永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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鑑定番組への出演

「ふー、遊んだ遊んだー!」

 

 あの後、あたしは更衣室に入りシャワーを浴びて水着から普段着に戻り、みんなの到着を待った。

 

「それじゃあ、今日は解散ね。お疲れ様でした」

 

「「「お疲れ様でした」」」

 

 永原先生がそう言うと、各自がそれぞれの帰路へと別れ自由行動となる。

 解散と言っても、途中までは同じルートに人は多い。

 幸子さんと歩美さんは、この会社の路線で都心まで行き、あたしたちとは乗換駅で別れた。

 地元の路線にはあたしと浩介くんに永原先生、蓬莱教授と瀬田助教の5人が残る。

 

「あー、鑑定番組か。いい宣伝になると思うぜ。俺は傍観させてもらうけど」

 

 蓬莱教授の反応は良好だった。いかに個人でとは言っても、やはり永原先生の立場上協会への影響は避けて通れない。

 

「永原会長、どんなのを出展する予定ですか?」

 

 あたしはまずそこが気になった。

 

「もちろん、吉良殿に貰った着物は出すわ。吉良殿の言われなき汚名と、赤穂浪人の言われなき名誉に終止符を打つ、またとない、千載一遇の機会だもの」

 

 永原先生がいかにも覚悟を決めたような凛々しい目つきで言う。

 もしかしたら、永原先生の頭の中には、この事があって鑑定番組出演を決めたのかもしれないわね。

 普通なら、印象操作を警戒して、既存メディアのテレビに出るなんてあり得ないことだもの。

 

「それからそうね、二束三文で買った浮世絵のコレクションとか、東海道中膝栗毛の出版本とか、古事記伝の出版本とかも出すわね。まあこっちは大量生産されてたものだから、実は私的には大した価値はないとは思っているけどね」

 

 永原先生は、あっけらかんな表情で言う。

 

「まあ、いずれにしても大きな事になりそうだな」

 

 相変わらず、蓬莱教授は傍観の姿勢を崩していない。

 まあ、蓬莱教授からすれば、当たり前のことだとは思う。

 

「うん、ともあれ、どういう企画になるかは、私個人で考えないといけないわね」

 

 そう、これはあくまで「永原先生個人の行動」という建前になる。

 なので、協会は一切の関与をしないことになる。なので、全て永原先生が自力で行うことになる。

 

「次は──」

 

「あ、私たち降ります」

 

「ええ、気を付けてね」

 

 あたしたちの最寄り駅に到着し、永原先生たちと別れ、いつもの道を浩介くんと2人で歩く。あれだけ沢山の人で盛り上がっても、最後は浩介くんと2人になる。

 あたしは、早速腕を絡めて、浩介くんの二の腕に胸を当てる。

 

「あ、あの……優子ちゃん?」

 

「うふふ、今夜は期待しているわよ。絶対抜いちゃやだからねー」

 

 いつもよりやや低い声で、甘い響きで浩介くんにささやくと、浩介くんはブルブルと体を震えさせてくる。ふふ、だいぶ肉食系女子が板についてきたわ。

 

「「ただいまー」」

 

「おかえりなさーい」

 

 あたしたちはお義母さんの挨拶と共に家に帰り、それぞれに部屋に戻った。

 

「ふー!」

 

 あたしはベッドに横になり、今日のことを思い出す。

 海で久々に遊び、楽しかった。

 あたしの今までのかわいさとエロさ、そして露出度とあどけなさも両立した水着もよかったけど、今年みたいにエロさと露出度を高めにして、浩介くんにより強く訴えるのもありよね。

 

「さて……」

 

 あたしは、こっそりアダルト系のネット通販で取り寄せたもうひとつの水着を取り出す。

 ショーツ部分だけの紐水着で、デザインはさっきのと全く同一だけど、唯一の違いは紐がほどけると、はらりと全てほどけてしまうということ。

 

「うふふ、これで浩介くんもイチコロね」

 

 あたしは水着がはらりと解けてしまい、浩介くんを悩殺するシチュエーションを何度も何度もイメージトレーニングする。

 今夜は、あたしの方から襲いかかることになる。

 夕食も、精力のつく食事にしてあげないとダメね。しらす干しもたっぷりいれて……って今から考えても仕方ないわね。

 

 

「「ごちそうさまでした」」

 

 精のつく夕食が終わり、ごちそうさまをする。この食事の内容、義両親たちも何となく察しているかもしれないわね。

 食事が終わったら、まず義両親からお風呂に入る。

 最近ではあたしたちに配慮してか、お風呂入ったら2人とも自室にこもりっきりになることが多い。

 今日はあたしが最後にお風呂に入ることになっている。

 

 

「優子ちゃん、出たよー」

 

「はーい」

 

 あたしは、お風呂から出た浩介くんと入れ替わる。

 あれだけ釘を刺してきたし、多分抜いたりはしてないと思う。

 

 あたしは、エロ水着のショーツと、今日着てきた水着のブラ、そしてワンピースタイプのパジャマを持って脱衣場へと入る。

 

 そうだわ、たまには水着でお風呂入ってみようかしら?

