永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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楽しい水遊び

「家でプールにしようよ」

 

 あたしの提案は、一見荒唐無稽に見えた。

 というのも、家庭用プールというのはあくまでも子供向けのものだから、それを大人2人だけで遊ぶというのは少し変かもしれないと思った。

 

「え? あの、膨らませるやつ?」

 

 浩介くんもやや困惑した表情で聞いてくる。

 

「うん」

 

「うー、家にあったかなあ……ちょっと聞いてくる」

 

 浩介くんが、立ち上がると、義両親がいるリビングの方に消えていった。

 優一の頃は、家での小さなプール何て使ったことはなくて、もちろん女の子になってからも使ったことはない。

 幸い、この家には庭があるので、場所に困ることはない。

 もちろん、小さな女の子がする遊びだということは知っているけど、いや、小さな女の子の遊びだからこそ、あたしはしてみたいのよ。

 既に女の子になって6年になる。つまりあたしが女の子になったときに生まれた子も、もうすぐ小学校に入学することになる。

 それなのに、あたしにとって幼い遊びをしたいという欲求は、収まることはない。

 もしかしたら、これから数百年単位で、あたしが付き合わなければならないコンプレックスなのかもしれない。

 

「優子ちゃん、もう家に無いから買いなさいって」

 

 戻ってきた浩介くんが新しく買わなければいけないことを告げる。

 

「うん、じゃあ準備したら買いにいこうか。えっと──」

 

 あたしは売ってそうなお店を頭に浮かべる。

 

「佐和山大学の近くにホームセンターがあったじゃん。あそこにあるんじゃない?」

 

 答えが出る前に、浩介くんが即答してくれる。

 

「あ、うん。そうね」

 

 実はあそこには行ったことは無いんだけど、せっかくだし見てみようかしら?

 そう考え、あたしは小さな鞄を用意する。まあ、でもプールを買いに行くだけかな?

 

「ふふ」

 

 あたしは自然と上機嫌になる。

 浩介くんとお出掛けの準備、何だか最近は研究に忙しくて、こういうことも久しぶりだったかも。

 結婚してからもデートは多かったけど、大学院になると、やはり忙しさが強いのよね。

 もちろん、仲を維持するためにも、夫婦生活は欠かさないけどね。

 

 

  コンコン

 

「優子ちゃん、準備できた?」

 

「うん、バッチリよ」

 

 浩介くんが部屋に入ってきたので、あたしも立ち上がると、定期券で電車に乗って、佐和山大学の最寄り駅に到着した。

 

「ふう……暑いわね……」

 

「ああ」

 

 外に出るとむわっとした暑さがあたしを襲い掛かってくる。

 あたしはミニスカートだからまだいいけど浩介くんは足元まである長ズボンで見ぬからに暑そうだわ。

 女の子のほうが体が冷えやすい分暑さには強くて、しかもミニスカートみたいに露出の多い服で暑さを紛らわせられるのは、女の子に生まれ変われてよかったと思える部分だわ。

 

 この夏の暑さなので、あたしたちは駅についたらすぐに待合室に入って涼む。

 このあたりは結構涼しくて、電車の中はもっと冷房がきいていて気持ちよかった。

 席は空いてたけど、浩介くんが周囲の視線に嫉妬して、あたしの膝に浩介くんの荷物も置いてきた。

 うーん、スカート、ちょっと短すぎちゃったかしら?

 

 

「次は──」

 

「優子ちゃん、降りるぞ」

 

「うー」

 

 正直、この涼しい列車の中から出るのは億劫だったけど仕方ないわ。

 電車から降りると温度変化もあってさっきよりも暑さが身に沁みてくる。

 でも我慢すれば、水浴びできるものね。

 

 ホームセンターへは、佐和山大学への道のりと途中までは同じ。

 分かれ道を曲がってしばらくすると、見えてくる。

 

「ここだな」

 

 浩介くんが指を差す先に、「ホームセンター」の文字が読める看板が見えてきた。

 あたしたちは駐車場を尻目にそのままお店の正面入口へと入っていく。

 

「はうー、涼しいわー」

 

 中に入ると、さっきの電車以上に冷房がきいていた。

 とても涼しくて、スカートの中まで冷える感覚が効いてくるわ。

 

「さ、行こうぜ。水はもっと涼しいだろうからな」

 

 この暑さなら、きっと水着に着替えて水を浴びたらさぞ気持ちいいと思うわ。

 そんなことを考えつつ、あたしたちはまずホームセンターを見て回ることにした。

 

「うーん、こっちかなあ?」

 

 何となくの品揃えの雰囲気で、あたしと浩介くんが売り場を進んでいく。

 うーん、この辺がここだから、あるとしたらこっちだわ。

 

