結城 創真の暗殺教室   作:音速のノッブ

197 / 201
結局、3月中には終わらず…………王女編はこの次でラストの予定ですが、SAO前日譚編がまだ残ってるんですよねー。もしかしたら、続きは来年になるかも知れませんし、気分次第で最後までやっちゃうかも知れませんが、どちらにせよご了承下さい。


黒幕の正体

自転車で大使館を目指すE組ら。道中、暗殺者には遭遇せず、坂を上りきればもう大使館だと言うところで、渚の携帯に着信が入った。

 

 

「ちょっと待って!」

 

 

「電話かい?誰からの?」

 

 

「えっと………片岡さんだ」

 

 

渚は電話に出て、片岡の話に耳を傾ける。うんうん、と聞いていた渚だが突然、「えっ!?」と声を上げた。

 

 

「暗殺の黒幕がステルド大使!?」

 

 

渚の言葉に皆は驚きを隠せなかった。レアも浅野に翻訳され、驚きの表情を見せる。

 

 

「どーゆーことだよ。助けてもらおうと思ってた奴が黒幕!?」

 

 

「僕もよく分からないんだけど、片岡さんはそう言ってる。あと、理事長と警察が大使館に来てるみたい」

 

 

皆は黙りこんでしまった。重苦しい雰囲気の中、創真は口を開く。

 

 

「よし、行こうか」

 

 

「行こうって、大使館にか?大使館には黒幕がいんだぞ。王女が狙われるかも知れないぜ?」

 

 

「隼、少しは頭を使いたまえ。大使館には警察もいるんでしょ?大使も迂闊に手は出してこないと思うけど」

 

 

「創真の意見に俺は賛成だねー。行っちゃおうよ、このまま」

 

 

「逃げる必要はない。黒幕がいるなら、化けの皮を剥いでやるだけだ」

 

 

創真の意見にカルマ、浅野が賛同し、皆はこのまま大使館に入ることを決めた。

 

 

『王女、心の準備はよろしいですか?』

 

 

浅野はレアに話し掛ける。レアはコクりと首肯く。

 

 

『えぇ……………本当に黒幕なのかどうか、自分の目で確かめるわ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大使館に入ったE組ら。ステルドは大層安心した様子で、胸を撫で下ろす仕草を見せる。

 

 

『よくぞご無事で、王女!』

 

 

ステルドはレアに近付こうとするが、浅野と創真がレアの前に出る。そんな彼らを見て、理事長が口を開く。

 

 

「君達は何をしようとしているのか分かっているのかな?早く王女を引き渡しなさい」

 

 

「理事長、僕らに後ろめたいことはありません。王女の意向を尊重し、全て自分達で判断して行動しました」

 

 

浅野の堂々とした声が大使館に響く。

 

 

「護衛をまいてホテルから抜け出し、危険な目に遭い、忠告を無視して、さらなる危険に遭わせたのが後ろめたくないと?」

 

 

「王女の意向と安全を最優先した結果、理性に従った行動です」

 

 

「ほう。浅野君、君の行動は本当に全て理性に基づいてのもの、と断言できるのかな?」

 

 

「……………勿論です。あなたは何が言いたいんです?」

 

 

「理性が劣情に負けただけではないかと私は思うのだがね」

 

 

「ッッ!」

 

 

理事長は追及の手を止めない。

 

 

「日本とノルゴ、両国の関係にヒビが入りかねない状況だよ。そんな国家レベルの問題をどうやって納めるつもりなのかを聞かせてもらおうか、浅野君」

 

 

「それは…………………………」

 

 

浅野は答えに詰まってしまった。創真も同じく黙っていた─────────────が。

 

 

「理事長。そう言えば言ってなかったですね。何故、僕らが王女を引き渡たそうとしないのか」

 

 

「………………そう言えば聞いていなかったね。何か理由でもあるのかね、創真君?」

 

 

「なら、聞かせてあげましょう。さぁ、謎解きの時間だ!別動隊の皆さーん!」

 

 

創真の召集に答えるように、奥から不破ら別動隊が現れた。先頭に立つ不破がステルドを指差して宣言する。

 

 

「大使、あなたが王女を出迎えることは出来ない。今回、あなたが王女の暗殺を仕組んだことは全部バレているわ」

 

 

不破の指摘にステルドは心底驚いた様子を見せる。

 