 そう思い、あたしは全裸の状態から、紐水着とブラジャーを付けてお風呂場の中に入る。

 

「ふー、ここまで来たけどどう襲おうかしら?」

 

 体を洗うのに水着の着脱を行い、今は水着のまま湯船に入っている。水着の紐はやや緩めなので、お湯の中でわずかに解けている気がする。

 今のあたしはたまに演じる肉食系女子、いつもは浩介くんに、襲われて美味しく食べられちゃっているけど、今日に限ってはあたしが襲う番になる。

 立場が入れ替わるのは、思ったよりも難しい。

 もしかしたら、浩介くんの趣味に合わないかもしれないという懸念もある。

 

「そしたら、いつものように襲われる立場にならないといけないのかなあ?」

 

 そうなれば、あたしの肉食系女子は大失敗になる。

 そうならないためには、浩介くんを満足させる必要性があるわね。

 

「うーん」

 

 まあ、なるようになればいいかしら?

 あたしは、お風呂から出る。

 すると、水着の紐がかなり緩んでしまい、はらりと落ちてしまう。

 

「いやーん」

 

 誰も見ていないのに、意味もなく恥ずかしげな声を上げる。

 うん、これなら浩介くんも満足してくれるわね。

 改めて予行演習を終え、体を拭き、水着も絞って少しだけ乾かすことにする。

 適度に濡れた水着なら、浩介くんも興奮してくれるはずだわ。

 

 あたしは、一旦ワンピースタイプのパジャマを着込む。

 ドアを明け、廊下を進み、浩介くんの部屋の前へと進む。

 義両親は部屋から出てこない。

 

  さらーり

 

 衣服が擦れる音と共に、あたしの水着姿が露になる。

 

  コンコン

 

「はーい」

 

 中からは、浩介くんの声がする。

 

「入るわねー」

 

 あたしは、部屋の中に入る。

 

「わっ! ゆ、優子ちゃん!?」

 

 浩介くんは、ベッドに横になっていた。

 ふふ、ちょうどいいわ。

 

「ねえあなた、この水着見て、今日はずっと興奮してたわね」

 

 あたしは、淫靡な声で浩介くんのベッドに腰かける。

 むっちりしたあたしの水着姿の肉体に、浩介くんは目が離せなくなっている。

 

「ゆゆ、優子ちゃんその……」

 

 浩介くんはあたしの水着姿に動揺している。今日一日我慢した効果もあって、既に元気一杯になっているわ。

 

「うふふ、おいしそうだわあ……」

 

 あたしは、浩介くんのズボンを脱がしながら、いかにもな「サキュバス」を演じる。

 あー、あたしも興奮して大変だわ。

 

「な、なあ。優子ちゃん、今日ちょっとおかしくねえか?」

 

 違和感に気付いた浩介くんがあたしを静止するように言う。

 

「あーら? 肉食系なあたしは嫌い?」

 

 上目遣いで、浩介くんを見上げて見る。

 

「うっ、そ、そんなことはないぞ!」

 

 浩介くんが慌てて否定して言う。

 浩介くんはあたしの誘惑に順応しようとしている。

 

「ふふっ、正直な浩介くん、ますます美味しそうだわ。いただきまーす!」

 

 目の前の草食系男子が、お肉に見えた。

 

「うわあっ! 優子ちゃんに食べられちゃうよー!」

 

 美味しそうな男の子を食べるメスの肉食獣が、か弱い男の子を容赦なく食べ始めた。

 

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……はにゃー! ごちそうさまでしたー!」

 

 ふーいつもよりも、何倍も疲れたわ。

 とにかく、上になって自分で自由に動けると言うのは、それは同時に体力的負担も大きいということを意味している。

 浩介くんを捕食したあたしは、思い思いに食い散らかして浩介くんを味わった。

 浩介くんのお肉はとても美味しくて、あたしは大満足だった。とっても美味しかったけど、いつもこれだと身が持たないわね。

 根っからの肉食系の女の子ってすごいわ。

 

