一方
航海「今回は俺の独壇場だな!!」
全日本トップクラスの偵察要員を自称する後悔チーム、事実その隠蔽技能は相当なものである。
チビ「装備もだいたい同じで良かったですねぇ」
WH学園の軽戦車は型は違えどⅡ号戦車が大半、御舞等のⅠ号とⅡ号が教えるには丁度いい。
航海「これから君達にはかくれんぼをしてもらう!」
チビ「かくれんぼ、というより隠れ鬼と言ったほうがいいかもしれませんね。我々が鬼をやるので制限時間まで逃げ切ってください。1箇所に隠れてもいい、走り回って逃げ回ってもいい、好きな方を選んでください。」
以上のことを810が通訳する。
WH生徒『どのような手でも撃破されなければ良い、ということ?』
航海「理解が早いな。その通り!軽戦車はコソコソするのが売りだ!全力でコソコソしろ!」
数分後、森林
チビ「木の葉の使い方が甘ーい!」
ドン!!シュパッ!
航海「そんな運転で逃げ切れると思うな!」
ダダダダダ
WH生徒(あの人たちどんどん発見していくんだけど…!?)
そんな感想を抱えるWHの彼女、現在すでに撃破された車両の傍らで死んだふり作戦をしている。
航海「…あの作戦は……中々の出来だな」
チビ「懐かしいなぁ…僕も昔同じことをしました…。」
発煙筒でエンジントラブルを演出するⅡ号を見て懐かしい気持ちになるチビ。聖グロ戦で同じ手を使ったものだ。
チビ「まあ、容赦なく撃破するんですけど」
ドン!シュパッ!
さて、そんな姿を尻目に戦車上でサボる男。
俺「みんな頑張ってるなぁ。」
チヘの上に座ってサンドイッチを食べている。マダムの喫茶店の商品だ。
その横にはパンターG型。同じくその上でサンドイッチを食べているのはエルフリーナ嬢。
俺「…メイド服を着ていないようだが?」
エル『戦車に乗るのにあんな服を着れるわけないでしょう!?』
お互い言葉は通じていないが言わんとしていることはなんとなく分かる。
俺「メイド服で戦車に乗って何が悪い!!」
そう言いながら取り出したスマホに写っているのは秋葉原市街戦でのニーソチーム。四人が思い思いの謎のポーズを取り、背後にはチヘ。
エル『……』
若干引き気味である。
俺「おいおい俺の輝かしい青春の一ページをそんな目で…」
不良「おーい、隊長さんよぉー!暇なら軽戦車隊の的になってくれないかぁー?」
俺「おおーいいぞー!と、言うわけだエル、ついてこい、カモン。」
ジェスチャーでついてくるように指示をしチヘに乗り込む。
俺個人の事はどう思ってるかは分からないが練習に対しては非常に素直なエルフリーナ嬢、パンターに乗り込みついてくる。
不良「ふはははははははは!!撃て!撃てぇ!!装填手は手が上がらなくなるまで装填を続けろぉ!!」
もはや弾幕レベルに撃ち込まれまくっているチヘ。軽戦車に必要な行進間射撃の技能訓練と言うことでⅡ号戦車集団に追いかけ回されている。というか御舞等勢も紛れている。
俺「おいこら!何もここまで大量の面子で追い回さなくたっていいだろぉ!!」
チビ「午前中に溜まったフラストレーションを解消です!素直に付き合ってください!」ドン!
俺「そういう理由ならお前まで攻撃に参加しなくていいだろうが!!」
チヘは変態的な機動で回避をしているが、チビの攻撃がネチネチと嫌らしく痛いところを攻めてくる。
加えてバレンタインの75mmもかなり怖い。御舞等の中では射撃下手の部類なため今回の練習では射撃技能訓練を中心にするつもりだったが、かなりいい線行っている。恐ろしく速い砲撃、俺でなきゃ見逃しちゃうね。もう訓練いらないんじゃないか!
