永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件 作:名無し野ハゲ豚
全ての食材を冷蔵庫に入れ終わったら、あたしはキャリーバッグから露出度の一番高い服を持ち出してこっそりとお風呂の脱衣場へと向かう。
まずストッキングを脱ぎ、ワンピースを脱いで下着姿になる。
そして、へそ出しで胸元を最大限に露出したトップスを着て、さらにパンツとすれすれの超ミニのフレアスカートを穿く。
「あうー、いつ着てもスースーするわ」
浩介くんを誘惑するための服装だけど、やっぱりちょっと動いたりするだけで見えちゃうのは恥ずかしいわね。
「でもこの服は、本来そういう目的のもの」
男を誘惑するだけでなく、女に恥じらいを自覚させることで、より男を誘惑しやすくする効果もある。
あたしは意を決して、元の部屋へと戻っていく。
「浩介くーん」
「わっ! ゆ、優子ちゃんその服……!」
予想通り、浩介くんは驚いているわね。
「えへへ、どうかしら?」
「え、エロすぎるよ!」
浩介くんの服からも、すでに元気百倍になっているのが分かる。
あたしで思いっきり興奮しているみたいね。嬉しいわ。
「ふふ、浩介くん……」
あたしは、歩く時に微妙にパンチラしながら浩介くんに近付く。
ぺろりっ!
「きゃあ!」
我慢できなくなった浩介くんに、正面からスカートめくりされる。
「はぁ……はぁ……優子ちゃん、俺、もう……」
浩介くんが息苦しそうに言う。
「我慢しなくていいわよ」
あたしも、また浩介くんと暖まりたい、触れ合いたい。
そのための誘惑服だもの。
「あ、ああ。優子ちゃん、こっちに来て」
「はい……」
まだ日も落ちてないけど、2人しかいないこの空間、浩介くんとの新婚旅行は、円満に進んだ。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
外は寒い。でも中は暑い。暖房した上に浩介くんと抱きしめあって体を暖めあったからだ。
あたしの服は、結局全部脱がされてしまう。でも、浩介くんによれば「あの服はある意味で全部脱いでるよりすごい」ということだけど。
していた時間は結構長く、あたしはそろそろ夕食の準備に取り掛かりたくなった。
あたしは、元の水色のワンピースと、エプロンを取り出して、料理を始めることにした。
「ふぅー、浩介くん、そろそろ夕食の支度をするわね」
「あ、優子ちゃん、ちょっと待って」
「え!?」
さっきまでは元気の素を全て吐き出したように、浩介くんは冷静だったけど、今は何かをまた企んでいる感じの口調になる。
「エプロンさ、その……は、裸エプロンしてくれる?」
「ふえ!?」
浩介くんから、突然の裸エプロンのリクエストが入った。
「ほらさ、俺たち家に帰ったら両親いるんだし、こういうのって今ぐらいしかできねえじゃん」
浩介くんが慌てて弁解したように言う。
「え、で、でも恥ずかしいから料理に集中できるかな?」
「それに、優子ちゃんの裸エプロン絶対似合うって! 胸大きいし!」
躊躇するあたしに対して、浩介くんがさらに推してくる。
「うー、浩介くんがそう言うならしょうがないわね」
あっさり了承してしまうあたし。
やっぱり、浩介くんにはかなわないわね。
あたしは、さっきの服とそれ以前に着ていた水色のワンピースを脱衣場にある洗濯機へと放り込み、代わりにエプロンだけを付ける。
うー、服の上からだと気にならなかったけど、胸が大きいからさっきの服と丈が変わらないし、それに後ろは完全に無防備だわ。
料理中は、肌に熱湯とか浴びないように注意しないといけないわね。
あたしは、意を決して扉を開ける。
「ど、どう……かな?」
俯きながら、聞いてみる。
「うん、すげえよ優子ちゃん、優子ちゃんってこういうエロいのが似合うよね」
