永遠の美少女になって永遠の闘病生活に入った件   作:名無し野ハゲ豚

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志賀さくらの想い

「交代ですよー永原先生!」

 

「あ、石山さんお疲れ様」

 

 あたしは昨日と同様、シフトの時間帯になってメイド服に着替え、交代する。

 昼間の一番混雑する時間帯、浩介くんには「午後は運動部を見て回ろう」と言ってある。

 

「おかえりなさいませ~ご主人様ー」

 

 

「うおっしゃ、優子ちゃんのシフトじゃん!」

 

「ほほう、俺たち運いいな」

 

「だなあ、やっぱりミスコンは優子ちゃんの優勝だよな!」

 

「いやまだ油断できねえぜ。中身は桂子ちゃんが一番印象いいし、優子ちゃんの個性も永原先生に隠れてしまったし」

 

「優子ちゃん推しとしては永原先生が強敵だよなあ……」

 

「500歳、合法ロリ、ロリ巨乳、美人先生、TS病……属性すごいよなあ」

 

「優子ちゃんの属性を食ってる所あるよねえ……」

 

「でも胸なら流石に優子ちゃんがダントツでしょ」

 

「確かにねえ……」

 

「優子ちゃんってバストいくつなんだろう……」

 

「なあ、ちょっと聞いてみるか!」

 

 正直教えたくない。あたしの数値心理的にもインパクトでかいし。

 

「えー?」

 

「聞くだけならタダでしょ」

 

「でも……」

 

「すみませーん!」

 

 

「はーい何ですかー? ご主人様ー」

 

 一応応対する。

 

「優子ちゃんってバストいくつ? 何カップ?」

 

 うわっ、本当に聞いてくるとは……

 

「おい、固まってるぞ……!」

 

 

「おい!!!」

 

 まだその場にいたのか、浩介くんが怒る。

 

「うわっ、お前……!」

 

「俺の優子ちゃんに何聞いていんだ!!!」

 

「げっ、噂の彼氏じゃねえか……」

 

「す、すんません」

 

 

「あ、ありがとう浩介くん」

 

「……ったく気をつけろよ。今日は一般にも開放されているんだから、セクハラするやつとか居るぞ」

 

 浩介くんが不機嫌そうに言う。

 

「ふふっ、やっぱり、嫉妬していたのね」

 

「なっ……嫉妬なんか……!」

 

「まあまあ、ともあれありがとう。シフト終わったらまた会いましょうか」

 

「あ、ああ……」

 

 その後は一般客も含めて接客していく。

 でも、男性は年齢層問わずあたしの胸に釘付けになる。

 浩介くんはまだ、他の男性の気を惹くのに嫉妬しているけど、それも浩介くんにだけ見せることを増やしていけば……必ずや浩介くんはあたしのことをますます好きになってくれるはず。

 

 そんなことを考えながら、あたしはメイド喫茶の接客に勤しむ。

 これは、ミスコンの票にも大事なこと。永原先生と桂子ちゃんを打ち負かすために、負けられない戦いの一環でもあるわ。

 

 

「あ、優子」

 

「あれ? 母さん……それに父さんも」

 

 メイド服でお仕事をしていたら、両親がメイド喫茶に来てくれた。

 

「あらあらまあまあ……んーーーーーー!!! かわいいーーー!!!」

 

 母さんがギュッと抱きついてくる。

 

「ちょ、ちょっと母さん!」

 

 ちょっと苦しい。

 

「あ、ごめんなさい。あんまりにかわいいからつい……」

 

「えっと、注文いいか……?」

 

 父さんが苦虫を潰したような顔をしつつ、とりあえず注文を聞く。

 

 

「じゃあ、お母さんたちは、ミスコンの結果を楽しみにしているわ」

 

「あ、うん……いってらっしゃい……」

 

 やっぱり身内の接客って難しいや。

 

 

 

「優子ちゃーん、そろそろシフト交代!」

 

「はーい!」

 

 メイド服姿の桂子ちゃんのチームに引き継ぐと教室の外に浩介くんがいた。

 

