地上にはジオン軍残党がゲリラ的活動を続け、連邦はそれに対し何ら対処もしなかった。
そして、ムゲンたち第00特務試験MS隊に新たな敵が立ちふさがる。
21:新たなる序曲
宇宙世紀0083.10.07
地球連邦軍ペガサス級7番艦MSC-07強襲
AEのフォン・ブラウン工場で試作ガンダム、RX-78GP01ガンダム試作1号機ゼフィランサス、RX-78GP02Aガンダム試作2号機サイサリスを受領。
重力下試験のため連邦軍オーストラリア・トリントン基地へ向け出航する
0083.10.13
15:00 アルビオン、オーストラリアの連邦軍MS実験基地、トリントン基地に到着。
公国軍残党デラーズ・フリート 「星の屑作戦」発動。公国軍残党が決起し「デラーズ紛争」勃発。アナベル・ガトー少佐行動開始。
一年戦争が終戦してからもうすぐ4年になろうとしている。俺たち第00特務試験MS隊は、水天の涙作戦以降オーストラリアのトリントン基地に転属になった。
ゲリラ掃討作戦以降、地球連邦軍はジオン残党に対して特になんの対処もせず、兵士たちには模擬戦やら哨戒任務などしか与えてもらえない。
特にトリントンに移動してからは、毎日のようにコロニー落としの傷跡とご対面。正直皆憂鬱だろう。
「ムゲンさん、ここにいましたか」
声の方を向くと、今日入隊したばかりの青年が立っていた。
一瞬、彼が女性に見えた。それほどまでの美青年。
丁寧に手入れされた薄い青のかかった髪。吸い込まれそうなほど美しいガーネットのような色の瞳。
そのどれをとっても文句のつけようがない。
「ん……?お前さんは……」
すると青年はビシッと敬礼しながら
「第00特務試験MS隊所属のエトワール・ブランシャール二等兵です」
こう……こんなにきっちりしてるヤツを見ると、少し反応に困る。なんて頭で思いながら、俺は用件を聞くことにした。
「そうか……。それで、お前さんは、俺に何か用か?」
「……。そろそろファング部隊長から召集をかけられていたので。その報告だけ」
なぜ一瞬
「んじゃあ、行くか。お前さんも来い。場所わからないだろ?」
「逆にムゲン小隊長のほうが覚えていなさそうで心配ですけれど」
「そんなことはないぞ?グロリアスの司令室だろう?」
すると彼はため息をついた後、首を振って言った。
「やっぱり聞いてなかったんですね……。グロリアスの格納庫です。……まったく」
若干呆れられてるのだろうか…。少しだけショックだ。
「あはは……。悪い悪い。とりあえず行くか」
そう言って、彼より少し早足で格納庫へ向かった。
「……遅かったな。ムゲン」
格納庫へ着くや否や、道夜からの一声。
道夜は、前とは違い、フードをかぶらなくなり、誰とでも普通に接することができるようになっている。
短髪の黒髪で、少しだけ疲れた瞳は、それでも中心に何か強い意志を感じさせた。
「悪い悪い。エトワールから場所聞いてなかったら完全に遅刻してたな!いやあ…!最近の新兵はいいもんだな!!はっはっは!!!」
とか笑ってごまかしてみる。
「……調子のいいヤツだな。まったく」
「まあそう言うなって」
言いながら、道夜と共に歩く。
「ファングさんが呼んでたんだっけな。なにやら全員に召集かけてたとか」
「ああ。内容までは聞かされてないが、とりあえずファングに会いに行けばわかる」
「そうだな」
しばらくの沈黙のあと、格納庫の奥にいる、赤髪の青年に声をかける。
昔より背が伸び、伸びた髪をゴムで束ねている。
「ファングさん。何のようだ?一応来たけども」
「ん?ああ!ムゲンに道夜か!あとはフユミネが来れば……っと」
「ここにいるがな」
声の方を俺たち全員は見上げた。そして、そこにフユミネさんはいた。MSのコックピットで何か調整してたのだろう。
彼は昔と変わらず、連邦の制服をきっちりと着こなしている。
「全員揃ったか。じゃあ、全員集めてある場所に行こう。そこで話す」
そして今一度、格納庫の入口へと俺たちは歩き始めた。
入口前におよそ12人の人たちが集まっている。
12人の前に立ち止まり、ファングさんは声をあげた。
「皆!!第00特務試験MS隊へようこそ!ここはこれからお前たちの家だと思ってくれ!!そして俺たちは家族だ!!」
昔、そんな言葉を言われたのははっきり覚えている。彼はそういう人なんだ。
「それで、お前たちを集めたのは他でもない。これからは部隊内で小隊を作り、各々の役割を果たしてもらう!!」
「……小隊……だと」
「ふん。なるほどな」
「んで?どうすんだい?ファングさん」
するとファングさんはニッと歯を見せ笑う。
「小隊長は、お前たちの前にいる俺を含めた4人だ!」
「……!?」
「な、なに!?俺もなのか!?」
「当たり前だな。ユーリは頼んでもやってくれないだろうし」
「まあ……あいつならそう言うだろうなあ」
「というわけで、各自の役割を言っていく!」
「第一小隊の隊長は、ムゲン・クロスフォードだ!」
「俺かい……。そりゃまた何で第一小隊なんだ?」
