てくらい首輪付き視点が少ないですね。頑張って予定通り進めていこうと思います。次から。
ACfAではクレイドルに約2000万人程住んでいるそうですが、ゲーム上ではとてもそんなに住んでいるようなサイズには見えません。コールドスリープカプセルに入って、仮想空間で人々は生活している。という説もあるみたいですが、この作品では2000万人が余裕を持って生活出来る程のサイズということで進めています。
アッシュフォード学園のクラブハウスにはルルーシュ・ランペルージと妹のナナリーが住んでいる。ルルーシュにとって、ナナリーと二人で過ごす時間はとても大切なものであった。
二人で夕食をとりながら今日の出来事について話している。
「その方は日本人なんでしょうか?」
「日本人のような顔立ちではあったけど……話を聞いてみるまでは何とも言えないな」
結局あの後は解散となった。先生によれば数日は起きない可能性があるそうなので、少年は保健室に寝かせておくということになったのだ。場合によっては病院へ搬送することも考えたが、特に怪我や病気の兆候もないというのでとりあえずは見送りとなった。
「仲良く……なれるでしょうか?」
「大丈夫だよ、スザクとだって仲良くなれたんだ。きっと友達になれるさ」
「はい……!」
ナナリーはとても嬉しそうに返事をした。
はっきり言って根拠はなかったが、ナナリーの悲しむ顔は見たくなかった。
もし仮に自分達に仇なすような存在であるならば……いくらでやりようはあるさ。
「お兄様? どうかなさいましたか……?」
気付けばナナリーが心配そうに尋ねてきた。
「何でもないよ」
そう言ってナナリーの頭を優しく撫でた。
――――――――――――――
~迷子の首輪付きが拾われた翌日~
カレンは昨日自分が助けた白髪の少年のことについて考えていたら、何時の間にか放課後になっていたことに驚いた。
昨日あの後に生徒会メンバー全員に、彼が自分に対し警戒している雰囲気があったということを伝えた。それがブリタニア人に対しての警戒なのか、それとも人間自体に対してのものなのかはわからないが。どちらにしても注意するに越したことはない。だが少なくとも昨日の自分の言葉は彼に伝わったと信じたい。
生徒会に顔を出すと今日は昨日のメンバーに加え、ナナリーも来ていた。皆少年のことについて話していた。彼は何者か、何故学園内で倒れていたか、今後彼をどうするか、etc……。
カレンは少年の様子を見てくる旨を伝えて保健室へ向かっている最中である。
歩きながらまた少年について考える。彼の反応からしてブリタニア人にあまり良い印象を持っていない可能性もある。もしそうなら自分達の活動に手を貸してくれたりしないだろうか。彼が着ていたのはパイロットスーツのようなものであったし、抱きかかえた時にわかったが彼は見た目以上に筋肉がついていた。もしかしたら彼はKMFの搭乗経験や、生身での実戦経験があるかもしれない。
気付くと保健室前まで来ていた。考えに耽りすぎたかなと思いつつ保健室の扉を開け中に入るとベッドはもぬけの殻であった。
「居ない!?」
カレンは焦ってベッドへ近寄ると何者かに後ろから口を塞がれた。だが焦らずに肘を後ろの人物の腹目掛けて一発、拘束が緩んだところへ振り向きざまに相手の太股へローキックを叩きつける。相手がバランスを崩したところでベッドに押し倒し、馬乗りになり相手の両腕を封じ抑え込んだ。案の定、相手は白髪の少年であった。目の前の少年は昨日と同じくその瞳は警戒の色を宿している。
「落ち着いて。私達に敵意はないわ」
諭すように。やさしく。すると少年の体から力が抜けた。
「わかりました……好きにしてください……」
この場面でその一言はやめて欲しい気もする。こんな所を誰かに見られたら誤解され……
「カレーン! 彼の容体はど……う?」
「どうしたのミレイちゃん……? 急に止まって……へ?」
扉を開け入ってきたミレイとニーナが中で見たものは、普段大人しいカレンが少年をベッドに押し倒し馬乗りになっている現場であった。
まるで時が止まったかのように静かな空間であったが、その静寂を破るようにニーナが顔を真っ赤にしてあたふたしだした。
「あ、あの! えっと! その! ……じゃ、邪魔してごめんなさい!」
ニーナはミレイの腕を掴むと急いで出て行ってしまった。
「誤解ですってぇ!」
カレンの叫びが保健室内に響き渡ったのであった。
生徒会室に少年を連れて行き、全員で話を聞くことにした。
「いやーごめんごめん!」
「ごめんなさい……」
「いえ……誤解が解けて何よりです……」
会長とニーナの謝罪を受け入れる。誤解が解けて本当に良かった……。
「それじゃあそろそろ彼に対する質問に移っても?」
ルルーシュにそう急かされ皆が気を引き締めた。ルルーシュの目の前に机を挟んで少年が座っている。少年の傍の椅子には彼を連れてきたカレンと念のためにスザクが立っている。
「それで……お前は何者だ? どこから来た? お前は……イレブンか?」
イレブンと言われた際に少年がピクリと反応を示した。何とも複雑そうな顔をしていた。
「いや……イレブンではありません」
彼が日本人であることを期待していた私は落胆した。顔に出すようなことはなかったが。
「ほう、そうか。ではお前は……」
「待ってください。こちらも一つ聞きたいことがあります」
「何だ? 言ってみろ」
少年はとても不思議そうな顔をして疑問を投げかけてきた。
「どうしてみんなイレブンだ何だ聞くんですか?」
「どうしてって……それはお前が……」
「いや確かに僕はあの作品好きですけど……そこまで熱狂的ファンでもないですよ?」
「は?」
全員の頭にクエスチョンマークが浮かぶのが見えた。勿論私もだ。……熱狂的ファンって何のこと?
