原作では12巻。
あと9巻か……………頑張ろう!
じゃ、楽しんでくださいな!
「ビッチ先生の誕生日プレゼント………?」
「4日前、ビッチ先生の誕生日だったんだよ。俺らがトラブル起こしちゃったのも一因だから、また俺らがあと押ししてくっつけようって訳」
登校してすぐに、隼はそんな説明を受けた。
「ふーん。別に良いけど、作戦立ててんの?」
「創真が既に考えてある。昼休みに実行だ」
まぁ、本人そこまで乗り気じゃなかったが、自分の彼女につぶらな瞳で頼まれたので、腰を上げたのだ。なんか盛り上がる皆を、キバットはニヤニヤしながら見つめていた。
(おもしれぇ。あの純情ビッチはプレゼント貰ったらどんな反応するのか……………キャーキャー喜ぶか?涙でも流して静かに喜ぶか?こりゃ見物だね………)
昼休み
「さて、ビッチ&烏間くっつけ計画第二弾を始めよう。まず、陽動スタート」
教室の屋根から通信機で指示を出す。その指示をスマホから聞いた片岡は、職員室へ入る。
「ビッチ先生!また仏語会話を教えてもらって良いですか?」
「………ああメグ。そういえば外国で働きたいとか言ってたわね。良いわよ。そこに座んなさい」
「あ、天気も良いし、外で教えてよ!」
「え?ちょ………」
片岡はビッチ先生を外へ引っ張って行った。その様子を片岡のスマホを通して聞いていた創真。また通信機に話し掛ける。
「…………買い出し班。良いの見つかった?」
『いや、まだだよ。ねぇ、創真君。大人から大人へのふさわしいプレゼントって何かある?』
通信機から渚の声が聞こえてくる。
「そうだな……………ネックレスとか?」
『クラスのかんぱじゃ買えないよ…………』
「あ、そっか。予算は5000円以内か。兎に角、良いのを頑張って見つけてね。また何かあったら連絡して」
『うん、分かった』
通信を終え、創真は一息つく。
「よくよく考えたら…………ビッチ先生は大概の物は貰ってるよな…………こりゃ難しいね~」
「で、創真は何だって?」
「頑張れ、だって」
「ちっ、役に立たねぇ」
隼が悪態をつく。
「でも、難しいよね。ビッチ先生、何だったら喜ぶんだろう?」
「確かに面倒な問題だな………」
皆であーでもない、こーでもない、と話し合っていると
「あれ?もしかして君達って………」
振り返ると、そこには20代位の青年がいた。
「ほら、この前のおじいさんの怪我………大丈夫だった?」
(……………誰だっけ?)
隼はど忘れ。代わりに渚が思い出した。
「あ、この前救急車を呼んでくれた花屋さん………この前はありがとうございました。タダ働きして許してもらえました………」
思い出した渚がお礼を言う。
「そっか。大事にならなくて良かったね……………所で今、プレゼントとか言ってたけど…………これはどう?」
花屋の青年は皆にお花を見せた。
「……………花束か」
隼が声に出して呟く。
「今の時代、プレゼントなんて選び放題なのに、花は第一線で通用する。それは何故か?」
花束を作りながら、渚達に問い掛ける。
「色や形、香り、そして儚さが人間の本能とピッタリだからさ」
「なるほどね~。電卓持ってなきゃ最高だけど」
カルマの指摘に青年は少しギクッとした。
「んんん………どーする?今ならお安くしとくよ?」
絶賛暇な創真がまんじゅうを食べていると、携帯から通信コールが聞こえてきた。
「買ったか?」
『花束を買ったよ。もう直ぐ学校に着くよ』
「了解…………烏間先生に話したら教えて。ビッチ先生の気を引いてる奴等へ撤収の指示を出す」
『分かった』
さて、計画も大詰めだ。
渚達はこっそり職員室へ入り、烏間先生に事情を話す。
「…………何故俺が?君達が渡せば良いんじゃないのか?」
やはりこの男は気づいてないのだろうか。
「同僚の人身掌握も責任者の仕事じゃないの?あのビッチが必要な戦力ならさ」
カルマがしれっと、それっぽいことを言う。
「……………分かった。俺が渡そう」
烏間は花束を受け取った。
「……………創真、良いぞ」
隼の声を聞いた創真は、懐から鳩笛を取りだし、思いっきり吹いた。
ピアノで演奏をしていたビッチ先生の回りにいた生徒達はその音に気付いた。そして、一斉に立ち上がる。
「ちょっと!?みんな揃ってどこ行くの!?」
「用事思い出したから!」
「また今度な!」
一気に独りぼっちになってしまったビッチ先生…………。
「なんなのよ………あーカラスマに愚痴を聞いてもらうわ!」
大股で歩き、職員室の扉を思いっきり開ける。
「聞いてよカラスマ!あのガキ共………」
「ちょうど良かった、イリーナ」
烏間はスッと花束を渡し、誕生日おめでとう、と言った。
「え……………?嘘…………超うれしい。ありがとう………」
ビッチ先生が心底嬉しそうに花束を受け取る。
「あんたのくせに上手く出来すぎよ。なんか企んでんじゃないの?」
「バカ言え。最初で最後の誕生祝いだ。本心に決まってる」
その言葉を廊下から聞いていた、キバットの顔から笑みがスッと消えた。
「何よ………最初で最後って」
「任務を終えるか、地球が終わるか。どちらにせよ、半年で終わるんだ。当たり前だろうが」
その言葉を聞いたビッチ先生は烏間の横を通って、職員室の窓を開けた。
そこには、隠れて聞いていた生徒達が。
「……………楽しかったかしら?プロの殺し屋がシナリを通り踊らされて舞い上がった姿を見て」
「…………………へ?」
言いたいことを言い終わったのか、ビッチ先生は背を向け、烏間に乱暴に花束を渡す。
「最高のプレゼントありがと、カラスマ」
そして、校舎から歩き去っていく。
「………………やれやれ。折角考えたプロジェクトがこの様か。何より…………」
創真の言葉をキバットが引き継ぐ。
「烏間先生。あんた、今のは無いだろ?本人の気持ちに気づいてないのか?」
「俺がそこまで鈍く見えるか?」
「………気付いてた上で、あんなこと言ったのか?」
「色恋で鈍る刃なら………ここで仕事する資格はない。それだけの事だ」
烏間の一言は、キバットの怒りを静かに爆発させた。
「…………ああ、そうかよ。あんたも中々の合理的な奴だぜ……………ここまで思いやりのない奴とは思わなかったぜ、烏間先生」
「…………………………」
何も答えない烏間先生を置いて、キバットは飛び去って行った。
(さて……………時は満ちた。ここからは………………
『死神』の時間だ。
最高級の死の商人がしずかに…………………ゆっくり腰を上げた。
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