いつもより長いですが、どうぞ!
「きゃーカッコいい!木村君、もっとカメラ目線で!そう、ジャスティス!」
100m走の最中、親バカ殺せんせーはカメラを連写しながらギャーギャー言っていた。
「にしても、観客席は競技場から近くて良いですね。保護者達は全員本部の近くからしか見れないと思うと、ちょっと贅沢です」
「まぁ、そうですね。所で、氷室さんの親戚の子とか来てるんですか?」
「ええ。友達と一緒に」
「へー」
「にしても、皆さん大活躍ですねぇ。100m走だって、陸上部相手に奮闘してます。日頃の訓練の成果が生かされてます」
少し紹介すると、原さんがパンを飲み込んだり、茅野が身体の特性(?)を生かして網抜けで1位だったり、前原と岡野が二人三脚で見事な走りを披露したりと。
「さて…………僕の出番か」
創真が出るのは借り物競争。創真はストレッチをして準備する。
ピストルの音がなって、選手達は紙へ殺到する。
「僕のお題は……………『腕相撲が強そうな人』……………ナニコレ?」
結構変なお題に突っ込むのはさておき、腕相撲が強そうな人。創真はある人に駆け寄る。無論、氷室だ。
「来ると思ってましたよ創真様。それでお題は……………腕相撲が強そうな人?変なお題ですね」
「全く、その通りですよ。まぁ、ちゃっちゃと終わらせましょう」
「了解です」
氷室を連れてゴールへ行く。係りの人にお題を見せると、本部から本校舎の先生が机を持って出てきた。
「お題を見て察しが付くと思うが、俺と腕相撲で勝てたらゴールだ。勝てなかったらやり直しだ」
(よし。勝ったな)
内心創真は勝利を確信するなか、2人は構える。
「では………レディー………ゴー!」
ガン!!
なんの音か?察しが付くと思うが、氷室が相手の手を机に叩きつけた音である。
「──────────!!」
先生は声にならない悲鳴をあげる。相当痛かったんだろう。
「ちょっと本気を出しすぎましたね………」
…………何はともあれ、創真は1位でゴールした。
一方その頃、キバットは
「いや~暇だぜ。どこかに美しい美女はいないものかね~」
キバットがあまり面白くなさそうに競技を見つめる。
『続いては、A組対D組の綱引き!レディー………ゴーッ………!?』
始まった瞬間、D組の生徒が、羽毛のように空へ舞い上がった。
「な!?」
流石にキバットも驚きの声を漏らしてしまった。
『つ………強すぎるー!!A組、瞬殺だァァ!』
瞬殺の訳は明確。後ろの4人…………浅野が呼び寄せたムッキムッキの外国人助っ人がヤバイのだ。
「こりゃ手強そうだな。さて………創真はどう感じたのやら………………」
「おい、創真!大丈夫なのかよ!?あそこまでヤバイ外国人助っ人なんて聞いてないぞ!!」
「そだねー」
「お前余裕そうだな…………そんなに良い作戦ってことか?」
「そだねー」
「………聞いてるか?」
「そだねー」
隼の問い掛けに作戦書を読みながら適当に答える創真。
「さっきから、そだねー、ばっか言ってんじゃねぇ!本当の所どうなんだよ?」
創真は作戦書を見るのを止めて、真剣な目で隼の方を向いた。
「ぶっちゃけ、ここまでヤバイ助っ人とは思ってなかった。それでも、やることは変わらない。ね、磯貝君」
創真が磯貝の方を向くと、その顔には不安が入り交じっていた。
「…………どうした?」
「やっぱり浅野は凄い奴だよ………………到底及ばないんじゃ…………」
弱気な磯貝に何か言葉を掛けようと模索していると、それより先に殺せんせーが喋りだした。
「確かにその通りです。彼はまさに傑物。磯貝君がいくら万能でも、社会に出れば君より上はいます」
「……………もし、俺のせいで皆が………」
「ですが、君が浅野くんより上回っている所もあるじゃないですか!」
「…………え?」
「ほら、創真君。答えて下さい!」
え、ここで僕に振るの……………、と言いたげな表情を創真は浮かべる。しかし、それも一瞬で、直ぐに創真は答えた。
「仲間を率いて戦う力…………かな?磯貝君、もし君がピンチに陥ったならば、皆がそれを共有して戦ってくれる。と、言うわけで何も心配しなくていいんですよ」
「創真君の言う通りです…………兎に角、最後まで諦めず、いつも通り殺る気をもっていけば、必ず勝てますよ」
「……………はい!」
返事をした磯貝の顔はいつも通りイケメンスマイルで、殺る気満々だった。
「よっし…………皆殺るぞ!」
「「「おー!!」」」
創真side
『さぁ、続いては棒倒し!なんとE組がA組に挑戦状を叩きつけてきた!負けるな、A組!!』
うるせぇ放送だ。とりあえず、陣形を組む。
『…………なんだE組!?攻める奴が誰もいないぞ!全員守りについている!こんな初期陣形は見たことがない!!』
本当にいちいちうるさいし、暑苦しい放送だ。間もなく、開始のピストルの音が鳴り響いた。
すると、外国人助っ人が含まれる攻撃部隊が棒に向かって突撃を開始した。
「くそが!」
「無抵抗でやられっかよ!!」
勇敢にも、村松と吉田が飛び出すが…………タックルで吹き飛ばされた。客席まで飛ぶ大記録だ。
『カメみたいに守ってないで攻めたらどうだ?…………どうせ通じないか』
『フフフ、お馬鹿め。怯えたからカメみたいにやってるとでも思ったか?いいから、攻めてこいよ。そしたら、驚きの余り泣くよ』
僕の英語に、彼は獰猛な笑みを浮かべる。
『ほう…………なら、見せてみろ!!』
棒に向かって突っ込んできた奴等を見た磯貝が指示を出す。
「今だ!全員、『触手』だ!!」
棒の防御が全員ジャンプし、攻撃をかわしながら押さえ込んだ。そして、棒を半分倒してガッチリ固める。
『どうだい?涙を拭くテイッシュは欲しいかい?』
『黙れ!!からかうな!!』
『からかうの楽しいわ~』
しかし、ただからかって楽しんでるだけの僕ではない。横目で敵の救援部隊が来てるのを確認した。
「どうする磯貝君?」
「真ん中に隙がある………敵戦力が分断されてきた今がチャンス。よし、攻撃部隊出るぞ!作戦は『粘液』だ!」
磯貝の指示で、僕、磯貝、隼、カルマ、前原、岡島、杉野、木村が真ん中を突破を図る─────────!
