ガウェインのハドロン砲 > GAバズーカ 重二膝蹴り
皇暦2010年8月10日。神聖ブリタニア帝国は日本に対し宣戦布告。日本は敗れ、占領された。
属領となった日本はその名を奪われ、新たに「エリア11」という名を付けられた。
日本人は「イレブン」という蔑称で呼ばれ、その自由を奪われた。
日本侵攻から7年後。ちょうど首輪付きがこちらの世界に来た日。
エリア11総督、クロヴィス・ラ・ブリタニアは何者かにより暗殺された。
その後、ゼロを名乗る仮面の男がクロヴィスの暗殺を自分の犯行と宣言し、ブリタニアに対して戦いを挑んだ。
~アッシュフォード学園大学部~
白いKMF、ランスロットを前に三人の男女が会話している。
「いや~これでようやく色々と詳しく聞けるねぇ~」
眼鏡をかけた技術者の男がモニターを見ながら嬉しそうに話している。
「初めて出撃した時には詳しくは聞けなかったからねぇ」
「ランスロットのことも、これのことも」
モニターに移っているのはランスロットを圧倒していた黒いKMF。
「あの後クロヴィス殿下殺害の容疑をかけられてしまいましたしね」
「すみません……。あの時詳しくお話できれば良かったのですが……」
「しょうがないわよ。あの時は怪我もあったんだし」
「そんなことより是非とも聞きたいねぇスザク君。この黒いKMFのことについて」
「ロイドさん……! そんなことって……」
「大丈夫ですよセシルさん。それよりもこのKMFですが」
モニターを見ながら思い出す。あの黒いKMF。
「自分はあの機体も第七世代ではないかと考えているのですが」
自分が搭乗したランスロットと互角以上に渡り合ったあの機体。
「確かに、想像以上の性能でしたね」
「ブレイズルミナスなんか壊れる寸前だったからねぇ」
膝蹴りを受け止めた時の衝撃で大分ダメージを受けていたらしい。あれ以上攻撃を受けていたら……。
(考えたくないな)
気を取り直して戦った時のことを再び考える。
「スラッシュハーケンのワイヤーを切断したことにも驚きました。自分も先日の純血派の方のKMFと戦った際に切断こそしましたが、あれはMVSあってのものですし」
MVS、メーサーバイブレーションソード。高周波振動により切れ味を高めた近接戦闘武器である。
「見たところただのブレードにしか見えないですね」
「確かに武装面も気になるけど、僕が気になるのはここだよ」
ロイドと呼ばれた眼鏡の男が端末をいじると、黒いKMFが親子を助けたところが映った。
「この映像……ですか?」
セシルと呼ばれた女性が不思議そうに映像を眺める。
「スザク君。君はこの場面のどこが凄いかわかるかな?」
「……この跳躍力……ですか?」
「せいか~い! よくわかってるねぇ~!」
ロイドはとても嬉しそうに答えた。
「この機体を見る限り、スラッシュハーケンは装備していない。スラッシュハーケンを使わずにこれだけ跳んだんだ。こんな重量機が、ね。」
「そんなことが可能なのでしょうか?」
「目の前で見ていた君が一番良くわかってるんじゃない?」
「……。」
ランスロットですら高く跳ぶにはスラッシュハーケンを地に打ち込んで、その反動で跳躍する。なのに何故あの機体はあれだけ高く跳べた?
