永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件 作:名無し野ハゲ豚
「お待たせー待ったー?」
「ううん、大丈夫よ」
「あら、石山さんその水着……」
「えへへっ1時間以上かけて選んだんだー」
「中々似合っているわねえ……」
「ありがとう……」
男子達を見る。あえて後ろに向いている。
「篠原くん、みんなーどうしてこっち見ないの?」
「い、いやその……全員登場してからのお楽しみっていうの」
「うんうん。そうそう、今は妄想を膨らませて……」
「さっきから男子はずっとあんな調子なのよ。まあ、今はそういうことにしておきましょう」
永原先生が言う。まあ確かにそれでもいいかもしれない。
「お待たせしました……待ちましたか?」
さくらちゃんが水着に着替えてきた。さくらちゃんらしく、落ち着いた濃い青のワンピースタイプの水着だ。
「ああ、うん大丈夫だよ……これで残りは安曇川さんと田村さんね……」
1分後、虎姫ちゃんと恵美ちゃんが走ってきた。
「悪りい、あたいたちが最後か」
「ごめんなさい、雑談してたら遅くなって……」
恵美ちゃんと虎姫ちゃんが来る。恵美ちゃんはスポーツ選手らしいのか、競泳水着だ。
「恵美ちゃん海に競泳水着って……」
「へへん、あたいはスポーツ選手だからな。あえてこれで勝負してえんだ」
「でもでも、確かにそれが好きって男子も居るわよ」
「だろだろ? そうだろ虎姫!?」
対する虎姫ちゃんは白い短パンのようなデザインにブラジャーも露出度はやや低め、「日常生活の延長みたい」ということで、ボツになった桂子ちゃんの水着案に似ていた。
「じゃあ全員集まったわね」
「男子ー全員集まったわよー!」
桂子ちゃんがそう言うと、4人の男の子が恐る恐るこちらに顔を向けてきた。
「おおー!」
いきなり高月くんが歓声を上げ、他の男子も感心している。
四人の視線は胸元と下半身に集まっている。
「どうかなどうかな? 絶景かな絶景かなあ?」
「うおお……」
桂子ちゃんが煽る。さくらちゃんと恵美ちゃんは露出低めで、あたし、桂子ちゃん、虎姫ちゃん、永原先生がへそ出しで、露出度は永原先生が一番高い。
「へへん? 誰が一番いいかな?」
ちょっと柔らかい風が吹き、パレオがめくれ上がる。ちらりと白い水着が見えるけど隠さない。
桂子ちゃんの長さだと見えてないみたいで、男子たちがあたしの水着に釘付けになる。
「そ、その……」
「き、決められねえよなあ……」
内心はともかく、男子たちはみんな女子に配慮している。
「あらあら、八方美人ですかあ? 気持ちは分かるけどそれじゃあ駄目よ……」
「だ、だって先生!」
篠原くんが声を上げる。
「はいはいごめんなさい。じゃあ準備運動しましょうか」
永原先生の掛け声とともに、準備運動開始。
まず屈伸運動をする、次に手足をブラブラし、また腰の運動をする。
アキレス腱をよく伸ばす、最後に二人一組で背と背を合わせて伸張運動。あたしは永原先生と、恵美ちゃんが虎姫ちゃんと、桂子ちゃんがさくらちゃんと組む。
あたしと桂子ちゃんはパレオなので、準備運動するだけでも、中がチラチラ見える。特にあたしは超ミニなので、簡単に見えてしまう。
準備運動の途中、高月くんが下半身を押さえながら大急ぎでトイレに駆け込んでいた。
……悪い子じゃないんだけど、やっぱり反応しやすいのは可愛そうな気もする。最も、この場に優一がいたとして、耐えられるかは疑問だけど。
「はーい、準備運動は十分ね、それじゃ荷物はあそこのテントに置いて、各自自由に遊んでね」
「「「はーい!」」」
高月くんが戻ったのを見計らって、永原先生がそう言うと、クラスのみんなが勢い良く返事する。
みんなは荷物をテントに置き、荷物番として永原先生が残った。あたしは泳ぐためのビート板を持つことにする。
目のやり場に困るのか、せっかくの親睦会なのに女子は女子で、男子は男子で固まってしまう。
「篠原くーん!」
「な、何!?」
「一緒に遊ぼうよ」
あたしは水着姿になっている篠原くんを呼び止める。
「え……でも……」
篠原くんが顔をそらす。
「ヒューヒュー!」
「くー青春だねえー!」
男子たちが囃し立てている。
「お、おいっ!」
「いいじゃねえか、好きなんだろ? なあ!?」
……やっぱり男子のみんなも、篠原くんがあたしを好きになっていることを知っていた。
両思いだし、何とか、もう少し親密になりたい。
「篠原くーん男でしょー」
「そうだぞー度胸を見せろー」
桂子ちゃんたち女子まで煽ってくる。
あたしも篠原くんも、顔が真っ赤になっている。
「ほら行こう!」
あたしが篠原くんの腕を引っ張ると、あたしのもとに寄る。
もちろん、あたしが本気で引っ張っても篠原くんはびくともしないから、篠原くんが自分の意志で動いたということ。
他のみんなはあたしたちに配慮してか別の所で遊び始めた。
「ねえ篠原くん……」
「うん?」
「あたしのこれ、どうかな?」
ちょこんとパレオをつまんでアピールする。そういえば林間学校の初日の時も私服で同じことしたっけ?