「優子ちゃん、こっちで大丈夫なの?」

 

 浩介くんが不安そうな顔で聞いてくる。

 

「ええ、大丈夫よ」

 

 あたしが浩介くんを安心させるように話す。

 

「すげえ品揃えで、俺よく分からねえや」

 

 浩介くんは何でそっちに行くかとかは分かっていないみたいだけれど、あたしについてきてくれる。

 ふふ、普段はあたしが頼もしい浩介くんに後ろについていく感じだけど、やっぱりこういうところでは、あたしが優位ね。

 あたしにも「主婦」としての自信がついてきたわね。

 

 そうして、家庭用プールのある場所に来たんだけど……

 

「予想してたとは言え、やっぱり小せえなあ……」

 

 浩介くんの言う通り。

 家庭用プールは子供が遊ぶのが主目的に作られてて、大人たる親は1人入るかどうかが想定されている。

 なので、サイズも小さいのが多い。これだと、あたしと浩介くんの夫婦2人で遊ぶにはやや手狭になってしまうわね。

 

「うーん……お、これがいいんじゃない?」

 

 浩介くんが指差したのは、値段が一番高い代わりに、サイズも一番大きいタイプのプールだった。

 どうも、これはいわゆる「子沢山」家庭を想定した大型サイズで、これならあたしと浩介くんの2人でも広々と遊べるわね。

 

「うん、これなら間違いなく入るわね」

 

「よし、ちょっと待ってろ……よしっ!」

 

 棚のやや上方にあったので、あたしの場合脚立がないと届かない。

 そこで浩介くんがちょいと背伸びして軽々と商品を腕に抱えてくれた。

 ふふ、やっぱり浩介くん頼もしいわね。

 

「優子ちゃん、膨らませるために空気入れも手に入れねえとな」

 

「うん」

 

 あたしは次の商品を見つけるために足を進める。

 いわゆるビーチのボールなどを膨らませるためには、空気を流し込む必要がある。

 おそらく、プールの近くにあるはずだわ。

 えっと……このあたりに売っているはずだわ。

 

「優子ちゃん、これで大丈夫?」

 

 浩介くんがポンプの商品がある場所を指差してくれる。

 ふふ、お目当ての商品は、あっという間に見つかったわね。

 

「うん」

 

 浩介くんはプールの箱で両手が塞がっているので、ポンプの方ははあたしが持ち、レジへと進む。

 浩介くんは涼しい顔で持っているけど、帰りの電車がなんか心配だわ。

 

「台車持ってくればよかったかしら?」

 

 あたしは、カリキュラムの時のことを思い出しながら言う。

 あの時も荷物が多いので、台車を使って服と本を売ったし、重さはあの時のほうがずっと重いけど、とにかくプールのサイズが大きいのよね。

 

「いや、大丈夫だろう?」

 

 浩介くんにとっては、あまり重たくないものなのかもしれないわね。

 

 

 会計を済まし周囲から、微妙に好奇心の視線を感じながら、あたしたちはまた暑さと涼しさを交互に経験しながら家に帰宅した。

 少し疲れたので休んでからプール作りに取り組むことになった。

 ちなみに、浩介くんがプールを床に置くと最初にしたのはあたしのスカートをめくることだった。

 浩介くんは「やばいと思っていたが性欲に負けてしまった」と供述していた。

 あたしは気を取り直して、部屋の鍵を閉めてカーテンで窓を多い、水着に着替えることにした。

 

「うーん」

 

 あたしには、水着の選択肢が2つある。

 1つ目は、白いビキニに青い超ミニのパレオをつけたタイプで、あたしが高校生の時に最初に買った水着。幼さとあどけなさ、そして露出度とエロさを兼ね備えた、今でもあたしの中では最高傑作と思える水着。

 2つ目は大学の時に買った水着で、こちらは露出度が更に高く、胸を特に強調したビキニになっている。また色も黒で、肉食モードになろうとして着用した水着だった。

 言うなれば、この水着は1つ目と比べると浩介くんを襲う意図が強い水着とも言えるわね。ふふ、あの時から、あたしも肉食系女子になることも出来るようになったわね。

 

「うーん……よしっこっちにするわ」

 

 あたしが選んだのは、1つ目の水着だった。

 庭先でことに及ぶ訳じゃないけど、プールが終わったらそう言う雰囲気になることは十分に予想ができる。

 そうなった時は、特に積極的にならなくてもエロさを演出できる1つ目の水着が最適だった。

 もちろん、肉食系女子になってもいいんだけど、今の浩介くんの気分はそんな感じじゃないものね。

 