浩介くんは鼻の下を思いっきり伸ばしながら言う。
「もう、浩介くん、これから鍋を作るから、触ったりしないでね。ケガにもつながるわ」
あたしが浩介くんに注意するように言う。
「はーい」
浩介くんは快く返事する。
でも、浩介くん、男の子だし性欲に負けちゃうかも。
「うー、やっぱり優子ちゃんお尻大きいよね」
「うん、胸だけじゃないもんねあたし」
浩介くんはあたしのことを触らない代わりに、あたしの体について話してくる。
「あ、俺ちょっとベッドで休んでくる」
「うん、休むだけにしてね」
「分かってるって、テレビ見て気を紛らわせるよ。あ、優子ちゃんはそのままでね」
浩介くんは、あたしに裸エプロンのままでいるように言うと、そのまま奥の寝室へと消えていった。
あたしは、まず野菜をひたすらに切る作業に入る。
この作業が圧倒的に時間がかかる。
指を切らずに、手慣れた手つきで切っていく。
野菜の他にも、鶏肉やお餅なんかもある。こちらは、下ごしらえは既に終わっている。
ある程度野菜を切り終わったら、タイミングを見計らって、鍋に浄水を入れてだしの素と昆布を出す。
さらに「隠し味」として、粉末状の粉を盛る。うふふ、これで浩介くんは元気を取り戻してくれるはずね。そして、同じ粉はたれの中にも入れておく。これで鍋の中のスープを飲んでも、具材だけでも浩介くんもあたしも興奮してくれるはずだわ。
火をつけて沸騰までの間に、急いで残りの野菜を切り、コップとお皿、更にガスコンロをを机に並べる。
タイミングよく沸騰してきたので、人参、キャベツの芯、ネギ、もやし、ピーマン、白菜、キャベツと、煮えにくい野菜から順番に入れていく。
ある程度時間がたったら、今度は鶏肉とウインナーを入れる。
ここは山なので、海産物はあまり使わないで行く。まあ、タラとかも入れたかったけど、今日はシンプルな鍋でいいわね。
ある程度煮えてきて食べごろになったら、あたしは力を込めて鍋を両手で持つ。
「んー!」
思いっきりお鍋を持ち上げる。
2人前なのでそこまでは重たくない。
あたしは、落とさないように慎重に運びつつ、、お鍋をコンロの上に置く。
浩介くんに頼めばよかったわね。
ともあれ、最後に切ったおもちや締め用のうどんを持っていき、飲み物の麦茶を出してコップに注いで完成。
「あなたー! ご飯できたわよー!」
ご飯ができたら浩介くんを呼ぶ。
「あーい!」
あたしの声を聴くと、浩介くんが大きな声で返事をし、勢いのいい足音が聞こえてくる。
「うおっうまそうだな」
浩介くんが鍋を見て一言。
「さ、食べましょう」
「ああ、今の優子ちゃんはもっとおいしそうだけどね」
ぷにっ
「んもう!」
浩介くんがそんなことを言ってあたしのお尻を掴んでくる。
毎度のことだけど、やっぱり惚気られるとあたしは弱い。
向かい合わせに座り、あたしがコンロの火をつける。
すると、すぐに鍋が再び沸騰し始めたので、うまく保温になるように火を弱める。
浩介くんはその間に、自分のお皿にたれを流している。
「さ、食べましょう」
「ああ」
コンッ……
「「いただきます」」
あたしがコップを上げて乾杯をして、食べ始める。
「うん、おいしい」
「そう? よかったわ」
実はちょっとだけ手を抜いちゃってて、母さんにはばれちゃうレベルだけど、浩介くんには問題なさそうね。
「うん、優子ちゃんが作った料理ってだけでもおいしいのに、素材までいいしなあ。やっぱいい素材にいい料理人が最高だな」
「どっちも欠かすことができないわね」
浩介くんは、嫌味という感じよりも、純粋にこのお鍋が美味しい理由を突き止めている感じがする。
「ああ、このネギがいいよ特に」
「えへへ、ありがとう」
ネギは、結構切り方で味の代わる食材だったりするのよね。
もちろん、浩介くんはそのことまで意識してないとは思うけど。