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「かかったな…………!!」
浅野の呟き通り、彼等が真ん中を抜けた瞬間、方向転換してきた。
「やっぱフェイクだよね~。そんで真ん中にはヤバそうな助っ人達。サンドイッチにでもしようという事か」
創真が辺りを見回して誰ともなしに呟く。
「この場合の最適解は…………アレか?」
「奇遇だね磯貝君。僕もアレを提案しようと思ってたよ。皆、良いね?」
創真の言葉に皆は頷く。
「おー囲まれた囲まれた」
「リンチタイムだな」
かの有名なD組のモブ二人組みがスナック菓子を摘まみながら呟く。
そこへ
「お邪魔するぞ~!!」
何故か皆さん、観客席に突っ込んできた。
「え、ちょ、なんで全員こっちに来んの!?」
2人はお菓子の袋を抱えながら慌てて避難する。
『ほら、来いよ!この学校全ての場所が競技場だ!!』
創真の挑発に、助っ人も含めてA組生徒がE組生徒に襲いかかるが、椅子を器用に使ったりするに加えて、すばしっこくて捕まえられない。
「ほらほら、鬼さんこっちだぞ」
隼も椅子をピョンピョン跳びながら挑発する。
(棒倒しの中で1番警戒すべきは、先端に取りつかれること……あいつらは運動神経が優れてる奴等ばかり………なら)
浅野は少し思考し、口を開く。
「橋爪、田中、横川!混線の中から飛び出す奴を警戒しろ!」
確かに正しい選択だ。だがE組の作戦上、それは余り意味を成さない。
そう分析した創真はニヤリと笑う。
「ここまでは予定通り。それでは、次の手だ」
突然、A組の棒が大きく揺れた。誰かに取り付かれたのだ。
「へへ、あんなタックルで終わるとでも思ったか?」
「客席に飛ぶ演技だけ苦労したぜ」
先程吹き飛ばされた吉田と村松だ。
(そうか!負傷退場のふりをして………!!)
ようやく、浅野も頭が追い付いた。
「よし、作戦『音速』だ!創真と隼も頼むぞ!」
「「了解!!」」
そして、創真と隼以外の皆は追っ手を振り切り………
『ああ!懐に入られた!!」
放送から悲痛の声が流れた。
「どーよ!人数差があろうと、これなら……」
しかし浅野は不敵な笑みを浮かべ、身に付けていたヘッドギアを捨てたかと思うと────────
「うぉ!?」
吉田の腕を掴み、放り投げた。続けて岡島も蹴り飛ばす。
「君達ごときが僕と同じステージに立つ………蹴り落とされる覚悟は当然できてるんだろうね?」
浅野は棒を使って、E組に蹴りを加えて落とそうとする。磯貝も懸命に避けてたが、遂に落とされてしまった。
──────作戦通り。
「なっ………!?」
再び棒が大きく揺れた。浅野は目を見張った。E組にさらに増援が来たからだ。蛇足かも知れないが、磯貝をジャンプ台にして、一気に飛んできたのだ。
「おい、E組の守りは二人だけだぞ!?」
「どうやって支えてんだ!?」
いまさら気付いたようだ。
竹林が皆の疑問に答えた。テコの原理さ…………と。皆は納得したような、しないような表情を浮かべるが、そこはどうでも良い。
浅野としては、相手にする人数が増えたため、指示を出す余裕がない。指示がないため、A組の面々は棒からE組の奴等を剥がすのが最優先と考え、E組の連中を引っ張る。
「「今だ二人とも!!」」
その声の主達──────磯貝と隼が一緒に叫ぶ。
その言葉に、奥で待ち構えていたイトナと創真が走りだしたす。2人は磯貝と隼の手前でジャンプし、それぞれの手に乗り、そして、磯貝と隼はその手を思いっきり上へ投げるようにして放り投げた。
創真、その後ろのイトナがA組の棒に迫り来る!!
「僕らの勝ちだ、浅野君!」
創真は棒を強く蹴った。棒は大きく傾き、創真は反動でさらに上へ飛び上がる。その下をイトナが通り、ダメ押しとばかりに棒を摑んで、自分の体重と勢いを乗せて一気に畳み掛ける────────────!!
ズドン!!
その音は、E組にとっては勝利を示すもので、A組にとっては敗北を示すものであった。
『え、A組が…………………』
放送も狼狽えている中、放送席へといつのまにか来た創真がマイクを取って、宣言する。
『棒倒し対決は……………E組の勝ちだ!!』
「「「よっしゃあー!!」」」
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