「浩介くん、お待たせー」

 

「ああ、うん……待ってないぞ」

 

「ふふっ、ありがとう。じゃあ野球部に行こうか」

 

 あたしたちのスケジュールは野球部、サッカー部、陸上部、空手部、他には文化系で見ていなかった吹奏楽部と合唱部の合同演奏を聞きに行く予定だ。

 

「まずは野球場に行こうか」

 

「そうだな」

 

 途中廊下を歩く中で、背が低い制服姿の女の子とすれ違う。

 

「あれって永原先生だよな?」

 

「そうだったね、怖いくらい溶け込んでたよね」

 

 今まで気にしていなかったが、永原先生の制服姿が文化祭に溶け込むとどうなるかと言うえば、若作りしているわけでもないからか、幼すぎて目立つということもない。

 

 しかし、野球場までは会話があんまり続かない。

 あたしは浩介くんがミスコン審査以降、また嫉妬していることを確信した。

 

 でも、あえてこれには触れておかない。

 

 野球部はバッティングセンターのような感じだ。

 実際に投手のボールを打ち替えることも出来るし、トスで打つことも出来る。

 

 そんな中で野球場の外でずっと見続けている女子が見えた。

 

「あれ? さくらちゃん」

 

「お、志賀じゃねえか」

 

 いたのはさくらちゃんだ。

 さくらちゃんはずっとマウンドの方を見ている。

 

「あ……篠原さん……石山さん……こんにちは……」

 

「どうした? マウンドばっかり見つめて……」

 

「い、いえ……別に……気になるとか好きというわけじゃないですよ……はい……」

 

 さくらちゃん嘘をつくのが下手だなあ……

 

「さくらちゃん、自分で墓穴掘ってるわよ」

 

「あ、あの……そそそ、そういうことじゃないのです……」

 

「あ、唐崎先輩じゃん」

 

「ひゃうっ!」

 

 普段のさくらちゃんからは想像もつかない声。

 

「す、すみません……私……唐崎先輩が好きなんです……」

 

 唐崎裕太(からさきゆうた)先輩、うちの弱小野球部のエースで、だいたい一回戦で大炎上して、一部の口の悪い野球部員は「唐川裕児」ってあだ名を付けているけど、あたしは元ネタを知らない。

 

 あ、でも今年は一応1回戦は勝ったんだっけ?

 2回戦はコールド負けだったけど。

 

「へえ、でもあいつイケメンだし人気高いだろ?」

 

「はい……それで、私……なかなか言い出せなくて……」

 

「でも言い出さねえと始まらねえだろ」

 

 というかあたしたちもまだ告白してないけど、まあこの際そのことは置いておこう。

 

「う、うん……」

 

「さくらちゃん、ほら、一緒に行こう」

 

「は……はい……」

 

「いきなり告白するよりはよ。まずはちょっと近付くのもいいかもよ」

 

「あ、そういえば、あたし思い出したんだけど」

 

「優子ちゃんどうした?」

 

「うん、野球部ってマネージャーがいないなって」

 

「あ、そう言われてみれば」

 

 うちの弱小野球部にはマネージャーが不在なので、男子の部員が兼任している。

 

「志賀、これはチャンスだぞ」

 

「う、うん……」

 

 あたしと浩介くんの後押しもあって、さくらちゃんはあたしたちとともに野球部の門をくぐる。

 

「いらっしゃいませー、小谷学園野球部へようこそ」

 

 唐崎先輩が挨拶して出迎えてくれる。

 

「ここではバッティング体験ができます。ピッチャーのボールを打つか、トスしたボールを打つかを選べます。どうします?」

 

「浩介くんだけピッチャーのボールで、あたしたちはトスしたボールを打とうか」

 

「え、ええ……」

 

「異論はないぜ」

 

 浩介くんとさくらちゃんが同意し、まずは浩介くんが打席に立ち、あたしたちは安全のため一旦球場の外に出る。

 

「浩介くーん頑張ってー!」

 

「……」

 

「ほら、唐崎先輩を応援しないの?」

 

 さくらちゃんは押し黙ったまま。

 ……まあ仕方ないか。

 

 審判役の野球部員もいる。

 

 まずは一球目。

 

  ブンッ!

