果たしてヴィヴィオは、無事ラビットハウスを聖地巡礼し、ティッピーやチノをモフモフできるのか!?
※この小説は『pixiv』にも投稿します。
果たしてヴィヴィオは、無事ラビットハウスを聖地巡礼し、ティッピーやチノをモフモフできるのか!?
いつものみなさんこんにちは、そして初めてのみなさんもこんにちは、高町なのはの娘――高町ヴィヴィオです。
わたしとアインハルトさんは――主にわたしメインですが――念願かない、ミッドチルダから地球にある木組みの家と石畳の街を訪れています。
歴史的な背景により、フランスにありながらドイツ的な建物が残るコルマールのような街並みで、なのはママから聞いた話によると、ハーフティンバーという建築様式だそうです。
特に、運河に沿った家並みは、正直、近代的なミッドの100倍くらい剣と魔法の中世ヨーロッパ風ファンタジー世界で、まさにアルザスの真珠。
そして――
「アインハルトさん、見えましたよ!」
「あれが噂のラビットハウスですか……。直訳すると兎小屋」
「いやいやいや、小屋じゃないですから。立派なお家……というか喫茶店ですから!」
天気が良い時はオープンカフェを始めると6巻で読んだのだけど、残念、お客がいないよっ!
「ああ、ここにチノさんやココアさんやティッピーがいるんですね~」
「そういえばヴィヴィオさん、『ご注文はうさぎですか?』といえば、藤真先生の薄い本が3冊くらい――」
「ダメェェ!? 今例えるなら、6巻と同時発売だったアンソロジーの表紙が藤真先生だった件にしましょうよぉぉ――っ!」
「ですが……あちらは3冊も……」
「ふぉ~、それ以上言ったら、ここで『魔法少女リリカルなのはViVid』12巻以来となる、わたしとアインハルトさんの死闘が繰り広げられますよぉぉ――っ!」
お久しぶりの荒ぶる鷹のポーズを決めると、それはそれでやぶさかではありませんが――というアインハルトさんをなだめつつ扉を開ける。ドアベルが鳴った。
――カラン、カラーン。
聖地巡礼。店内に入ると、早速、かつて1巻でココアさんが座った窓際の席へ。向かいにアインハルトさんが腰かけた。
店員――頭に白いもじゃもじゃを乗せた青髪の少女がやってくる。
「いらっしゃいませ、ご注文は?」
お~、これが生チノ。
「じゃあ、そのうさぎさんで」
「……非売品です」
「せめてモフモフさせて!」
「……何だかデジャヴなやり取りですが、コーヒー1杯で1回です」
「じゃあ、うちのアインハルトさんをモフモフしていいからぁぁ!」
「私ですか!?」
「しなくていいですよっ!?」
「そこをなんとか!」
なんだこの客、ココアさん以上に変な人キタァァ――といった顔つきで、チノさんがわたしを見つめる。一歩引いた。
すると、
「その交換条件のったぁぁ――っ!!」
あやねるボイス。ピンクの制服をまとう高校生くらいの店員さんが、わたしとアインハルトさんにバーンと両手のひらを突き出した。
「今ここに、私の新たな妹たちが大爆誕だよっ! 2人とも、中学生かな?」
「小学5年です」
「中学2年ですね」
「…………」
ココアさんが無言で顔を横に向けた。
「どうして私をジッと見るんですか!?」
「いや、だって、ほら……まさか、この3人の中でチノちゃんが一番年上だったなんて。でも、お姉ちゃんの座は譲らないからね!」
「いりませんよ!」
すると、
「何を馬鹿なことを言ってるんだ、ココア!」
紫色の制服を着た、新たなツインテールお姉さんが現れた。中の人、病気療養からの復帰、おめでとうございますっ!