ネクラ「…結構効くよこれ!」
キモオタ「というか喧しい!!耳が!」
ガンガンと耳を刺すような音が絶え間ない。こうなったら仕方ない
俺「パンター、盾役頼む」
しれっと並走していたパンターの影に隠れ弾から逃げる。
するとⅡ号軍団の機関砲がパンターに集中した。
エル『ちょっと!?そっちが撃たれ役でしょ!?』
パンターがチヘを引き離した!
俺「こんにゃろー!」
再びパンターの影に隠れるチヘ!
同じ中戦車とは思えない二輌が的の擦り付けあいをする。
相変わらずチビのネチっこい正確な狙撃は痛いし、パンターでも75mmを受け続けるのは良くない。しかもⅡ号達の機関砲も無視できなくなってきた。履帯が壊されるのも時間の問題だろう。このままではジリ貧だ。
まあ的役なのでこのまま撃破されるのが正解っちゃ正解なのだが、黙って撃たれるのも性に合わない俺、そしてエルフリーナ嬢。
俺「エルよ、軽戦車には回避力とか引き際というのも必要だとは思わないかね。」
エル『話の内容はわからないけど、言わんとしてることはなんとなく分かるわ。』
まるで示し合わせたかのように両者が動く。
俺「反撃ぃ!!」
エル『Gegenangriff‼』
両戦車反転、同時に攻撃!
Ⅱ号戦車二輌が白旗を上げる!
チビ「ちょっと!?貴方達的役でしょ!?反撃してくる話が違うじゃないですか!!」
俺「ふははははは!練習でお手軽に首を取れるほど俺は甘くないわ!!」
不良「それじゃ練習にならないだろうが!」
俺「俺達の攻撃を掻い潜って逃げる練習も軽戦車には必要だろ?別に俺を倒してしまってもかまわないけどな!」
チビ「言ったな隊長!Ⅱ号軍団全車チヘの履帯を壊して!!」
不良「負けたほうがメシ奢るルールにしようぜ!奴らが逃げのびたらこっちの勝ちだ!」
俺「上等だかかってきやがれ!!」
走行間射撃で数の多いⅡ号を狙いながら突撃する!
エル『Type 1が敵集団に突っ込んだ!?』
俺「カバーミー!!」
エル『…Ja!』
エル嬢のパンターがチヘに一番近いⅡ号を吹き飛ばす!
俺「仕返しだぁ!!」ダダダダダ
機銃で牽制しながらキモオタが更にもう1輌撃破!
チビ「Ⅱ号戦車残り3輌!不味い!」
不良「全速力で撤退しろ!オレ達はここで食い止める!!」
Ⅱ号戦車達は散り散りに逃げ始めた!
俺「いい判断だ!」
俺はバレンタインとルクスの二輌を相手しなければならない。
俺「頼むぞエルぅ…お前に俺の飯が掛かってる!!」
俺「さて、始めるか!!」
チビのⅡ号戦車ルクスと不良のバレンタイン歩兵戦車、コイツらの近接戦の強さは異常だ。
ルクスはチヘよりも速く、細かく動き装甲の隙間を狙ってくる。とにかく絡みつかれないことが重要。
バレンタイン最大の脅威は彼らの必殺技、ロケットブースターで宙に浮き、装甲が薄い砲塔上面を撃ち抜く『天空飛翔』、ロケットブースターで加速しすれ違う瞬間、側面に弾を叩き込む『エクストリーム流鏑馬』。
どちらの技を使うかはロケットブースターの配列を見れば一目瞭然だ。後方へ噴射する為の配列、『エクストリーム流鏑馬』だ。
俺「厄介、非常に厄介!!」
エクストリーム流鏑馬発動時の速度は並大抵のものでは無い。ニーソチームの反応速度では間違いなく間に合わない。発動前に潰すしか攻略法はない。
俺「バレンタイン攻略法は履帯破壊か、発動直後に弾を叩き込んで照準を狂わせるか。」
機銃を掴みバレンタインの履帯を狙う。しかしチビの奴が上手いこと俺の視界から外れる。
俺「長引くほどあっちが有利になる!やるしかねぇ!」
通信手席の奇策道具箱から三本の瓶を取り出す!
