閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

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群れを形成する虫は雌が中心となる。



王女狙う兵

数日後。

私はリオレウスに乗っていたライダーからなにか剥ぎ取れないかと草原に向かった。

そこには元の草原が広がるだけだった。

地割れも、死体の山も、血の匂いも残っていない。この世界は不思議だ……いや死体は既に回収されたのかもしれない。

 

食料問題はすぐに解決した。何故ならジャギィがここにも生息していたからだ。ただ、今日まで私以外の大型のモンスターを1匹も見ていないためまだ気を抜くことは出来ない。

体はかなり環境に強いようだ。現在目立った体調不良はない。

 

 

昨日から私が始めたのは武器作りだ。と言うと凄いように聞こえるが実際は鉱石を掘り出し、ハンターがあちこちに落としている砥石を集めて使い、鉱石を丸く青い塊に仕上げている。

 

偶然レンガで重い物を振り回す練習をしていたら壁に当たりレンガが砕け散った。壁が青く光った様に見えたため笛で周りを削るとマカライト鉱石の塊が出てきた。

これを使わない手は無い。

しかし使い道が分からない。私には今、鉱物を加工する技術は無い。いや、正しくは溶かしたり接合、切断ができない。

リオレウス達と戦った時に檻を起点にした。つまり重いものを使えば楽に戦えるようになるかもしれない。

 

と考え、今に至る。

今更だが何故私の体は自分に比べて非常に重い物を持てる体なのか……どういう構造なのだろう。

 

さぁ、完成だ。試しに背中に乗せてみるが檻よりかなり重く、走る速度は落ちそうだ。試しに投げてみるが、十数mしか飛ばない。

……力不足を感じる。今からこれを振り回そう、しかし疲れきっては駄目か。私はまだここの大型を知らない。

 

 

パタパタパタパタ……

兵士は飛ぶ。最凶から逃げたが一番最初に戻ってくるのはこいつだ。

早いほど自分の縄張りを持つことが出来る。

しかし今回は先着者がいたようだ。中型の別種は排除。

 

 

羽音がする。猛烈な速度で近づいてくるから私は素直に避ける。

私が居た場所を緑の物体が通過し、私を見下ろす。

確か、アルセルタスか。雑魚と言われてるが何をするか分からない以上慎重に殺すべきだと考える。

空中であの姿はおそらく突進してく――ぁぁ!?

 

「キィェァァァァァ!!」

「クゥイュゥエァァァァ!!」

 

意外にかなり早く回避出来ない。正面からぶつかり合う。ギリギリ角には刺さらない。しかしアルセルタスの飛行能力が高いのか私は押され始める。糸を出したいがこの体制ではアルセルタスに当てるのは無理……このままでは壁におされて最終的には…!

とにかく私はアルセルタスが上にずれるように押し上げる。しかしアルセルタスは常に私に角が向くようにしている。なら……

私の鎌の限界まで上に上げる。よし、私を狙ったままだ。頭越しに糸を放つ。

 

アルセルタスは一瞬で遠ざかる。反応速度も半端ない。

そのまま液体を放ってきた。回避をした私に再び突進の動作をする。

次は突っ込んでくる所に回避しながら糸を放つ。当たる。

しかしアルセルタスはそのまま上空に上がる。私も引きずられて浮く。

空中で再び私に突進する、私は狩猟笛を全力で叩きつける。

地上での威力ではないが、軌道を逸らすには十分だった。

アルセルタスが地面に刺さる。すかさず私は鎌を振る。

一、二、三回目にアルセルタスの腹が切れる。しばらく痙攣したが最終的に足を縮めて止まった。

 

 

勝った。しかしまたあいつみたいなヤバい奴を引き寄せるにはいかない。死体をどう処理をしよう……

食べる?いや、寄生虫でもいたら困るな。ジャギィよりも心配だ。

焼いてしまうか。

 

虫を焼く虫。明らかにおかしい光景が広がる。

アトラルはペットの時に飼い主が火を起こそうと躍起になっていた事を覚えていた。それに糸を自前で用意出来るため非常に火起こしが楽だった。

アルセルタスは形を無くしていく。煙は空高く上がる。

 

この行動が後に悲劇を生む事をまだアトラルは知らない。

 

 

夜。アトラルは壁と壁の間で繭にくるまって寝ていた。

 

アトラルは気づかなかった。天敵を唯一確認できるチャンスだった。

緑の翼を月光に反射させながらその竜は飛び立つ。

 

 

次の日。

 

さて、見回りをするか。

私はまだ大型のモンスターを見ていない。だから大きな変化が無いか探すのだ。

 

BCにはまだ何の代わり映えもない。

近くの分かれ道も草食竜達が帰ってきたぐらいだ。

草原にも特に無い。

一番変化があったのは竜の巣跡だ。明らかに大きな何かがここに来たように骨が掻き分けてある。

 

次に大きな崖が連なる場所に来た。昨日完成した球も持ってくる。

 

……気持ち悪い。

 

アトラルが見つめる先には壁にビッシリと張り付いたアルセルタスだ。

気持ち悪い。

アルセルタス二匹が飛び立つ。アトラルに気づく。

アルセルタスが威嚇の声を上げた瞬間全てのアルセルタスが蠢き出す。

 

うわぁ。これは非常に不味い。

私はひたすら逃げる。多少体が慣れたとはいえまだ球が重荷になり走る速度が落ちる。

追われるように崩壊したアーチがある場所につく。

 

 

アルセルタスは兵士だ。兵士より上の存在がいて初めて兵士と名乗れる。

 

 

地面が隆起し破壊される。

 

アルセルタスの焼けた匂いで縄張り意識を刺激され集まったアルセルタスが次々とやってくる。

 

女帝、ゲネル・セルタスの帰還だからだ。

 




ゲネル・セルタス 狩猟時アドバイス

女帝を守るアルセルタスは7匹ぐらいはいます。
ソロだったらハンターもモンスターも逃げましょう。
他の方といる時は一人がゲネル・セルタス、三人以上は主にアルセルタスに対処しましょう。

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