「そ、その……」
「かわいい? エロい? それとも美しい?」
恥ずかしいけど聞いてみる。恥ずかしいはずなのに、自然に両手が胸の横に来て胸を寄せて誘惑してしまう。
こうすることによって、ただでさえ胸を強調している水着で更に強調される。
「あ、あの……」
「うん」
「す、すごく似合ってて……え、エロくてかわいいと思う」
「あらありがとう。嬉しいな……」
自然と笑顔になる。篠原くんが赤くなる。それにつられて、あたしも顔がほんのりと熱くなる。
海岸に来て見る。波が時折打ち寄せて海水が足元を濡らしてくる。
「ちょっと遊ぼうか」
そう言うと、あたしは砂浜にぺたんと女の子座りをする。
「どうしたの? 一緒に座ろうよ」
「う、うん……」
篠原くんが座る。同じ目線になる。ちょっとだけ足を広げる。波が打ち付けてくる。
多分超ミニのパレオの中は篠原くんの視界からはあたしの股間が海水に濡れた水着越しに丸見えになってるはずだ。でも水着だから、恥ずかしくはない。
「あ、あの……」
「石山……その……」
篠原くんが近い。言ったら顔が真っ赤になりそうだけど……言わずにはいられない……
「あのね……こ、浩介くん!」
勇気を振り絞って篠原くんを下の名前で呼ぶ。
「え!? う、うんどうしたの?」
篠原くんは一瞬驚いた表情を見せたけど、すぐに普通の対応に戻る。もちろん篠原くんは顔が真っ赤だけど。
「あたしね、今日の水着は浩介くんに喜んでもらいたくて必死に選んだのよ。他の目なんて……どうでも……良かったのよ……だからあたしの狙い通り……かわいくてエロいって言ってもらえたの……とっても嬉しかった」
片方だけじゃ駄目だった。2つを同時に達成しようとしたんだから。
「そ、それって……」
「ごめんね。浩介くんも知ってると思うけど、あたし5月初めまで男の子だったでしょ? 実はね、あたし……心はもう殆ど女の子だけど、まだ身体が……言うことを聞いてくれないのよ……」
「それってつまり石山は……」
「そうよ、あたしは浩介くんともっと触れ合いたいと思ってるのよ。でも、身体が拒絶しちゃうのよ。男同士でベタついていると思ってしまっているみたいで……」
「……」
「あたし、そんなの嫌。身体はもう女の子で……心だって、あたしはもう殆ど女の子よ……なのにどうして、本能だけ男のままなの?」
本当に嫌だ。一人の女の子として、あたしのことを優しく守ってくれた一人の男の子を好きになったのに。
理不尽過ぎる。こんなごく普通のことが、あたしがTS病で身体の反射的本能だけ男性のままなんて。
「俺には……俺にはわからない……」
「あたしだって女の子だもん。男の子をもっと自然に……浩介くんを受け入れたいのよ。浩介くんのことを思うと、身体が熱くなっちゃうのに……だから、まだ告白できないし、告白してもらっても受け入れることが出来ないの」
「なっ……そ、それってもう告白そのものじゃねえか!」
あたしもそれは同意見。こんなこと言っちゃったら、殆ど好きって告白しているようなもの。だけど……
「ううん、まだ駄目。まだ友達じゃなきゃ駄目。本当にゴメン。あたしのわがままで……」
「謝るなよ。石山は悪くねえだろ……」
「そう言ってもらえると気が楽よ」
「ホント、石山は立派だよ。女の子だもんな」
「それでね、浩介くんに一つお願いがあるの」
「ん?」
「あのね、あたし泳げないでしょ……」
顔を赤くしながら言う。
「それでね、浩介くんに……泳ぎの練習に付き合ってほしいの……」
一人称は少しずつ変わっていったのに、浩介くんの呼び方は、一旦名前呼びにしてしまったら、すぐに定着してしまった。
そうだよね、元々好きだったんだから。むしろこっちのほうがしっくり来るくらいだ。
「う、うん……わ、分かった……」
「それよりも浩介くん……」
「ん?」
「あたしのここの中気になる?」
