結城 創真の暗殺教室   作:音速のノッブ

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#6 真の強敵は自分自身

「き、キョウヤが2人!?」

 

 

フィーベルが驚きの声をあげる。

 

 

「いや……………奴は儂の偽者じゃ。リィエル殿、剣を借りるぞ」

 

 

返事も待たずに、キョウヤはリィエルの剣を取り、目の前の自分に斬りかかる。

 

 

それを、手に持つ刀で受け止める偽キョウヤ。

 

 

「3人は逃げるのじゃ!!」

 

 

「え、でもキョウヤが…………」

 

 

「儂の事は良い!!早く行くのじゃ!!」

 

 

キョウヤは声の限り叫ぶ。

 

 

確かに、武器もなし、そして魔術や錬金術が封印されている以上、足手まといになるだけだ。

 

 

「…………行こう」

 

 

リィエルの声に2人は頷き、その場を後にする。

 

 

「……………さて、偽者。消えてもらうぞ!」

 

 

キョウヤは剣を改めて握りしめ、偽者に襲い掛かる。

 

 

「………………………」

 

 

偽キョウヤは何も言わず、同じ動作で襲い掛かる!

 

 

そして、剣が交差した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………流石、儂じゃ」

 

 

本物のキョウヤの持つ剣は根本からパキッと折れていた。

 

 

これで、完全に攻撃手段を失った。

 

 

偽者のキョウヤは本物に近づき、剣を高く構える。

 

 

「………………すまんのう、皆。今の儂では力不足のようじゃ………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、君には充分力がある……………奥の手を使わない、素でもね」

 

 

そう答えた者がいた。

 

 

黒獣が何体も飛んでくる………………偽者のキョウヤは剣で弾いていたが、余りの数に危機感でも感じたのか、窓から離脱していった。

 

 

「やぁ、キョウヤ君。随分苦戦していたね」

 

 

「創真殿……………」

 

 

黒い外套を身に纏う創真。その手に持つ、『文豪の世界』のカードには、赤い文字で羅生門と綴られていた。

 

 

「にしても、君の本気があればあんなのすぐ倒せるでしょ?」

 

 

「……………やはり知っておったか」

 

 

「まぁね。知ったときは一瞬焦ったが、今となっては問題ない。どうやら、月下獣が発動のトリガーの1つとなるようだね………………使うかい?」

 

 

「………………いや、アレは危険すぎる。もし、お主かノーネームが止めれなかったら…………」

 

 

「分かった分かった………………あ、そういやノーネーム君は?」

 

 

「……………あいつは………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィーベル達が家を出て走っていると、そこに複数人の姿が見えた。

 

 

「やぁ、3人とも」

 

 

「ホリー君にデュオ君…………それに、先生にセラさん、アルベルトさんも?」

 

 

「お前ら、怪我はないか?」

 

 

「大丈夫。それより、グレン達の方がひどい」

 

 

リィエルに言われてみれば、所々に怪我が見えた。

 

 

「あの、先生!この霧って……………」

 

 

「ああ。白猫、この霧の正体を聞いたか?」

 

 

「キョウヤが助けに来てくれたとき…………自分にやられたとだけ聞きました」

 

 

「まさにその通りだ。この霧の中では…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔術・錬金術を持つ自分が切り離される」

 

 

アルベルトがそう真実を告げる。

 

 

要は、魔術・錬金術を使える自分と、魔術・錬金術を使えない自分に分かれてしまったと言うことだ。

 

 

「それと、な。言いづらいんだが…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルークが敵側に回った」

 

 

「「「………え?」」」

 

 

ルークが敵側に回った?

 

 

「嘘……………そんな事って……………」

 

 

「残念ながら本当の事なのじゃ」

 

 

後ろを向くと、そこにはキョウヤと創真がいた。

 

 

「あやつは、この霧を発生させる首謀者をここに呼び寄せたのじゃ……………」

 

 

「そんな!」

 

 

「『1番頼りがいのある奴が敵に回る』………やれやれ、厄介だね」

 

 

創真は大きなため息をつく。

 

 

「ホリーやデュオも魔術は使えないが、幸い僕の文豪の世界は機能する。唯一の対抗手段ってわけ。それと、ホリー。頼んどいた事は終わらせた?」

 

 

「うん。残っていた人達を全員安全な場所に避難させたよ。残ってるのは、僕らだけなはず」

 

 

サンキュー、と創真は笑みを浮かべるが、すぐに厳しいものに変わる。

 

 

「さて………………僕は首謀者を捕縛しに行く。場所も見当がついた」

 

 

「創真君1人で!?危険すぎるよそんなの!!」

 

 

セラは優しい。人が危険に飛び込んでいくのを止めずにはいられないのだろう。

 

 

「対抗手段が僕しかいないからね…………少なくとも今は」

 

 

「だからって、お前1人だけを行かせるわけには……」

 

 

「グレン先生らはホリー達とここの防衛をお願いしたい」

 

 

────────ここの防衛?

 

 

疑問符を浮かべる皆に、創真はタブレットを取り出して、映像を見せる。

 

 

「見て。偵察機からの映像だけど、魔物がウジャウジャ湧いてきてる。町のさらなる被害を防ぐために、こいつらの殲滅をお願いしたいんだ。」

 

 

「そういうことか……………だが、魔術を使えない今、俺らには…………」

 

 

「と、言うわけで良い物貸してあげる」

 

 

創真は、グレン、アルベルト、セラに見たこともない武器を渡していく。

 

 

「……………なんじゃこりゃ?」

 

 

グレンは普通のより大きな銃を持ちながら云う。

 

 

「ビームマグナム。反動凄いんで両手で構えてちょーだい。あと、もう一つ。これはレールガン。これも色々ヤバイんで」

 

 

「えっと………これはなに?」

 

 

「グレネードランチャー。反動はほぼないに等しいです。セラさんは後方支援が向いてそうなので撃ちまくってください」

 

 

「…………そして、この2つは?」

 

 

「ビームソードと、ヒートロッド。ほら、ここのスイッチを押せば…………」

 

 

アルベルトが剣の持ち手の部分にあるスイッチを押すと……………緑色のビームの刃が出現した。

 

 

何度か振って、悪くないな、とアルベルトは呟いた。

 

 

ヒートロッドは簡単に言えば鞭です、と、創真は付け足す。

 

 

「よし、それでは行動開始と行こうか」

 

 

「待って創真君!私達も連れてって!」

 

 

フィーベルの申し出に創真は驚きの表情を浮かべるが、

その目が真剣なのが直ぐに分かった。

 

 

「……………行くな、って言っても聞かないだろうね。言うこと聞けよ。良いな?」

 

 

創真の言葉に、フィーベル、ルミア、リィエル、そしてキョウヤはこくりと首肯く。

 

 

「よし……………死ぬなよ、5人とも」

 

 

「そちらこそ」

 

 

互いの健闘を祈りながら、彼等は別れて行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノーネームはとある砦に来ていた。

 

 

「……………………」

 

 

霧に覆われている町を暫く眺めていたが、身を翻しそびえ立つ塔の中へ入っていった。




THE NEXT story 6/11 PM 22:00

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