閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

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知ってるかしら?
オンラインサバイバルゲームは早く来たユーザーの方が有利なのよ。
つまり――



世界紛争

「ヒャッハー!!」

 

大量の隕石が降り注ぎ、天に届きそうな山々を根元から、そして天空山から全てを破壊する。

元々不安定な地形であるここは、ダラ・アマデュラが身を翻すだけで崩れ去ってしまう。

 

隕石の土煙の中から、蛇は蒼い粉を撒きあげ大気を唸らせながら空へ舞い上がる。

 

遥か彼方まで登り、その姿が小さくなると、先程落下した岩石、隕石と破壊された山々が浮き上がり大気圏を突破していく。

 

そして大きな声が鳴り響く。

 

「彼女の制止が無い……という事で貴様達に我が名を名乗らせて頂こう。」

 

「光速弾、放て!!」

 

赤い尾を引きながら弾が飛ぶ。

しかしガラスが割れるような音と共に尾は消えた。

飛べる者は出来るだけ散りながら空を飛び上がる。

 

「我が名は『ウロボロス』!六度人類を滅ぼし、地となり海となった者である!キリッ!」

 

再び石が蒼い光を纏って落下する。

 

「各員、回避行動!」

 

落下してきた隕石は都合のいいエネルギーだけを取り、回避して上昇する人間を速度を落とさず追尾する。

 

「ぬわぁっ!」

「くっそ、壊せ……ない!?ぎぃぃ!!」

 

「ブリザード!!」

「呪縛、地縛貫!」

「我、全てを操る者なり。龍脈の一部停止を命ず。」

 

物理的に届かないし効き目が薄い。

 

ダラ・アマデュラが下を向き、急降下を始める。

それに続く様に全ての隕石が降下を始める。

黒い空を彩る凶星はとても幻想的だった。

 

「デザート!!」

「顕著せよ、泪の川よ。」

「優越に破滅を。」

 

山を切り裂く程に巨大な鎌が振り下ろされるが、ダラ・アマデュラの進路を変えることさえ出来ない。

 

抗う事も出来ずに衝突――は防がれた。

光の壁が衝撃を吸収する。

 

「やーっと、出たのじゃな……」

「愛の元に、人に泰平の世を。」

 

慈愛の神のヴェーライによる力で体当たりの衝撃は吸収された。

腕を振り、その光を沢山の光線に分けて大多数の隕石を爆砕する。

 

そのままダラ・アマデュラに曲がり、咄嗟に浮かび上がった蒼炎の球のぶつかり合う。

 

「それが人の求める救いか?」

「愛は等しく、そして厚かましい物。」

 

ヴェーライは大きく飛び退き、岩の上で翼を広げる。

そして両手でパンと叩き、ハートを作る。

 

「安心があって育つ子達なの。」

 

その形のままピンク色の波動が複数回放たれる。

ダラ・アマデュラは波動を食いちぎり、そのまま神と岩を呑む。

 

だが、暴力的な力は能動的な力を抑える事は出来ない。

息をする様に瞬間移動していた。

 

「『盲目なる感情』。『自棄的破――チッ!」

「――おやおや、愛の女神は優越感に恋してるのかのう!」

 

落下して埋まっていた隕石が一斉に浮く。

尖った山々を縫う様に逃げる女神を隕石が追い、その後ろをダラ・アマデュラが山を破壊しながら追う。

ダラ・アマデュラが身を捩ると、周りを舞う蒼い粉が光を強くする。

 

「はぁっ!」

 

隕石は光弾で破壊し、ダラ・アマデュラのブレスは大きく弧を描いて避ける。

そのまま空中に留まる光を20個放ち、後ろに回って息を整える。

 

「何が愛の神じゃ。数は多くても、質は高くても消費期限は100年に満たない感情の神じゃから力は無いのかの?」

「そういう……貴方は私を、倒せない様ですが?」

「……ぷっ、くはははは!無いよっ、倒す必要無いよ!」

「え……っ!!」

 

ダラ・アマデュラはひとしきり笑った直後に大口を開けてヴェーライと光弾を食べる。

再び瞬間移動した女神は全力の一撃を放とうと構える。

 

「サシミウオより甘いかな!」

「くっ!?」

 

開かれた口から光弾がブレスに包まれ、防御した途端に爆発する。

自身の技の威力が加わった攻撃は即席の防御壁では耐えることが出来なかった。思い切り吹き飛ばされ、山に打ち付けられる。

 

「さぁて、どうしてやろうか……」

「ふぅ……くっ……」

 

ダラ・アマデュラは半分気を失った女神を掴もうとした。

 

 

 

「クロノス!」

 

時が止まる。

 

「それでどうした?」

「……なっ!?」

 

ダラ・アマデュラは女神を握り潰し、死体を投げ捨てこびり付いた破片を舐めとる。

 

「もうちょっと骨のある奴は来ないのかの?」

「シークレットダガー!」

 

余裕を見せる蛇に向かって時間的異常を起こす切断行為を行う――事は出来なかった。

 

「――っ!?」

 

