機動戦士ガンダム虹の軌跡   作:シルヴァ・バレト

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05:オデッサでの激闘

 宇宙世紀0079.10.20 連邦軍各部隊が集結地ワルシャワに到着、そして野戦本部が設営された。

 

 宇宙世紀0079.10.25 オデッサ作戦最終確認後、陽動部隊を各地に派遣。

 

 そして、遂に時は宇宙世紀0079.11.07 06:00 ヨーロッパ鉱山地帯を制圧しているジオン軍の壊滅を目的とした連邦軍の反抗作戦、オデッサ作戦が決行された。

 

「作戦を説明するぜ!よく聞いておいてくれ!」

 

 俺達、第00特務試験MS隊の全員は会議室に招集され作戦の説明を受けていた。

 

「俺たちはオデッサ作戦の第一軍として参加する事になっている。後の軍のことを考えて、ジオンの勢いをくじくことにする、そのためには俺達がなるべく多くの敵を撃破する必要がある」

 

「配置はこうだ。俺と、フユミネ、そしてもう一機はミデアの防衛に努める。そしてムゲン、道夜、ユーリで正面の敵を頼みたい。出来るか?」

 

 俺達3人は黙って頷いた。

 

「よし、じゃあ残りは左右の防衛を行ってもらう」

 

 そして最後に、ファングさんは皆を見渡し力強く叫んだ

 

「俺たちは負けない!誰一人として欠けず、生還したら皆でメシ食おうぜ!!」

 

 全員が頷き、格納庫へ向かう。俺は道夜やユーリと共に格納庫へ急いだ。

 

 全員が出撃して行き、俺もジムのコックピットを開き、シートへ座った。

 

 ハッチを閉めようとした時、リナさんが顔を見せてくれた。

 

「ムゲンさん…行くんですね…」

 

 彼女は少し悲しそうに言った。

 

「うん…。この戦いで連邦軍の反撃が始まる…!大丈夫だよ。きっと帰ってくるから…」

 

「でも…!」

 

 彼女の言葉を遮るように俺は言った。

 

「俺はこんなところでは死なない…。だから…今回も修理の準備しておいてね…リナさん…」

 

 俺はそう言って彼女の頭を撫でてあげた。すると彼女は本当に幸せそうな顔を見せてくれた。

 

「じゃあ、もう行くよ…」

 

「あ…」

 

 彼女の言葉を振り切り、俺はハッチを閉めた。

 

「大丈夫…きっと帰るから…」

 

 モニターに映る彼女に一言言って、俺は出撃した。

 

 

 

 俺達3人は前線に立ち、目の前から迫ってくる数多のザクを睨み付ける。

 

「時間は…?」

 

[…5時59分…]

 

[いよいよですね…]

 

 全員が配置に着いたのを確認したファングさんが叫けぶ。

 

「皆!行くぞ!!作戦開始だ!!!」

 

 ついにオデッサ作戦…俺たちの戦いが始まった。

 

「正面の敵影…10!!」

 

[…行くぞ!!!]

 

[さぁ、撃ちますよ…!!]

 

 俺はザクに接近し、ビームサーベルで切り裂く。さらに続けて2機目のザクを駆け抜けざまに切り裂いた。

 

「遅い…!」

 

 道夜はハンドガンで2機を撃ちぬき、彼の背後から迫るザクをユーリがスナイパーで撃ちぬいた。

 

 不意にユーリの背後を見た道夜が叫ぶ。

 

「っ!!ユーリ!後ろだ!!!」

 

 ユーリが振り返ると、ザクがヒートホークを構えて切りかかってくる。

 

[残念でしたね!!]

 

 ユーリはザクの腹部を殴る。その瞬間腕に格納されたビームサーベルが展開され、ザクを貫いた。

 

「すごい…!」

 

[この日のために改良してもらいましたからね…!当然です!]

 

[さて…残る敵も殲滅するぞ…!]

 

 俺とユーリは頷いた。

 

 俺は1機のザクのメインカメラにスモークバルカンを当てる。弾丸はメインカメラに着弾し、そこからスモークが散布され、混乱に陥るザクを、ユーリのスナイパーライフルが撃ち貫いた。

 

「ナイスだ!ユーリ!」

 

[援護はしますよ!いつでも仕掛けてください!]

