永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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新婚旅行1日目 新たなホテルへ

「あーふかふかだー」

 

 浩介くんがグランクラスの席に感動している。

 

「ねえ浩介くん、軽食サービス、無料みたいよ」

 

「おー本当だ。ジュースも飲み放題なのか。これが車内サービス……まあ、後でいいよな」

 

「うん」

 

 浩介くんも緊張している。

 若い頃と言えば、格安の夜行ツアーバスによる旅行なんて言うのが多いけど、考えてみるとあたしたちはそんな感じとは無縁だった。

 特に今回の新婚旅行は、贅の限りを尽くす3泊と言ってもいい。

 今日の宿は、仙台にとってあって、明日明後日の宿が言わば別荘を丸ごと借りるような感じの、高級感あふれる温泉になっている。

 もちろん明後日の3日目が、ハネムーン的にはメインになる。

 唯一の、移動がない日で、あたしたちはこの日に向けて貯めこむことも考えたけど、浩介くん曰く「大丈夫だ、問題ない」ということで、仙台のホテルも、いわゆる「ラブホテル」に決まった。

 考えてみれば、恋人だった時は浩介くんが随分と我慢していた。

 今回の新婚旅行は、きちんとそれを発散させてあげないといけないわ。愛する浩介くんが欲求不満になっちゃいけないものね。

 むしろ精力のつく食事をたくさん食べさせてあげて、あたしでいっぱい満足してもらうのも、大事な大事な奥さんの務めよね。

 

 列車はぐいぐいスピードを上げていく。

 そう言えば、320キロだっけ? それにしてはそれほどでもないような?

 

「浩介くん、最高速度ってどこで出すんだろう?」

 

「えっと待ってな……宇都宮駅までは275キロでそこから盛岡までが320キロ出すそうだぞ。ちなみに、『ただいま320キロ』のような案内表示は出ないらしい」

 

「へー」

 

 浩介くんがまたメモ帳を取り出して言う。永原先生、先読み力凄いわよね。

 列車は、小山駅と宇都宮駅を通過する。

 

「あー喉乾いた」

 

「ジュースと軽食にする? 洋食でいいわよね?」

 

「……だな」

 

 浩介くんが、アテンダント呼び出しのボタンを押す。

 すると、制服を着た、あたしほどじゃないけどそれなりに美人のアテンダントさんが「お呼びでしょうか?」と頭を下げる。

 

「あー、洋食の軽食とジュース2つ」

 

「かしこまりました」

 

 やはり、それなりの教育をしているらしく、きれいな所作でお辞儀をする。

 うーん、当たり前だけど完敗だわ。あたしも、昨日は浩介くんにあれくらいお辞儀して「よろしくお願いします」ってしたほうが良かったかしら?

 

「優子ちゃん、何悩んでるんだ?」

 

「え? いやその、ああいうきれいなお辞儀できたらなあって」

 

「あはは、優子ちゃん、いい女になろうとしてくれるのはうれしいけど、根を詰めすぎちゃダメだよ。それに、優子ちゃんと毎日いると、優子ちゃん以外の女がブスに見えて来るんだぜ。あ、木ノ本とか永原先生は別だけどな」

 

「もー浩介くん」

 

 浩介くん、感覚がマヒしてるわね。まあ、無理もないか。

 あたし、不老でよかったわ。

 

「あはは、悪い悪い。でも、優子ちゃんがかわいいと思えていれば、それで十分だろ?」

 

 浩介くんが真顔で恥ずかしいセリフを言う。

 あたしは、熟れたリンゴのように顔が真っ赤に染まり、熱を感じてしまう。

 

「も、もう……それ、反則よ!」

 

「嬉しそうで何より」

 

 浩介くんがニッコリと笑う。

 

「うー」

 

 そんなやり取りをしていると、さっきのアテンダントさんが軽食とジュースを持ってきてくれる。

 

「「いただきます」」

 

 お行儀よくいただきますをして、あたしたちは軽食を食べる。

 

「おいしいわね」

 

「ああ」

 

 食材は名産品揃いとあってどれもおいしいけど、量はかなり少なくて、さっきのカツカレーの足しになっている程度まあ、いくらグランクラスと言っても無料で付いてくるサービスだからこれ以上を求めるのは欲張りというものよね。

