永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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恋人としてのデート 清楚編

  ピピピピッ……ピピピピッ……

 

「んー!」

 

 目覚まし時計の音が鳴る。あたしはベッドから起きてハート型のクッションに立つ。

 あたしはまず、鞄の中に生理用品を入れる、まだ女の子の日じゃないけど、念のために入れておきたい。

 

 そして、家デートの時に持っていく、隠し玉の露出度の高い服を入れる。

 あたしは箪笥から白いワンピースを取り出し、パジャマから下着も脱いで素っ裸になる。

 

 箪笥から下着入れを引く。よし、今日は白いワンピースや露出度の高い服を着るという意味で、下着の色は白にしよう。

 白は清純の象徴で、もっと言えばあなたの色に染めて欲しいという意味。今までの穿いていたけど恋人として初めてデートする今日は特別な意味がある。

 家デートの時には、多分いっぱいパンツ見せることになっちゃう。いや、パンツだけじゃなくて中身とかも……あうー、今想像するだけでも恥ずかしいよお……

 ……でもやらなくちゃ、浩介くんが喜んでくれることが嬉しいから。

 

 そして箪笥から取り出した白いワンピースを取り出し、着る。

 こちらは長袖で胸のガードも固く、露出度は控えめでスカート丈も長く膝が完全に覆われるくらいの長さ。

 前に屈めば背中のファスナーもあげられる。うん、OK

 

 

「おはよー」

 

「おはよう優子、デートそれで行くの?」

 

 いつものように母さんと朝の挨拶する。

 

「うん、白いワンピースだよ。かわいいでしょ」

 

「確かにかわいいけど、シンプル過ぎない?」

 

「それがいいのよそれが」

 

 あたしが言う。ここは譲れない。

 

「そうかなあ……もう少し露出とか高めの方がお母さんいいと思うけど」

 

「ダメだよ、浩介くんは嫉妬心強いんだから」

 

「あ、うん……そうなんだ。じゃあそれでもいいかもね」

 

 ふう、どうやら母さんが納得してくれたようだ。

 

「それにしても、母さんって結構直接的だよね」

 

 もしかしたら、父さんの好みだったのかな?

 

「ああ、うん。お父さんを含めて、昔の婚活の時とかはそういうのが受け良かったから」

 

「なるほどねえ、でもあたしみたいに恋愛する時はまた違うのよ」

 

「どうやらそうみたいねえ……」

 

 母さんも少し悩みながら頷いている。

 どうも自分のアイデンティティが一部通じないことを認めざるをえないと言った顔だ。

 

 母さんが朝食を作ってくれる。あたしの服は白い服なので、今回は味噌汁の代わりにトーストで焼いたパンへと変更になる。

 いつもと違い白いワンピースの上にエプロンを着て、調理をする。

 

 なんか若妻って気分だけど、ここには素敵な旦那様……もとい浩介くんは居ない。

 

「優子、お父さん起こしてきて。こっちはやっておくから」

 

「はーい!」

 

 母さんの指示の下、父さんの書斎の扉をノックする。

 既に起きていたらしく、中から返事が聞こえ、食卓へと歩いていく。

 

「お、今日は味噌汁じゃなくてパンなんか」

 

 父さんがいつもとちょっと違う朝食に驚いている。

 

「優子が白い服でデートするからよ」

 

「そうか……デート頑張れよ」

 

「うん、ありがとう」

 

 あたしと浩介くんは彼氏彼女としてデートするのは初めてだから、いつもとは違うんだけど、両親はいつものデートだと思っている。

 

 まあ、正式に彼氏彼女なのは今日が初めてというのは、2人、あるいは永原先生を入れて3人だけの認識だし言う必要もないかな?