「え?」
彼も何が何だかよく理解できていないご様子。ルルーシュも珍しく狼狽えている。
「待て……お前は一体何の話をしている……?」
「え? だからイレブンの……」
「そうじゃない……お前の言うイレブンとは一体何だ」
「え? そりゃぁイレブンって言ったら……」
「"カミナリ親父イレブン"の熱狂的ファンのことでしょう?」
ルルーシュが溜息をつき、イラついているのが目に見えて分かった。
「お前……ふざけているのか?」
「それはこちらの台詞です。今イレブンなんてものも持ち出すだなんて……馬鹿にしているのですか?」
少年も少し辛辣に言葉を返した。言葉こそ丁寧だが声からは明らかに怒りが滲み出ている。
「それとも……これが企業連なりの尋問方法ですか?」
聞きなれない単語が出て来たことで更に混乱することとなった。
「ちょっと待て……! お前は何か勘違いしていないか? 俺達はその企業連とかいうものでもないし、尋問しているつもりもない。あくまでも質問だ」
「企業連じゃ……ない……?」
「そもそも何だ、その企業連というのは」
今度は彼の頭にクエスチョンマークが見える。
「企業連を知らないのですか……?」
「企業連というと……企業の連盟か何かか? だとすると、余程マイナー企業の集まりなんだなそれは?」
少し馬鹿にしたような物言い。
「もしかして……今のクレイドルではそういった情報は全て秘匿されているのですか……?」
「クレイドル? また聞いたことのない単語が出て来たな……」
彼から次々に知らない単語が出てくる。彼は彼でかなり混乱しているようだが。
「ここはクレイドルの中ではなかった……?」
彼はここがクレイドルという所の中だと思い込んでいたようだ。
「クレイドルというのが何かは知らんが、ここはエリア11、トウキョウ租界の一角にあるアッシュフォード学園の生徒会室だ」
「トウキョウ……東京!?」
彼は東京という言葉を聞いた途端、座っていた椅子が吹き飛ぶくらいの勢いで立ち上がり、左腕についている小さな端末みたいなものをいじり始めた。ウェアラブル端末というやつだろうか?
