閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

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宇宙の外は無なのだ
そしてその無を調べて正気を保てる人はいない
始まりも終わりもない事を理解出来ないから

でもそんな事より――

「ぐわぁぁぁぁぁ!また、またなのね!この私を……っ!」
「その全てに置いて頂点(幻想)をスーパーウルトラ叩けキャシャーン、聞いてください……ダダダダダヘイヘーイ水になって吹き渡っていますー……」
「……ボレアスのマルチタスクは秀でているからゲームで勝つのは無理だろう。」
「ならモンハンだ!タイムアタックで私が次こそ勝つ!」
「……モンハンの禁忌の龍がモンハンをするなんて向こうからしたら卒倒する事件だろうな。」



世界観崩壊、それも新たな世界観

……くそったれ。

 

塔と陸を渡す橋に杭が突き立っていた。

青い光と共に大量の生物が出てきてこちらに岩の下で様子を伺っていた私へ走ってくる。

 

さも当然の様に魔法を放ってくるが、あいつらに龍の様な強さは感じられない。

ネセトが攻撃によって異常をきたしたら困るので、私は撃龍槍を背負って降りる。

笛を吹きながら近寄ってきた奴らを水銀で裂き殺す。

 

「ギャッギャ!」

「プギィィ!」

 

緑色の頭がデカい人型で鼻が豚の生物が盾を構えてやってくる。

 

「戻れ!ベルゼブブ!!」

 

そして柱の方が異様な聞こえ方をする声が響いた。

またあの虫か?

とりあえず笛を構える――

 

「ヌルルルルル!!」

 

後方から管を水が通る様な音がやってくる。

ウイルスで周りより冷たい、ウネウネと地を縫う様にこちらにくる森で見た奴と察知した。

 

「ギャギッ――!?」

 

飛び跳ねている緑色の生物に糸を放ち、水に投げつける。

水の中に入った生物は一瞬で黒く染まり消えていった。

 

「ウフフフフ……」

 

水から声が発生する。

効果は無いと思うが広く薄い水銀で胴を切る。

一瞬水銀の形に沿う様に動いたがすぐに切れ、

 

「ギャァァァァ」

 

と……死んだ?

勿体ぶった割には呆気ないと思い警戒する。

 

「べ、ベルゼブブ様ぁぁ!?貴様ぁぁぁ!!」

「キィィ……?」

 

本当に死んだ様だ。

白い杭の方から猛烈な勢いで走る紫色の衣を纏った緑の生物がいた。

自分から水銀の刃で斬られたので手間はかからなかった。

 

杭を破壊する為に白い杭へ走る。

糸を当てて、杭が雷でも流したら死ぬからな。

 

 

 

「うおっ、なんだこのダンジョンは?」

 

青い光と共に人間が出てきた。

 

「ゴブリンの向こうからなんかヤバいやつが!」

「アイスフェアリー!」

 

空中に発生した氷を水銀で破壊する。

そのまま撃龍槍を振りかぶる。

 

「マジか!?パーフェクトプロテクト!」

 

地中から水銀で、光る盾を構えた人間を刺す。

死体を吹き飛ばしながら撃龍槍を投げ飛ばし全員殺す。

 

勿論吹き飛ばしただけだからどちらかは生きているかもしれないが。

 

 

 

ご……ゴブリンだったか?

そいつらを殺して積み上げ橋に括りつける。

 

柱と化した死体の山に糸をつけて撃龍槍をパチンコの様に発射する。

杭に深く刺さった。

水銀で槌を作って撃龍槍を叩き杭を割り、それを橋から引き落とす。

 

これで橋を通れる様になったか……というかこの橋の強度がおかしくないか?

顔を近づけると、ヒビが直っていくのが分かった。

自己再生するのなら後でネセトに橋を纏うか。

 

 

 

ネセトに乗り、塔に向かって走る。

 

突然赤い光が私の通ってきた所と塔の入口を塞いだ。

青黒い光が虚空から現れ、ネセトの前に降りてくる。

 

「アハははははハハ!」

 

光が消えるとゴブリンの頭が浮いており、グチャリと沢山の、足とも手ともとれる体が出てきた。

盆から水銀の槌を作り殴る。

 

『56339』

 

……数字?

周りの雑魚をネセトで蹴るとそれも『102997』『98863』などの数字が出る。

一体なんなんだ?