 あたしは下着も含めて全部の服を脱ぎ、すっぽんぽんになって水着のブラ、ショーツ、そしてパレオの順に着ていく。

 

 

  コンコン

 

「優子ちゃん、そろそろはじめていいか?」

 

「あ、うん」

 

 あたしは、鍵を開けてドアを開けて、部屋の中に浩介くんを入れてあげる。

 浩介くんも既に水着姿で、空気入れとしわくちゃのプールを両手に持っていた。

 

「うっ、優子ちゃん、やっぱりかわいくてエロい……」

 

 浩介くん、もう鼻の下伸ばしちゃってるわね。

 これじゃあすぐに元気になっちゃいそうだわ。

 まあ、あたしの魅力を考えれば、当然かしら?

 

「ふふん、遊び終わるまで我慢するのよ」

 

「はーい」

 

 あたしが小悪魔チックに言う。

 うーん、こういうのは黒い水着の方が似合うのよね。

 あ、でもそうでもないかもしれないわね。

 

「よし、ここだな」

 

 浩介くんがプールを床に置き、小さい蓋を開けて、そこに空気入れの先端を合わせる。

 

  スーポン、スーポン、スーポン……

 

 そして空気入れの棒を上に引き、下に押すを繰り返す。

 するとみるみるうちに、しわくちゃだったプールが膨らんで、大きな丸い形になっていく。

 何だかこの音ってあれに似て……ってダメダメ! そんなはしたないこと考えちゃダメよ優子!

 

「ふう、こんなところかな?」

 

 パンパンになったプールを見て、浩介くんが素早く栓を閉める。

 内部はほぼ空気なので、あたしの力でもひょいと持ち上がる重さでしかない。

 あたしたちは大きなプールに四苦八苦しながら庭に向かう。

 途中お義母さんと出くわしてニヤニヤした顔で「ラブラブねえ」と言われてしまい、夫婦揃って顔が真っ赤になってしまった。

 

 

「よし、ここでいいな」

 

 浩介くんが庭にプールを置くと、あたしは庭の水道の蛇口を緩め、ホースを伸ばして中に水をためていく。

 水が近くにあるだけで、かなり暑さも和らいでいく。

 水着の涼しさも相まって、これで水に入ったらもっと涼しいなあと想像する。

 浩介くんは、水着を見る限り別のことも想像してそうだけど。

 

「なんか優子ちゃんかわいい」

 

「ふふ、どうしたの?」

 

 水をためていると、浩介くんがぽろっと言葉を漏らす。

 あうう、また浩介くんにかわいいって言われちゃったわ。

 かわいいって言われるのはもうとっくに慣れっこだけど、恋が続くためにも、意識してドキドキするようにしている。

 そうやって意識しちゃうと、本当にドキドキが続くから不思議だわ。多分、浩介くんも同じことしているんだと思う。

 

「いかにも夏って感じで。左手に水鉄砲とか持ってたらさ」

 

「あはは」

 

 ホースに水鉄砲で水着でプール、確かにいかにも夏って感じだわ。

 

「そう言えば、まだあるかも」

 

 浩介くんが思い出したように言うと、庭の倉庫に向けて歩き始める。

 あたしの方は既にプールに水を入れ終わったので、ホースを止め、水道も止める。

 

「優子ちゃーん! あったぞー!」

 

「え!? どれどれ?」

 

 浩介くんが倉庫から出ると、小さな黄緑色の水鉄砲を2丁をあたしに見せてくれた。

 

「まだ使えそうだ。これで遊ぼうぜ」

 

「うん」

 

 あたしたちは、ホースを取ってそこから水を入れて満タンにし、壁に向けてためし撃ちをする。

 うん、問題ないわね。

 

「よし、じゃあ早速、遊ぼうぜ」

 

「うん」

 

 あたしも浩介くんも、実年齢と外見年齢に大きな相違が現れ始めていた。

 あたしは元々、女の子になってからは子供っぽい遊びが大好きだったからいいけど、浩介くんもやはり外見年齢がほぼ停止したために、他の学生たちと徐々に意識が変わっているのかもしれないわね。

 

 それにしても、さすがに外にずっと居て暑くなってきたわね。早く水に入りたいわ。

 

 

「んー! 冷たーい!」

 

 足を入れると、水道水の冷たい水が熱を奪っていく。

 このプールはかなり大きくて、直径が2メートル以上もあるので、浩介くんと隣り合って足を伸ばしても十分に余裕がある。

 

「ふー、気持ちいいな」

 

 あたしのすぐ隣に浩介くんがピッタリとくっついてきた。

 

「うん」

 

  ドキドキドキドキ

 

 あーん、かっこいいー!