「チノは来年中学生だろ?」
「高校生ですよ!」
「どっちも変わらん!」
「大違いです!」
「あ、でも、わたしも来年中等科ですよ。一緒ですねチノさん! ちなみにわたしの名前は高町ヴィヴィオです!」
「さり気なく自己紹介されましたが、私は高校生ですってば!」
「……いや、待て、それはおかしいだろ」
「リゼちゃんが言う?」
まるで名――迷探偵の演技をしているかのように、紫ツインテさんがワイルドな勢いでわたしに指を突きつけた。
「ヴィヴィオ、とか言ったな。お前、さっき5年生だと自己紹介しただろ。だったら、来年はまだ6年生のはずだっ!」
「あ~、わたしの通っている学校は、6年生がなくて、そのまま中等科に進学するんですよ」
「……ほう。だとすると、そっちの緑も」
「アインハルトです。ええ、こちらの学年で換算すれば中学1年生でしょうか」
「…………っ、そうか」
リゼさんが、ゆっくりチノさんに視線を向ける。
「なんですか、その間は!? そして、どうして可愛そうな子を見る目で私を見るんですかぁぁ!?」
「いや、だってなあ、ココア?」
「大丈夫だって。私もリゼちゃんも、この新しい妹たちも、みんなチノちゃんと一緒にずっホビだよ」
「ずっホビってなんですかぁぁ!?」
「ずっとホビットの略」
「誰がホビット王国の住人ですかぁぁ!? ほら、ヴィヴィオさんとアインハルトさんも反論してください!」
「――と、言われてもなぁ~」
「そうですね、私とヴィヴィオさんは将来大きくなりますよ?」
「はい?」
「いくよ、クリス! セイクリッド・ハート! セ――ット・ア――――ップ!」
ウサギ型のデバイスを片手に掲げたわたしの外見が、子供から大人へと変化する。大人モードや強化モードともいう、いわゆる変身魔法の一種だ。
「これが、18歳ごろのわたしの姿を先取りした形ですね~」
アインハルトさんも、同じように成長した姿を披露する。
「ば、馬鹿な……私と同い年の頃には、こんなに大きくなるだと……?」
「わ、私の妹たちが、お姉ちゃんより大きくなるなんてありえないよぉぉ!? うぇ~ん!」
「リゼさんもココアさんも、驚くのはそこじゃないですよね!? この2人、明らかに変身してますよ変身っ!?」
元の初等科の姿に戻ってみせる。
「やだな~、チノさんだって日曜朝に変身してるじゃないですか~」
「それ、別アニメですから!? 中の人は一緒ですけど、だいたいそんなことを言い出したら、そっちのアインハルトさんだって青山さんと……青山さんと……あれ? 似てるけど違う」
「はい。一緒だったらどんなにネタとして最高だったことか! どっちも素晴らしい中の人なので、どっちもサイコー」
「ちょ、お友達からネタ扱いされてますよ!?」
「ええ、いつものことなので」
「諦めてる!? まあ、私がいつもココアさんに対して感じてる気持ちと一緒ですが」
ピンクの人が「飛び火したぁぁ!?」と騒いでいると、今度は勢いよくバン――と扉が開いた。
グリーンの和服姿で長い黒髪の女性が駆けこんでくる。
「みんな! シャロちゃんが大変なの!」
「千夜さん!(チノ)」
「千夜ちゃん!(ココア)」
「千夜!(リゼ)」
「キリエさん!(ヴィヴィオ)」
チノさんが某新喜劇のようにずっこけた。ティッピーが落ちる。
「いやいやいや、なにうちの千夜さんを、そっちの中の人つながりで呼んでるんですか!」
