結城 創真の暗殺教室   作:音速のノッブ

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#5 死の霧が生み出すのは───────

創真side

 

 

王の間という、僕専用の部屋にて、創真は蟹を見つめていた。

 

 

「で、ホリー。僕がちょっと前に作ったマシンクラブにどんな改造をしたの?」

 

 

最終決戦用に導入しようと検討して、結局叶わなかった、幻のマシン。

 

 

特徴としては、ハサミでロープを断ち切れる。

 

 

「いやね、暇だったのよ」

 

 

うん。

 

 

「だからね、ちょっと改造してみたのよ」

 

 

ほう。

 

 

「じゃ、その改造の成果を見せてくれるかい?」

 

 

「いいとも!このボタンを押すと………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プシャー

 

 

そんな音が響いたかと思うと、鋏から水が出てきた。

 

 

「このように、水が出るのさ!凄いだろ!」

 

 

「…………………………………」

 

 

ホリーは、僕が恐らく無の表情を浮かべているのに気付いたのだろう────────

 

 

「す、凄くない?」

 

 

─────────声が若干引き攣っている。

 

 

「………………………………まぁ」

 

 

返す言葉がない。

 

 

「フフフ。創真、この話はもう終わりにしないかい?」

 

 

賛成だ。お互い気不味い。

 

 

ホリーはマシンクラブを格納庫にしまい、僕から背を向けてゲームを始める。

 

 

「やれやれ。すっかり傷付いちまったな?」

 

 

「うるさい、キバット!くそぉ……………創真にゃ敵わん。俺の方が何十万年以上も生きてるのに……………」

 

 

まぁ、それはあくまで人生経験が豊富なだけだ。

 

 

長く生きているからといって、全ての分野で勝てるとは限らないのだよ。

 

 

「……………暇だな。ちょっと、あっちで珈琲でも飲んでくる」

 

 

そして、デュオの姿が消える。

 

 

「そう言えば、ホリー。デュオって珈琲好きだよね?」

 

 

「そうだね。本人曰く、苦いのが落ち着くだとよ。創真、お前はデュオが珈琲に角砂糖とか入れてるの余り見たことないだろ?」

 

 

確かに。

 

 

「僕も珈琲は嫌いじゃないけど、何も入れずに飲むのはちょっと苦すぎかな………………うん」

 

 

すると、デュオが戻ってきた。

 

 

「早いねデュオ。珈琲飲むの」

 

 

「飲んでない」

 

 

何故に?

 

 

「創真、ホリー、デュオ、キバット。今すぐ武器をもって行くぞ」

 

 

「…………………緊急の用件か?」

 

 

「ああ。3分で支度を済ませるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ…………………濃い霧…………」

 

 

数時間前までいた町が、濃い霧に覆われていた。

 

 

「これって、魔術師が死ぬっていう霧だよな………?」

 

 

「恐らくな」

 

 

その場の雰囲気が重くなる。

 

 

「どうする創真?」

 

 

「先ずは状況確認がしたい。だから、これを使う」

 

 

そう言って創真が取り出したのは、イカ型マシン、マシンスクイッド。

 

 

「それは良い選択だ。それに内蔵されているナゲット型偵察機は小型。隠密に探るならもってこいだな」

 

 

当然、それも分かってるさキバット。

 

 

こうして、創真らも行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、フィーベル達も異変に気付いていた。

 

 

「あの霧…………………今、噂になってる魔術師が死ぬ前兆に現れる霧なのかな………………?」

 

 

ルミアが窓越しに外を眺めながら呟く。

 

 

「どうしよう……………ここにいた方が良いのかな?」

 

 

現在、フィーベルのご両親は家を留守にしている。

 

 

そのため、今この場にいるのはルミア、フィーベル、リィエルの3人のみ。

 

 

「2人はここにいて」

 

 

リィエルが2人の意表を突くことを突然言い出した。

 

 

「え、リィエルはどうする気!?」

 

 

「静かに」

 

 

リィエルは傍に立て掛けてあった大剣を取り出す。

 

 

「殺気を感じる……………この家にもういる」

 

 

「「え!?」」

 

 

「2人は逃げて」

 

 

「だ、大丈夫よそれくらい!私達だって戦えるんだから!」

 

 

そう言い張るフィーベルを暫く見つめていたが、やがて退かないと分かったリィエルは、いつでも魔術を発動できるようにしといて、と言った。

 

 

3人は耳をすます……………………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バタン!!

 

 

「「「!!」」」

 

 

ドアが乱暴に開けられ、誰かが部屋に侵入してきた。

 

 

リィエルが剣を振り下ろそうとし……………止まった。

 

 

「……………キョウヤ?」

 

 

その人物はキョウヤだった。

 

 

「3人とも無事だったか…………なりよりじゃ」

 

 

「ん。全員無事」

 

 

「って、キョウヤ、あなたぼろぼろじゃない!?」

 

 

フィーベルに言われて、2人もよくよく見ると身体中傷だらけだった。

 

 

「ちょっと待ってて!すぐ直すから………」

 

 

「いや、ルミア殿。それは不要じゃ」

 

 

「何で!ぼろぼろじゃない!?」

 

 

キョウヤは、ふぅと息をつき……………最悪な状況を告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『魔術』が封じられているからのう………」

 

 

「…………………え?」

 

 

「『雷精の紫電よ』」

 

 

キョウヤが、ショックボルトの詠唱をする…………………が、電撃は発動しない。

 

 

「…………………そんな!もしかして、この霧の影響で?」

 

 

「その通りじゃ。この霧の中では、魔術や錬金術が全て封じられている」

 

 

そして、とキョウヤは続ける。

 

 

「今、各地で起こっている魔術師の変死の訳が分かったのじゃ」

 

 

「「「!!」」」

 

 

キョウヤは苦虫を潰すような表情で言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………『自分』に殺されたのじゃ」

 

 

自分に殺された………………………。

 

 

「それって、どういう」

 

 

パリン!!

 

 

窓ガラスの割れる音がした。

 

 

「………………来たか」

 

 

キョウヤが低い声で呟く。

 

 

その見つめる先には──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────もう1人の自分がいた。




THE NEXT story 6/10 PM 22:00

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