コードギアス 反逆?の首輪付き   作:Casea

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まんまと騙されてくれたな。
日常話ばかりにしているのはこの俺さ。
そうとも知らずに、おめでたい野郎だ。
だが安心しな、そのうち戦闘書いてやるよ。

敵ACを確認、作者です
敵は日常話を好んで書き、時間を空けさせると危険です
比較的心の装甲が薄いので言葉での攻撃が有効でしょう





03話 獣は意外と繊細である

『霞スミカよ、引退するというのは真か?』

 

『あぁ、色々あってな。それより……その子だな?』

 

『そうだが……本気か?この子を引き取るというのは』

 

『冗談でこんなこと言うと思うか?』

 

『まさか。だが何故だ?光源氏計画でもするつもりか?』

 

『尻穴にレーザーぶち込まれたいか?』

 

『勘弁していただきたいものだな……別に私の養子としても良いのだぞ?』

 

『友人の忘れ形見だからな……』

 

『お前に友人がいたとは驚きだな』

 

『良い度胸だな。尻を出せ』

 

『よせ、この子が怯えているぞ』

 

『誰のせいだと……。はぁ……それにな』

 

『何だ?』

 

『お前の所に置いておいたら重量機好きの大艦巨砲主義になりかねん』

 

『最高ではないか』

 

『やかましい』

 

『まぁ無駄話はこれくらいにしておこう……そら、今日から彼女がお前を引き取る』

 

『初めまして……お前の名前は何と言う?』

 

 

 

『ユウ……』

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 とても懐かしい夢を見た。初めてセレンさんと会った日だ。あの日から僕は彼女と共に生活を始めた。早いものであれから十数年。今僕は彼女の居ない異世界にいる。どうやってこちらの世界に来たのかわからない以上、帰ることも絶望的と考えていいだろう。彼女には二度と会えない。そう考えると自然と涙が溢れてきた。おかしいな、昨日も思いっきり枕を濡らした筈なんだけど。

 

 首輪を付けながら考える。

 はっきり言って僕は彼女に依存している。彼女は僕にとって大切な家族であり、心の支えだ。その支えがない今僕はこの世界で生きていけるのだろうか。不安に押し潰されそうになる。

 

『前向きに……』

 

――わかってるさ。

 

 

 ノックする音で我に返り、慌てて目の涙を拭う。返事をするとカレンさんが入ってきた。

 

「おはよう、調子はどう?」

 

「まずまずです」

 

 長いこと気を張りながら彷徨ってたからなぁ、中々疲れは抜けないみたい。

 目が赤いことに気付いたのか、彼女は心配そうにこちらに尋ねてきた。

 

「……大丈夫?」

 

「昨日思いっきり泣いたから大丈夫」

 

 我ながら女々しすぎる。あぁ、だからたまに口調とかがおかしくなるのか。納得。

 

「そう……。それじゃあ……行きましょうか」

 

 二人で部屋を出る。

 

 

 

 

 昨日のできごとー。

 あの後ルルーシュさんが代わりの服を貸してくれました。少し大きめのを貸してくれたため、ピチピチにもならず着れました。感謝感謝。

 そんでもって長いことシャワーすら浴びれなかったのでしっかり汚れを落としました。綺麗好きなので辛かったな。折角日本だしそのうち温泉にも入りたい。ちなみに服はちゃんとシャワー後に着たよ。

 晩御飯はミレイさんのお爺さんである学園理事長と一緒にお話ししながら食べました。食事はこちらの世界の方が美味しいかな? 決してセレンさんの料理が不味かったわけではないとフォローを入れておく。

 後は考え事をして枕を濡らしながら寝ました。

 おわりー。

 

 

 

 回想が済んだところで生徒会室に到着。そこには昨日のメンバー全員がいた。

 あれ、確か今日休日って言ってなかった? 皆暇なの? そう言ったらリヴァルさんから「お前の為だよ……」って突っ込まれました。失礼しました……。

 今日も皆で僕の今後について話し合ってくれるそうです。特に戸籍。異世界からきました~とか他人に言っても信じてもらえないだろうしね。でも戸籍は何とかするとか言ってたけどどうするつもりなんだろ?