「なっ!?」
驚いた表情のまま固まってしまった。何が表示されているかはわからない。
「馬鹿な……ありえない……」
――――――――――――――
話を聞いているとここはどうやら東京らしい。それを聞いた瞬間驚いて立ち上がった。その勢いで椅子が倒れてしまったが今はそんなものを気にしている場合じゃない。急いで端末を使ってコジマ粒子による汚染率を調べる。だが信じられないような結果が返ってきた。コジマ粒子は一切検知されていなかった。ありえない。地上では汚染が酷くて普通には生活できないはずだ。故に地上の建物は多少の汚染対策が施されており、屋外よりは汚染濃度はずっと低い。それでも完全には遮断できないはずだ。だがここはコジマ粒子が一切検知されない。
考えられる可能性は三つ。
一つ目、彼らが嘘を付いている可能性。 だが彼らが嘘を付いているような感じはしない。
二つ目、コジマ粒子を完全に遮断できる技術が開発されている可能性。 これもありえないだろう。そんなものがあるなら自分の耳に届いているはずだ。
そして三つ目……
「聞きたいことがあります」
「何だ?」
「アーマードコア、国家解体戦争、リンクス戦争、一つでもご存知の単語はありますか?」
目の前の少年だけでなく、部屋にいた他の人々にも目配せして返答を促す。だが返ってきた反応は皆同じく「知らない」であった。
「その言葉に偽りはありませんね?」
「あぁ、ない。嘘だと思うなら調べてみようか? ……ニーナ!」
目の前の少年がコンピュータの傍に座っていた眼鏡の少女に調べてみるよう促した。
「えーっと……国家解体戦争……でしたっけ?」
「はい、お願いします」
「……うーんと……出ませんね……」
頭から血の気が引くのが分かった。最も危惧していた事態になってしまった。あまりのショックに倒れた椅子を元に戻す気力もなくその場に座り込んだ。もはや口からは自嘲するような笑いしか出てこない。
「どうしたの……?」
近くの椅子に座っていた赤い髪の、さっき僕をぼこぼこにした少女が心配そうに尋ねてくる。
「……先程僕がどこから来たか聞いてきましたよね?」
「どうやら僕は……」
――別の世界から来たみたいです。
――――――――――――――
別の世界。この少年はそう言った。ルルーシュはさすがに失笑を禁じ得ない。
「おいおい? 何を言い出すかと思えば……」
他の生徒会のメンバーもさすがにこれはジョークだと思ったのだろう。皆大なり小なり笑っている。
「さすがに別の世界ってのは想像してなかったなぁ」
カレンもさすがにこれはないと思った。もしかしたら彼なら、そう思ったのだが。
(見込み違いだったかなぁ)
「それで? 異世界からの使者はどうやって自らの出身を証明していただけるのかな?」
ルルーシュはまるで舞台の上の役者のように仰々しい喋り方をした。
「証明になるかはわかりませんが……一つだけ見せられるものがあります」
「何だ?」
少年はうなじの辺りを指で軽く小突いた。
「これぐらいしか見せられる証拠はありませんが、見るのは一人だけにしてください。あまり見せたくないので……」
「一人か……。カレン、確認してみてくれないか」
「私……? えぇ、良いわ」
少年の傍に座っていたカレンが指定され、少年の後ろに回った。少年が首輪を外してうなじを隠している髪をかき上げると、そこには本来ある筈がない物体が存在していた。
「何……これ……?」
そこには機械が埋め込まれていた。
「……カレン?」
「何々? 何があったんだ?」
カレンの様子がおかしいことからシャーリーは心配そうに尋ね、リヴァルは興味津津と聞いてきた。
「機械よ……」
「機械?」
「何の為かはわからないけど……うなじの辺りに機械が埋め込まれているわ……」
その一言で全員が凍り付いてしまった。今まで喋っていた内容から、彼は悪ふざけをしているイレブンという印象でしかなかった。
だが彼のうなじには見たこともない機械。見ていると本能的な不安にかられるような、何か禍々しいモノのように感じられた。
これは何? 何故こんなものをこんな所に入れる必要がある?
「もういいですか?」
少年の一言で我に返った。
「え、えぇ……ありがとう」
彼は再び首輪を付けた。髪と首輪、それから来ていたスーツで埋め込まれていた装置は完全に隠れてしまった。
「こんなものしか見せられそうな証拠はありませんが……信じていただけますか?」
ルルーシュは押し黙った。自分で直接見たわけではないが、レジスタンスとして行動しているカレンがあれだけ狼狽えたのだ。少なくとも見て楽しいようなものでないだろう。
「カレン、君の見解は?」
「私は……彼の言い分を信じるわ」
「俄かには信じ難いが……君がそういうなら信じるしかあるまい……」
ルルーシュはカレンの言葉を信じ受け入れた。その際シャーリーが少しムッとしてルルーシュを見ているが当然本人は気付かない。
「しかし……彼が異世界人だとするならどこに行けば良いんだろう?」
スザクが最も大事なことについて触れる。彼が異世界人だとするなら、この世界にはどこにも帰る場所が存在しない。だとするならどうするか?
「警察にでも引き渡せばどうにかしてくれるんじゃないか?」
「駄目よ……! 彼は唯でさえイレブンと間違えられるような容姿をしているのよ? しかも首に得体の知れない機械まである。まともな扱いを受けるとは思えないわ……」
リヴァルの発言にカレンは反論する。
「ならどうする? 俺達で匿うか? 親に隠れて動物を飼う子供のように? それも素性も何もかもわからない異世界……」
「会長チョップ!」
ルルーシュが言い切る前に会長のチョップが頭を襲った。
「もう! 折角途中まで良いアイデアを喋ってたのに!」
「まさか会長……」
「その通り! うちの学園の生徒として迎え入れちゃえばいいじゃない! ルルーシュ達みたいにクラブハウスに住み込んで通えば問題ないわ」
「会長! ナイスアイデア!」
「こんなこともあろうかと事前にお爺様に許可をもらってあるわよ」
「はぁ……どうなっても知りませんよ……」
ルルーシュは深く溜息をついた。
――――――――――――――
何か知らぬ間にどんどん話が進んでおります。僕のことを警察に突き出したりする気がないみたいだから良いんだけど、話的に僕はこの学園に通うことになるのかな?