浩介くんは、ものすごい勢いで野菜を平らげていく。いつもよりも多めに作ってよかったわね。
あたしも、浩介くんより少ない量だけど、いつもよりも多く食べる。
男の人ほどじゃないけど、女の子もエネルギーを付けないといけないわね。
うー、少し体が熱いわね。盛り薬の効果かも。
「浩介くん、豚肉とお餅、入れるわね」
「ああ、頼む」
野菜が減ったタイミングで、浩介くんにお餅と豚肉のことを言う。
浩介くんが快く返事してくれたので、あたしはお餅と豚肉を取り出し中へ入れる。
豚肉は、しゃぶしゃぶの形で比較的すぐにできた。ちなみに、ここは東北地方の山奥なのにこの豚肉は何故か鹿児島県産の黒豚だった。まあ確かに、高級豚肉として、有名なブランドだけど。
「うお、この豚肉うめえな」
「うん、鹿児島の黒豚なんだって」
「へえ! 思わぬ所で見つかったな。にしても、東北のホテルで鹿児島の黒豚かあ」
浩介くんもやはりちょっと思うところがあったみたいね。
「あなた、お餅よ」
「おっと、そうだったな」
豚肉をある程度食べたら、あたしは餅を掬い上げて浩介くんに注意を促す。
あまり鍋に入れすぎると伸びすぎちゃって食べにくくなっちゃうからだ。
「はむはむ……うん、うまいな」
「ええ」
その後、豚肉のアクを取ったりしつつ、野菜も全て食べ終わり、残りはうどんだけになる。この頃にはあたしはますます興奮度が高まっていた。
浩介くんも、たれをつぎ足す。
今の浩介くんは、冷静を装っているけど、必死に理性を手繰り寄せているのが分かる。
あたしは、調味料の胡椒を入れて、更にだしの利いた鍋のスープを少量混ぜる。
それを見て、浩介くんも真似をする。これでますます、あたしたちは元気が出るわね。
「うどん入れるわね」
「ああ」
あたしが一気にうどんを全て入れる。ちょっとスープが足りないかもだけど、まあいいわ。火を一気に強火にする。
「うどんが終わったら、スープを飲むわ」
雑炊を作ろうかなとも思ったけど、今回は見送ることにした。
スープを飲んで、更に薬の効果が出ると思う。
「ああ、もしかしてこのスープに入ってるのか?」
「入ってるって?」
浩介くんの問いに、あたしがすっとぼける。
「いやその……昨日のラブホテルで買った……エネルギーがつく薬」
「うん、たれの中にも入ってるわよ」
あたしがすんなりと認める。あたしも興奮してるし。
「そ、そうか。すげえ効果だな」
浩介くんは、さらに興奮し始めている。
よく考えたらあたしも今裸エプロンで、しかも胸が強調されているものね。
薬の効果にあたしの視覚効果、ダブルパンチよね。
そんなことを考えていると、鍋が再沸騰し、うどんが出来始めたので火を弱める。
「さ、食べましょう」
「おう」
よく考えたら、沸騰して水が蒸発しても、中のだしや塩分などは同じ。
小学校の時に「食塩水の濃度」ってやったけど、あれは蒸発させても塩の量は変わらないから、濃度が濃くなるようにできている。ということは、今の鍋のスープは、より濃くだしが効いていることになるわね。
「お、このうどんもいいな」
「ええ、讃岐うどんってわけじゃ無くて、無名のうどんみたいだけど」
産地のついては特に何も書いてなかったので、そこまでのものじゃないのかもしれない。でも、美味しいことには代わりはないので気にしないでおこう。
「へー、そうなんだ。まあ、こういう鍋用のうどんはまた違うだろうしな」
「ええ」
あたしも、いつも以上の食欲で箸が進む。多分浩介くんと、何度も何度も激しい運動していて、体がカロリーを欲してるせいだとは思うけど。
うどんを全て食べ終わり、最後にたれとスープを混ぜたお湯を飲む。
「うおー、だしが効いてるぜ」
「う、うんっ、とってもおいしいわね」
あたしも浩介くんも、やせ我慢している。