 

 一方道夜は、4機のザクに対して、ハンドガンをしまい、大型のビームライフルを取り出し、そのうちの1機を撃ち抜き、さらに対艦刀で2機目のザクを貫く。

 

 俺はビームサーベルの出力を最大にし、道夜に叫んだ

 

「道夜!下がれ!!!」

 

 俺はビームサーベルを構え、縦に一刀両断する。

 

 1機は真っ二つになった。2機目は熱に耐え切れず半分溶けてしまい、機体から脱出していく兵士がいるのが分かった。

 

 俺はビームサーベルの出力を下げて、通常の状態に戻した後、エネルギーパックをリロードする。

 

「一息ついたかな…」

 

 俺はため息を吐いて、少しリラックスする。

 

[いや…まだだ…!]

 

 レーダーを確認すると、3機ほど前方から接近してくるのが分かった。

 

 俺たちはまた武装を構えなおす。

 

 だが、3機の機体は俺たちに気づくと、ジオン兵はこちらに迫ってきて無線を繋げた。

 

[た、助けてくれ!!!俺たちは投降する!!!]

 

「えっ…!?どういうことですか!?」

 

 突然の状況に俺達は混乱した。何から助けて欲しいのか。

 

[頼む!助けてくれ…!!死にたくない!!!]

 

[待ってくれ…状況が掴めないんだ。どんな奴から助けてほしいんだ…?]

 

 俺たちが困惑していると、背後からファングさんが乗ったガンダムが駆けつけてくれた。

 

[どうした?ムゲン]

 

「ファングさん、実はこの3機が…」

 

[頼む!死にたくない!!!投降するから助けてくれ!!!]

 

 この3機は完全に戦う意思を無くしてしまっている。一体彼らがそこまでおびえるものは何なのだろう…。

 

[待て…なんだ…この反応は…!!]

 

[な、何なんですか…アレは!!!]

 

 ユーリの目線の先を見ると、見たこともない巨大なMSが浮いている。

 

[あ、あぁ……!嫌だ!!死にたくない!!!]

 

 どうやらこいつのせいで戦う意思を削られたのだろうか3機のザクは逃げようとする。

 

[おやぁ…?敵前逃亡は銃殺刑と言ってるんだがなぁ…!]

 

[ひっ…!た、頼む!俺には妻と子供が…]

 

[知ったことか!!!逃げる者は殺す、それだけだろう!!]

 

 不意に巨大なMSと目があった気がした。そして、巨大なMSのパイロットは言う。

 

[ほぉ…丁度連邦のやつもいるのか…。丁度いいな、殺戮(さつりく)でも楽しんでみるか!!]

 

[まずは…お前たちへの判決を言い渡してやる…。死刑だぁ!!!ふふふ…ははははは!!!!]

 

 声の主は笑いながら1機ずつザクを破壊していく。

 

[…仲間を…!]

 

[仲間を倒すなんて…あなた()()ですね…!]

 

 その言葉を聞いた声の主は答えた。

 

[()()だぁ…?そいつは、この敵に投降しようとした()()()のことかな…?]

 

 そう言って何度も何度もビームをザクへと撃っている。

 

[っ…!撃ち抜く!!!]

 

 さすがのユーリも我慢ならなかったのだろうか、彼女はスナイパーライフルであのMSを撃つが、弾丸はMSに当たったがどこかへと弾かれてしまった。

 

[まさか…弾かれるなんて…!]

 

[ん?今何かしたかね…?では、反撃するかね…]

 

 そう言ってユーリにビームが放たれる。

 

[ちぃ…!!!]

 

 道夜はユーリを庇うようにビームに飲み込まれる。

 

「道夜!!!」

 

 ビームが消えると、機体が溶けかけた道夜の機体が立っていた。

 

[くっ…!]

 

「大丈夫か!道夜!!」

 

[ムゲン、道夜はミデアに回収する!撤退する時間を稼いでくれ!!]

 

 そう言ってファングさんは、道夜の機体を担いで移動を開始する。

 

[ふふふ…はははは!軟弱な装甲ではこのメガ粒子砲は防げまい!!]