 あたしは朝食を食べ、歯を磨き、テレビを見る。

 

 母さんに集合場所と集合時間を聞かれたので、区役所の駅前に午前10時と答える。

 

 ニュースを見ながら、左上の表示で適当に時間を見計らい、あたしは時間になったのを確認して席を立つ。

 

 

「それじゃあ、行ってくるからね」

 

「あ、はーいいってらっしゃーい」

 

「気をつけるんだぞー」

 

 両親の言葉を耳にしつつ、ドアを開け、家の鍵を閉める。

 あたしは最寄り駅までの道のりを歩く。

 

 

 ICカードをタッチし、ホームで電車を待つ。

 やっぱりホームではあたしへの視線を感じる。

 真っ白な服は人混みの中でも意外と目立つ。露出度は低めで、胸も下もガードが堅い服だけど、それでもあたしの胸のサイズからするとどうしてもおっぱいが目立ってしまう。

 学校の制服でも同じだけど、隠しきれない巨乳だとどうしても男の視線を浴びてしまう。

 浩介くんが今後あたしを好きになるにつれ、そう言うので嫉妬心だって強くなっていくはず。

 それでも、胸を小さくするのは女としてどうしても譲れないプライドだ。こればかりは浩介くんの要望は聞けない。和服の時は別だけど。

 

 おそらく100年後、あたしは未だこの世に生まれていない人たちに、同じように視線を浴びるんだろうなあと思う。

 

 あ、100年後……浩介くんは……117歳。多分、もういないわね。

 ううん、考えちゃダメ。将来のことは分からないわ

 

 なんか引っかかることがある。それは永遠に幸せな未来の景色。

 うーん、何かわからない。

 ……まあいいか。例え人生1000年だとしても、今は今しか来ない。だから大好きな浩介くんとの今を楽しもう。

 

「間もなく、電車が参ります」

 

 この電車、あたしがまだ小学校低学年の子供の頃には走ってなかった電車だ。

 この電車もいつかは寿命になって、新しい車両に置き換わっていく。

 そういえば、永原先生も鉄道が全国に張り巡らされているのを見て、逃亡が出来ないと判断して教師を始めたんだっけ?

 

 その時って、蒸気機関車……今ではもう動態保存とか観光列車でしか見なくなったあれが、恒常的に走っている風景から今のように電車になった風景までを、永原先生は見てきた。

 きっとあたしも、そういうのを見るんだろう。

 文明の進歩というものを、これからも。

 

 そんなことを思いながら、あたしは電車に乗り込む。

 「駆け込み乗車はおやめください」というアナウンスとともにドアが締まり、数秒後、電車が次の駅を目指して発車する。

 

 電車の中でも、真っ白なワンピースを着たあたしは、注目の的だった。

 小谷学園でも、街中でも、あたしはいつでも小さなアイドルだった。

 道行く人に、クラスの人に、学園の人に「かわいい」と言われ続け、褒められながら過ごしてきた。

 

 もしかしたら、そういう生活が、あたしをもっと可愛くしたのかもしれない。

 そんなことを思うと、あたしの心を奪って虜にし、ついに恋人同士になることができた浩介くんは幸せものかもしれない。

 

 でも、それを言うならあたしだって、あんなにかっこよくて力持ちで、責任感があって、あたしを守ってくれる浩介くんみたいな男の子を射止めたのは、幸せものだ。

 

 電車が駅に着く。集合時間5分前だったはず。

 そう思いながら、改札口へと出る。初めてのデートで集合したその場所へ。

 

 

 浩介くんがいた、あたしにすぐに気づいて手を降ってくれる。

 あたしも軽く手を振り、まずはICカードで改札を抜け浩介くんの元へ。

 

「ごめーん、待った?」

 

「うん、50分くらい……」

 

「え!? ご、ゴメン……」

 

「ああいや、優子ちゃんが悪いんじゃないんだ。俺が集合時間を午前9時だと思いこんでて――」

 

 浩介くんがそう言う。

 

「あ、そうだったの? ふっ」

 

 あたしがくすっと笑う。

 

「「あはははは」」

 

 2人して笑い合う。周囲もちょっとだけあたしたちに注目している。

 

「じゃあ行こうか」

 

 ともあれ目立っちゃってるからここから離れたい。

 

「うん分かった。ゲーセンだっけ?」

 

「うん、身体動かすのは難しいけどカード系とか頭脳系だったら大丈夫だと思うから」

 

「よしわかった」

 

 浩介くんと、ゲーセンまでの道のりを行く。

 

 

「ねえねえ、あの白いワンピースの子、かわいいよね」

 

「うんうん、隣りにいるの彼氏でしょ? なんか不釣り合いな感じ」

 

「うんうん、いまいち冴えないっていうの、イケメンってわけじゃないのに」

 

「かわいい子の彼氏って何かあんな感じだよね」

 

「そうだよねえ、見る目がないって言うの。もっとイケメンや金持ちが寄ってきそうなのに」

 

 