「もしかしたら"跳んだ"のではなく"飛んだ"のかもしれないけどねぇ。それを判別するには材料が足りない」
「こんなこと言うのはスザク君には気の毒かもしれないけど、是非とももう一度遭遇して欲しいところだねぇ~!」
技術者というのは皆こうなのだろうか? とスザクは心の中で尊敬半分呆れ半分に思った。
「それにしても、ずっと黒いKMFと呼ぶのは面倒ですね」
「じゃあ何か仮の呼び名でも付けようか」
「……ミスト」
「え?」
セシルさんが小さな声で呟いた。
「肩の所を見てください。先程ズームしてみたのですが……」
左肩に赤い首輪の周りを霧が立ち込めているようなエンブレムがしてある。
「なるほどねぇ。急に現れ、そして消えるように居なくなった。まるで霧のように。ミストというのは言い得て妙だねぇ。ミストにけって~い」
「ミスト……」
ミストという名の付いたKMFのエンブレムを見る。首輪の周りの霧はまるで首輪を守るように、隠すように存在している。
「さて、ここら辺で休憩にしましょうか。ちょうど試しに作ってみたお菓子があるんです」
そうセシルが話してその場を離れると、ロイドが顔をしかめた。
「あー……スザク君? 君はセシル君の料理を食べるのは初めて?」
「はい……そうですが……?」
「僕はちょっとやることがあるからこれで……。……頑張ってね」
「はぁ……?」
ロイドはスザクの肩を軽く叩くと足早にその場を離れていった。
数分後、スザクはその場に残ったことを後悔した。
――――――――――――――
不味い。非常に不味い。食べ物の話じゃないよ?
初日の戦闘から何日経っただろうか。あの後から今まで大変だった。
最初にコジマ粒子の汚染濃度を調べたが、一切検知されなかったところを見るとクレイドルの中なのだろうか? 地上がコジマ粒子で酷い汚染状態な今、汚染がないのは高空プラットホームであるクレイドルくらいなものだ。だとするとこの廃れた街は何なのか? そもそもクレイドル内で戦闘をしているということすら初耳であった。
実は別の世界とかだったりしてねーはっはっは。……んなあほなことあるわけないか。
機体は隠しました。呼んだのはいいけど、本当に呼んだだけ。戻せませんでした。帰れよー。
飛行したりして、下手に目立てば企業連に見付かりかねない。その為に機体を隠す場所を探した。瓦礫に半ば埋まりかけた、おあつらえ向きのビルがあったためそこに機体を隠し、機体の光学迷彩を起動させて置いておいた。この光学迷彩、普段から使えれば良いんだけどね。エネルギーの消費が激しすぎてシステム以外が完全に停止した状態でしか使えない。がっくし。
次に格好。パイロットスーツで歩いていては機体を隠した意味がない。故に代わりの服が必要だった。汚染もなさそうだしね。
でも代わりの服は見当たらないし、スーツの下はパンツ一丁でした。いやん。
おかしいな。普段は上半身にも何かしら見につけてたはずなんだけど。
仕方がないのでスーツのままで行動することにした。あ、ヘルメットだけは機体にしまっときました。変わりにインカムをつけてます。
ちなみに僕はボクサーパンツ派です。フィット感がいいよね。
食料は問題ないかな? 腰に装備してあるポーチに数日分のレーションと救急キットが入っているし。まぁこれだけあれば大丈夫だろう。等とその時は思っていた。
そして何日かたった現在、僕はふらふらです。眠気と疲労で。見知らぬ土地なため落ち着いて休むことは出来なかった。ACの中で休んではいたけれど、いつ何が起きるかわからなかったので気を張りっぱなしだった。いくら光学迷彩が機能していても、ACとかに見られれば一発でばれるし。
セレンさんとも未だ連絡が取れていません。
この街には妨害電波でも流れているのか? ってくらい通信が出来ない。少し遠くに見える栄えた街。あっちに行けば連絡手段があるかもしれない。だが僕はパイロットスーツ。こんな格好では人前に出れない。故に瓦礫の街で通信出来る場所を探していたのだが上手くいっていない。
そして今日僕は決意したわけです。あの栄えた街に行こうと。かなりきつい状態だけどね……。
こんなにきつい思いしたのはいつ振りだろう。セレンさんに拾われる前だから……10年ちょっと前かなぁ……。いやでも、セレンさんの特訓の方がきつかった気がするなぁ……。懐かしいなぁ……。