 

「そう言えばユウ、お前は全員にさん付けで呼んでいるが歳はいくつなんだ?」

 

「今年で17歳です」

 

「あ、私達と同い年なんだー」

 

 どうやら同い年だったみたいで呼び捨てで良いと言われました。ついでに敬語もいらないとも。聞けばミレイさんは一つ上、ナナリー(ちゃんはいらないらしい)は中等部らしい。

 

「そういえば疑問だったんだけど、結局イレブンって何だったの?」

 

 昨日聞きそびれたことを聞いておく。

 ここで初めてこの世界の成り立ちやこの国の現状について聞いた。

 

 日本にブリタニアが攻めてきましたー。日本は負けましたー。ここはエリア11となりまーす。

 

 簡単に言うとこんな感じか。んでもってそこのエリア11の人間だからイレブンと。ちなみに日本人にとってはイレブンは蔑称らしい。失礼しちゃうねまったく。

 

「で、結局ユウはイレブンってことになるのか?」

 

「多分ね」

 

「多分って……東京を知ってたってことはあなたの世界もこちらと同じような地理なんでしょ? だったら日本もあるってことよね?」

 

「うん、日本はあるよ。でも僕が日本人かどうかは詳しくは知らないよ。孤児だったし」

 

 その一言で皆やっちゃった感全開になってしまった。まぁ実際どうなんだろうね。日本で両親亡くしたのは間違いないけど……セレンさんにも詳しく聞いたことなかったし。

 

「気にしないでいいよ、僕も気にしてないし。でも日本人だと良いなぁ」

 

「あら、どうして?」

 

 カレンは少し嬉しそうだ。何でそんな嬉しそうなの?

 

「恩師で尊敬してる人が日本人だからね」

 

「どんな人だったの?」

 

「温泉好きの社長」

 

「お前知り合いに社長なんかいたのか!? でかい会社なのか!?」

 

 リヴァル食い付き過ぎ。そんな驚くことかな?

 

「うん。有澤重工43代目社長 有澤隆文さん」

 

「よんじゅう……」

 

「さんだいめ……」

 

 確かに43代目って凄いよね。自社製品を自分で試すってところも男らしい。

 

「まぁそんなわけで僕の戸籍は日本人が良いなぁって思って」

 

「だがはっきり言って、ここでは日本人は虐げられているぞ。それでも戸籍は日本人にするのか?」

 

 ルルーシュの僕を見る表情にはまだ硬さが感じられる。まぁしょうがないか。

 

「ふーん。まぁいいんじゃないの? どうでも」

 

「お前……真面目に考えているのか?」

 

「虐げられた程度で折れるほど柔な心はしてないよ。それに好きなら胸を張れって言われて育ったしね」

 

「覚悟の上か……」

 

「覚悟する必要もないよ。それとも、ここの人達は国籍で人を見下すような人ばかりなのかな? 皆も蔑称である"イレブン"を使っているようだし」

 

「いや……それは昔から言ってたから……癖っていうか……それに俺達はイレブンを蔑称として使ってないし……」

 

 皆困ってるね。言い過ぎたかな? ニーナなんかは僕に対して畏怖の感情があるのは見て取れる。日本人が苦手なのかな?

 

「少なくとも、この学園はブリタニア人も日本人も区別してはいないわ。勿論……私達もね」

 

「もしそうなら嬉しいよ」

 

 その一言でニーナは複雑そうな顔をしていた。

 

 

 その後も色々と話を聞いた。僕の世界とこちらの世界の違い等を教えてもらったり、学園のことを教えてもらったり。午後からは街の案内と服等、必要なものを揃えようという話になった。こちらの世界のお金がないと伝えると学園側で出してくれるということだった。どんだけ太っ腹なの? 涙が出ちゃう。だがその前に昼食をとる為に食堂へ。

 でもその前にトイレ~。ルルーシュが案内してくれた。

 

