永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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夫婦水入らずの2日間 異常な日常

 うー、裸でお料理何てしたことないわ。どうしようかしら?

 

「とにかく、揚げ物とか熱いのは作れないわね」

 

 とにかく、身体を守る衣服がないのでは、危ない料理も当然できない。

 とすると、お味噌汁も今日はなしね。

 ……焼き魚と野菜サラダを増やそうかな?

 

「うー、寒いわ」

 

 5月になって、外はもうすっかり春で、気候も暖かくなっているけど、マッパのあたしにとってはまだ寒い。

 浩介くんは大丈夫だとは思うけど、女の子のあたしには寒く感じてしまう。

 とにかく、女の子になって寒さに弱くなっちゃったわ。

 

「ふー」

 

 魚を焼き、ご飯を炊く。

 誰も見てないと分かっていると、案外この姿にも慣れちゃうみたいで、浩介くんの視線がないだけで、大分冷静に料理することができた。

 

 

「あなたー! ご飯よー!」

 

 朝食を並べ終わって、椅子に座ってから浩介くんを呼ぶ。これならまだ肝心な場所を隠すことが出来る。

 

「はーい!」

 

 浩介くんの元気いい返事が聞こえてくると、扉から浩介くんが入る。片手で扉を開け、もう一方の片手は同じ場所を押さえつけている。

 浩介くんが座ったら、あたしたちで「いただきます」をする。

 

「あれ? 今日は味噌汁なし?」

 

 違和感に気付いた浩介くんが、問いかけるように言う。

 

「うん、熱いのとか揚げ物とかは、今日はなしよ。危ないから」

 

「あー、うん。安心した」

 

 浩介くんがほっとしたように言う。

 

「え? 安心した?」

 

「だって、油とか跳ねて優子ちゃんのきれいな体に傷つけたくないもん。俺のことだけじゃなくてちゃんと自分のことも考えてるんだなってさ」

 

 浩介くんが優しい口調で言う。

 

「あ、ありがとう……」

 

 あーもう、また惚れ込んじゃうじゃないのよ。

 

「優子ちゃんは本当に理想の女の子になったよな」

 

「うん」

 

「全く、『明日のTS病患者を救う会』とやらに見せてやりてえよ。例え男に生まれても、女の子の体と気持ちがあれば、優子ちゃんみたいに幸せになれるってさ」

 

「あはは……」

 

 今頃は、幸子さんも歩美さんも蓬莱教授の宣伝部の人も頑張っていると思う。

 

「でさ、ちょっと真面目な話なんだけど」

 

「うん」

 

 夫婦とはいえ、お互い全裸で真面目な話ってシュールよね。浩介くんが真剣な顔しているからなおさら変な感じがするわ。

 

「俺の所は大衆担当だからさ、インターネットの世論は協会側に傾いてるんだけど」

 

「うん」

 

「どうもインターネットをしていない既存メディア中心層の中でさ、宗教的な人ほど協会や蓬莱教授に否定的らしいんだよ」

 

「あら、いい傾向じゃない」

 

 インターネットをしていない老人層なら、ほっといても減っていくと思うし、どうせ将来的に不老が一般的になれば、高齢者の存在そのものが消えてなくなっちゃうもの。

 

「確かに、この国においては、だ」

 

 浩介くんが注釈混じりという感じで言う。

 

「うん」

 

「他の国じゃ、むしろ無宗教の方が問題のある人間だと思われているんだ」

 

「うん、つまり?」

 

「今の蓬莱さんや協会のやり方だと、海外の支持を取り付けるのは難しい。外圧を受ける危険性があるってことだ」

 

 浩介くんが、懸念材料を述べる。

 

「蓬莱教授なら大丈夫でしょ?」

 

「確かに、蓬莱さんは外圧など気にしねえだろうが……協会はどうなんだ?」

 

 あたしにとって、全く想定外の話だった。

 

「考えたこともないけど……そもそも外国人の会員自体が幽霊会員が数人いるだけだし……多分気にも止められないと思うわ」

 

「確かに、今はまだ外国人のTS病はほとんど知られてねえし、知ってる人にだって、おそらく『ほぼ日本人固有に近い病気』と思われているはずだ」

 

 世界人口の2%もいない日本人で、患者全体の8割を占めている上に、外国人の患者は支援が行き届かずに極めて自殺率が高いとあれば、日本人の問題と思われるのは当然といえば当然の話。