「あ、あの……」

 

「浩介くん、気にしちゃダメ。あれはモテない可哀想なブス女たちのヒガミよ」

 

 あたしがあえて女子力を下げかねない汚めの言葉を使って言う。

 

「で、でも確かに……俺は……」

 

「浩介くん、あたしが浩介くんに惚れたのは、顔なんかじゃないわよ」

 

「う、うん……」

 

「あたしは強くて、頼りがいがあって、力のある浩介くんが好きなんだから」

 

 これはいつわざるあたしの本心。それに責任感も強いし、浩介くんは本当に素敵な男の子だと思う。

 

「ありがとう」

 

「ふふっ、じゃあ行きましょう」

 

「うん」

 

 浩介くんを引き連れ、ゲームセンターへと行く。世間ではハローウィンということもあって、ゲームセンターもそんな雰囲気になっている。

 最も、稼働しているゲームはあの時と全然変わらなくて、内装の一部と店内のBGMが変わっているだけ。

 ゲームセンターではまずUFOキャッチャーが目に入る。

 

「うーん、人形があるね」

 

「でも何だか取れ無さそうねえ……」

 

 浩介くんが配置を確認する。確かに見ぬからに難しそうな配置。

 

「でも俺もプレゼントしたいなあ――」

 

「ふふっ、大丈夫よ。焦らないで」

 

「でも……」

 

「ぬいぐるみさんプレゼントしてほしいなら、ぬいぐるみショップで買ってくれればいいから」

 

 優しい口調であたしが言う。

 

「そ、そうか……」

 

「うん、プレゼントの気持ちの込め方は、何も無理そうなゲームを攻略するだけじゃないわよ。専門のお店とかでちゃんとしたのを買ってくれた方が、心がこもることもあるわよ」

 

「そ、そういうものか……」

 

 浩介くんが納得した表情で言う。無理をさせてしまえば長続きしないと、あたしは思ったのだ。

 

「それよりもさ、こっちやろうよ」

 

 あたしが移動したのはお菓子のキャンデーが積まれたコーナー、こちらは見ぬからに大量に取れそうなゲーム。こうなっているのは、原価が安くいくら取られようが物理的に黒字になるからだ。

 

「これ?」

 

「うん、キャンデーならたくさん取れそうだし。さっきのは取れるか取れないかだもん」

 

「そうか……」

 

「もしいつまでも取れなかったら、デートが気まずくなっちゃうかもしれないでしょ?」

 

 あたしがメタ的な指摘をする。

 

「なるほど、確かに優子ちゃんの言う通りだ。やっぱり優子ちゃんって優しいよな」

 

「うん! ありがとう!」

 

 浩介くんに褒めてもらえると、すごく元気が出る。

 ともあれ、まずは100円を入れてあたしがスタート。

 

 適当なタイミングで押しても、キャンデーが大量にあるので簡単に取れてしまう。

 そして手前の領域が広くなったのを見計らってもう一度ボタンを押す。

 手前の山に積まったキャンデーが押されて、ポトポトという音がする。

 これを2回繰り返しゲーム終了、備え付けの袋に入れていく。

 

「おお、結構取れたな」

 

 味はグレープ味、オレンジ味、りんご味とある。どれも美味しそうな飴だ。

 

「よし、俺もやろう」

 

 続いて浩介くんが100円を入れてスタート。

 浩介くんはよく見て、一番山の深い場所を狙ってボタンを押す。

 

「おお、すごいわ」

 

 浩介くんの掬った山は大きすぎて、一番上に付いた衝撃で数個の飴が既に下に落ちている。

 そして、あたしと同じタイミングでもう一度ボタンを押し、あたしよりも明らかにすごい勢いで飴が落ちていく。

 2回目も同じように、浩介くんは大量の飴をゲットする。

 同じ袋に詰め、飴がそれなりの数になった。

 

「よし、じゃあ行こうか」

 

「うん、何をする?」

 

「うーん、エアホッケーは無理だよなあ……」

 

「あはは、桂子ちゃん相手でもハンデ必要だったし、浩介くん相手だとどうやっても勝て無さそう……」

 

「大丈夫だよ、俺も手加減するからさ」

 

「え!? 本当?」

 

「もちろん、優子ちゃんなりに楽しめるように頑張ってみるよ」

 

 浩介くんが胸を張って言う。

 

「ありがとう。じゃあしようか」

 