山や隕石から黒い影が跳んでくる。

猛烈な腐臭ととても鋭い舌、二本足で立つものと四本足で唸るもの、透明にも半透明にも、そして濁った宇宙にも見える肉体を持ったそれは神に食らいつく。

 

「う、わぁぁ!?ァ”ァ”ァ”ァ!」

 

神は噛まれた所から崩壊していき、たちまち首を残して消えていく。

消えた後、停止した時間は動き出した。

 

 

 

「ひえっ……流石に怖いわ。」

 

強烈な紅い雷が発生する。

 

「大丈夫大丈夫。根本的な不可侵条約は結んだし、こちらに介入する者共を殺し尽くす事を許してるだけだから。」

 

そしてミラルーツが雷の歪みから山の頂上に現れた。

周りを見て状況を理解した仕草をする。

 

「で、ウロボロスだったかしら?」

「今流行りの二つ名、じゃろ?」

「あ、いや……二つ名ってそういうもんじゃ……」

 

話し始めると同時に猟犬達は腐臭を残して姿を消した。

取り残された人間と、到着した神々との大戦争が起こる事をダラ・アマデュラが知る事は無かった。

 

「それにしても、そちらの世界の神々は異常に強くないか?」

「人間と共存するとか、共に過ごすとかのヘナチョコ神々(笑)に比べたらあかんわ〜。」

「あぁ、そうか。絶対的な神と比べたら駄目じゃったか。」

 

 

ミラルーツの目の色が変わる。

 

 

 

「大体、人間と共存するって何?そんなの只の『神』って呼ばれるだけの新種の二足歩行動物じゃん。神が人を作り出して利用するならともかく反撃にあって、あまつさえ人間に討伐されるとか只の猿じゃん。そんな自己承認要求の塊みたいな糞存在なんてさっさと人間共々消えてしまえば――」

 

 

 

「わぁった、わぁった。神の考え方は様々だし、そんなにカリカリすんな。」

 

ダラ・アマデュラが制止する。

ミラルーツは眼を大きく見開き、溜め息をついて両手を持ち上げる。

 

「もうモンスターハンターの世界観は終わったのよ。」

「……」

「はぁぁ、まーた一からやり直さないといけないけどさ、嬉しい事に彼女が生きてるからさ、困った事に地上を焼き尽くせないのよ。」

「あぁ、ゼノ・ジーヴァか。」

「そんな糞みたいな名前じゃない!……あ、いやまぁしょうがないならその名前使ってるけど。」

 

 

不意に異界の物質、オリハルコンで出来た砲弾が飛んでくる。

ルーツに向かったそれは、突如放射状に分解され、ルーツの胸の前で小さな丸い塊となる。

そして黒く、視認出来ない状態に変わる。

 

「……オリハルコンって元々凄い密度で、魔術を使わないと加工出来ないのよね〜。」

「へ〜、儂、賢くなった!」

「馬鹿みたいな言い方やめてくれるかしら?」

「いやー、もう年じゃから認知症を発症したのじゃー!」

「重度認知症患者は己を認知症と表現しないわ。」

「……ほんとかなぁ〜?」

 

ルーツは次元を切り裂き、向こうにある綺麗な惑星を引き寄せる。

 

「さぁて、せっかくブラックホールが出来たんだから脅威にしないとね。」

 

次々に空間を切り裂き、そこから黒い物質が段々とルーツの手元に集まる。

わざわざ惑星で作るのはこの世界への配慮と他世界の生物の死滅を行っているからだ。

 

「とはいえルーツ……そんな事して反撃されたらどうする?」

「反撃出来る存在がいるなら触らないだけだ。もしこちらからは無干渉であっても世界を越えて乗り込んできたら全力で生き地獄を味わってもらう。」

 

ミラルーツは雷を纏う。

そして、もはや過去の面影が無いドンドルマ上空に転移する。

 

 

 

 

『CAUTION!!CAUTION!!』

「映像解析……光学監視機はダメです、光が歪んでます!」

「原子重量観測機もエラー!ブラックホールと推測!」

「市街地上空に突然ブラックホール……!?そんな馬鹿げた話があるか!」

 

突然の異常現象に保安局は騒然とする。

彼らはただ一つ、ブラックホールが街に被害を出さない事を願うが――

カメラには笑顔のミラルーツが見えた直後に破壊された。

 

 

 

ブラックホールはドンドルマを縦横無尽に走り回り、綺麗に壊滅させていた。

ルーツはブラックホールを蹴りあげる。そして尻尾でシュレイド城がある方向に尻尾で叩き飛ばす。

 

「例のスマホゲーみたいに簡単に大きくなったらいいのになぁ……さて、日が暮れるから帰ろう。」

 

 

 

 

 

ダラ・アマデュラが戻ると様々な状態の死体と、鉄の残骸が転がっていた。

その惨状を見て嘆く。

 

「後片付けするのは儂かーい!」

 

答える生物は周辺に居なかった。




と言っても……
こちらからしたら迷惑千万、百害あって一利なし。
外来種は根絶しなきゃ。

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