「どういうことだ…………?どうやって檻から…………まぁ良い。なら、2、3人殺してマイクで脅せば出てくるはず!」
そう確信して、死神は2、3名の起爆ボタンを押す。すると、画面の中央で爆発が見えた。あの首輪型の爆弾が爆発したのだ。
「外して行っただと!?…………くそ!なら、振り出しに戻すまで!」
死神はドアの前から引き返して行く。
「………………首輪が爆発したよ。全部、計画通りだね」
ホリーが笑いながら呟く。
「これを見た死神は引き返す筈。結果が分かるまでこのまま待機だ」
死神に一泡吹かせようと、三村が考えた作戦はこうだ。
まず、キバットにビッチ先生が付けてた爆弾を持ってきてもらい、イトナが鑑定。
イトナ曰く、乱暴に外しても爆発しないとのこと。と、言うわけで爆弾は全部外した。
そして、次に檻の外にある監視カメラに注目。カメラ……………いや、盗撮のプロフェッショナルの岡島が言うには、強めの魚眼タイプである。そして、このタイプなら、正確に写らない場所があるとのこと。で、超体操着の迷彩を施して、そこに肩車で張りついて完成。ちなみに、殺せんせーは素っ裸で皆の隙間を自然に埋めてる。
「で、結局僕の出番は無しか」
透明化しているホリーが幾らか不満そうに呟く。
「てか、結局思い付いたのか?」
同じく透明化しているキバットが尋ねる。それに対してホリーは即答する。
「いや」
「…………………もういいわ」
「…………………ん?」
「どうしたのデュオ?」
「戻ってきた」
ビッチ先生の手当てをしていたデュオがスッと立ち上がる。無論創真もだ。
「あのねービッチ先生。あなたが育った世界とは違うけど…………皆がいる世界にはあなたが必要だと思いますよ」
「……………!!」
創真の言葉にビッチ先生は大きく目を見開く。言いたいことを言い終わったのか、創真とデュオは去っていった。
創真が去って間もなく、死神がビッチ先生の前に現れた。
「イリーナ。創真君は?」
「気付いたらもういなかったわ。ひどいじゃない、死神。私ごと爆破するなんて」
「…………いゃあ、ごめんよ。ああでもしなきゃ目的が達成できなくてね」
笑顔でさらっと言う死神を醒めた目で見つめるビッチ先生。
「…………別に良いわ。それと、あんたに1つ言っておきたかったんだけど」
「なんだい?」
「後ろの警戒もちゃんとした方が良いわよ」
「え………………?」
ガシッ!
「はい、捕まえた~。鬼ごっこは終わりだよ三流君。君のミスを教えよう。まず、1つ目。信頼できる仲間を作らなかったこと。2つ目。自分の技術を過信しすぎたこと。3つ目。僕を本気にさせたことさ!」
肩をつかんでる創真から離れようとするのだが
「あ、足が動かない…………!?」
「ビビっちゃった?なら、動かしてやるよ!」
その瞬間、死神の身体が勝手に後ろへ吹っ飛び、立坑へと身を躍らせる!
「さぁ、けりをつけよう」
創真も死神を追って、飛び降りる…………………!!
創真が立坑の底へと着地したとたん、コンクリートにヒビが入る。そして、創真は死神と対峙する。
「受け身は出来るみたいだね。にしても、あんたのスキルは種類は多彩だが、爪も脇も甘い。なんかブランクでもあっ………」
創真は言い掛けた所で、顔をしかめて言葉を止める。何故なら、水面に顔の皮が浮かんでたからだ。
「ガキのくせに言ってくれるじゃないか」
「うぇ…………気持ち悪ッ……………まだ夕飯食ってねぇのに、嫌なもん見せやがって……」
「変装の技術を身に付けるために顔の皮は剥いで捨てたよ。さぁ、お前を殺して顔の皮を頂こうか!」
「いや、それは絶対嫌だァァァ!!」
「うおぉ!!凄い!!凄いぞ、この戦いは!!」
「タコ!!何言ってんのか分からねぇぞ!!」
キバットの言葉に皆はうんうんと首肯く。
「まぁ、心配せずとも、創真君はやられないでしょう。何故なら、通常戦闘のスキルは死神と同等な上、デュオ君の能力で身体機能も強化されている」
ただ、と殺せんせーは少し顔を曇らせる。
「心配なのは、こんな状況でも、死神は秘密兵器を隠し持っていると言うこと」
(チッ。流石は殺し屋。デュオの力を借りても、決定打を与える隙がない)
長引く戦闘に、少し苛立ちを感じていると、死神が口を開いた。
「創真君。なんで僕が殺し屋になったか教えてようか?」
いやご遠慮します……………と、言う前に死神は語りだす。
「僕の親は殺し屋に殺された。横暴だったから特に悲しくなかった。その代わり、親を瞬殺した殺し屋を見てこう思った。なんて美しい技術なんだろう………と」
「…………あっそ」
「暗殺とは美しい技術の集合体。人を殺せば技術が身に付き、更なる仕事と技術をもたらす」
そう言い、死神は懐に手を入れる。
(銃か…………!?最悪異能を使えば良い!)
死神が取り出したのは薔薇だった。そのまま、上へ投げる。思わず創真はそっちに目が行ってしまった。
プツン!!
そんな音がした。次の瞬間……………血が吹き出した。
(僅か10口径の弾丸を筋肉と骨の隙間に通し、大動脈に裂け目を入れれば、自らの血流圧で裂け目を広げ、大量出血で死に至る!!)