「うひーはええええ……」

 

 一方で、あたしに食べられた浩介くんは、完全にグロッキー状態になってしまった。

 多分体力面では何時もよりも小さかったけど、いつもとは違う夫婦生活に、戸惑っていたのかもしれないわね。

 

「じゃあ浩介くん、お休みなさい」

 

「うん……はぁ……はぁ……お休み」

 

 あたしは、水着を着直すと息も絶え絶えな浩介くんを見つつ、自分の部屋に戻る。

 結論から言えば、浩介くんは一定の満足感を得ていた。

 自室にも度ったら、下着に穿き替えて、パジャマを着直してベッドの中に入る。

 肉食系女子は今日一日だけ。明日からはまた、普段通りのあたしに戻るつもり。

 

 あたしは、今日の交流会を思い出しながら、睡眠へと突き進んでいった。

 

 

「え!? 出演が決まった!?」

 

 数日後、永原先生からテレビ電話で連絡があって、永原先生が鑑定番組に依頼人として出演することが決定したと言う。

 ただ、いかに個人的な行動とはいえ、協会の会長を勤めている永原先生のため、いくつかの条件がついた。

 それは、「あくまで個人としてなので協会に関することは一切触れないこと」「あくまでも鑑定依頼人としての出演なので、骨董品に関係ないことは問い詰めない、報道しない」といったことだった。

 確かに、地球最高齢で501歳女性というのは、それだけでも注目を浴びるものの、あくまで肩書きは「高校教諭」として出演すると言う。

 

「それでね篠原さん、今日の午後から何を出すかうちに番組の人が来て決めるのよ」

 

 とにかく、永原先生の自宅には、古いものが所狭しと置かれているらしく、吉良上野介より譲り受けた着物はもちろん、それよりも後代になって使われた着物、徳川将軍家所縁の品や、戦国時代や江戸時代当時の食器類、江戸の街で買った浮世絵に出版物、普段は女の身ということで差してなかったが4代将軍より士分の証として贈られた刀、更に永原先生自身について書かれた門外不出の「柳ヶ瀬まつ一代記」というのもあるらしい。

 

「後は江戸城で私の書いた日記も出すつもりよ」

 

「ええ!?」

 

 そもそも自分自身の作品を鑑定番組に出すって前代未聞よね。

 

「まあ、とにかくあらゆるものを手当たり次第出すつもりでいるわ」

 

 どうやら、永原先生のコレクションは、どうやらどれも大変な高値がつくことが予想されるため、とりあえず手当たり次第にして、1個だけと言われたら、「吉良の着物」を出す予定だという。

 

「吉良殿が私にくださったこの着物、これを見せれば、忠臣蔵がいかにでたらめ極まりない作品かを世間に知らしめてくれるわ。そうすれば、日陰で吉良殿を供養してくださった方々も、ようやく浮かばれるわ」

 

 永原先生の目からは、執念のようなものさえ感じるわね。

 

 建前はともかく、ブライト桜以外のあらゆるメディアをシャットダウンしてきた協会にとって、これは大きな転換点になる可能性は高い。

 逆に言えば、それほどのリスクを承知の上でも、永原先生は吉良殿の汚名を張らしたいという気持ちが勝ったのよね。

 

「永原会長……いえ、永原先生、吉良殿の汚名は、きっと晴れます」

 

「ええ、そうね」

 

 心の中ではともかく、あたしが口に出して彼女を「先生」と呼んだのはとても久しぶりのことだった。

 あたしにとって、やっぱり吉良殿に少しでも恩を返したいという気持ちで頑張っている永原先生を応援したいわね。

 

 

「それで、永原先生が鑑定番組に出ることになったのよ」

 

「へー、確かにものすごいお宝をたくさん持ってそうね」

 

 夕食の場で、あたしたちは早速家族団らんの場で話題にする。

 

「そうよ、何が出てくるか楽しみだわ」

 

「やっぱり江戸時代のものとかかな?」

 

 お義父さんも、興味津々になって聞いてくる。

 

「うん、大体はね」

 

「へー、でも骨董品が新品だった頃から生きてる人の古い品物なんか、緊張感がないだろうなあ-」

 

 お義父さんは、番組としての不成立を警戒するように言う。

 確かに、そこはそこで問題だとは思うけど、純粋に永原先生のキャラクターと、単純に価値のある骨董品の数々で、十分に補えると思う。

 