俺「煙幕火炎瓶!」
モクモクとチヘ周辺が煙に包まれる!
チビ「ずるーい!」
俺「仕方ないだろ不良が怖いんだ!」
エクストリーム流鏑馬はかなりギリギリのバランスで成り立っているため、煙の中で成功させるのは難しいだろう。
俺「煙の中でチビを倒す!!」
チヘの砲塔旋回は速い。ある程度ならルクスにもついていける!
耳をすませ、影を追い、ルクスの位置を見極める…
ボフッ!
俺「…バルーンドック!!?」
もはや音だけで分かるほど使ってきた風船デコイ、バルーンドックが膨らむ音がした!
俺「この煙の中でデコイと本物見分けるのは難しい…けど…」
煙の中から黒い影が現れた!
俺「そのデコイにはエンジン音が無い!!」
そのまま車体をぶつけて吹っ飛ばず!
俺「あれ…吹っ飛ばせない!!?」
Ⅱ号戦車型のバルーンドックがチヘの正面にくっついてしまった!
俺「なっ!?ダクトテープでくっついてやがる!?」
キモオタ「…懐かしいですな、ダクトテープ」
マサイ「た、隊長?なんかこのデコイ、光ってません…?」
俺「青白い光…蛍光塗料かこれ!!?」
白い煙幕の中でカラフルな光が際立つ。バルーンには無数のケミカルライトが貼り付けられていた!!
チビ「『バレンタインのプレゼント作戦』!!キヨハラチーム!光に向かって照準合わせッ!!」
不良「了解ッ!!行くぞお前ら気合入れろ!!」
子分・舎弟「「合点!!」」
不良「ロケットブースターの加速を活かしつつエクストリーム流鏑馬よりも高い命中率を誇る新技!」
舎弟「点火ァ!!」
バレンタインの後方から激しい炎が吹き出し急加速を始める!
飛び込む先はケミカルライトの光の根本!
不良「エクストリームたいあたりッ!!!」
ガガァン!!!!
バレンタインの質量全てがチヘの側面に炸裂!!!
シュパッシュパッ!!
一式中戦車、バレンタイン歩兵戦車走行不能!
不良「…うっし!」
チビ「勝ったぁ!!!隊長に勝ったぁ!!!」
俺「マジかァァァァァ!!!」
キモオタ「やられましたなぁ…!」
ネクラ「…くやしいな」
エル「Panzer vor!!!」
チビ「え…」
ズガァン!!!
パンターによる意趣返しのような体当たり!!
シュパッ!
エル『これで全車撃破成功!』
Ⅱ号戦車三輌を片付け、さらに今チビのルクスを撃破!
俺「…ナイスだエルぅ!試合に負けたが勝負に勝った!美味い飯奢ってもらおうか!」
チビ「うわぁぁぁぁ!油断したぁ!!」
不良「何ぃ!!」
俺「チビぃ!お前は非常に優秀な選手だが油断が命取りだぁ!黒森峰戦とかな!」
チビ「うぅ…」
俺「でも、俺が負けたのは事実、お安く済ませてやろう」
俺「…まずいなぁ。まだまだ俺達の方が強いと思ってたけど、知らない間に成長するもんだなぁ…。」
ネクラ「油断はして無かったつもりだったが、見事にやられたな」
キモオタ「来年の御舞等が楽しみですなぁ」
俺「若いもんにはまだまだ負けん!踏ん反り返ってる場合じゃなくなった!」
マサイ「そのためにも、練習ですね!」
俺「その前に安くて美味い店を探す」
キモオタ「食欲優先…」
ケミカルライトは公式戦じゃ使えないけど練習だからセーフセーフ