知らない人も多いでしょうが、楽しんでもらえたら幸いです。
この話の基は暗殺教室の学習本、殺たんcのです。勉強になるから、学生さんは買ってみると良いですよ。
Are you ready?
準備の出来た人からどうぞ!!
E組の
「まぁまぁ、皆さん落ち込まないで!ね?」
殺せんせーが皆を励ます言葉を掛けるが、相変わらず皆の表情は暗い。
「そんなこと言われてもさぁ…………私達は王女様に会えないんだよ?」
碧海の嘆きを詳しく説明すると……………………
今日の一時間目の全校集会。
壇上には、金髪のイケメン外国人が立っていた。
「皆さんこんにちは。ノルゴ王国の駐日大使のステルドです」
見事な日本語だった。
「今回、浅野理事長のご好意で、レア王女が椚ヶ丘中学のディベート大会に参加させてもらえる事になりました」
その言葉に、皆はざわつく。
「今回の議題、『国際平和について』にレア王女は大変強い関心を持っており、皆さんと会えるのを楽しみにしています」
「ってことは、直接話せる機会もあるってことか!」
「この中学校で良かったー!」
あちこちから喜びの声が聞こえてきた。
「さらに、ディベート大会に先駆け、王女の滞在先に代表の生徒を招いています」
壇上に上がったのは、A組の生徒会長、浅野学秀だ。
「王女のエスコート役を仰せつかさせてもらい、大変光栄です。王女の静養をより良きものに出来るよう、頑張ります」
自信に溢れた声で宣言したのだった。
「…………で、E組は外部受験対策と言うことで、ディベート大会に参加できない……………と言ういつもの理不尽。あーあ……………」
碧海もそうだが、皆残念そうな表情を浮かべる。
それを聞いた殺せんせーは、黒板にマッハでノルゴ王国の地図を書いた。
「ノルゴ王国はヨーロッパの北に位置します。面積はそこまで広くないですが、実に美しい土地です。ノルゴ人は、背が高くて金髪、青い目の人が多いですね」
「ニュースで王女を見たけどすっごい綺麗だった。憧れちゃう!」
矢田が王女への憧れを口にする。
「でも、あの歳で国際平和について発言しているんだぜ。立場的にはっきりした主張は出来ないとは思うけど、勇気があるよなぁ」
すると、殺せんせーはノルゴ王国を起点に地図を一気に広げ、海に挟まれた地域を指す。
「ここは大陸の交差点と呼ばれ、紛争が絶えません。レア王女のお母さんは難民としてノルゴ王国にたどり着いた後、大恋愛の末、現在の国王と結ばれました。王女が平和を強く願うのは理解できますねぇ」
「あーあ。聞けば聞くほど俺らも王女に会いたいぜ。なぁ、創真…………って、あら?」
席には創真の姿がなかった。
「あれ、あいついないのか?」
「そういや、今日いたか?」
ここで漸く、皆は創真がいないのに気がついた。今日は一時間目が集会だったので、出席確認と朝の暗殺はカットになっていたからである。
「そーいや、集会の時俺の前は創真なのにな………全然気付かなかったな」
「寝てたんじゃないの~隼?」
碧海の問いかけに隼は…………………
「なわけねぇよ………………多分」
……………最後の方を濁して答えた。
「碧海さん、氷室さん。創真君はどうしたんですか?」
端の方に立っている氷室と、同居人の碧海に殺せんせーは尋ねる。
氷室は苦笑しながら答える。
「いやー…………昨日の夜から『暇だし今まで誰も解けてない数学の懸賞金問題でも解くか』と言って、ずっと机に向かっていました…………」
「「「はぁ!?」」」
「私も一緒に解いてたんだけどさ、途中で寝ちゃって。気づいたらベットの上で朝まで寝てたよ。優しいことに、毛布まで掛けてくれてた♪」
最後の碧海の蛇足に、倉橋はムッと不満げな表情をしていたのだが、誰も気が付かなかった。
「それで、肝心の創真君は?」
「机の上で突っ伏して寝てます。起こそうとしましたが、起きませんでした。私は先に行くという趣旨のメモを残して来ました」
「まぁ、流石にもう起きたと思うけどねー」
氷室と碧海の説明を聞いて、皆は呆れ返っていた。
「ったく、あいつは何やってんだよ………」
「誰も解けない問題を解こうとよく思うよね……」
すると、そこへ
「おっはよー皆さん」
創真、到着。
「創真君!遅刻とは感心しませんねぇ」
「めんごめんご。まぁ、理由は聞いたかな?」
「数学の懸賞金問題を解こうとしたんですよね?まったく、何と言いますか…………君が幾ら頭が良くても、流石に……………」
「いや、出来たかも」
「「「はぁ!?」」」
何と言うことだ。今まで世界中の数学学者を阻んできた問題を中学生が解いたというのか?
