では、どうぞ!
「…………ざっとこんな感じてす。俺が碧海を嫌いだった訳は。まぁ、創真との話ばかりしちまったけどな」
隼はふぅ、と息をついた。
「それは苦労しましたね」
「………………ああ」
しかし、と殺せんせーは続ける。
「碧海さんは君を見捨てたりするような人なのでしょうか?」
「見捨ててないんだったら、とっくに俺を助けてただろうが」
「君が見えてなかっただけで、実は助けてたのでは?」
「………………?どういう意味だよ?」
「教えてやろうか?」
後を振り替えると、創真がいた。
「…………全部聞いてたのか?」
「勿論」
創真は答える。
「殺せんせーは、俺が知らないだけであいつは助けてた、と言った。てことは、何か知ってんのか……………創真?」
「俺が説明しよう」
いつの間にか背後にいたデュオが一歩前に出た。
「俺の元同僚の友達に頼んで調べてもらった。碧海さんの事をな。俺らの世界の特徴…………いや、死神の特権として、『人間の情報』を閲覧出来る」
「人間の情報……………?どういうことだ?」
隼の疑問にデュオは答える。
「生年月日や身長程度の情報ではなく、その人間が何時何分に何をしたかまで分かる。試しに隼が家を出る前に何を喋ってたか………あ、そーだ!神ざ「言うなァァァァァ!言うんじゃねぇ!!」…………?よく分からんが信じてくれたか?」
「信じる!信じるから!!」
ちなみにどの台詞を言おうとしたのかが分からない人は姉弟の時間を見てみてほしい。
「で、それで碧海の何を見たんだ?」
「えーっとな…………お前が初めて創真に敗れてぶん殴られたその日の夜中だ。お前は寝ていたと思うが…………」
「お父様。さすがに殴るまでの事ではないと思うのですが」
「なぜ?」
「だってそれでも隼は2位ですよ!?悪い成績ではな」
「1つ教えてやろう。弱者を庇う奴は、そのうち自分まで沈んでいく。それを自分で気づけるようにならないとな……」
「………………」
「私は忙しいんだ。とっとと出ていけ」
次の言葉を拒むかのように、隼の父親はパソコンへと目を向けた。
「……………とまぁ、こんな感じの会話がお前のテストの終わりに毎回あったと、記録されている」
「…………………」
隼は特に表情を変えずに黙って聞いていた。
「碧海さんは殴られているお前を見てるだけではなく、ちゃんとお前のために動いてた…………これは揺るぎない事実だ」
創真の問い掛けにも隼は反応しない。
「……………データを見るか?」
デュオの問い掛けに、隼はやっと反応した。
「別にいい」
そう答えて、隼は皆から背を向けて歩きだした。
「良いのですか?このまま帰して」
「特に話すことなんてないですしね、殺せんせー。はぁー…………めしにしようかな」
疲れたのか、首を回しながら創真はポツリと呟く。そして、その呟きにタコは反応した。
「にゅや!それ先生の分もありますか!?」
「そんなわけないでしょ」
「そ、そんな………」
隼は家に帰って、ゲームをしていた。真相を聞かされ、驚いたか?
いや、違う─────────────安心した。
やはり、碧海は自分を見捨てるような姉じゃなかったと。
さらに言うと、嬉しかった。ほんの少しだけ…………………。
弟を溺愛していて、意外と自分より幼いそんな姉。隼的にはそう言うところは面倒くさい。そんな姉と、明日から一緒の学校で過ごす。上手くいくのか不安だ。でも、時間を掛けてゆっくり進んでいけば良い。
「はぁ………にしてま今回もあいつのシナリオ通りなのかね…………気に入らねぇな……………」
ゲームのコントローラーを手にしながら呟いた隼の独り言は空気に呑まれて消えていった。
創真side
翌日
「緊張するな~。初登校は」
僕は碧海さんと氷室さん、ホリーらと通学路である山路を歩いていた。
「ホリー、デュオ、キバット。もし暴力沙汰になったらよろしく」
「そんな不吉なこと言うなって、創真。流石にそこまでの事態にはならないでしょ」
「まー、仮になっても創真君が守ってくれるでしょ?」
碧海さんも日に日に馴れ馴れしくなってきやがった……………。幸いと言うべきなのか、誰とも会わずに学校の教室前の扉まで辿り着いた。
「………なんか扉の取っ手が重い気がする。これは、僕も緊張してるのか……………?」
「そ、そんなにですか?」
氷室さんは意外そうに見つめる。
「ホリー……………開けてくんない?」
「しょうがないな。じゃ、開けるよ。3………2………1……………オープーン!!」
ホリーは扉を思い切り開けた。
果たして碧海の暗殺教室初日はどうなる?
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