 

「これ以上やらせるわけには行かない!!!」

 

[ムゲンさん、私が援護します!]

 

 ユーリが180mmキャノンを構え、放つ。弾丸は機体に直撃するが、まるでダメージが通ってはいなかった。

 

[ほぉ…面白いな…。もう一度耐えられるかな?こいつが!!!]

 

 巨大MSのパイロットはビームを再びユーリに放つ。

 

[くっ…!!!]

 

「ユーリ!!!」

 

 咄嗟にシールドを構えたユーリは、ビームをガードするが、反動が大きすぎて、腕が吹っ飛ぶ。

 

[ここまでやられると…!]

 

「ユーリ下がって!俺が…後は俺がやってみる!!!」

 

[ですが…!]

 

「大丈夫だから!!」

 

[分かりました…。でも…帰ってこなかったら殴りますからね…]

 

「分かってる…」

 

 ユーリは立ち上がり、ミデアに向かって移動する。

 

[たった1機で何が出来るのかね?威勢だけは良いようだが…!]

 

「皆を…やらせるものか!!!」

 

 奴の機体からビームが放たれる。俺はそれを回避する

 

[ほぉ…中々だな…!だが、これで終わりだ!!!]

 

 俺が奴を見た時、巨大なビームがこちらに迫ってくるのを気づいた。

 

 これは受けきれない。心の中でそう思った。

 

「こんな…こんなことで…!!」

 

 巨大なビームが俺を飲み込む。

 

「ぐ、ぐおぉおおおお…!!!!」

 

 モニターが砂嵐に変わり、機体の部品が飛び散り、俺の額に傷をつける。

 

[はははは!!!このまま塵になれ!!!]

 

 そんな笑い声が俺の頭で響く。そして、皆の顔が走馬灯のように駆け巡る。

 

「み…ん…な…」

 

 ビームが消えると、機体の両足、左腕、そしてメインカメラが使えなくなっていたが、まだ俺は生きているのが分かった。

 

 だが、この状況はどうあがいても打開できるわけがなかった。運よく相手はビームの再装填までまだ時間があるようだった。

 

 俺の体も、ほとんどが傷だらけで動くことさえままならなかった。

 

「く…そ…どうする…!」

 

[次で最後だ、せめて懺悔でもしていたらどうだ?]

 

「くっ…!!」

 

 すると突然、コックピットが開いた。

 

「ムゲンさん!!!」

 

 なんと、そこに居たのはリナさんだった。

 

「リ…リナさん…?何をしてるんだ…ここからはやく…!」

 

「私のことはいいんです!ムゲンさん、落ち着いて聞いてください。あの機体の弱点は、ビームを撃つ時に開くエンジンルームがあるんです。あそこにビームを撃てれば…!」

 

「…だが…その肝心のビーム兵器は…」

 

「大丈夫です。もって来ましたから」

 

 コックピットから外に目をやると、道夜が使っていたビームライフルがトラックに積んであった。

 

「だが…メインカメラが…使え…」

 

「だから私が居るんです!私があなたの…ムゲンさんの目になって狙いをつけます!だから私が叫んだ瞬間撃ってください!」

 

「でも…そうしたら…君は…」

 

 心配そうに俺が聞き返すと、彼女は俺の頬に手を当て笑いながら言った。

 

「私も、こんな所では死にません…あなたを守りたいから…!」

 

「…わか…った…どのみちそれしか助かる方法はないから…」

 

 俺はビームライフルを装着する。本来は適正の武器を使わないと、関節がイカれてしまうのだが、そんなこと言っている場合じゃないのは分かっていたので、躊躇わなかった。

 

 そして、奴に向かってビームライフルを構える。

 

「…もう少し上…はい。そこで大丈夫です!」

 

 俺は彼女に言われたとおり腕を操作する。

 

[何をするかわからんがこれで終わりだ!!!]

 

「もう少し左です!!!」

 

 俺は左に腕を動かした。

 

[死ぬがいい!!!ふはははは!!!!]