 

「ごちそうさま」

 

 浩介くんが先に食べ終わり、程なくしてあたしも食べ終わる。

 

「さ、捨ててくる」

 

 浩介くんが空っぽになった箱を整理する。

 

「こちらお下げしてもよろしいですか?」

 

 しかし、アテンダントさんに先回りされてしまう。

 やっぱりプロよね。

 

「あ、はい……オレンジジュースもう一杯、優子ちゃんは?」

 

「あー、あたしはいいわ」

 

 と言うわけで、浩介くんはもう一杯オレンジジュースを飲む。

 外はグランクラスといえど結構轟音が響いていて、風景の流れるスピードも、今まで見てきたどの新幹線と比べても格段に速い。

 間違いなく300キロは出ている。そんな走りだった。

 

「すげえ速いな」

 

「うん」

 

 そして、「ただいま郡山駅付近を通過中です」のテロップが流れる。

 後2駅でもう仙台に着いてしまう。以前に乗ったやまびことは比べ物にならないくらい速かった。

 

「悪い、ちょっとトイレ」

 

 浩介くんがトイレに向かう。

 あたしは一人になって考える。今回の旅、とても大きなものになりそうね。

 

「ふう、グランクラスすげえぞ、新聞まであったぜ」

 

 浩介くんが報告してくれる。

 

「そ、そう。あたし、ちょっとお花摘みに行ってくるわね」

 

「あ、ああ……」

 

 あたしも、トイレに向かう。

 確かに新聞が目に入る、トイレのドアを開け、鍵を閉める。

 スカートをぴらっとめくり上げてパンツを下ろし、直接座る。

 

「そう言えば、さっき浩介くんもここを使ったばかりで――」

 

 って、何考えてるのよ優子!

 結婚したらそんなこと日常茶飯事じゃないの!

 あたしはそう言い聞かせて、興奮する感情を何とか抑え込んだ。

 

 

「ふう」

 

「お帰り優子ちゃん」

 

 浩介くんが出迎えてくれる。

 

「うん」

 

「にしてもさ」

 

 浩介くんが不思議そうな顔をしている。

 

「うん?」

 

「優子ちゃんって何でトイレ行く時『お花を摘む』何て言うの?」

 

「え!?」

 

 浩介くんが、ストレートに疑問を言う。幸い、前のサラリーマンはいずれもイヤホンを付けていて、聞かれていない。

 

「あーうん、その……あたしも以前は『トイレ行ってくる』って言ってたんだけど、林間学校の時に永原先生に叱られちゃって」

 

 ちなみに、その時は「音姫」の使い方のレクチャーも受けた。

 今では無意識に出来ることだけど、当時はまだそこまでは女の子になれてなくて無理だった。

 

「うーん、そんなものなのか」

 

「そうよ。女の子らしく慎ましやかになりなさいってね。今では懐かしい思い出よ」

 

「大変そうだな、女の人生も」

 

 浩介くんが感心したように言う。

 

「当たり前よ。あたしなんて特にね」

 

「だよなあ……うんうん」

 

 浩介くんは確認するように繰り返してうなずく。

 列車は、白石蔵王駅を通過、次が仙台になる。

 

 

「いやー快適だったな」

 

 電車を出て、浩介くんが満足そうに言う。飲み物も何度も頼んだりしてて、ちょっと申し訳なかったかも。

 

「でもやっぱり、値段は高いわよね」

 

「ああ、そう気軽に乗れるもんじゃねえな」

 

 浩介くんが月並みな感想を述べる。あたしも同意見。

 今回みたいに蓬莱教授の支援があってこそ乗れる列車よね。

 

「えっと、宿はここから――」

 

「地下鉄で2駅の道の裏手だな」

 

 仙台駅には幸子さんの件で何度か来たけど、地下鉄に乗るのは初めてのこと。

 

「なあ、夕食も買っていこうぜ」

 

「うん」

 

 グランクラスの軽食はあったけど、あれはおやつみたいなもの。

 もちろんいつもよりは遅くに取るつもりだけど。

 取りあえず、地下鉄へは大きなエスカレーターを下りるけど、夕食を探しに寄り道をする。

 

「えっと……ここで売ってるのかな?」

 

 お店の一番外側には、「にんにく牛タン弁当」が置かれていた。

 

「お、これいいんじゃね?」

 

 浩介くんが、その牛タン弁当を指差して言う。

 ニンニクに潮の強い牛タン、浩介くんの精力増強にはピッタリよね。

 エネルギー満タンで元気いっぱいになった浩介くんに激しく……キャー!