「それにしても……イレブンねぇ……」

 

 心底げんなりしながらの一言。

 

「まだ何かあるのか?」

 

「いや……イレブンが日本人のことだというなら、あそこで行われてたのは日本人狩りだったのかと思うと複雑で……」

 

「何……? どこの話だ?」

 

 ルルーシュがこの話に食い付いた。さっきまでと少し雰囲気が違うような……まぁいいか。

 

「瓦礫の街だよ。あっちの方かな?」

 

「シンジュクゲットー……お前はその場に居たのか?」

 

「うん。イレブンか!? とか言われて銃向けられちゃったよ」

 

 その時はACに乗ってたけどね。さすがにACのこととかは言えないけど。

 

「よく無事だったな……」

 

「すんでのところで放送が入って助かったよ。えーっと……クロビス? とかいう人の放送」

 

「なるほどな……」

 

 ルルーシュは考え込んでいる。僕なんか不味いこと話したかな。

 

「ユウ……いいか、よく聞け……今の話は誰にもするな……」

 

「理由を聞いても大丈夫?」

 

「あぁ、そこでの出来事は公式では発表されていない。ということはもしそんなことを誰彼構わず話せば、お前の身に危険が及びかねない」

 

 成程、口封じか。どこの世界も裏はあるのね。恐ろしいこって。

 

「わかった、この話は心に閉まって鍵掛けとくよ」

 

 

 皆と合流して食堂で楽しい食事の時間。食事、風呂、睡眠……最高だよね。これだけで僕ストレスなく生きていける自信がある。

 さすがに休日だから人は少ないがクラブ等で人が少しいるみたいで、生徒会メンバーに紛れて見慣れない白髪の日本人がいるからか皆僕のことチラチラ見てる。そんなに見つめられると照れるなぁ。食事しながら気付いたけど、生徒会の皆も僕の顔をチラチラ見てる。いや、顔というか頭?

 

「どうしたの? さっきから僕の頭見てるみたいだけど」

 

「あ、ごめん……ただどうしても気になって……」

 

 シャーリーが申し訳なさそうに言った。一体僕の身に何が……。

 

「その……髪型」

 

 髪型? 何か変? もしかして寝癖?

 

「どういう風になっているのですか?」

 

 目の見えないナナリーも話を聞いて気になったらしい。僕も気になる。

 

「何というか……動物の耳みたいだよね……」

 

 日本人が苦手と思われるニーナも好奇心には勝てなかったのか、少し控えめに言った。

 というか皆見てたのは僕の頭の耳だったのね。

 

「昨日はなかったよね」

 

「昨日までは何日もシャワーとか浴びれてなかったから萎れてたね。耳は昔からだよ」

 

「そういう風にセットしているの?」

 

「いや、乾くと勝手に耳っぽいのが出来る」

 

 昔からこんな状態である。何で乾くと勝手に耳ができるのか? 未だに疑問のままだ。

 

「白い髪や首輪も相まって、何というか……」

 

「獣みたい?」

 

「獣というかペット?」

 

「ミレイちゃん……それはさすがに……」

 

 どこの世界でも僕の扱いは同じらしい。メイさんにも言われたな。「うちで飼いたい!」って。ほいほいついて行きそうになった。綺麗なお姉さんに飼われたいと思うのは男なら普通だよね? だよね? そんなことをダンと話してたら二人揃ってセレンさんにしめられた。

 

「向こうでのあだ名も首輪付きとか首輪付き獣だったよ」

 

「あー」

 

 皆うんうんと納得してた。何か釈然としない……。

 

 

 

 食事後、みんなで栄えた街の中心部へ。大まかに言えばこの栄えた街を「租界」、僕が最初にいた瓦礫の街を「ゲットー」というらしい。租界にはブリタニア人が、ゲットーには日本人が住んでいるそうだ。ちなみに日本人でも役所に届け出を出せば名誉ブリタニア人とかいうある程度自由や身分が保障された存在になれるらしい。スザクも名誉ブリタニア人だと言っていた。複雑な世界だなぁ。