「つい……。ほら、キリエさんとは夏に映画で会ったばかりなので。ちなみに、続編の劇場アニメーション『魔法少女リリカルなのは Detonation』は来年――2018年公開予定ですっ!」
「いえ、そんな宣伝しなくていいんで。というか、そんなこと言い出したら、こっちの映画なんて先週公開したばかりですよ!」
「ミラクルライトで応援する? 今年はミラクル☆キラキラルライトでしたっけ」
「そっちじゃないです!」
「チノ、いつまでも日曜朝の件で言い争ってる場合じゃないぞ!」
「そうでした!」
すでにラビットハウスの出入り口では、ココアさんが「いつでも行けるよ!」とスタンバっている。
隣では千夜さんが、戦国武将のような兜をかぶって出陣の支度を整えていた。
アインハルトさんも立ち上がる。
「合戦のようですね」
「どうして戦場行くみたいになってるんですか!?」
「チノさん、こんなことで驚いてたら、アインハルトさんと一緒にはいられませんよ?」
「ヴィヴィオさんも大概ですけどね」
ともあれ、
「チノさんのお友達がピンチとあれば、わたしも手伝わないわけには行きませんね」
「ヴィヴィオさん――シャロさんがどうピンチなのかさっぱりわかりませんが――手伝ってくれるんですか!?」
「はい。シャロさんといえば、ここはビビッドつながりということで、全力全開で協力させていただきます!」
「ビビッドつながり……?」
「ああっ! それって前に私の中の人が主人公で、アングルが有名な――ぐもふも!」
ウサギのような瞬発力で、青髪娘がココアさんの口を手で閉じた。
「これ以上、別アニメのネタ禁止ぃぃ! とにかくシャロさんの元へ急ぎましょう。千夜さん、案内してください!」
合点承知――と飛び出した千夜さんのあとを追い、チノさんたちが駆け出した。
「ヴィヴィオさん、私たちも」
「はい――って、ラビットハウスの店番どうするんですかぁぁ! 店員いませんよっ!?」
「あ」
わたしとアインハルトさんが躊躇した瞬間、
「ご安心を。あとは私にお任せください」
「「誰っ!?」」
いつの間にか店内のテーブル席に、おっとりした大人の女性とミディアムヘアの女性が座っていた。
「これが噂の青山ブルーマウンテンさんと、編集の凛さん……」
アインハルトさんと青山さんの視線が重なる。何か通じるモノでもあったのか、動きを止めて見つめ合う。
「って、そんな場合じゃなかった! 行きますよアインハルトさん。青山さんも凛さんも、あとはよろしくお願いします――」
まあ、最悪、ダンディなチノパパやリゼパパがいるので問題ないだろう。
いってらっしゃ~い――と見送られながら、わたしたちはチノさんたちに合流する。
「――って、どーいうことぉぉ!?」
現場は、いかにも木組みの家と石畳の街によく似合う時計台。その塔の上部。正面に取りつけられたビッグサイズの文字盤の長針部分に、なんと、シャロさんが立っていたのだった。
強い風が吹く度に身体が揺れる。
「ナニコレェェ!? 昔ルパンで見たよ! カリオストロの城とか!」
「怪盗ラパン!?」
「違いますよココアさん。ラパンではなくルパンです」
「いや、確かラパンにも似たようなシーンがあったから、カフェイン酔いしたシャロが、勢いで真似てるんじゃ?」
リゼさんの言葉に、ごちうさメンバーが「あ~」と同調した。
「そういえばシャロちゃん、ラパンのマスクをつけているわ!」