 

ゴブリンの頭は私の槌を食らっても変形すらせずこちらに手を伸ばしてくる。

ネセトの表面の岩に傷が入るが割れない。

とりあえず水銀で殴り続けた。

 

「オオオおおぅゥゥ……」

 

私の攻撃がすり抜けた様な当たったような異常な存在は叫び声を上げながら落ちた。

そして段々と透けて消えると、赤い光も消えた。

 

……なんだこれは?

塔に神選者でもいるのか?

 

 

 

うわぁぁぁぁ!?

大雷光虫がうじゃうじゃといる!

 

とりあえず水銀で潰す。

薄く広げ、空気と共に外に逃げないようにして潰す……

 

はぁぁ、ジンオウガより恐怖を感じた。

今の私は水銀という間接的かつ面での圧殺という方法があるが、基本的に私達は負傷しないと対処出来ない。

一方的に殺される可能性も十分ある。

 

いや、勿論死ぬまで大雷光虫と闘う馬鹿は普通いないだろうが……

 

塔の入口を塞ぐようにネセトを置き、水の溜まった一階を飛び越える。

水銀を盆から引き寄せ、私のあとに続かせる。

 

狭い通路を通り、視界が晴れたかと思うと、円の形に沿った坂道がある大きな空間に出た。

 

糸を放ち、一気に登る。

 

所々に分厚い跡が残っている事から、元々は床を張っていて年月によって崩壊したのだろう。

つまり当時はその板と坂道は順番が違い、まず穴を切り抜いた板を張ってから坂道を組んだのだろうな。

 

と、思いながら天井まで来る。

 

坂は崩れ、天井にも穴は空いていなかった。

近くの通路は瓦礫で塞がっている……壁に大きな穴が空いている為、そこから外に出る。

 

……ほう、かなり高いな。

ほぼ雲の高さだ。

 

気づいていなかったが、まずここまで山を登ってきたのか……

壁は苔や蔦が絡まっており、非常に歩きやすかった。

そのまま回転する様に登ると、出っ張っている所にベースキャンプがあるのが見えた。

 

そしてその先には巨大な杭の破片と――

 

「キィィィィ!」

「「ピィィィィ!!」」

 

大量の生物がこちらに向かってきた。

 

鎌を広げて威嚇する。

しかし、威嚇を無視して生物は飛んでくる。

敵の速度は遅く、口から見える鋭い牙が私に刺さる前に水銀で八つ裂きに出来た。

 

血が飛び散る事によって無謀な突撃は無くなり私の様子を伺う。

そして青い龍が雲の下から上がってきた。

騒々しくなった奴らを前に私は笛を構えた。

 

「――ァァァァッ!」

 

突然杭の方から咆哮が響く。

そして強烈な光と共に身を焦がす様な熱波が飛んでくる。

 

チリッと私の体にくっついていた蔦が燃え尽きる。

 

収まると赤い龍が雲を突き抜けて出現、直角に向きを変えて杭に衝突し粉塵を撒き散らした。

青い龍が赤い龍に近づく……あぁ、ナナ・テスカトリとテオ・テスカトルか。

互いに前足を繋ぎ、テオとナナが空を舞う。

 

鱗粉が広範囲に撒き散らされ、先程より強烈な爆発が起きた。

私の中のウイルスも一時的に麻痺する程の熱さは先程焼け爛れた生物の怨みの声さえ消し飛ばす。

私の体表も一部発火する。

 

爆風が無くなり塔の壁を歩けるようになった為、私は龍の番から逃げる。

杭を破壊する音が聞こえるから私は見逃されたと思ったがやはり追ってきた。

小さい生物を殺すのだからそれより大きい私はすぐ殺されるだろう。

 

塔の外側を回りながら糸を使って跳ねあがる。

先程の穴のあった階層より高い穴を見つけそこに突っ込む。

 

撃龍槍を壁に刺して、瓦礫の中の暗がりに身を潜める。

ウイルスを飛ばした後に、糸で瓦礫を私に引き寄せる。

そう、私は隠れる。あの様な力を持つ龍なら騙せるだろう。

 

 

 

しばらく息を潜めていると、ウイルスが死滅する空間が穴から広がる。

楕円形のそれは、羽ばたきの音と共に大きく動く。

 

それは撃龍槍に近づき、しばらく滞空する。

そして外から更にウイルスを殺す空間が入ってくる。

 

 

しばらく即死空間が向かい合った後、突然声が聞こえてくる。

 

 

「アトラルさーん!何処にいるかは分かりませんが、ルーツさんから貴女の話は伺っていまーす!」

 

 

……バルファルクと同じだったか。

 

 

「今頂上に行くのはオススメしませーん!UNKNOWNさんや、UNKNOWNさんツーや、ゼスクリオさんや、エルゼリオンさんが異界と大激闘してますのでー!」

 

なるほど……互いにレーザーを放っていたり爆発が大量に起きたり、黒い膜が空を覆ったりしたのはそういう事か……

 

 

いや、納得するのはおかしいだろう……多分。

 

いやいや……クイーンはなんだ?彼女は龍が何百体いようと殺しきれる力を持つ。それをおかしいと言わずなんという?