浩介くんにパレオの中を覗かれているので聞いてみる。
「え!? そ、その……うんっ……」
「そう……あたしのこと、エッチな目で見たことある?」
「そ、それはもう……ある……」
「ふふっ、やっぱり浩介くんは正直だね……じゃあ海に入ろうか」
あたしはそのまま立ち上がる。
「どうしたの浩介くん?」
「あ、ゴメン」
ローアングルを堪能している浩介くんに声をかける。
水着とは言っても、やっぱりマジマジと見られると結構恥ずかしい。これもやっぱりスカート穿いてるのと感覚同じだし、水着のデザインも下着に近いものを選んじゃったし。
浩介くんと一緒に海に入る。やがて膝からお腹へと水深が深くなる。水着の下が水に入ると、ちょっとだけパレオがはためいていて、水中からは見えちゃってるはずだ。
「うんじゃあ泳ぎを教えてくれるかな?」
「う、うん……」
あたしは浩介くんにビート板を渡す。そのまま海水に横になり、泳ぐ練習を始める。
「流されないように離さないでね」
「あ、ああ……」
浩介くんが後ろに下がる、少しずつバタ足で泳ぐ。
「うん、うん、いいぞ……いいぞ」
順調に泳ぐ、直接手を繋いでも良かったけど、まだ反応がちょっと怖い。
お尻の感覚では、パレオがお尻にひっついてる。後ろからは当然見えてるだろうし、浩介くんの角度でもかなりエロいことになっているはず。
浩介くんのたくましい胸板めがけて泳ぐイメージで行く。
「はぁ……はぁ……」
「うん、お、泳ぎ方は上手いぞ……」
「はぁ……ありが……はぁ……とう……」
必死に泳ぎながら、返答する。
「はぁ……はぁ……」
よく見ると浩介くんも息が荒くなっている。そうだよね、こんなエロいんだもん。
だんだん疲れて、泳ぎが変になる。
「石山、一旦休憩しよう」
「あ、うん……」
あたしがもう一度海に立つ。一応パレオを直しておく。太腿にひっついていてエロさが増してる気がする。
浩介くんは前に歩く、あたしが横に並ぼうとすると、歩くスピードを上げてしまう。
うーん、まあしょうがないかなあ……興奮してくれたのは狙い通りだから嬉しいんだけど。
浩介くんはごまかすように砂浜にうつ伏せに寝た。少しだけ水着の中に手を入れているのが見える。
「はー疲れたー」
あたしは浩介くんの横でうつ伏せになりながら横になる。
「俺はあんまり疲れてないけど、石山は疲れたの?」
「そりゃあねえ、この水着、見た目重視で泳ぎやすいってほどじゃないから」
もちろん考慮はされているけど。
「そ、そうだよな……スカートとかついてるし……」
「ふふっ、これは別売りなんだよ」
「え? そうなの?」
「うん、本来このスカートの方は水着セットの方にはなかったんだけど、いまいちエロさが足りないと思って、追加したの」
「そ、そうなんだ……」
「水着だもん、せっかく女の子になったんだし、可愛くエロく……でしょ?」
「うん……」
そうだ、もっと身体を男に慣らさないと……
そう思い、一つ思いつく。
「浩介くん、ちょっとここで待ってくれる?」
いつまでもうじうじしていても、事態は一向に好転しない。
これは言うなれば、あたしの中に残る、「石山優一」が抵抗する最後の本丸みたいなもの。
ちょっとやそっとでは落ちるものじゃない。でも既に戦況は好転している。
もちろん常にうまくいくとは限らないが、圧倒的な大軍でゴリ押せばいつかは城も落城するように。
そう思い、拠点のテントに戻る。永原先生がサングラスを掛けて日光浴をしている。
そう、この日焼け止め、思い切って浩介くんに塗ってもらう。砂の上に直接塗るのは痛いので、持ってきたシートを持ち、ビート板を元に戻す。
「石山さんおかえり、篠原君は?」
「あ、あの……ちょっと待ってもらってるの」
「ふーん、その手に持ってるものは?」
「そ、その……シートと……日焼け止めクリーム……」
「ふーん、それで篠原君に塗ってもらおうと?」