「違和感なさすぎて気づかなかったよ!?」
「つまり、ラパン原作者の青山さんが悪いと?」
「「「青山さぁぁ~~~~んっっ!!」」」
「――って、そうじゃないです。ココアさん何かいいアイディアはありませんか!?」
ティッピーを抱えたチノさんが、姉に向かって叫んだ。
「わ、私が登って助けに……」
「無茶ですよ!」
「だ、だったら私が……」
「千夜さんはもっと無理ですよ!」
「「じゃあ、どうしろと!?」」
ココアさんと千夜さんが、時計台の真下で両腕を広げ、怖くないから~、ウェルカムカモ~ン――などと叫んでいる。
リゼさんがスマホを置いた。
「もしもの時のために親父を呼んでおいたから、これから私が時計台を登って――」
「リゼさん、危険です!?」
そんな彼らを見て、わたしとアインハルトさんはアイコンタクトを交わした。頷き合う。
「安心してください、振り回され隊のみなさん!」
「まったくココアのやつは……」
「確か、千夜ちゃんも含めてだったよね!?」
「今日はみんなでシャロちゃんに振り回され隊よね!?」
「どっちでもいいです!」
綺羅星! じゃなかった。キラ星シエルのようにわたしはピースした手を目の近くに向けると、チノさんに微笑んだ。
「わたしとアインハルトさんが、魔法の力で解決してみせますから!」
「お~っ! そうでした、お二人は魔法が使えるんでした!」
「も~っ、チノさんだって使えるくせに」
「魔法つかいは去年ですよ――って、そうじゃない、そうじゃないですからぁぁ!」
「ははは、冗談ですよ」
「ヴィヴィオさん、そろそろ」
ジッとシャロさんの様子をうかがっていたアインハルトさんがわたしに合図を送ってきた。
「わかりました!」
「私が下で――」
「わたしが上で――」
2人同時に駆け出した。
アインハルトさんが先行。石畳の上に仰向けになると両足を上げた。すかさずわたしは飛び乗ると、足裏をドッキング。角度は前方。斜め50度。
「行きますよ、ヴィヴィオさん!」
「はい!」
お互いの膝を曲げた状態から一気に――射出!
時計台を目指して、わたしの身体が空中高く飛び上がった。
「まさかのスカイラブハリケーン!?」
「それ魔法じゃないですよねぇぇっ!?」
『ViVid』ですから~、とかなんとか叫びつつ、実際は魔力による身体強化で、マリオ以上の大ジャンプ。ぐんぐん文字盤が近づく。
「激突する!?」
「クリス、浮遊制御!」
やんわりと片足で長針に着地すると、ウサギが苦手なお嬢様を抱きとめた。
「シャロさん、同じ金髪仲間として迎えにきましたよ」
そのまま、傘でもさしているかのようにフワフワ地面に降り立つ。
「「シャロちゃん!」」
わたしが離れると、いまだカフェイン酔いしたままのお嬢様が、駆け寄ってきたココアさんと千夜さんにもみくちゃにされる。
「お疲れ様でしたヴィヴィオさん」
「いえいえ、アインハルトさんこそ」
「わ、私も行くぞ、加わるぞ、シャロォォ、無事でよかったぁぁ!」
実は優しい鬼軍曹が突貫。ピンクと緑が跳ね飛ばされる。リゼさんの匂いでもしたのか、ようやく我に返ったシャロさんは「ナニゴトォォ!?」と真っ赤になって硬直した。
「どうですチノさん、100モフくらいの働きでしたよね?」
「……そうですね。おじいちゃん、諦めてください」
『なんじゃとー!?』
「お墨付きが出たので――」
抱きっ!