「うん」

 

 あたしはエアホッケーが空いているのを確認し、ゴールネットを浩介くん側に移動する。

 

「お、こんなハンデがあるのか」

 

「じゃあ手加減してくれる?」

 

「よしわかった」

 

 あたしがお金を入れて、あたしのボールでゲームスタート。

 

「えいっ!」

 

 まずは前に出てシュートする。

 

 浩介くんはあっさりと止めてしまう。

 浩介くんはかなり驚いた顔をする。弱い弱いと聞いていたけど、多分想像以上だったんだろう。

 

「よしっ、いくぞ」

 

 浩介くんがそう宣言し、明らかに軽くシュートする。

 

「あっ!」

 

 しかし、あたしはそれも取れない。軽くシュートしていると言っても、本気の桂子ちゃんよりも強いシュート。

 

 浩介くんも手探りという感じ。

 2回目のシュートでは、浩介くんが意図的に利き腕を封印してくれたけど、それでも外れ。

 

 利き腕ではない腕で、浩介くんが軽くシュートする。

 あたしは何とかそれを止める。浩介くんが強いのもあるけど、やっぱりあたしの弱さは尋常じゃない。

 

 それでも、浩介くんが上手くて加減してくれるおかげで、9-9の同点までこぎつける。

 あたしのボールでシュート。

 

「あっ!」

 

 浩介くんがわざとらしく反応を遅らせ、あたしの勝ちになる。

 

「優子ちゃんおめでとう」

 

「うんありがとう」

 

「さて、別のゲームしようか」

 

「うん」

 

 浩介くんに手加減されていることに、あたしは不快感を感じない。

 それはきっと、浩介くんに心を許しているから。

 それにあたし自身が、か弱い女の子としての自覚があるから、プライドで苦しむ必要がないから。

 

 ちなみに、クイズゲームはさすがにハンデ無しになった。

 6回対戦して3勝3敗の五分五分だった。

 

「はー楽しかった!」

 

「俺も。優子ちゃんかわいいなって」

 

「かっかわ……!」

 

 やっぱり真正面から言われると照れてしまう。

 よく見ると浩介くんまで赤くなっていた。

 

「あっ、ちょっと不意打ちだった?」

 

「うん……」

 

 でも、浩介くんともっと照れたいと思うあたしがいる。

 だから、こんな気分にさせられて、あたしは浩介くんとプリクラを撮りたくなる。

 

「じゃあプリクラ撮ろうよ」

 

「お、いいね。でも初めてだよ俺」

 

「うん、あたしも桂子ちゃんと龍香ちゃんとで撮って以来2回目だし」

 

「そうだんだ」

 

 浩介くんあたしの提案に乗ってくれる。

 あたしもプリクラには詳しくないので、無難に桂子ちゃん、龍香ちゃんと撮ったのと同じ機種にする。

 そういえば、あの写真も、まだ財布の中にあったわね。今度思い出ファイルを作ろう。

 

「まずは盗撮カメラがないか足元を確認して――」

 

「え!? そんなことするの」

 

「うん、桂子ちゃんと龍香ちゃんが言ってたよ」

 

「へえー」

 

 浩介くんも感心している。

 そして、プリクラの案内がある。

 

「奇をてらわなくていいわよ。自然に二人並ぶ感じで」

 

「う、うん……」

 

 浩介くんは、直立不動で気をつけして立つ。

 あたしがちょっとだけ腕を絡め、胸を触れないように軽く絡める。

 

 プリクラが撮れた。

 

「修正とかどうするの?」

 

「もちろんいらないわよ。あたしはそんなことしなくていいもの」

 

 ここはちょっと自慢気に言う。浩介くんのプライド、かわいい子の彼氏というプライドを引き立てさせるのだ。

 

「そうだな」

 

「はい、浩介くんの分」

 

 あたしが浩介くんの分を渡す。

 

「優子ちゃん、次はどうする?」

 

 プリクラコーナーから出てきたあたしたちが言う。

 

「そろそろお昼にしようかな? そしたら浩介くんの家に行きたい」

 

「分かった。といっても何処で食べる?」

 

「うーん、例のデパートの最上階でいい?」

 

「うん、俺は異議ないよ」

 

「じゃあ行こうか」

 

「うん」

 

 というわけで、あたしたちの次の目的地は昼食の場所になった。


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