はっ! いかんいかん。今のはどう考えても走馬灯だ。さっさと行こう。
極力人目を避けながらふらふらと街を彷徨っていたが遂に限界が来た。足に力が入らずその場に倒れた。
あぁここは何処だろう……。彷徨ってたら何時の間にか変な所来ちゃったけど……。なんか広い場所だなぁ……でっかい建物だなぁ……。何かで見たことあるなぁ……あれだ、貴族のお家みたい……。
――――――――――――――
夕暮れの中、制服姿の少女が歩いている。
「まったくあの人は……」
赤い髪をした儚げな少女、カレン・シュタットフェルトである。だがその儚げな容姿に似合わず口から出た言葉は辛辣なものであった。
アッシュフォード学園生徒会会長であるミレイがまた思いつきで開催した企画。その後片付けの最中である。
「はぁ……ほんと、何で病弱キャラなんかにしちゃったかなぁ……」
溜息をつきながら後悔する。都合上、彼女は学校で病弱を装ってはいるが、本来の彼女は活発な性格であるが故にお淑やかに振舞うのは非常に疲れる。それは今現在も例外ではなく、知り合いから手を振られれば微笑みながら軽く手を振る。手に抱えた荷物もゆっくりと運ぶ。本当ならこんな荷物は軽く走って片付けてしまいたいのだが、彼女が作ったキャラがそれを許さない。
いっそのことカミングアウトでもしてしまおうかと冗談半分で考えていると目の前に人が倒れているのを発見した。急いで駆け寄って荷物を床に置きその人物を抱き起こすと、目を引くような白い髪をした少年であった。
だが彼女の目を奪ったのはその少年の顔立ちであった。
(もしかして……日本人!?)
自分と同じ日本人のような顔立ちの少年。
「ねぇ、大丈夫!?」
もし日本人であれば。自分と同じ日本人であるのなら助けないわけにはいかなかったカレンは必死に声をかけた。
すると少年は重々しく目を開いたが、その目には明らかに警戒の色が見られた。
……無理もない。はっきり言って日本人にとってブリタニア人は憎むべき敵である。日本人とブリタニア人のハーフであるカレンを敵だと思ってしまうのも頷ける。
少年は震える手でゆっくりと自らの右太股の辺りに手を持って行く。カレンはその動きを見て彼が何をしようとしているのか理解し、その手を軽く抑え優しく話しかけた。
「大丈夫。私はあなたの敵じゃないわ」
少年の目をしっかりと見て。
「信じて」
彼女の気持ちが通じたのか、少年はゆっくりと目を閉じ気を失った。相当長い事気を張っていたのだろうか。
さて、この少年をどうすべきか。ブリタニア人に対して警戒している以上は自分の所で匿うのが一番かとも考えたが、生徒会の面子ならば受け入れてくれるだろうと心のどこかで考えた。
この少年のことについては色々と気に掛かる部分はあるが、それは追々聞いていけば良いだろう。
保健室に生徒会のメンバーが集まった。ベッドにはカレンが見つけた白髪の少年が寝息を立てている。
「先生が言うにはただの疲労と寝不足ですって」
「そうですか……良かった」
会長のミレイがそう言うとカレンも安心して答えた。
「イレブン……なのかな……」
眼鏡の少女、ニーナは少年に対して恐怖心を抱いている。
「確かにそれっぽい顔だよなぁ」
生徒会のメンバーであるリヴァルは興味津々に少年を眺め。
「でも何で学校の中で倒れてたんだろう? スザク君はどう思う?」
シャーリーという名の少女は疑問をスザクにぶつけた。
スザクはアッシュフォード学園に入学し、生徒会に所属していた。
「そうだなぁ……一度話してみないことにはなんとも……」
学園にイレブンが全く居ないわけではないが、そこまで多くない。その上この目立つ容姿であるなら嫌でも目に付くはずだ。
そんな各々を余所に、ルルーシュは少年をじっと見つめていた。
(耳には小型のインカムを装備、着ているのは……パイロットスーツか? だとするとこいつはKMFの操縦者。だがこいつの顔立ちは……)
少年について思考する。
(名誉ブリタニア人にはKMFの搭乗許可が出ない。だとするとテロリストか、日本解放戦線か、それとも中華連邦の人間か……?)
(まぁいずれにせよ……利用できそうなら駒に使う。邪魔になるようなら……)
――始末する。それだけだ。
一話辺りの字数はどのくらいあるといいんでしょうね。
その辺も手探り状態です。
感想や批判等ありましたらコメントお願いいたします。