 

「ストライク!」

 

 浩介くんのバットが空を切る。

 

「うわー、やっぱはえー」

 

 弱小の炎上屋とは言ってもやはり小谷学園のエース。

 いくら浩介くんが鍛えていると言っても素人がそうそう打てるわけじゃない。

 ましてや初対戦ということもある。

 

 2球目、浩介くんが見極めてボール。

 

「うお、君選球眼あるな」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 浩介くんが唐崎先輩に褒められている。あたしたちにも聞こえるようにか、唐崎先輩はかなり大きな声で喋っている様子だ。

 

 3球目、浩介くんは再びフォークを見送って、ボール。これでカウント1-2。

 浩介くんは「やっぱり変化球が来たか……」と言っているようにみえる。

 

  キーン

 

「お、当てた」

 

「あーでもファールだね」

 

 これで2ストライク。

 

 5球目、唐崎先輩のボールが大きく外れボール。

 浩介くんが意外と我慢強い。

 

「むむ、さすがにフォアボールはなあいけないよなあ」

 

 唐崎先輩はストライクに投げるという宣言。

 キャッチャーも真ん中付近に構えている。

 

「ふんっ!」

 

 来たのは直球。

 

  カキーン!

 

「お、前に転がったわ!」

 

 浩介くんが走るが、セカンドゴロでアウト。

 

「あーやっぱダメか」

 

 あたしたちが再び球場に入ると唐崎先輩と浩介くんが話している。

 

「ははっ、でも筋はいいぜ。パワーありそうだ」

 

「こう見ても鍛えてますから」

 

「ははっ、野球では勝てるけど喧嘩じゃ負けそうだ。それにしても何で鍛えているんだ?」

 

 唐崎先輩が言う。

 

「優子ちゃんがよくナンパされますから」

 

「あ、そうか。君は確か……うん、あの石山優子ちゃんの彼氏か」

 

 浩介くんとあたしが赤くなる。

 でも、鍛えていた本当の理由は別にあるんだけどね。

 

「まあいいや、そこのお二人さんはトスしたボールを打つんだったっけ?」

 

 唐崎先輩がホームベースの横にボールの籠を持ってくる。

 

「こっちは基本5球だ。どっちから始める?」

 

「じゃああたしから行きます」

 

 あたしが前に出る。多分一番ひどいことになるから早めに終わらせたい。

 さり気なく折ったスカートを元に戻し丈を長くする。

 

「へえ、そうなってるんだ」

 

 浩介くんが感心している。

 

「まあ、走らないし大丈夫じゃないかな?」

 

「ああ、多分大丈夫だよ」

 

 唐崎先輩も言う。

 

「でも一応ね、運悪く同時に風吹いたりしたら嫌だし」

 

「じゃあ始めようか。真ん中を狙うからそのつもりでいてくれ」

 

 ともあれスタート、1球目。宣言通り真ん中へ。

 

  ブンッ!

 

 が、バットが空を切った。

 

「あー、もう少し早く打ち始めてみてくれ」

 

 さっきとは打って変わって丁寧に指導してくれる。

 

 2球目、気持ちさっきより早くバットを振る。

 

  コンッ……

 

 ピッチャーマウンドの前にボールが落ちる。もしマウンドに唐崎先輩がいたらピッチャーフライだ。

 

「うーん……」

 

「どんまいどんまい、もう一球行こう」

 

 3球目、もう一度唐崎先輩に投げてもらう。

 

  キーン

 

 しかし、これもボテボテの内野ゴロだった。

 

「あー、まあ女の子はそんなものだよ、うん」

 

「そうかなあ?」

 

「例外はテニス部のあの子くらいさ」

 

「恵美ちゃんのこと?」

 

「ああ。さすがに俺のボールは打てなかったが今みたいにトスしたボールだったら外野深くまで飛ばしてたぞ」

 

 唐崎先輩が恵美ちゃんについて話す。

 