 

「……どうした? 優子ちゃん、顔が赤いぞ」

 

「え!? ああうんごめん、うん、あたしも今日はこれがいいと思うわ!」

 

 慌ててあたしが応対する。

 いけないいけない、今から興奮しちゃうのはさすがにまずいわね。

 

「? そうか、優子ちゃんもこれにするか?」

 

「うん」

 

 浩介くんは、早速「にんにく牛タン弁当」を2個レジに持って行き、会計を済ませる。

 

「よし行こうか」

 

「うん」

 

 後はもう、ラブホテルに直行するだけ。

 あたしの心臓が、急速に高鳴っていく。

 昨日浩介くんに犯されたばっかりなのに、今日もまた、浩介くんのものになる。

 まただわ。いけないことだって分かっているのに、どうしても浩介くんに物のような扱いを受けたくてたまらなくなっちゃっている。

 こんな願いばかりしてたら、浩介くんのためにもならない。何とかしないといけないわね。

 

 初めて、仙台の地下鉄に乗る。

 と言っても、あたしたちが普段使っている東京の地下鉄と、そこまで大きな違いはない。あるとすれば、本数がちょっと少ないことくらい。

 

「こっちだ」

 

 新しくできた「東西線」ではなく、古い「南北線」の方を使う。

 地下鉄まではそれなりに離れていて、数分間の待機の後に乗り込んだ。

 あたしは、昨日のことも思い出して、浩介くんの顔さえ、まともに直視できなくなっていった。

 浩介くんも、あたしに配慮してか、声をかけてこない。

 

 

「次は――」

 

「優子ちゃん、降りるよ」

 

「うん」

 

 浩介くんのたくましい背中の後ろについていく。

 ラブホテルに向けて、裏通りを少し進むと、古びた建物が1件見えてきた。

 

「ここだ」

 

「うん」

 

 あたしたちは、意を決して建物の中に入る。

 正面にはフロントがあるはずなんだけど、人の姿は見えない。

 あうう……怖いわ。

 

「浩介くん……」

 

「大丈夫だって」

 

 あたしが浩介くんにしがみつくと、浩介くんは優しい声であたしを落ち着かせようとしてくれる。

 あたしたちは正面へと進む。

 

「すみません」

 

「はい」

 

 向こうから声が聞こえる。どうやら、向こう側に人がいるらしい。

 

「今日予約した篠原ですけど」

 

「お待ちしておりました。こちらエレベーターで5階にお上がりください」

 

 ラブホテルという場所なのでお互い顔が見えない配慮なのね。

 ともあれ、鍵を受け取ったので、指示通りエレベーターに入る。

 

「随分と古いわねこれ」

 

 ボタンもとてもアナログ的で、「チーン」という音さえする。

 あたしはドアを閉め、「5」というボタンを押す。

 

  むにっ……ぷにっ……

 

「きゃあ!」

 

 浩介くんに、胸とお尻を同時に揉まれる。

 両手同時に揉まれた経験は少ない。

 

「ふへへ、ちょっとだけ」

 

「もう! えっち!」

 

  チン!

 

「5階です」

 

 無機質な機械音声とともに、浩介くんが我に返って手を放すと、あたしたちは、一気に部屋まで進む。

 

「鍵、開けるぞ」

 

「うん」

 

 浩介くんが部屋の鍵を開ける。

 今日のホテルは、どんな感じなんだろう?