 

「こんな状況で何を言っているのですか?私が王女の暗殺を仕組んだ?」

 

 

「証拠なら見せてあげるわ。この名探偵が、ね!」

 

 

不破は自分のスマホを操作する。すると、全員のスマホから様々な音が奏でられる。

 

 

「何だ………………?」

 

 

不審がるステルドも含め、皆は自分のスマホをチェックする。そこには差出人不明のメールが届いており、メールに添付されていた画像には、レアのスマホの位置情報をステルドのスマホで照会しているデータが残っていた。

 

 

「皆さん。見ての通り、ステルド大使は王女の位置情報を照会していました。それを何十回もね」

 

 

『仕組んでいたのはあなただったのね、ステルド!どういうことなの!?』

 

 

浅野に翻訳されて、レアも怒りでスマホを握りしめる。創真も自分のタブレットを取り出す。

 

 

「さっき調べたレアちゃんの位置情報を受信している端末の位置情報を日本のみに限って調べれみれば……………あぁ、確かに大使館付近から発信されているね」

 

 

「それだけじゃないわ。大使は色んな口座にお金を振り込んでるわ。これって、自分の雇った暗殺者への報酬でしょ?証拠のチップもそろってまーす」

 

 

不破はチップを見せびらかす。このチップはビッチ先生が大使館の人間を落として入手した物である。しかし、証拠を指摘されてもステルドは何も動揺してるようには見えなかった。

 

 

「確かに、位置情報を発信するアプリを仕込んだのは事実です。王女には謝罪しなければなりませんが、それだけでは私が王女の暗殺を仕組んだと言う事実は成り立ちませんね」

 

 

「いいえ、証拠ならまだあるわ!あなたは王様の隠し子で、王女の王位を奪おうと狙っているのよ!」

 

 

「………………そんな証拠、あったっけ?」

 

 

別動隊の面々も不破の発言に疑問符を浮かべるが、不破は勝ったも当然と言う顔で云う。

 

 

「だって、王様に隠し子は少年漫画の定番だもん!フッフッフ、これで言い逃れは出来ないわよ!」

 

 

「いや、私は王の隠し子でもないんですが……………それはあなたの妄言ですね」

 

 

「も、妄言じゃない!これは漫画でのシチュエーションから推測した」

 

 

「なら、具体的に私が王の隠し子と言う物的な証拠は?」

 

 

「うっ………………」

 

 

何故か探偵が逆に追い詰められてしまうと言う、謎の展開。それを見かねた創真はやれやれ、とため息をつきながら不破の前に出る。

 

 

「はいはい、不破さん、もう下がって良いですよ」

 

 

「ま、まだよ!じっちゃんの名に懸けてこの謎は私が」

 

 

「いや、これ以上妄言言われると話がややこしくなるから」

 

 

「も、妄言………………」

 

 

妄言と一蹴され、不破は若干落ち込み気味でとぼとぼと下がる。

 

 

「さて、と言うわけでここからはバトンタッチで真の名探偵がこの謎を解いてやる」

 

 

「だから私は」

 

 

「まーまー、最後まで聞きなさいって。カルマ君、最初の暗殺者が持ってたスマホ貸して」

 

 

「え?ロック掛かってるけど?」

 

 

「良いから」

 

 

カルマは創真にスマホをパスする。それを受け取った創真は咳払いをし、全員に向けて語り出す。

 

 

「皆さん、このスマホは最初に襲ってきた暗殺者が持っていたスマホです。ちょっと、今からこのスマホのロックを解除するんで……………」

 

 

創真はスマホをタブレットに繋げ、指を高速で動かす。30秒後、解除が終わったのかスマホをタブレットから外す。

 

 

「さて…………………じゃあ、このスマホの電話の通話履歴のに残っている電話番号に掛けてみますかね。僕の予想が正しければ…………………」

 

 

そう言いながら創真はスマホをタップして電話を掛ける。数秒後、味気ない着信音が鳴った─────────────────大使が手にしてるスマホから。その場にいる皆が大使の顔をまじまじと見つめる。

 

 

「電話、鳴ってますよー?」

 

 

創真はそう教えるが、大使は冷や汗をかいて強ばった表情のまま固まっていた。やがて、電話が留守番になって着信音が止んだ。

 

 

「これで、チェックメイトだ」

 