「お、おいマジかよ…………もしそれが合ってたらどれくらいもらえるんだ?」
震えた声で前原が尋ねる。
「んー………100万ドル?日本円で1億かな?」
「「「1億!?」」」
※本当です。
「まぁ、そんな事はどーでもいいでしょ。それより殺せんせー。1時間目なんかあった?」
「え、あ…………ごほん。1時間目は授業ではなく集会でしたよ」
「集会?」
「ノルゴ王国の王女、レア王女が椚ヶ丘のディベート大会に参加するそうで。E組は除外されてますが…………」
「へー、レアちゃんか。そういえばニュースで来日とか言ってたねぇ~」
「「「…………レアちゃん?」」」
全員が、王女のちゃんづけに違和感を覚えた。
「あのー創真様。レアちゃん、とは…………?」
皆の心の内を代弁した氷室の質問に創真はけろっと答えた。
「あー、皆は知らないかな?
僕、レア王女と知り合いなんだよね~」
「「「知り合いィ!?」」」
創真に驚かされるのは何度目なのだろうか………皆はそう思った。
時は変わって放課後。
浅野学秀はレア王女の泊まる高級ホテルに来ていた。
(何があっても王女を持て余す事に集中しろ。そのくらい出来なければ、これから上に立っていく者として失格だ)
王女という立場の人物に会うという緊張を落ち着かせるように、何度も自分にそう言い聞かせた。
やがて、行われていた身分証の確認が終わり、浅野はエレベーターへ乗り込む。
中にある鏡を見ながら身だしなみを完璧に整えている間に、エレベーターは最上階に到着した。
最奥にあるスイートルームの目の前に着いた浅野はノックをする前に一息吐いて…………ノックをした。
『失礼します』
英語でそう言い、遂に浅野はスイートルームに入る。
中にある大きなソファーの上に、レア王女は座っていた。
『こんにちは、ガクシュー』
同じくレアも英語でそう挨拶した。
レアの青い瞳に浅野は見とれていたが、失礼になると思い、目を逸らした。
《こんにちは、レア王女》
《あら?ノルゴ語が…………?》
レアはノルゴ語の挨拶に目を丸くした。
『いえ、挨拶だけです。このあとは英語でお願いします、レア王女』
『堅苦しい挨拶は抜きにして、どうぞ座ってください』
レアに促され、浅野は腰を降ろす。
『私、あなたに会えるのを待っていたの。同じ年の人と話すことが少ないもの。椚ヶ丘は大きな学校と聞いていますが、全校で何人くらいいるのですか?』
『全校では600人弱ですね。僕の学年は188人いますね。椚ヶ丘中学は日本でも名高い進学校ですので、海外にもよく知られています』
『……皆さんとても優秀なのね』
『それでも英語のディベートをするには拙い所もありますが、しっかり議論を戦わせて貰いたいです。どうぞ、お手柔らかに』
『私も英語は母国語ではないからお互い様ですよ。それより、そんなに堅苦しいのはよしましょう』
レアはティーカップの中をスプーンでかき回しながら続ける。
『ディベートもそうだけど、私は皆さんとお会いすること自体楽しみなのよ。皆さんはどんな遊びをしたりするの?』
『そうですね、手下……………じゃなくて仲間とCDリリースに向けてバンド活動をしたり、社交パーティーに参加したりして楽しんでますよ』
浅野の返事にレアは笑顔をひきつらせた。固まったレアに気づいた浅野は声をかける。
『王女…………何か失礼がありましたでしょうか?だとしたら、おわび申し』
『いいえ、失礼なんてなかったわ。完璧よ。英語も態度も身だしなみも全部』
『はぁ……………』
浅野は王女の言っていることが理解できなくてそんな間の抜けた返事をしてしまった。
『…………私は普通の中学生と会いたかったの。英語もつたなくて、言うこともどこか幼くて、でも活き活きとしている中学生と』
『……………僕も普通の中学生ですよ?』
『なら、何か面白いことを言ってくれる?』
ここで漸く浅野は返答に詰まった。面白いことを言って、等と言うリクエストなどされたことが無かったからだ。
『…………もう良いわ。ちょっと外に出ようかしら』