 4球目、今度はサードゴロと思しきゴロになる。

 まあ、あたしの足だと外野に転がっても一塁でアウトになりそうだけど。

 

 最後は再び空振りし、これで5球が終わってしまった。

 

「はい、次はさくらちゃんの番だよ」

 

「う、うん……」

 

 さくらちゃんが打席に立つ。明らかに緊張して体が硬くなっている。

 

「あ、あの……よ、よろしくお願いします……はい」

 

「大丈夫か? ガチガチになっているよ」

 

「あうっ……はい、大丈夫……です……」

 

 明らかに大丈夫じゃない。

 

「そ、そうか……じゃあ始めるぞ」

 

「はい……」

 

 唐崎先輩がまず1球目を投げる。

 

「んっ……!」

 

  コン!

 

 ボールはピッチャーゴロになる。

 

「あうっ……」

 

「もう少し自然体で打ってみて」

 

「はい……」

 

 唐崎先輩の指導が、さくらちゃんをより硬くしてしまう。

 2球目はバットに当てたが、3メートル程度しか進んでいない。

 

「うーん、体の力をもう少し抜いてみて」

 

「は、はい……すぅ……はぁ……」

 

 さくらちゃんが深呼吸をして打席に立ちなおす。

 

「お願いします」

 

「よし」

 

 唐崎先輩がボールを握り直してからトスして投げる。

 

  カキーン!

 

「お!」

 

 さくらちゃんの打ったバットから芯でとらえたような金属音がする。

 それでも、ボールはショートに捕球されてしまった。

 

「お、今のは守備位置次第なら抜けていたぞ」

 

「そ、そうですか……」

 

「さ、後2球だ。頑張れよ」

 

「は、はい……」

 

 さくらちゃんは普段からぎこちない対応だけど今日は特にそうだ。

 結局快音が聞こえたのは、3球目だけだった。

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

「お疲れ様、これで全員だな」

 

「ほら、さくらちゃん」

 

「で、でも……」

 

「勇気を出してみて。マネージャーになるところからよ」

 

「う、うん……あ、あの! 唐崎先輩!」

 

「?」

 

「わ、私……その……野球部で……マネージャーになりたいんです!」

 

 さくらちゃんが唐崎先輩に勇気を出して言う。

 

「おおそうか! それは歓迎だぜ!」

 

 唐崎先輩はあっさりと承諾してくれた。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 さくらちゃんも今まで見たことのないような明るい笑顔を見せる。

 

「いやーマネージャーいなくて困ってたんだよ。何せうちは弱小だから全然人気なくてさあ……そうだ、早速部員に紹介するよ。名前は?」

 

「あ、あの……志賀さくらといいます……」

 

「志賀さくらちゃんだね……おーいみんなー! マネージャーになりたいって子が現れたぞ!」

 

 唐崎先輩がそう言うと、守備についていた他の野球部員からも大きな歓声があがる。

 さくらちゃんは嬉しさと戸惑いの合わさった表情をしながら、野球部員たちに引っ張られていった。

 もう展示のことなんてどうでもいいって雰囲気さえある。

 

 

「……」

 

「……行こうか浩介くん」

 

「あ、ああ……」

 

 

 ともあれ、あたしたちに次にやってきたのはサッカー部、ここではスローインゲームが行われていた。

 何でスローインゲームなのかはよく分からない。

 

 

「お、優子に篠原じゃんいらっしゃい」

 

 出迎えてくれたのは女子サッカー部のレギュラーでもある虎姫ちゃんだ。

 

「おや、安曇川じゃん。そうか、安曇川の女子サッカー部は強いんだったな」

 

「うん、男子は弱いけどね」

 

「というか、部員数が足りないじゃん」

 

「おっとそうだった」

 

 小谷学園は運動部が大の不人気で、野球部以上の不人気がこの男子サッカー部。

 部員数が5人しかおらず、何と女子サッカー部と試合して負けるほどだ。

 

「男女対決に勝つくらいだもんねー」

 