 

「わっ!」

 

「うっ!」

 

 部屋の中は、掃除はされていたんだけど、それでも取り切れないエッチな臭いが充満していた。

 あたしは、あっという間に全身が汗びっしょりになってしまう。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 テーブルは小さめで、代わりに大きな布団が部屋のかなりの部分を占拠していた。

 テレビも置かれていて、お風呂場も広い。

 特徴的なのは、お風呂場の所に凸凹のあるマットみたいなものがあったことや、明らかにシャンプーやリンスとは違う液体があったこと。

 そして、ベッドの近くには小さなクローゼットがあって、どこかの学校の制服と体操着、メイド服にバニー服のコスプレが置いてあって、「他のサイズもあります。貸し出します」とあった。

 

「な、なあ優子ちゃん」

 

「ん?」

 

 浩介くんがむずむずしながら言う。

 

「制服、また着てくれるか?」

 

「え、小谷学園の!?」

 

「ああ、ちょっといけないことしている気分になりたいんだ」

 

 浩介くんが、正直に言う。

 そうよね、せっかく持ってきたんだし。

 

「う、うん……じゃあたし、こっちで着替えるから。覗かないでね」

 

「あ、ああ……」

 

 あたしは、キャリーバッグから制服を持ち出して、お風呂場の方に入り、念のため鍵をかける。

 脱衣所であたしはスカートとトップスを脱いで下着姿になる。

 

「昨日はこの向こう側を……今日も――」

 

 ってダメダメ、今から想像するのはダメ! 浩介くんに冷えた体を暖めてもらうのはもっと後!

 ともあれ、あたしはスカートとブラウス、そしてブレザーを着こむ。

 最近ではスカートを折って短くできないようにしているというけど、小谷学園の制服は丈については無頓着らしく、古典的な方法で短くできる。

 更に、位置を言う最寄り少し上げて、いつもよりも短くする。

 

 よし、これでいいわね。

 

「あれ?」

 

 あたしの視界には、一冊の冊子が目に入った。

 

「マットの遊び方?」

 

 どうやら、このホテルのもの見たい。

 

「わ、わあ!」

 

 思わず、素っ頓狂な声をあげてしまう。

 そこには、いわゆる「そっち系」のお店で行われているプレーの解説があったから。

 

「あうう……これ、浩介くん喜んでくれるかなあ?」

 

 分からないけど、今日じゃなくても、明日の朝でも試してみてもいいかもしれない。

 

 

「お待たせー」

 

「優子ちゃん、遅かったじゃん、どうしたの?」

 

 見慣れた男子制服姿になった浩介くんが心配そうに聞いてくる。

 あたしとしては、正直に言いたい。

 

「ああうん、その……洗面台にお風呂のマットみたいなもので使うときのプレーが載ってて……」

 

「へー、もしかして優子ちゃん、それやってみたいの?」

 

「うん……うまくいく自信はないけど」

 

 あたしは、顔を赤くしながら答える。

 

「ほほう、これからが楽しみだな」

 

 浩介くんは、もうすでにこの空間でかなり興奮しているみたいね。

 あたしも同じだけど。

 

「んじゃ、まずは腹ごしらえからすっか」

 

「うん」

 

 浩介くんがテーブルの上にさっき買ったお弁当を出す。

 

「この紐を引っ張ると、一気に熱くなるみたいだぜ」

 

「凄いわね。どういう仕掛けなのかしら?」

 

「さあ? ともあれ、いただこうぜ」

 

「うん……きゃっ!」

 

「おわっ」

 

 浩介くんと共に、お弁当の紐を引っ張ると、蒸気音と共に、急激に熱せられていく。

 さすがに熱すぎるので、少しだけ冷ましてから食べ始めることにした。

 

 

「ごちそうさま」

 

 あー、おいしかったわ。

 あたしは、スカートがめくれないように注意しながら、ベッドへと寝転ぶ。

 ラブホテルという空間の特殊性からか、昨日まで着ていた制服なのに、もうコスプレしているような感覚になった。

 コスプレとして制服を着るのも、そもそもコスプレそのものだって一昨年の文化祭のメイド喫茶以来のこと。

 

 今日はこれから、この制服で浩介くんに――

 

  ぴらっ

 

「いやーん!!!」

 

 とか考えていたら、浩介くんにスカートめくりされて縞パンが丸見えになってしまう。

 浩介くんも力を入れてなかったので、あたしが抵抗してスカートを抑えると、パンツは見えなくなる。

 

「もう、少し休ませてよー!」

 

 本音では、今すぐしちゃってもいいんだけど。

 

「悪い悪い。あ、そうだ」

 

「うん?」

 

 浩介くんが、何かを閃いたように言う。

 それも、悪巧みの類いね。

 