もう全身が興奮しきってて、今すぐ襲い襲われたくてたまらない。これだってもうほとんど我慢大会だ。
結局スープが空になるまで、お互い言い出せずじまいだった。
「な、なあ優子ちゃん」
最後の一口を飲み終わると、ごちそうさまをせずに浩介くんが話しかけてくる。
「ん?」
「俺、も、もう……我慢できない!」
「きゃっ!」
浩介くんが、リビングにもかかわらずにあたしに抱きついてくる。
そのままあたしは倒れ込む。
「あーん、やさしくしてえー」
「とか何とか言ってー、本当はすぐにしたいんだろ?」
浩介くんが、信じられないくらい興奮した口調で言う。
「あうあう……」
その流れは、さながら激流で、あたしに抗うことなど全くできなかった。
この日この時の浩介くんは、今まで一番の身体能力をあたしに見せてくれた。
「ふー、気持ちいいー」
裸エプロンは簡単に剥げる。
浩介くんも、あまりに身体が熱くなりすぎて、お互いすっぽんぽん。
そのままの勢いで、アフターのお風呂に入っている。激しい運動の後のお風呂はとっても気持ちいいわ。
温まりすぎた身体を冷ますのには、こんな寒い日の露天風呂がちょうどいいわね。
温泉に浸かり、のぼせたら上半身を浮かせて半身浴を繰り返す。
「浩介くん大丈夫かな?」
浩介くんは大分体力を消耗していて、大浴場でぐったりしている。
あたしは、「優一の記憶」を探り、浩介くんがぐったりしてしまった理由を探る。
「うーん、ちょっと疲れすぎとも思うけど」
優一の頃にした記憶では、あそこまで疲労の溜まるものじゃなかった。
多分、動いたりあたしを動かしたり体を持ったりするのに、物凄いエネルギーを使っているんだと思う。
露天風呂は相変わらず寒い。夕食も終わり、太陽は完全に落ちている。
あたしは、もう一度大浴場に戻る。
浩介くんは、まだ床に座り込んでいた。
「あなた、大丈夫?」
「ああうん……もう少し休みたい」
さっきまでの元気が嘘のようで、あたしの裸にもあまり興奮していない。
それでも、きちんとタオルで前を隠す。恥じらいを忘れると、いわゆるレスになると言われている。
で、レスというのは離婚のもとになるから、気を付けないといけないもの。
「そう? 今日はもうやめておく?」
「ああ、そうしてほしい」
明日はもう、帰るだけになる。
ちなみに、行きとは帰り道が違っていて、日本海側を経由することになっている。
これは気分の転換と共に、運賃の節約も兼ねているらしく、蓬莱教授の意向とは矛盾している。
「うん、分かったわ。じゃああたし、先に出るわね」
あたしは体を拭いて、パジャマに着替え、寝室へと向かう。
「ふー、何だか今日が一番疲れたわね」
どこにも移動せず、ここに丸一日こもりっきりだったのに、今日は疲労度が今までで一番高かった。
あたしたちにとって、今後の休日の在り方について、もう少し考える必要のある日だったかもしれない。
結婚後は、今日みたいに1日暇を持て余す日だって何度もあると思うけど、その度に今日みたいに乱れ続けたら身が持たなくなっちゃうもの。
すっかり女の子になっちゃって忘れがちだけど、男の子にとって、あの負担はとても大きいものだから。
「……うん、今日は新婚旅行だったものね」
あたしとしては、赤ちゃんが出来ちゃうことも考えないといけない。
だけど、少なくとも大学を卒業してから、子供のことは考えていきたいと思っている。
それまでは、避妊のことも考えていく必要がありそうね。
そんな風に考えていると、浩介くんが部屋の中に入る音がする。
浩介くんは何も言わずにベッドに入る。
あたしが動かないから、既に寝ていると勘違いしているのかもしれないわね。
「……お休み、あなた。愛してるわ」
あたしは、浩介くんに聞こえないくらい小さな声で呟き、今日という一日を終えることにした。