 

「だが、0じゃないだろ?」

 

 そう、確かに0ではない。

 

「うん」

 

「ということは、だ。恐らくどこかの国でTS病患者が見つかれば、大きなニュースになる。特に蓬莱さんの研究は全世界が注目しているわけだしな」

 

「……」

 

 今まであたしたちは、海外に目を向けたことがなかった。

 TS病が、ほとんど日本人だということが最大の要因だけど、何よりも「海外で発病した」という患者が、まず報告がなかった。

 各地の支部長も日本国内の地方を管轄しているし、そもそも協会には「国際部」そのものが存在していない。

 もちろん、協会のホームページにも、英語版を初め外国語版は全く存在していない。

 確かに、作るほどのことではないと思う。

 だけど、明日の会には「英語」のバージョンもあった。この点では出遅れていると言えば出遅れてはいる。

 

「で、ここからは俺たちのとこの宣伝部長の『個人的見解』何だが」

 

「うん」

 

「連中が協会に『多様性がない』とか『前例踏襲主義だ』とか『外見は若いが実年齢は老けてるから価値観が変わらない』というのを、既に論破されているにも関わらず壊れたレコードみたく繰り返すのは、恐らく海外を意識しているせいじゃないかと思うんだ」

 

 浩介くんが面白いことを言う。あたしにはちょっと驚きでもある。

 

「え!?」

 

「宗教を強く信じるってのは要するに『価値観の絶対化』を起こしやすいんだ。今海外、特にアメリカでは『多様性』というのは、信仰の対象になりかけているんだ」

 

「そんなこと言ったって――」

 

 多様性が絶対って、何か矛盾してる気がするわ。

 

「分かってるよ。TS病の性質上、『多様性なんて確保のしようがない』ってことぐれえよ。でも、連中の信仰ってのは自分基準にしか考えられないんだ。絶対的な何かに反するものは問答無用で悪というのがそれだ」

 

「じゃあどうすればいいのよ」

 

 正直、そんな考えじゃ摩擦ばっかり起こして終いにはテロの応酬になるのは当たり前だと思うわ。

 

「ああ、だから外圧を受ける前に、国内世論を盛り上げて、『明日の会』を潰すしかないってことだ。優子ちゃんの方はどう?」

 

「うん、クラスメイトとインターネットのSNSで接触に成功したわ」

 

 実際にやり取りするのは幸子さんと歩美さんだけど。

 

「おお!」

 

 浩介くんが安堵の表情を見せる。

 

「で、男子女子共に、患者を女子扱いするように、匿名のTS病患者の名義で幸子さんと歩美さんが説得に当たっているわ」

 

「そうか」

 

「本当はこういう患者にショック療法は逆効果よ。でも、クラスメイトたちには『これが彼女のためになる』と教えているわ」

 

「うわー、俺たちよりえげつないなあ……」

 

 浩介くんが驚いた顔で言う。

 特にあたしは小谷学園の時に女子更衣室と林間学校を巡って、「あたしのためになる」と思いこんでいる小野先生と教頭先生や、歩美さんの学校でも女子更衣室に関して「善意の暴走」と戦ってそのたちの悪さを知り尽くしている。

 今度はそれを利用してあたしたちが後ろで糸を引こうとしているんだから大変だわ。

 

「あはは、永原会長は真田家の家臣だもの」

 

「にしたって、『善意の悪行が一番たちが悪い』ということを知ってて仕向けるなんて、そう滅多にできることじゃねえだろ」

 

 確かに、あたしもそう思う。

 長期的に見れば、「明日の会」はすぐに潰し、そのためには「明日の会」を選択した患者と家族たちにはひどい目に遭ってもらう必要がある。

 そして、それは自殺あるいは事件を起こすのが最も利にかなっている。

 それでも、「痛みが分かっているからこそ相手に同じ痛みを味あわせてやろう」という思考になるのは難しい。

 

 永原先生は「一殺多生」だとも言っていた。

 永原先生は、やはり冷徹な人だと思う。

 仲間には手厚く、最大限に助けようとするが、もし敵対すれば、例え同じTS病患者であっても、容赦なく追い込んでいく。

 

 だからこそ、あたしたちのトップにふさわしいとも言えるけど。

 

 朝ごはんを食べつつ、全裸で今後の大事な作戦会議をするという、なんとも奇妙な時間が終わった。

 