「って、どうして私ぃぃ!?」
「うん、チノさんコーヒーの香りがしますっ!」
「くぅぅ~、私に許可なくチノちゃんをモフるとはぁぁ~っ、てか、私も混ぜてぇぇ!」
「ココアさんは来なくていいです!」
「あら、私も混ざっちゃう?」
「千夜さんは混ざらなくていいですから、シャロさんの方に行ってあげてください!」
「だって……」
長針の上でも元気だったシャロさんが、何かもう幸せいっぱいな放心状態で、石畳にペタリと座りこんでいた。
「……コホン。アインハルトだったな。お前は、その、足場になって平気だったのか?」
「リゼちゃんが誤魔化してる」
「うっさい! いいんだよ、アインハルトは私と同じ匂いがするから聞いてみたかったんだよ!」
アインハルトさんが軍人お姉さんに向けて、敬礼のようなポーズをとる。
「はい、鍛えてますから!」
「なに、なに~、ヒーローごっこ?」
「辺りが騒がしいけど何かあったの~?」
偶然通りがかったのは、黒髪で八重歯が特徴的な元気っ娘と、礼儀正しくどこかおっとりしたおさげの少女。
「あ~、リオ、コロナ」
「勝手に私の友達を別の名前で呼ばないでください!?」
「ごめんなさい。ちょっと雰囲気が似ていたもので……」
「え? リオさんとコロナさんじゃなかったんですか??」
「アインハルトさん、しっかりしてください。声が違いますよ、声が」
これで中の人まで一緒だったら、わたしでも区別がつかなくなりそうだ。
マヤさんが「わはは」と笑いながら近づいてくる。
「また、ラビッドハウスのヒーコーくらい濃いキャラがやってきたねー」
「うちのコーヒーを変な例えに使わないでください」
メグさんがウサギみたいにぷるぷる震え出した。
「もしかしてチノちゃん、まだ別々の学校に進学してもいないのに、もう私たちを捨てて新しいお友達と!? 乗り換え!?」
「捨ててないですし、乗り換えでもなく、友達でもありませんよっ!?」
すかさずわたしはホビットな先輩と肩を組んだ。
「むしろ親友ですから!」
「違いますよ!? ココアさん、この傍若無人なお客をどうにかしてください!」
「いや~、おとなしいウサギみたいで、いいんじゃないかな~」
ピンクの制服を着たお姉さんが、我らが覇王様に抱きついてスリスリ頬ずりしていた。
「お客さまのアインハルトさんが大変なことにぃぃ!? ああ~、すみませんヴィヴィオさん、うちの馬鹿姉がご迷惑をかけて!」
「いえいえ、うちの姉も一見迷惑そうに見えて、実は喜んでますから~」
「姉……」
「姉……これまで言われたことはありませんでしたが、いい響きですね……」
ココアさんとアインハルトさんが「お姉ちゃんサイコー」と手を取り合っている。レアな光景だ。撮影しとこ。
「ああっ! 私のお姉ちゃんにも聞かせてあげたい台詞だわ!」
「キリエさん……じゃなかった千夜さんしっかりしてください。ここはごちうさの世界ですよ!?」
「そういった意味では、シャロさんってあまり絡みがないですよね?」
「絡まなくていいわよ」
「シャロさんが正解です」
「ところで、喫茶店は青山さんと凛さんに任せたままでよかったんですか?」
「……よくないですよっ!?」
それを早く言ってください――と、チノさんが全員を振り返った。
「ココアさん、リゼさん、千夜さん、シャロさん、マヤさん、メグさんも、みんな、ダッシュでラビットハウスに戻りますよ!」
「そうだった! 仕事中だった!」
「私としたことが!?」
「私も?」
「これからバイトなんだけど!?」
「ちょうど遊びに行くところだったし!」
「お手伝いするよ~」
便乗してわたしも答える。
「こう見えて、喫茶店の孫娘ですからぁぁ!」
「職場体験で、ヴィヴィオさんのお祖母様の喫茶店で働いたことがあります」
「即戦力っ!? ああっ、でも、流石にもう制服がありません! すでに7色もいるし」
「ラビレンジャーに追加戦士が!?」
「ゴールド枠でお願いします」
「シルバーで結構です」
「あら、これで9人目ね」
「野球ができるな……」
key作品みたいになってきた。
『だから客より店員が多いじゃろ!?』
「チノさん、制服のことなら大丈夫ですよ。クリスお願い――」
「そうでした! この2人なら変身魔法で――」
わたしとアインハルトさんは、それぞれ金色と銀色にキラキラ光り輝くラビットハウスの制服を身にまとう。
「眩しいぃぃ!」
「金の斧銀の斧みたい」
「よ、洋服が無料(タダ)で手に入るなんて……」
「そこかっ!?」
「それ以前に目立ちすぎですよ!? スパンコールのココアさんよりありえないです!」
こうして、ラビットハウスに戻ったチノさんとわたしたちは――
「アインハルトちゃんの制服カラーが私と被ってる!?」
「ヴィヴィオさんは白ですか……」
「コックだね、コック!」
――バキッ!