 

「ち、違う!これは、その、し、仕事関係の」

 

 

「なら、何で出ないんです?大事な仕事関係のなのに。違うと言うのなら、スマホを見せて下さい。留守番履歴の1番上にこのスマホの番号がなければ、身の潔白を証明できますよ」

 

 

創真はスマホを貸せと言う意味で手を出す。しかし、大使は手を震わせたまま、決してスマホを出そうとしない。

 

 

「……………………渡そうとしない辺り、もう認めたようなもんですね。残念でしたねぇ、つめが甘いんですよ」

 

 

「…………………くそっ!!あぁ、そうだよ俺が暗殺の黒幕だよ!!」

 

 

大使は今までの上品さをかなぐり捨て、憎しみを露にした。

 

 

『ステルド、何故私を狙ったの!?』

 

 

『お前が平和を訴えるからだ。ノルゴは今、紛争へ武力介入するかしないか、世論が別れている。俺が外交官として紛争に介入するように国を動かして利益を誘導してるのに。国民に人気のあるお前が平和を訴えるのはウケが良すぎて邪魔なことこの上ないんだよ!』

 

 

『なっ!?母の国をこれ以上戦火にさらそうとするなんて、許せないわ!』

 

 

『そんなの知ったことか!だが、そこのガキのせいで俺は立場も権力も奪われる!こうなったらしょうがない………………!!』

 

 

ステルドは腰から銃を取り出し、空に向かって引き金を引く。銃声があたりに響き渡った瞬間、ジープが大使館の入り口前に急停車し、武装した男らが20人程入って来る。そして、理事長、創真の近くに何かが転がってきた。

 

 

「手榴弾!?」

 

 

「創真君、離れなさい!」

 

 

両者ともに離れようとした瞬間、手榴弾が爆発し2人供大きく吹き飛ぶ。そして今度はさらに多くの手榴弾が辺りに投げられる。何個か創真の目と鼻の先に転がってきた。

 

 

「デュオ!」

 

 

「『空間断絶!』」

 

 

創真の前にデュオが割り込み、手榴弾の爆発から創真を守ろうとする。しかし、爆発は起こらなかった。代わりに煙がプシュー、と言う音と伴に放たれる。

 

 

「スモークだと!?」

 

 

煙幕が大使館に充満する。暫くして煙幕が晴れると────────

 

 

「!!」

 

 

レアはステルドに捕まっており、頭に銃を突きつけていた。周りの武装集団らはE組や大使館の職員、警察に銃を向けていた。

 

 

「それ以上動くな!少しでも怪しい動きをしたら、王女を殺す!」

 

 

そのまま、ステルドらはじりじりと下がっていく。

 

 

「おい、待て。レアちゃんをどうする気だ!」

 

 

「俺らが国外に脱出するまで、人質にさせてもらう。その後は、裏社会で売りさばいてやる。王女を欲しがる奴なんて、幾らでもいるだろうな!」

 

 

「何処までも外道な…………………!!」

 

 

創真は青筋を浮かべて怒りを露にする。ステルドはノルゴ語で小声で武装集団の1人に話し掛ける。創真は口の動きで何を言ったのかを読んだ。

 

 

(………………全員殺せ、か)

 

 

武装集団は銃の照準をE組らに合わせる。

 

 

『待ちなさい!ソウマらを殺す気!?』

 

 

『お察しの良い。とくとご覧あれ、王女。大切な仲間が死ぬのを!』

 

 

『ダメ─────────────!!』

 

 

レアの叫びも虚しく、武装集団らは銃の引き金を───────────

 

 

「させるか、オラァァァァァァ!!」

 

 

そんな声が聞こえたかと思えば、ジープを飛び越えて、赤いバイク=パニガーレV4が大使館に乱入し、火花を散らしながら創真の目の前に停車する。そのバイクに跨がるのは─────────

 

 

「タイミングばっちり。僕の予想通り、漸く来たかホリー」

 

 

「事情聴衆が長すぎて、警察官を魔法で眠らせて大使館に来たんだけど………………こいつら倒して良いんだよね?皆を殺そうとしてたし」

 

 

「うん、是非倒して」

 

 

『なんなんだお前!?くそっ、おい!あいつを殺せ!』

 

 