「あ、ごめんごめん。勝手に話を進めちゃったけどそんな感じ良いかしら?」
会長と呼ばれていた少女が話しかけてきた。
「はい、ありがとうございます」
「よし! じゃあそういうことで! えーっと……そういえば名前聞いてなかったわね」
すっかり忘れていた。
「そういえばそうですね。僕の名前は……」
言おうとした瞬間に頭に痛みが走った。名前を言おうとしただけなのに。忘れているわけではない。だが何故か自分の名前を名乗ってはいけないような気がした。何故だろう? 目の前の彼らが信用できないとかそういうわけではないのに。
「どうした……? 今度は記憶喪失か?」
僕がいつまでも名前を言わないのをおかしく思ったのか、僕の正面にいる少年が尋ねてきた。
「ごめんなさい……少し頭痛がしただけです……」
「僕の名前はユウ・ヘイズといいます」
その後は一人一人自己紹介していってくれた。
僕に尋問、もとい質問していたのがルルーシュさん、僕と同じく日系顔の少年がスザクさん、興味深そうに僕を見ていたのがリヴァルさん、会長と呼ばれていたのがミレイさん、
髪が長く明るい少女がシャーリーさん、おさげに眼鏡の少女がニーナさん、車椅子に乗った盲目の少女がルルーシュの妹のナナリーさん、僕をぼこぼこにした赤い髪の少女がカレンさん、ということでした。
自己紹介が終わったところで今後僕が住むことになるというクラブハウスへ向かい、みんなで掃除したり、必要なものを運び込んでくれたりした。えぇ人達やわぁ……。
「彼の世話はみんなでするとして、世話係主任はカレンに任命します!」
「え? 私ですか?」
「彼を最初に拾ったのはあなたでしょ? それに最近やっと学校に顔を出せるようになったみたいだし、リハビリも含めて……ね?」
カレンさんは少し考えているようだ。そりゃそうか。僕もいきなり異世界人の世話しろとか言われたら迷うだろうし。
「……わかりました。よろしくね? ユウ」
そう言って彼女は手を差し出してきた。
「よろしくお願いします」
僕は彼女の手を握りって握手した。手は柔らかくてすべすべでした。神様……ありがとう。
詳しいことはまた明日話すということで今日はこれでお開きとなり、皆は部屋から出て行った。と思ったら、カレンさんが残っていた。
「えーっと……保健室のことなんだけど……」
保健室のこと……? あぁ僕がぼこぼこにされた時のか。まだ体調が完全ではなかったことに加えて完全に油断していた為に彼女に負けてしまった。断じて僕が弱いわけではない。……本当だよ?
「あのこと……皆には言わないでもらえる……? 事情があって、私学校では体が弱いってことになってるから……」
なるほど、病弱キャラか。女の世界には色々あるんだろうな。うん。僕は誰にも喋らないことを誓った。
「ありがとう」
礼を言われるようなことではないような気もするけど、まぁいいか。素敵な笑顔も見れましたし。眼福眼福。
「それじゃあ、また……あっ!」
彼女は出て行こうと振り返った際に倒れそうになってしまった。瞬時に腕を掴んだは良いが、僕もそのまま倒れてしまった。僕の力が弱いわけじゃないよ? 今はただ貧弱になってるだけだよ?
なんとか僕が下敷きになったことで彼女が地面に激突するのは防げた。ナイス僕。背面は痛いけど、前面は天国です。やだ……この子意外とグラマラス……。
「いたたたた……。ごめんね……」
ん? 何か似たようなことが今日あったような……? もしかするとこの後……。
「ごめんごめん、言い忘れてたんだけど今日の夜……」
そう言いながら扉からヒョッコリ顔を出したミレイさん。やっぱりにゃー。当然カレンさんはまだ僕の上にいるわけで。
「あ、あの!? 会長!? 誤解しないでください!? これは躓いて!」
必死に言葉を紡ごうとするも上手くいっていないご様子。ミレイさんは意地悪そうににやけながら一言。
「ごゆっくり~」
そしてフェードアウトしていった。
「誤解ですってばぁぁぁぁぁぁぁ!!」
カレンさんの心からの叫びが響いた。多分学園全体に響いたんじゃない? 大きさ知らないけどね。
(楽しくやっていけると良いなぁ)
カレンの叫びを聞きつつのんきにそんなことを考える首輪付きであった。
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