 

いや、それでも大体が変な力を持つ龍、それの祖とはいえ余りにも巫山戯た力を持つ例のルーツがいるのだ。

それと比べたら……いや、やっぱりこいつらは纏めておかしい奴ら、だろう。

 

 

うん、言葉に出来ない。

この世界を総じて見れば当たり前なのかもしれないが一般の目線からしたらおかしい。

 

「――という訳で、塔に逃げてきた子たちと共にここから天廊に移動してもらいます!バルカンさん!」

 

刹那、ウイルスが消失する。

私を隠す岩が余りにも熱くなり、飛び出る。

 

「……そこにいたのか、ネセトの準備をしろ。」

 

いつか見た時と全く変わらない威圧のままバルカンは話しかけてくる。

 

「……おい。早くしろ。この塔はフェイクなんだ、そろそろ消すぞ。」

「では伝えてこよう。妻よ、バルカン様とアトラルを見ておいてくれ。」

「分かりました。」

 

……は?

つまりあの再生する橋も嘘だと?

 

「ルーツは記憶操作も簡単に出来るからな、一時的にアマツマガツチに頼んで海を越えた先の樹海をこちらに作ったんだ。地形はレビとルコがやったがな。」

 

……!?

何故、その様な事をしたのだろう。

……いや私が理解出来る範囲ではないとなんとなく分かる。

 

とりあえず壁の穴から外に出て、ネセトの方へ行く。

大人しく従わないと袋叩きにされそうだ。

 

 

ネセトと共に走る。

バルカンの死線はずっとこちらを見ていた……殺意は感じないのだが、即死の危険を感じる。

 

 

 

 

「はぁ……ルーツ。そろそろ終了工程だぞ。」

「ちょまっ!?イマデキナーイ」

「いや、アトラルは今ネセトの所に行ったばかりだから大丈夫――」

「へぇ、ぁぁぁ!!あああああ!!」

「うるせぇ!ミスっただけだろ!」

「はぁ……しゃーない、Arcaeaにするわ……あ、これも圏外じゃ無理やんけ。」

 

空間を壊して出てきた少女は白いワンピースを纏い、手を黒い塊をつけて巨大化させている。

水を払うかの様に手を振って塊を散らし、背中から大量の黒い腕を出す。

 

「ボレアスー!殺戮してきていいわー!」

「……うふふ、あはははは、ガァァァァァ!!」

 

爆発音と共にボレアスの鳴き声が消えると空に流星群が流れ出す。

 

 

三姉弟が動き出した。

 

 

 

 

同時に大量の『神様』が動き出す。

 

マルチバースや、平行世界など様々な世界が一つの世界を狙う。

 

虚構実在論が正しいこの世界達は、戦争というクロスオーバーをする。

 

転移技術の享受と共に住みやすい環境を他銀河の地球型惑星、かつ適正温度でその世界の空気にあたる原子や、生きるための物質ごと移転し始めたのだった。

 

 

 

 

 

何故、そこまでしてモンスターを根絶させようとするのか?

 

「……」

 

何処かにいる人影は声を出さず、ただにやりと笑った。

 

 

だってこれは『二次創作』なのだから。




ベルゼブブ

元々はバアルという嵐と慈雨の神と同じだと思われている。
しかし他教徒によって語呂の似ていた蝿の王や糞の王と蔑まれ、キリスト教によって悪魔とされた悲しき神。

キリスト教の影響が強いベルゼブブは蝿型であり、疫病と汚水を撒き散らす。外骨格が硬く、鋼鉄のハエたたきでは重さで動けなくなる程度。一応体を水にして高速で動くことが出来る。
見た目が見た目な為、対人間には負け無し。

発祥に近いとされるベルゼブブはスライムである。ベルゼブブから渡されたゲルは味は悪いが、飲めば転移したグループ5の癌の消滅、認知症患者の脳細胞の復活、売春者のエイズの抹消など万病に効く。
元々居た悪魔や天使が蔓延る世界では絶対死なないが、こちらの世界では自分から出来た水や信仰心が足りなかった為、元の世界へ帰った。

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