ステルドの指示を受けて、武装集団はホリーに向けて弾丸を撃ち放つ。しかし、ホリーはバイクに跨がりながら何処からかフライパンを取り出して弾丸を全て打ち返す。速度を倍増された弾丸は武装集団らの腕や足を撃ち抜き、戦闘不能にした。

 

 

「流石ホリー。相変わらず仕事が速いね」

 

 

「まっ、速さが自慢ですから~。で、あとはあいつだけ?」

 

 

ホリーがチラッと見れば、武装集団を僅か3秒で無力化され、半ば放心気味のステルドがいた。

 

 

「どう見てもあんたが不利だろ。これ以上痛い目に遭いたくなきゃ、王女を返して素直に自首するんだね」

 

 

「ふっ………………ふ、ふざけんな!こっちにはまだ人質の王女がいるんだぞ!」

 

 

「じゃ、返してもらおうか。ホリー」

 

 

「うん、任せて」

 

 

皆の目には、ホリーの姿がほんの一瞬消えたかと思えば、元の位置に戻っていた。その一瞬で変わったことと言えば……………………

 

 

『……………………あれ?ソ、ソウマ!?』

 

 

レアはいつの間にか創真にお姫さま抱っこされていた。

 

 

『レアちゃん、カムバック~』

 

 

『(ソ、ソウマにお姫さま抱っこされてる…………///)』

 

 

『ど、どう言うことだよ!?く、クソが!』

 

 

ステルドは怒りの余り銃を地面に叩き付ける。そして創真らの方を睨み付けると、創真やレア、果てには浅野理事長ら、大使館にいる面々が自分を見てクスクスと笑っていた。

 

 

『なっ、何がおかしい!?』

 

 

創真はステルドを写真に撮って、スマホをステルドの方に滑らせる。ステルドは渡されたスマホを見る。そこには、髪を剃られてちょんまげにされている自分の姿があった。それを見てステルドはさらに怒る。元凶のホリーは、完全に悪人面の笑みを浮かべる。

 

 

『き、貴様ら………………ハッ!』

 

 

ステルドの目の前に創真がいた。

 

 

『お縄につけ、この落武者!』

 

 

そのまま、創真は蹴りをステルドの頬にクリティカルヒットさせる。ステルドは地面を転がり、気絶する。その隙に、警官らが身柄を確保する。

 

 

『自分の国で、しっかりと裁かれるんだね』

 

 

気絶しているステルドに創真はそう言い放った。元凶を撃破し、E組らは「よっしゃあ!」「これでボス撃破だ!」と喜びを見せる。

 

 

そんな中、レアは創真に駆け寄る。

 

 

『ソウマ、大丈夫だった?怪我とかない?』

 

 

『ぜーんぜん!この通り、ぴんぴんしてるよ!』

 

 

創真はニコッと笑ってみせ、レアもそれを見て漸く笑顔を綻ばせる。それを見たホリーやデュオも自然と笑みが浮かぶ。そこへ、浅野親子がやって来る。

 

 

「結城 創真。理事長からお話があるそうだ」

 

 

「お話?」

 

 

「今回ばかりは、君達に助けられたと認めざるを得ないね。礼を言わせてもらうよ。君達がいなければ、王女の身に何があった事やら」

 

 

「いえいえ。レアちゃんは大切な友達ですから」

 

 

「そうか。お詫びとして、何か出来ることがあれば1つくらいは叶えてやりたいと思うのだが」

 

 

「……………………ふむ。あ、そうだ。ホリー、デュオ」

 

 

「ん?」

 

 

「なになに?」

 

 

ホリーとデュオを召集し、創真はとある提案を言ってみた。

 

 

「良いんじゃないか?皆も喜ぶだろう」

 

 

「流石創真!良い案を思い付くね!」

 

 

2人の賛同を得たら創真は、改めて理事長の方を向く。

 

 

「じゃあ、理事長。1つお願いがあります」

 

 

「何かな?」

 

 

「───────────────────────、です」

 

 

「そんなことなら構わないよ。しかし、受験が近いのに大丈夫なのかい?」

 

 

「理事長。E組はそこまで馬鹿じゃないですよ?」

 

 

「………………そう言えばそうだったね。良いだろう、君の要求を承諾しよう」

 

 

「ありがとうございます。さて、早速皆に言おうか」

 

 

創真は何をお願いしたのか?答えは、次回で。

 

 

to be continue…………


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