「う、うん……荒療治しないと、駄目だと思って……」
「……石山さん、あなたのいい所は、一生懸命女の子らしくなろうとするところよ。でも、それは弱点でもあるわ」
「え? どういう?」
「石山さんほど女の子らしさに憧れるTS病の子は今まで居なかったわ。でもね、いくらなんでも焦りすぎよ」
「……でも、あたし……これさえなくせば、何もかも女の子になれるって……」
「石山さん、本来今あなたがやっていることは普通のTS病患者なら発病から数年は見なきゃいけないことよ。あなたはまだ、女の子になって3ヶ月でしょ?」
「嫌なの!!! あたしだって……あたしだって男の子のこと好きになった……恋する女の子なのに……あたしの本能がまだ男のせいで、告白もできない……ううっ……」
また少し泣いてしまう。
「石山さん……あなたの気持ちもわかるわ。でもお願い、あまり焦りすぎないで。私が心配しているのは……石山さんがあんまりに前のめりになって自殺することになりかねないと思ってるからからよ」
「え?」
意外な言葉が出る。TS病が自殺するのはてっきり男に戻ろうともがいた果てだと思っていたから。
「今までも男に戻りたいなんて言って不老の命を捨てて自殺してきた人は多いわ。でも、石山さんほどに女の子になりたいという気持ちが強い子も居なかったわ。だから……もしかしたらそっちの方向に行き過ぎても自殺の道なんじゃないかって怖いのよ」
「でも、あたし、これでも満足できない」
「石山さん、生き急いじゃダメ……今のあなたは誰もしたことのない体験をしているの。こんなに早く、女の子になっていく子はいなかったのよ。あなたは十分に、十分に立派よ。焦らなくても、篠原君が若いうちに、その『病気』も治るわよ」
「……」
「でもね、その病気が治っても、完全に男が消えるわけじゃないわ。私だって本当のごくたまに、『男』が出ることがあるんだから」
「え? そうなの?」
「ええ。さあ、篠原君を待たせているんでしょ。上手く行かなくても、泣かないでとは言わないけど……思い詰めないでね」
「う、うん……」
「それから、もしどうしてもって言うなら、最初にカリキュラムでやったように『私は女の子』って言う暗示をするといいかもしれないわよ」
「あ、ありがとう……」
永原先生の言葉を胸に秘め、浩介くんのもとに戻る。
「お待たせー」
「あ、石山どうしたの?」
下半身も落ち着いたのか浩介くんは仰向けに寝ていた。
「あのね、浩介くん。ここ日陰でしょ?」
「うん……そうだな」
あたしはシートを広げ、その上に膝をついて中腰になる。
恥ずかしいけど、意を決して日焼け止めクリームを渡す。
「はいこれ」
「え!?」
浩介くんがキョトンとしている。
「い、石山……これは一体?」
「見て分からないの? ひっ、日焼け止めクリームよ……」
「うっ……ええ……」
浩介くんは動揺して言葉に詰まっている。
「背中に手は届かないからさ……あ、あの……こ、浩介くん、ぬぬ、塗ってくれるかな?」
あたしはそのままうつ伏せに倒れ、長い髪をカーブさせて肩の上側に寄せ、背中側が全部塗れるようにする。
「え? あの……その……」
「お願い。あたし、こうでもしないと……女の子になれないから……」
「……」
「お願い、恥ずかしいけど……特に浩介くんだから恥ずかしいけど……でも、恥ずかしいけど浩介くん以外に塗ってほしくないの……」
あたしは何度も恥ずかしいを連呼する。顔はもう火が出そうなくらい熱い。それは夏の日差しの熱ではなく、自分の体内から出しているもの。
心で反応する身体は、もうこんな風に反応してくれているのに。そう思いながらも、浩介くんの返事を待つ。
「あ、ああ。分かった。塗るよ……」
「うん……」
シートが若干きしむ音がする。浩介くんが意を決してくれた証拠だ。
次回はエロ回になる予定(水着回は全部大なり小なりエロ回だけど)