 裸になった浩介くんを見ているだけで、あたしは息が荒くなってしまう。

 体の一部は、既にとんでもない湿度になっている。

 そんな中で今日の洗濯に入る。

 

「浩介くん、今日は洗濯物、全部部屋干しするわ」

 

「あ、うん。裸で外に出ないでよかった」

 

 まあ、裸で外に出ようとしたら本格的にまずいものね。

 ちなみに、この家のカーテンは、昨日から閉めっぱなしで、外から覗かれる心配はない。

 

 あたしは、洗濯物を並べて、ハンガーと洗濯ばさみを使う。

 浩介くんが、洗濯物を整理してくれる。

 

「浩介くんありがとう」

 

「おう、後でお代を貰うけどな」

 

「あはは……」

 

 ギブアンドテイクよね。まあ、こんなのつけてたら、揉みたくなっちゃうものね。

 浩介くんがいると、家事も捗るわ。マイナスにならないように変にでしゃばらないのがいいわね。

 

 

「ふう、こんなところかしら?」

 

 あたしは、一通りの洗濯物をかけ終わり、一息つく。

 

「ああ、じゃあ早速……」

 

  もみっもみっもみんっ

 

「あーん!」

 

 家事を手伝って貰う代わりに、あたしは両胸を浩介くんに揉みしだかれる。

 

「やっぱ大きくて柔らかいよなあ」

 

 後ろから揉まれていて、あたしの背中には浩介くんの硬い肉体の感触がする。

 

「ふー、やっぱり優子ちゃんは触り心地も最高だぜ」

 

 あたしは、ようやく解放される。

 本当、浩介くんってあたしのおっぱいが大好きよね。

 まあ、オスの本能なのはあたしも分かってるんだけどね。

 

「優子ちゃん、俺また……」

 

「ふふっ、あたしも体冷え冷えだわ」

 

 浩介くん、また身体が冷えちゃったのね。

 温めてあげないと、風邪引いちゃうわね。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「ううん」

 

 あたしは、ベッドに行こうとする浩介くんを引き止める。

 

「え!?」

 

「今日はせっかくの2人っきりでしょ?」

 

 いつもと違う状況で、いつもと違うことをしたくなる。

 普段は家族団らんのリビングルームで、抱きしめあって、体を暖めあってみたいから。

 

「わ、分かったよ」

 

  むにっ……

 

 浩介くんの手が再び伸びて、今度は正面から胸を揉まれていく。

 

「あんっ……んっ……はぁ……」

 

「優子ちゃん、すげえかわいい……」

 

 浩介くんは、あたしのえっちな声を聞くとすぐにこうなる。

 

「だって」

 

「気持ちいいんだろ?」

 

 あたしは、恥ずかしさを堪えながらこくりと頷く。

 

「ねえ……あっ……浩介……あん……くん」

 

「ん?」

 

 浩介くんが手を止める。

 

「あたし、お腹空いちゃった」

 

「え? さっき朝ごはん食べたばっかりじゃん」

 

 浩介くんに突っ込まれてしまう。でもやっぱりお腹は空いていて。

 

「えへへ、あたし、ソーセージが食べたいわ」

 

「え!? ゆ、優子ちゃん!?」

 

「えへへ……浩介くん、ソーセージ作ってくれる?」

 

 キッチンを見つめながら、あたしが浩介くんにそうつぶやく。

 あたしは、熱々の出来立てソーセージが食べたかった。

 浩介くんがおいしく料理してくれるはずよね。

 多分、それを食べれば、あたしの健康のためにもなると思うから。

 

 

 

「ふぁ……はぁ……」

 

 あたしと浩介くんが床に倒れ込む。

 それはもう、凄かった。

 いつもと違うだけで、結果はこんなに違う。

 浩介くんは、昨日と合わせて凄まじくエネルギーを使っていた。

 炭水化物、不足しないようにしないと、筋肉が弱くなっちゃうわね。ダイエットとは無縁のあたしたちなので、炭水化物はとても大事になってくる。

 

「優子ちゃん……」

 

「えへへ、浩介くんすごいわ」

 

「ああ、何か優子ちゃんと結婚してから、どうも身体能力が上がった気がするよ」

 

 浩介くんだけではなく、あたしもそんな気がする。

 といっても、元々がアレなので、雀の涙ほどだけどね。

 

「そう? それはよかったわ」

 

「それにしても……」

 

 浩介くんが少し沈んだ口調で言う。

 

「うん?」

 

「後片付けどうしよう?」

 

「あっ……」

 

 ここは本来、家族団らんの場所で、こういうことをするために作られてはいない。

 なので床についたあたしたちの汗などを丹念に拭いて、場合によっては消臭もしないといけない。

 

「……やるしかないわね」

 

「だな」

 

 冷静な思考で、浩介くんが返事をする。

 とにかく、片付けないことにはしょうがない。

 

 浩介くんがティッシュペーパーを持ってきてくれる。

 浩介くん、昨日も頑張っていたし、明日は休ませてあげようかしら?