「アインハルト、カップを握り潰さないの!」
――ドゴォォォン!
「アインハルトがテーブルを破壊したぞ!?」
「どうやったら壊れるんですかぁぁ!?」
「大丈夫。こんなこともあろうかと、ラビットハウスの空間バックアップデータは取ってありますから――クリス、復旧――癒しの風――」
「ま、魔法……便利すぎる……」
「というか、アインハルトさんが壊すこと前提なんですね……」
「ココアも覚えたらどうだ?」
「使えるならとっくに使ってるよぉぉ!? そんなこと言うリゼちゃんは、魔法でうさぎに変えちゃうぞ~」
『それは笑えない冗談じゃ』
そんなこんなで仕事終わり。
残っているのは元祖ラビットハウス三姉妹だけ。
ようやく、木組みの家と石畳の街にきてから初めての優雅なコーヒーブレイク。
「うん、翠屋とは違うけど、これはこれで……」
「はい。この渋みと深みのある味わいに、こだわりを感じますね」
コーヒーを入れてくれたチノさんが、隣の席でテーブルに突っ伏した。心なしか頭上のティッピーの毛もやつれて見える。
「はぁ~、今日はいつもの3倍は疲れたような気がします……」
「シャア?」
「違いますよ!?」
「そういうところが疲れるんじゃないかな?」
「ココア、いつものお前のポジションだけどな」
「なんですとー」
「2人とも……だぜ」
「「ワイルドチノちゃん!?」」
わたしは「さて――」と、カップをテーブルに置いた。
「わたしたちも、そろそろ元の世界に帰らなきゃですね~」
「そうでしたね」
わたしとアインハルトさんは椅子から立ち上がった。
「もう帰っちゃうの?」
「はい」
「お疲れ!」
「あまりお役に立てず……」
シャロを救ってくれただけで十分さ――とリゼさんが男前に答えた。
「じゃあ、チノさん、また遊びに来ますね!」
「はぁ~、もう来なくていいですから」
「またまた~」
おっと、忘れるところだった。
わたしとアインハルトさんは、いのりんボイスの少女に手を振った。
「それじゃフーカさん、また明日ジムでお会いしましょう!」
「私とフーカは、朝から一緒にランニングですね。遅れたら承知しませんよ」
まるで、別のアニメで1クール共演したかのように親しく声をかけると、チノさんがガバッ――と飛び起きた。
「そんなの『ViVid Strike!』を見てた人しか知らないんじゃぁぁ――っ!!」
チノさんはくるりとココアさんを振り返ると、
「リンネのコーチもそう思うじゃろ!?」
「チノちゃんまで!?」
「もうやけくそです!」
お疲れ様でした~。
この前、ごちうさ6巻を買いにいったところ、同時発売のアンソロジーの表紙が『魔法少女リリカルなのはViVid』の藤真先生だったので「これは何かやらねば!」と、書いてみました。
普段は『アインハルトさんはちっちゃくないよ!』というタイトルで、リリカルなのは系の小説を書いているので、よかったら読んでみてください。
そんなわけで『アインハルトさんはちっちゃくないよ!』の次回予告です――
「アインハルトさん、一緒にネトゲをやりましょう!」
わかる人にはわかる。
今期の、とある何かに影響されたヴィヴィオが、アインハルトさんを誘ってオンラインRPGに挑戦する。
「名前は〝もりもりちゃん〟か〝林〟にしましょう!」
「わたしのことは〝リリィさん〟と呼んでもらっても構いませんから!!」
果たしてヴィヴィオは、某アニメのようなネト充になれるのか!?
次回『アインハルトオンラインのススメ』
で、リリカルマジカルがんばります!