「うーん、でも安心感を持って見ることができるよね」

 

 それに対して、お義母さんが別の視点からメリットを説明する。

 鑑定士の側も、偽物と判断しても言いにくい空気はあると思うけど、まあ、大丈夫だとは思うわ。

 

 

「撮影、どうだったかしら?」

 

 9月になり、全ての撮影を終えた永原先生は、またあたしたちにテレビ電話をかけてきた。

 ちなみに、協会とは無関係の建前なので、他の会員さんも、事実は知っているけど無関係を貫いている。

 

「うん、腫れ物にさわるような扱いでもあったけど……とにかくすごい価値のものしかなかったわ。全部売ったら300年は生活に困らないかしら?」

 

「ヒエー、恐ろしいわね」

 

 まあでも、それくらいになるとは思うけど。

 

「まあ、予想はしてたけどね」

 

 ともあれ、恐ろしい値段がついたものがあるのは確かね。

 でも、「全部売ったら」って、どう言うことかしら?

 

「全部売ったらって?」

 

「ああうん、私が出演するの、3時間スペシャルで、しかも全部私に充てるんだって。歴史的価値があまりにも高いとかなんとかでね」

 

 そう言えば、撮影が数日に渡っていたわね。つまり、あまりにも数が多くて1日では鑑定しきれなかったということね。

 

「永原先生、そんな前例あるのかしら?」

 

「あーうん、もちろん前例はないわよ」

 

 そうよね。スペシャル番組でずっと同じ人が依頼人って。やっぱり永原先生の影響力が大きいのね。でもその前に聞きたいことがあるわ。

 

「そ、そう。所で、吉良殿の話はしたかしら?」

 

「ええもちろん、予想通り『吉良の着物』はメインディッシュと言ってもいいもの。スタジオも騒然となっていたわよ」

 

 どうやら成功したみたいでよかったわ。

 

「やっぱり? それで、どんなのを出したのかしら?」

 

 あたしが鑑定品について聞いてみる。

 

「結果的には予定してた候補のうちほぼ全部だわ。どれもこれも歴史的価値が高いってさ」

 

「ほうほう」

 

 永原先生によれば、永原先生の家宝の中には、歴史学者が喉から手が出るほど欲しい資料もあるとか。

 

「ともあれ、これで私に対するイメージも向上するはずよ。それから、実年齢を疑っているごく少数の人間にも、強力な反論材料にもなるわね」

 

 永原先生によれば、テレビ局側もいくつかは反省する材料もあったらしく、永原先生を丁重に扱うことに決めたらしい。

 これは、明日の会に失脚とも無関係ではないわね。

 

 明日の会はあの後もホームページだけは残っているが、「患者自死へのお詫び」という一文を最後に、一切の更新を停止してしまった。

 あたしたちを批判していたフェミ団体もこの頃には既に根負けし、往生際の悪い一部の団体で、小競り合い程度の反論の応酬こそいくつか続いているものの、大半は権威を失墜し、求心力をなくしてしまっている。

 

 もはや形勢は完全に明らかであり、テレビや新聞といった既存のメディアは力が衰え、代わりにインターネットが台頭した。

 あたしたちの事件も、後世にはもしかしたらその象徴的事例となるかもしれないわね。

 

「永原会長、これで後は、蓬莱教授の研究への協力に専念できるわね」

 

「ええ、ただ私たちに理解を示しつつも、蓬莱先生の研究に関してはまだ反対意見も根強いわ」

 

「ええ、そうでしょうね」

 

 その事に関しては、夏休みが終わったらまた蓬莱教授と話し合う必要があるわね。

 まだ世間には知られていない「300歳の薬」についても、いずれは公表する必要はある。

 だけど、恐らく問題になるのは単に寿命が長くなる薬ではなく、不老を実現するための薬が完成した時になると思う。

 

「ともあれ、まだ気が抜けないわ。協会の広報部としても、蓬莱先生を支援していきたいわね」

 

 永原先生も、やはり蓬莱教授からの恩は返したいのよね。

 その後も、蓬莱教授のことを中心に、あたしは永原先生とガールズトークを繰り広げた。

 

 

「へー、スペシャルに出るのね」

 

 再びその日の夕食で、あたしたちは食卓で永原先生の鑑定番組出演について雑談を繰り広げた。

 当日が楽しみになってきたわ。録画もしないといけないわね。


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