「役割だって言ってるだろ?」
「ああ。そうか」
「第一小隊の役割は、前線で敵を抑えたり、攻めに転じてもらう。いわゆる斬り込み部隊とでも言うべきか」
「なるほど…。それで、第二小隊は?」
「第二小隊の隊長は俺がやる。俺たちの小隊は主に指令塔としての機能をする。距離で言うと第一と戦艦の中間だな。そして、各自で第一の取り逃がした敵を撃破する隊だ」
「第三小隊は道夜。お前で頼む」
「……わかった」
「第三小隊は主に前線の部隊との連携を重視した隊だ。挟撃、待ち伏せ、暗殺などの特殊部隊だな」
「そして、第四小隊はフユミネ。第四小隊は戦艦グロリアスの護衛、さらに偵察、哨戒が主な任務だ。この部隊の情報網はこの隊がいないと成り立たないな」
「というわけで、各自、振り分けるから呼ばれたヤツは前に出て小隊長の前に並ぶように!!」
「じゃあ、小隊長は、各自自分の機体の前で立っててくれ」
「あ、ああ…」
俺は頷いて、静かに自分のMSへと足を向けた。
21 完
新キャラと新キャラのMSになります。
名前:ムゲン・クロスフォード(U.C.0083)
年齢:19
性別:男
主な搭乗MS:ガンダム・ピクシーエッジ
階級:少尉
説明
第00特務試験MS隊に所属するパイロットで、第一小隊の隊長を務める人物。
一年戦争を生き残ったパイロットで、格闘戦をさせると部隊の中で右に出る者はいないとされている。
過去、ニュータイプの素質に目をつけられ、研究所に送られ生活していたが薬物の投与や、人体改造などをされた影響で、ニュータイプにはなれなかった。
しかし、その作用で骨が折れても半日あれば修復しているという驚異的な治癒能力を得ている。
昔より大人びており、前より明るくなった。様々な出会いにより、リーダー気質あふれる青年へと成長している。
名前:八雲 道夜(U.C.0083)
年齢:19
性別:男
主な搭乗MS:ジムストライカー(宇宙戦闘適応型)
階級:少尉
説明
フラナガン機関で育てられた青年。
もともとはサイド2生まれであり、ジオン公国の行ったブリティッシュ作戦に巻き込まれ、
なんとか生き延びた所を連邦軍に回収され、フラナガン機関にて人体改造を半ば強制的に受けさせられたが、改造は50%しか成功しなかった。
その際の反動により、自分は価値のない人間と決めつけていたが、小隊員との絆により普通の人格を取り戻し、
仲間という存在を認識し、言葉には出さないが「守り通す」と誓うようになった。
近接戦闘、中距離戦闘が得意で、比較的オールマイティ、悪く言えば器用貧乏に戦うことができる。
敵の裏に回りこみ撃破するなど、技術はそれなりにあるが、注意力が足りないせいで撃破率は低い。
名前:エトワール・ブランシャール(U.C.0083)
年齢:19
性別:男
主な搭乗MS:ガンキャノン(特殊兵装型)
階級:二等兵
説明
地球生まれの少年。両親は幼いうちに失踪してしまったため、自分では両親を知らない。
彷徨っていた所を、連邦軍のレビル将軍に拾われ、しばらくの間、彼の身の回りの世話をすることになる。
そのため、拾ってくれたレビルへの絶対な忠誠心があった。
一人称は「私」
尊敬する人には「様」をつけて呼び、他の人には「さん」と呼ぶため、礼儀正しい。
性格は、冷静沈着で感情があまり表に出ないため、近寄りがたく、冷たい印象である。
しかし、彼自身は協調性があり、自分が正しいと思うものには賛同し、どんな人物に対しても正しくないものには意見する。
意外と芯がしっかりしている。甘いものが好きで、方向音痴である。
第00特務試験MS隊の補充兵として、志願し、第3小隊の隊員となる。
そこで、隊長である八雲 道夜中尉の振る舞いや、仲間想いな所に感動し、尊敬している。
遠距離型の戦いが得意で、ガンキャノンに搭乗し、仲間の支援を行う。
機体名 ガンキャノン(特殊兵装型)
正式名称 GUNCANNON
型式番号 RX-77-2[Re]
生産形態 試作機
所属 地球連邦軍
全高 18.1m
頭頂高 17.5m
本体重量 51.0t
全備重量 70.0t
出力 1,380kw
推力 22,600kg×2
1,650kg×4
(総推力) 51,800kg
センサー 6500m
有効半径
武装 240mmキャノン砲改(アルバキャノン)
60mmジャミングバルカンx2
ハイパービームライフル
搭乗者 エトワール・ブランシャール
機体解説
一年戦争時、量産されたガンキャノンの残りの1機に特殊武装を搭載した機体。
特殊武装である240mmキャノン砲改(アルバキャノン)は、特殊な徹甲弾を使用している。
そのため、着弾、貫通した弾丸の内部からさらに小さな鉄の塊が飛散し、ダメージを与えるという高火力なものとなっている。
しかし、弱点として、反動が大きく、リロードに時間がかかるため、仲間の支援が必須である。
本機はエトワール・ブランシャール二等兵が搭乗し、後の第二次ネオ・ジオン抗争まで戦い続ける。