 うん、それがいいわね。

 

「ねえ、浩介くん」

 

 作業中に、話しかけてみる。

 

「ん?」

 

「浩介くん最近頑張り過ぎてると思うから、明日は休ませてあげたいと思うの」

 

 明日は、普通にのんびりと過ごしたい。

 密着して、抱きしめあって、体温を温めるのもいいけど、そればかりだとせっかく休みなのに疲れてしまうし。

 

「あー、うんありがとう」

 

「男の子は大変だものね」

 

 あたしが、久しぶりに「優子」を意識しながら言う。

 

「あ、ああ。並みの男なら、多分とっくにミイラになってると思う」

 

「もー、ミイラって何よミイラってー」

 

 まあ、ミイラは極端でも、浩介くん以上に疲れはてちゃうと思うけどね。

 

「浩介くん、服着る?」

 

 昨日と似たタイミングで、あたしが切り出す。

 

「あー、いやいいや。今日1日くらい、パジャマ着るまでそのままでいいだろ?」

 

 浩介くんの解答は、予想通りだった。

 

「う、うん。分かったわ」

 

 もし旦那との愛が十分じゃなかったり、冷めたりしてる妻だったら、多分嫌がる場面だと思う。

 

 そうはならないのは、あたしが浩介くんのことを深く愛してるから。

 恥ずかしくてたまらないのに、見て欲しいと思えてしまうのよね。

 

 さて、朝ごはんの後はお掃除の時間になる。

 まずは、掃除機を持って今日は浩介くんの部屋に。

 

 うー、両手が塞がってて恥ずかしいわ……

 

「あなたー、部屋を掃除するわよー」

 

「おう、頼む」

 

 こうして、お部屋の掃除が始まったんだけど……

 

「ふあっ……こ、浩介くん……やあん……掃除に集中できないから……あん……」

 

 案の定、浩介くんにたくさん触られてしまう。

 あたしの全身から、とんでもない量の汗が吹き出ている。

 

「よいではないか、よいではないか」

 

 浩介くんが悪役のセリフで、ノリノリになっている。

 

「優子ちゃんも、興奮してるでしょ?」

 

 浩介くんがあたしに向けて、あたしの汗でキラキラと輝いた指を見せてくる。

 

「あーん、もう許してー!」

 

 浩介くんにこういうことをされたら、あたしもスイッチが入ってしまう。

 

「ふひひ、かわいいかわいい」

 

 浩介くんは、掃除中、どうしてもえっちな体勢になるあたしで、よく遊んでいた。

 

「にしても、裸で掃除するとあんな感じになるんだな」

 

 浩介くんがやや興奮しながら言う。

 

「あはは、少し休んだらお食事だから、呼んだら来てね」

 

「おう、待ってるぜ」

 

 あたしは、浩介くんに見送られて、自分の部屋に戻り、ベッドに横になる。

 少し疲れたわ、今はゆっくり休みたい。

 

 

「あー、恥ずかしかったー!」

 

 昨日今日と、浩介くんにセクハラされて、あたし自信も恥じらいと興奮が溜まりこんでいる。

 幸い、昼食まではまだ時間があった。

 

「ん……」

 

 あたしは、布団をかぶり、横になる。

 

「久しぶりに、1人でしようかしら?」

 

 浩介くんと結婚してから、1人で処理することは全くなくなった。

 側にいつも浩介くんがいたから、その必要がなかった。

 でも今は、1人で何とかしたい気分だった。

 

「ん……浩介くん……」

 

 あたしは、昨日から、いや結婚前から、浩介くんにされていたセクハラの数々を思い出す。それだけでも、めまいがしそうなくらい興奮してしまう。

 

「浩介くん……」

 

 あたしは興奮が高ぶり、すぐに目標を達成できた。


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