 

 色々見て回り、必要なものを買っていった。服や靴、授業に必要な文具なんかを購入した。

 

「そういえば、ずっとその首輪をしているのね」

 

「そういえばそうだね。大事なものなのかい?」

 

 カレンが発言し、スザクが疑問をぶつけてきた。

 

「うん……とても大切なモノ……向こうで貰った数少ないプレゼントの一つ……」

 

 しんみりしちゃうね。うへへ。

 

「大切なものなのね……」

 

「うん、ここも隠せるしね」

 

 そういってAMSとの接続装置を触る。見られるのは好きじゃないのだ。そう言ったらセレンさんがくれた。これだけが彼女との繋がりと言っても過言ではない。

 

「聞いて良いことなのかわからないけど……何の為にそんなものを……?」

 

 やっぱそれを聞くよね。当然か、普通こんなもの埋め込んだりしないし。

 

「ごめん。それは言えない」

 

 言うわけにはいかない。

 

「これがあんまり好きじゃないのもあるけど……何よりもまだ君達を信用は出来ても、信頼は出来ない。色々良くしてくれてるのにこんなこと言うのはひどいかもしれないけど……」

 

「裏を返せば、それを教えてくれた時が私達を信頼するに値するって思ってくれた証ってことになるのね!」

 

 ファ!? 会長さん何言うてはるんですか!? あれ? でもそういうことになるの? どうなの?

 

「話してくれる時を楽しみに待っていますね、ユウさん」

 

 ナナリーもやめて! 純粋な心の目で僕を見ないで!

 

 今後はしっかり考えて発言をしようと誓い、今日の買い物は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 晩御飯はルルーシュとナナリーに誘われて二人と一緒にとることとなった。ルルーシュは甲斐甲斐しくナナリーの食事を手伝っている。

 

「どうした? 顔がにやけているぞ」

 

 おっと見ていたらつい顔がにやけてしまっていたらしい。

 

「ごめん、昔を思い出して……」

 

「ユウさんにも妹さんがいたのですか?」

 

「いんや。どっちかっていうと僕が弟って感じだったかな」

 

『ほら、口の周りについているぞ』

 

 小さい頃、そういって僕の口を拭いてくれたっけ……。またしんみりしてしまった。

 

「家族に会えないというのは……やっぱり淋しいですか……?」

 

「そうだね……昨夜どころか今朝まで少し泣いちゃったよ」

 

 ナナリーが暗い顔をして俯いてしまった。自分がルルーシュと離れ離れになった想像でもしてしまったのだろうか。

 

「大丈夫だよ。君達兄妹なら離れていても、きっと心は繋がってるはずだよ」

 

 僕と彼女は繋がっていないけど、きっとこの二人なら。

 

「ユウさん……。はい……! ありがとうございます」

 

 良かった笑顔になってくれて。かわいい子には笑顔が一番ってね。あ、これロイさんの台詞でした。あの時は最高にカッコよかったよね。リリウムに対してのセリフじゃなかったらだけど。王の爺さんの額に青筋が立ってましたよ。

 

 

 

「ユウ」

 

 食事も終わり二人におやすみを告げて部屋を出るとルルーシュに呼び止められた。

 

「さっきはすまなかったな」

 

「こっちこそごめんね。なんか重い空気にしちゃって」

 

「お互い様さ。気にするな」

 

 そこには最初の時程警戒は感じられなかった。少しは信用してくれたのかなと思うと妙に嬉しかった。ナナリーのことがあったからかな?

 

「それじゃあ……また明日」

 

「あぁ……また明日」

 

 

 

 不安だった。この世界で上手くやっていけるか。でも少なくとも生徒会の皆とは上手くやっていけそうだ。

 彼女の居ない世界。まだまだ色々と不安は残ってるけど、前向きに生きて行くことが出来そうな気がする。

 

 寝巻に着替え、首輪を外しベッドの傍の机に置く。

 

 

 今日はぐっすり眠れそうだ。

 

 そんな気がした。

 

 




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