創真は崩れ落ちる。
「どうだい?死神にしかできない総合芸術は?」
そう言いながら近づく死神。そして、皆さんご存じの通りあることに気づいた。
(なんだ?皮膚と同じ色のチューブが血を噴いてる………………通路にまで続いてるこのチューブ…………まさか!?)
ズンッ!!
創真はたまたまをアッパーカットした!!死神は大切な部分を押さえて悶える。
「同じ男子として、少しは可哀相だが……まぁ、良い。男子の読者なら共感してくれるだろうな」
チューブ…………いや、触手を取って創真は呟く。
「ちなみに、殺せんせーは今の技術の正体見抜いた。で、僕にもそれを使ってくると思って、トマトジュース買ってた……………20%割引されてたのをね」
(最後の言う必要あったか…………?)
心の中で突っ込みを入れるデュオ。
「さぁて、お待ちかねの仕返しの時間だ」
「う、うるさい!死ね!!」
死神は銃を取り出し、創真に向けて引き金を引く。
「……………無駄だね」
銃弾は、創真の手の平で全て止まっていた。当たると同時に、勢いを殺されたのだ。
「な、何なんだお前!?本当に人間なのか!?何者なんだ!?」
「あぁ、正式な自己紹介がまだだった…………ね!」
そう言って、フルパワーで拳を振り抜く。死神は2回転し、コンクリートに頭をぶつけて気絶する。
「僕の名は結城 創真。E組の暗殺者さ」
その後、操作室にいた氷室と烏間をビッチ先生が連れてきて、死神を上へ運び、拘束した。死神のスマホを操作して、無事に皆を開放。
……………殺せんせーだけ閉じ込めれれば良かったのだが。
「創真君、大丈夫だった!?」
碧海が創真に近寄ってきた。
「全然。僕はそこまで弱くないよ」
「……………本当に良かった…………」
碧海は涙をこぼし始めた。さすがに創真もたじろいだ。
「本当に心配したんだから!もうこんな無茶はしなって約束して!!」
「え、いや、あー……………ごめん」
────まさか泣くとは…………………。
創真は自分の胸元で泣く碧海を見てそう思った。
「うわー泣かせちゃった」
「創真君が女の子泣かせちゃった」
「なんか皆酷くない!?(てか、また陽菜乃の目が怖いんてすけど…………)」
「……………にしても、この顔は気持ち悪いな。顔面兵器かよ」
ホリーが死神の顔面をdisる。
「影響を与えたものが愚かだったのです。これほどの才能なら、もっといろんな所で技術を使えた筈なのに」
その時、小石が転がる音がした。
「あ」
こっそり去ろうとしていたビッチ先生を皆は見つけた。
暫くビッチ先生は固まってたが、また静かに足を進める………………。
「テメー、なに逃げようとしてんだよ、おい!!」
ホリーが叫び、デュオは無言で外套から布を出して連れ戻し、完全拘束。
「ちょっ、デュオ!セクハラで訴えてやるわよ!!」
「そしたら名誉毀損で訴えてやる」
「もー良いわよ!裏切ったんだから制裁受けて当然よ!性的な暴力で何でもすれば良いじゃない!!」
「なんで性的なのに拘る?」
「おい、ビッチ。普通に学校来れば良いんだよ。ま、俺様からしたら賞味期限切れだけど、皆はあんたのことを必要としてるみたいだしな」
キバットの言葉に皆も口々に喋りだす。
「続き気になってたんだよね。アラブの王様たぶらかして戦争寸前まで行った話のさ」
「花男の仏語版を借りパクしちゃうよ?」
ビッチ先生からしてみれば、矢田と片岡の言葉が信じられなかった。
「殺す寸前まで行ったのよ…………今までヤバイこともしてきたのよ。なのに………」
「何か問題でも?裏切ったりヤバイことしたりする…………それでこそビッチじゃないか」
竹林が眼鏡をクイッとやりながら云う。
「イリーナ」
そこへ烏間先生。
「今回…………俺はプロの枠に拘りすぎて、思いやりが欠けていた。すまなかった」
「カラスマ……………ふん、別に良いわよ!最初から誕プレなんて期待してなかったもの!」
「素直じゃないね…………」
創真は小声で呟く。
「あの………………お取り込み中良いですか?」
割って入ったのは氷室さん。
「今後、このような危険に皆さんを巻き込むのはよろしくないです。烏間先生に是非、対策を練ってもらいたいですね」
「同感です。安心して殺し殺される環境作りをあなた方防衛省に要求します」
殺せんせーが珍しく強い口調で同意する。
「………ああ。分かっている」
「ああ、やぁっと解放された…………外の空気は美味しいね………」
取り敢えず解散になり、帰路に着く創真が呟く。
「そ・う・ま・く・ん?」
「……………おっと?」
引きつった笑顔で振り返ると………当然そこには陽菜乃。
「い、いや誤解されては困るよ。僕は陽菜乃一筋…………うん、絶対!」
「……………………」
陽菜乃は何も言わずに、創真に抱きつく。
「……………心配した」
「……………ごめん。お詫びに何か好きな願いを叶えるよ………………ダイヤモンドくれ、とかは止めてね?」
「ならさ………………………………………………………
今日、創真君の家に一緒に泊まって良い?」
(な、何だって……………………!?)
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