レアはコートを羽織ってさっさと歩き出した。
浅野も呆然としていたが、慌てて王女の後を追いかける。
廊下に出ると、護衛が慌てて王女を追いかけた。そして、浅野と護衛は同時にエレベーターに駆け込んだのだった。
『やっぱり、日本の庭園は綺麗ね!自然な形を生かしてあって、とても素敵』
レアは庭園のあちこちを軽やかに歩き回っていく。浅野は内心ため息をつきながら、その後を追う。
庭の中央に位置する大きな奇岩でレアは左に曲がったが……………その先に彼女の姿はなかった。
あたりを見回すが、その姿はない。
『王女さま、王女さま!?』
護衛は慌てて庭園の出口に向かって王女を探しに行く。
『ガクシュー、こっちよ』
後ろから声がした。振り向くと、レアが浅野を手招きしている。そのまま庭園の奥に姿を消してしまい、浅野は仕方なく彼女を追う。
2人が辿り着いたのは、ホテルの食器や備品を運搬する業者用の駐車場だった。
『これで、私たちは自由だわ!外に行きましょ!』
呆然とする浅野を放って、レアはタクシーを止めて乗り込む。
『王女、一体何処へ…………』
浅野も放っておく訳にもいかず、乗り込む。
『何処って、勿論あなたの街よ?』
『護衛の人間をまいてあなたを連れ出したら、問題になるし、僕も困ります』
浅野のイライラゲージは順調に貯まっていった。
『大丈夫よ、そんなこと。私が姿を消すなんてしょっちゅうだから』
どうやら、脱走の常習犯らしい。
「クヌギガオカ、お願いします」
行き先を伝えたのはレアだ。この一言を脱走するために覚えたのだろう。
(くそっ…………………今日は厄日決定だ。それもとびきりのな…………!!)
浅野の内心をレアは知るよしもなく、タクシーは走り出したのだった。
その頃、ホテルは大騒ぎだった。
『王女が消えたぞ!』
『すぐに周辺を探せ!警察には連絡せず、穏便にな!』
ノルゴ王国の関係者がバタバタとするなか、1人の人間は携帯でペコペコ頭を下げていた。
彼の名は前田 慎二(23)である。『ソウル』の経営するこのホテルのセキュリティー関連の最高責任者を入社1年目にして勤める男性である。
「申し訳ありません、社長!私がいながら…………」
『いやーこりゃやばいぜ。もし、王女に何かあったら『ソウル』の信用はガタ落ちだな。いや、脱走しちゃってる時点で既に不味いか……………』
「すみません!!」
『…………こうなったらしょうがない。前田、お前は創真の携帯電話の番号を知っているか?』
「あ、はい。社長が入社時に教えてくれましたよね。なぜかは分かりませんが…………」
『こーゆときのためにあるんだよ。創真に、
電話は切れる。まったく、こんな状況において野球を楽しむなど、この社長以外は出来ないだろう。
前田は急いで創真に電話を掛ける。数コールで電話は出た。
『こんにちは、前田さん…………だよね?』
「あ、はい。覚えてるんですか?」
『父さんが社の人間の電話番号は全部覚えとけと言われてるからね。何故かは知らんが。それで、何かトラブルですか?』
「実は……………………」
前田は30秒必要事項の説明を終えた。
『…………なるほどね。まったく、レアちゃんの脱走癖は相変わらずだね……………
「ありがとうございます!!…………そう言えば、メールアドレスって教えてました?」
『
創真side
「やれやれ。相変わらずだね……………」
彼女らしいと言えば彼女らしいのだが。
「創真、もうすぐ渚達と約束した時間だよ」
「ホリーに言われなくても、分かってるよ」
今日、近くの喫茶店で渚達に勉強を教える約束をしたのだ。
「準備していくか。にしても、もうすぐ受験だなぁ。まぁ、僕はぶっちぎりで受かってやるけどね」
そうして準備を済ませ、冬の冷たい風が吹く外へ────────あんまり出たくはないけど。寒いし─────────外出をするのであった。
まぁ、勉強会がすぐに別の任務に変わることを知るのはそう遠くはなかった。
コラボ編は暫く延期です。またどっかで載せます。