 

 水着姿の浩介くんは、当然上半身は裸で、今でも鍛え続けているというそのたくましい体に、あたしは嫌でも見とれてしまう。

 やっぱりいつまでも女の子よね。

 

「ねえ優子ちゃん」

 

「うん?」

 

 浩介くんが、プールの中で体を器用に180度回転させ、あたしと向かい合わせになる。

 

「お、やっぱりエロいな優子ちゃんは」

 

 浩介くんが、またニヤニヤした顔で言う。

 確かに、水の中でパレオがゆらゆらとはためいて、水着になることで胸は普段よりもずっと強調されていて、多分浩介くんの角度からはとてもエロくなってると思う。

 

「えへへ、あなたの前だもの、愛する人の前だと、女の子だってエッチになっちゃうのよ」

 

 これは、男の子に喜ばれたくてついている嘘じゃない。

 あたしも浩介くんも、あんまりにお互いが好きすぎて、どうしても性欲と結びついてしまう。

 

「そ、そうか……」

 

 あたしが女の子になって、性格から本能まで女の子になって、よく分かった。

 男とは違って、他の異性には全くエロくなろうとかそういう思いはない。

 なのに浩介くんに対しては、自分でも信じられないくらい淫乱で、ビッチで、変態になってしまっている。

 普段は淑女を装っているけど、浩介くんと2人きりになってしまうと、信じられないくらいにタガが外れてしまうのがあたしだった。

 

「うふふ……おっと」

 

 まだ昼間だけど、屋外だけど……あたしは「娼婦モード」になっていることに気付く。

 ちょっとだけ理性を取り戻し、浩介くんに気付かれない範囲で深呼吸をして落ち着かせる。

 どこもかしくも娼婦モードだと、浩介くんの好感度落ちちゃうものね。

 うーん、やっぱり「優一の知識」で理性は取り戻せるけど、優子が持っている「メスの本能」に抗うのって、とっても難しいのね。

 

 だって今も、浩介くんが水着で苦しそうにしてる所から目が話せなくなっちゃってるもの。

 

「ゆ、優子ちゃん……その……」

 

 あたしの視線に気付いた浩介くんが、顔を赤くして体をそらしてくる。

 

「ああうん、ごめん」

 

 あたしも慌てて、顔をそらす。

 うん、理性は意識すれば強いわね。

 

  ザブーン!

 

「それっ」

 

「きゃっ!」

 

 突然、あたしの顔に水がかかる。

 浩介くんが素早く水鉄砲をあたしに向けて撃ってきた。

 

「もー! やったわね!」

 

 あたしも負けじと立ち上がり、浩介くんのからだめがけて水鉄砲をかける。

 浩介くんが防御体制をとると、今度はプールの水をあたしにかけてくる。

 

 小さな笑い声が、閑静な住宅街に弱々しく響き渡る。

 でも、あたしたちにはとても大きく聞こえ続ける。

 途中、お義母さんが「優子ちゃん、浩介、買い物に行ってくる」と言っていたが、軽く返事するだけで、すぐにまたあたしたちだけの世界に没頭していく。

 

「優子ちゃん隙あり!」

 

  ぺろっ

 

「きゃあ! もー! 浩介くんのえっち! どこめがけて撃ってるのよ!?」

 

 パレオをめくられ、中の水着めがけて狙いが飛ぶ。

 あたしも負けじと、浩介くんの水着の目標物に狙いを定める。

 

「んっ……こらっ! 優子ちゃんはいけない子だなあ……!」

 

 そのうち、水鉄砲の掛け合いも、予想通りこういう合戦になってしまう。

 おかしいわね、水で涼しんでいるはずなのに、体の芯は暑いままだわ。

 

 

「ふー」

 

 遊び疲れたあたしたちは、プールを傾けて水を捨て、空気を抜く。

 あらかじめ用意しておいたタオルで身体を拭くと、水着のまま浩介くんの部屋へと向かう。

 

「もう、涼む計画が台無しだわ」

 

 ベッドについたら、あたしはあれだけ水で冷やした身体がもう火照り始めたのが分かる。

 

「そう言うなって、冷たいのも気持ちいいけど、暖かいのも気持ちいいぜ」

 

「……もうっ。ばか」

 

 浩介くんのかっこいいセリフに、あたしはあっという間に骨抜きにされてしまう。

 

「んっ……ちゅっ……」

 

 水着姿のあたしは、浩介くんとキスをする。

 水着を半脱ぎにさせられたのは、とても恥ずかしかった。

 この暑い夏、庭のプールで涼むという計画は、あえなく失敗に終わってしまったけど、それ以上に素晴らしい思い出が、あたしの中に刻まれていった。


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