこの件でいじられる事を想像すると、創真は今すぐ逃げたしたくなったが、それ以上にもっと厄介な事が残っていた。

 

 

「そ う ま く ん ?」

 

 

「ヒッ…………お、怒ってますか、陽菜乃さん?」

 

 

「あんなの見せられたら怒るに決まってるでしょ!しかも、骨抜きにされてるし!」

 

 

「だ、誰か…………何とかして…………」

 

 

創真は救いの手をE組らに求めるが、皆は一斉に目を逸らす。ちなみに浅野もだ。

 

 

「ホリー君!後で高級プリン奢る!」

 

 

「任せろ!」

 

 

ホリーは目にも留まらぬ速さで創真に憑依。そして超高速でその場から走り去る。

 

 

「あっ!逃がさないよ、創真君!」

 

 

倉橋も慌てて追い掛け始め、空港の中で追いかけっこが始まった。

 

 

(創真君も苦労するなぁ…………)

 

 

渚は苦笑いしながら心の中で呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「もう7年前になるんだねぇ……………懐かしい」

 

 

「ほんとね…………それで、あの後どうなったの?」

 

 

「陽菜乃には死ぬほど謝って、今度デートをするって事で何とか機嫌直してくれたよ。誰かさんがめちゃくちゃ上手いキスしてくれたせいで、大変だったね。と言うか、僕は別に悪いことした覚えは無いんだけどなぁ…………」

 

 

「また、してあげようか?キスじゃなくても別に、もっとイイコトしても良いけど?」

 

 

「やめて…………陽菜乃の耳に入ったら、今度は死ぬ…………」

 

 

「冗談よ、冗談。にしても、結局創真は私じゃなくて陽菜乃を選んだ訳ね」

 

 

「やっぱり、1番好きなのは彼女だったのでね」

 

 

「ふーん……………まぁ、こうしてノルゴで一緒にお茶を飲めてるだけでも私は幸せだけどね。今度は陽菜乃も連れてきてよ」

 

 

「彼女に予定が無かったらね…………にしても、君がこの国を治めるようになるとはね。驚いた」

 

 

「そう?」

 

 

「また何かやらかしそうで、それが僕は心配」

 

 

「むぅ………何か子供扱いされてる気が…………心配は無用よ。この国は、私がこの国を、そして民をしっかり守っていくから」

 

 

「フフッ。その力強い言葉を聞けて安心したよ。僕も、首領(ボス) として頑張りますかね。さーて、そろそろ行かなきゃ」

 

 

「えー、まだいても良いのにー」

 

 

「そんな暇じゃないよ。君もだろ?」

 

 

「そうね…………この後、国の大臣と話さなくちゃならない事があるわ」

 

 

「お互い忙しくて苦労するねぇ。まっ、それでもやることがあるってのも良いもんだけど」

 

 

「それはそうね。じゃ、お互い頑張ろうね、創真!」

 

 

「あぁ。それじゃ、またねレアちゃん」

 

 

~終~




裏設定として。

・レアは日本語がほぼ完璧に話せるようになった。ついでにノルゴを治めるような立場の人物になった。


・定期的に創真はノルゴを訪れて、レアとお茶会をするようになった。


レアの恋って、もう本編最後まで見てれば分かると思うんですけど、最初から叶わないって読者の皆さんは分かってたと思うんですよね。ある意味、切ないと言いますか……………でも、結局そう言う切なさはあまり感じさせない王女編だったと僕は思います。自分が選ばれなくとも、それでも、創真への愛は変わらない……………僕はレアらしくて良いと思います。


それでは、またいつかお会いしましょう。アデュー!







そして!ここで重代発表!何と、またも、とある作品とのコラボが決定しました!え?勉強大丈夫か?します!してますから! 詳しい情報は活動報告欄で順次解禁していきますので、乞うご期待していてください!

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