「小谷学園ってさ、校則があってなかったじゃん」

 

「うん」

 

 まあ、それが最大の特徴だもんね。

 

「もしも校則に厳しくて、先生の権限が大きい学校だったらってシチュエーションを思いついたんだ」

 

「へ?」

 

 正直言って、全く想像がつかない。

 生徒会が事実上の文化祭第二実行委員になってて、生活指導部は名ばかりで、風紀委員に至っては委員や委員長が自分がそうだってことを忘れるような学校なのに、校則が厳しいなんて変よね(創設者はそう思ってたらしいけど)

 

「でさ、この前ネットで変な校則について調べてたんだよ。いや、小谷学園は恵まれてると思ったけど、にしたってさ、下着の色を『白じゃなきゃダメ』なんて書いてる学校もあるんだぜ」

 

「え!? 何よそれ、あり得ないわよ!」

 

 浩介くんがさらっと衝撃的なことを言う。

 そもそも、どうやって検査するのよ。

 

「でだ、実際にスカートをめくって検査する学校もあるとか書かれているらしい。と言うわけで、今の俺はこの服だけど、今から『校則が厳しい暗黒の小谷学園』の先生になる」

 

「う、うん……」

 

「優子ちゃんは検査で校則違反がばれちゃった生徒ということで、おしおきされる役目だ。あ、俺の呼び方はいつも通りでいいぞ」

 

 浩介くんが設定を披露する。

 突拍子もない話だと思うけど、何だか面白そうで、興味本位で乗ってしまう。

 

「よしじゃあ始めるぞ。優子ちゃん、そこに後ろ向きで立ってくれる?」

 

「う、うん……」

 

 言われるがままに立つ。

 

「えへん、今日は下着検査を始める。女子は前に出なさい」

 

「はい」

 

 あたしが返事をするが、その場は動かない。

 浩介くんは、右に立ってエアスカートめくりをする。

 

「よし、次」

 

 一歩左に移動する。これを繰り返し――

 

「よし、次、優子ちゃん」

 

「は、はい……」

 

 お芝居だと分かっていても、どうしても緊張してしまう。

 

  ファサッ

 

「やっ……!」

 

 恥ずかしくて、声が出てしまう。

 

「おや優子ちゃん、また縞パンなんて穿いてきたのか?」

 

「あうう、ご、ごめんなさい!」

 

「うーん、でも優子ちゃん、悪いんだけどもう校則違反溜まってるんですよね。と言うわけで、ちょっとおしおきしないといけません」

 

 浩介くんがノリノリで演技する。

 

「あ、あの……も、もうしませんので許してください」

 

 あたしも、演技に身が入り、涙声になる。

 

「うーん、前もそのセリフ聞いたんだよねえ……とりあえず、そこの壁に手をつきなさい」

 

 浩介くんに言われるがままに、壁に手をつき、あたしの大きなお尻を突き出す。

 

  べろんっ

 

「いやあ!」

 

 浩介くんにスカートめくられる。

 

  ぽんっ!

 

「痛っ!」

 

 浩介くんにお尻を叩かれる。と言っても、限りなく「触られる」に近い感覚で、痛みは全く無い。だから「痛っ」ってのも演技。

 

  ぽんっ! ぽんっ!

 

「うっ……ごめんなさい! ごめんなさい!」

 

 まるで、昨日卒業したクラスメイト全員に見られているような感覚さえ受ける。

 もちろんそんなことはない。ただ、このシチュエーションにのめりこんでしまっているのだ。

 

「ごめんなさい! お願い……もう許して……!」

 

 浩介くんにスカートの手が止まる。

 演技だと分かっていても、浩介くんにはやはり罪悪感がある。

 

「優子ちゃん、何回も校則違反をしましたからね。仕方ありません、もはや優子ちゃんは校則を守る能力がないとみなし、以降の検査は免除しますが……お風呂の罰則を与えます!」

 

 浩介くんが高らかに宣言する。

 「お風呂の罰則」と言うのは、明らかにさっきのを指している。

 

「さ、優子ちゃん、一緒にお風呂に入って、俺に奉仕してくれるか?」

 

「……はい」

 

 あたしと浩介くんは、冷え切った体を暖めあうために、お風呂場へと消えていった。


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