 

 奴がビームを放ってくる。

 

「今です!!!」

 

 俺はビームライフルのトリガーを引きながら叫んだ

 

「死ぬのは、お前だぁああああああああああ!!!」

 

 奴のビームは俺の機体をギリギリ掠め、俺が放ったビームは奴のエンジンルームに直撃する。

 

[な、何っ!?何故…何故だああああああ!!!]

 

 痛みを抑えながら俺はリナさんをコックピットの中に入れ、爆風に備える。

 

 奴の機体は落下し、爆発する。

 

 爆風は俺の機体を飲み込み、機体は熱によって溶け始める。俺は彼女を庇うように抱きしめた。

 

 しばらくすると、周りが静かになり、一時の静寂が訪れる。コックピットから出ると、あの機体の破片がそこらじゅうに転がっていた。

 

「…倒せたのか…」

 

 俺はコックピットに戻り、リナさんを確認する。どうやら無事のようだ。

 

「ムゲンさん…」

 

「…ありがとう、リナさんのおかげで助かったよ…」

 

 そう言って、俺はリナさんを抱きしめた。なんでこんな事をしたのかは分からない。助かった喜びからだろうか。

 

「へっ!?え!?えっと…ムゲンさん…?」

 

「あ、ご、ごめん…嫌だったかな…?」

 

「あ…いえ…その…もう少しこのまま抱きしめててください…」

 

 しばらくそうしていると、機体の歩く音が近づいてくる。

 

 見上げると、ファングさんのガンダムが歩いてきているのが分かった。

 

 俺はリナさんから離れて笑顔で言った。

 

「さぁ…帰ろうか…」

 

「はい…!」

 

 そんな二人の背中を、暖かい朝日が照らし続けた。

 

 

05 完




今回登場したMAとユーリの駆る新型MSです。



機体名  エルアイン
正式名称 Eruain

型式番号  MAX-01
生産形態  試作機
所属    ジオン公国軍
全高    25.2m
頭頂高   26.1m
本体重量  760.5t
全備重量  1420.0t
出力    不明
推力    不明
センサー  8,700m
有効半径

武装    試作型メガ粒子砲x8
     
     
     

搭乗者   不明

機体解説

ジオン公国軍初となる巨大なMA。
この機体から得たデータなどを使用し、アッザムなどが作られるようになった。

武装は全方位に試作型のビーム兵器であるメガ粒子砲が8門搭載されている。

見た目は白い色の巨大な玉ねぎみたいな形をしており、各4箇所にそれを支える足がついている。

本機には重大な弱点があり、砲撃を行なう際、エンジンルームが開いてしまい、そこを攻撃されるとひとたまりもない。

第5話で登場し、第00特務試験MS隊の前に立ちはだかり猛威を振るった。

最後はムゲンの大破したジムの放ったビームライフルがエンジンルームを貫いて破壊された。



機体名   ジムスナイパーネメシスMK-01
正式名称 GM SNIPER Nemesis MK-01

型式番号  RGM-79Ne
生産形態  量産機
所属    地球連邦軍
全高 18,0m
頭頂高   18,0m
本体重量 53,8t
全備重量 70,0t
装甲材質 ルナチタニウム合金
出力 1,150kw
推力 50,000kg
センサー  6,700m
有効半径

武装   試作型ボックスタイプビームサーベル
  実弾型スナイパーライフル(typeNemesis)
180mmキャノン
    シールド
弾薬パックx5

搭乗者  ユーリ

機体解説

地球連邦軍で使用されているジムスナイパーをユーリの申し出を受け改良・強化された機体。

基本武装である実弾型スナイパーライフル(typeNemesis)での遠距離射撃を得意とし

実弾型スナイパーライフルの弾薬には特殊な徹甲弾を使用しており、大抵の装甲なら打ち抜くことが可能であり、さらにこの武装は

10km離れた的の真ん中を貫くことが出来るほどの安定性を誇っている。

本機は近距離での対応も可能で、ボックスタイプビームサーベルによって咄嗟の反撃、対応などが可能となっている。

さらに、ウェポンラックの装備により、180mmキャノンを装備することも可能で、中距離からの援護射撃なども実現した、まさにユーリ専用のスナイパー機に仕上がった。

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