「ああいや、助っ人呼ばれたらさすがに勝てないよ、本気でぶつかり合いになったら女の子は飛ばされちゃうし」

 

 小谷学園にも、かつての優一や浩介くんみたいに、部活入ってなくても運動能力の高い生徒はそれなりにいる。

 ちなみに優一は助っ人に呼ばれたことはない。

 

「やっぱそういうもんなのか」

 

 浩介くんが疑問を投げかける。

 

「浩介くん、女の子は弱いのよ」

 

「いや、優子ちゃんは特別じゃ……」

 

「そうだとしても、あたしなら浩介くんが守ってくれるから強くなる必要ないわ」

 

 あたしが言う。浩介くんへの信頼の証。

 

「はいはい、お熱いこと。スローインゲームというのはね、味方のチームにスローインすれば勝ちという単純なゲームよ」

 

「そ、そうなんだ……でもどうして? サッカーって蹴るもんじゃ」

 

「毎年制服のまま、生パンで動き回る女子が続出したから中止にしたのよ」

 

「そ、そうなんだ……体操着に着替えようよ……」

 

 あたしとしては、正直見せパンの類を穿いててもはしたないと思うのに。

 

「とりあえず、3球勝負よ。優子からやる?」

 

「う、うん……」

 

 ともあれスローインゲームをする。青チームに通れば勝ち。赤チームにカットされると負けだ。

 

「えいっ!」

 

 よし、1発目は通った!

 

「お、優子ちゃん筋は悪く無いじゃん。あ、ちなみに、青と赤でも報酬を巡って賭けているから八百長はないよ」

 

「あ、うん……」

 

 先に言ってほしかった。

 

「それ……あっ!」

 

 しかし、次の2発は赤チームにカットされたので、トータル1勝2敗で負け越し。

 にしても、かなり本気でぶつかりあってたから、確かに八百長では無さそうだ。

 

「じゃあ次、浩介くん」

 

「うん、やってみる」

 

 浩介くんがサッカーボールを持ちゲーム開始。

 

「こんなもんかな」

 

 浩介くんは2勝1敗で勝ち越し。あたしと合わせてちょうど2対2の五分の星になった。

 

 

「うちはこれで全部だよ。この先も文化祭楽しんでね」

 

 虎姫ちゃんに見送られサッカー部を後にする。

 

「よし……えっと、次に優子ちゃんが見ていきたいのは?」

 

「あーうん、陸上部と空手部」

 

「じゃあ、空手部が近いな」

 

 浩介くんはややそっけなく言う。

 やっぱりまだ機嫌は直っていない。いや、やや悪化しているかもしれない。

 

 空手部では、瓦割りの実践をしていた。

 ちなみに、浩介くんは「俺もやってみる」と言い出した。

 空手部員はやんわりと止めたが、浩介くん、そのまま瓦を数枚一気に割ってみせて空手部員を驚かせてしまった。

 

 ちなみに、あたしはうっとりしてしまった。

 力を誇示できて、ちょっとだけ浩介くんの機嫌が治ったかもしれない。

 

 陸上部の展示は何かよくわからないものだった。

 走り幅跳びと走り高跳びの実演ということだが、正直ありがたみが全く沸かない。

 

 浩介くんは帰り際「何だあれ?」と言っていた。

 機嫌が元通りになってしまった気がする。

 

 

「ねえ浩介くん……」

 

「何?」

 

「やっぱりさっきから機嫌悪いでしょ? 嫉妬なんでしょ?」

 

「だ、だから嫉妬じゃ――」

 

 やっぱり無理をしている。不機嫌を溜め込むのは良くない。恥ずかしいけど、またやらないと……

 あたしは浩介くんの腕を持つ。

 

「いいのよ。あたしのために妬いてくれるんでしょ? 嬉しいわよ」

 

 浩介くんが真っ赤になる。多分あたしもそうなっている。

 

「ほら、ちょっとこっちに来て?」

 

 あたしは浩介くんに、桂子ちゃんと以前話した中庭の影へと案内した。




この先もエロが……というか文化祭・後夜祭前後はエロが多すぎ……

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