閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

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ほら、望んでいた強敵だぞ?楽しみなさいな。


みんな死んでみんないい

全てを憎む者はいない。

全てを憎むなら自殺をしてしまえばいいのだから。

 

思い通りに世界が動かない。

自己中心的な考えを持つ者に力は与えられない方がいい。

 

何故なら。

 

 

 

 

 

 

 

ぞくりと背筋を寒気がなぞりました……

この世界で始めて感じる強烈な悪寒が。

 

「どうした『ヒカリ』?」

「あ、大丈夫です!『烈鬼』さんありがとうございます。」

「……怖いなら帰りな。士気に関わる。」

「い、いえ、泣き言は言いません!」

 

ふぅ、ふぅ、息を整えなきゃ……

 

「ヴォォォルォルォルォ……」

 

っ!?

シーサー……じゃなくてリヴァイアサンが動きを止めて呻き声を発しました。

つまり近くに来ているという事……

 

 

月に照らされた砂漠。

 

向こうで砂が吹き飛び、一匹のディアブロスが出てきました。

既に暴走状態ですが、それが判別方法だそうです。

僕達が武器を構え、力を溜め、二匹の龍が叫んでいるのに悠然とこちらに歩いてきます。

 

「ォォオオヴヴ!!」

「キィィィィ!!」

 

龍達が身を捩らし、青い光を口先に集めていきます。

周りが力を溜め始めたので、僕も光を集めながら圧縮します!

 

「ヴォォォオオオ!!」

「キィィィピィッ!!」

「ふぶき!」

「絶対零度空間!」

「弱点形成・雷!」

「エンシェントストーム!」

「破壊の奔流!」

「雷槌!」

「ライトブレス!」

 

他の方も口々に叫びながら技を放ちました。

 

「デラデラフンフンwwwガガガガガwww」

「ブラストハウrrrリングッッ!!」

「マスタースパーク!」

「アル・ヒューマ!」

「創壊砲!」

 

……今回のこのレイドボスに参加したのはモブを含めて211人です。

その中で遠距離攻撃出来るのは約180人。

いくらディアブロスとはいえ一撃で死ぬのではないでしょうか。

 

ディアブロスを中心に、巨大な爆発が起こり龍の放った水が凍っていきます。

水蒸気がこちらまで届き、熱風と寒風が吹き荒れました。

 

 

 

水蒸気が晴れ、ディアブロスを見ると……

 

「た、倒れてる!」

「よっしゃ……仇は討ったぞ!!」

 

倒れていました。すかさずアイテム欄のチェックをします。

 

新たな素材は……え?あれ?バグった?

一つも入ってない……

 

 

 

「ヴォォォ……」

 

微かな呻き声が喧騒を静まらせた。

全員が同じものを見る。

 

「ヴゥゥゥゥ……!!」

 

口から白い蒸気と黒い煙を吐き出しながら立ち上がる。

 

「ゥゥゥ……ァァァ!!」

 

体の全部位に赤い筋がはっきりと見える。

 

 

 

空気が吹き出す音がする。

 

「ガァァ、ァ、ァ……ァァァァァァアアアァァァアアアアアア!!!!

 

砂が吹き荒れ、血の匂いが膜の様に砂漠に広がっていく。

音として判別出来ない程に鳴き声が大きくなり、数人の鼓膜が破れる。

更に音は大きくなり、蹲った人間を砂が覆い始める。

 

 

咆哮が終わる。

 

 

そして始まる。

 

 

巨大レーザーが落ちてきたものの、鏖邪は掠りこそしたが躱す。

 

 

「た――!来る――!」

 

あ、頭がぁ……全身が痛い……おえ、酔ってる……

立とうとしても平衡感覚が……

 

うわぁぁぁ!?

 

ギギィィィィィ!!

 

耳がぁぁぁ!!

くっ、何が起こってる

ァァァアアア!!

痛いぃぃ!?うわぁぁぁぁ!?

 

 

 

鏖邪ディアブロス。

 

 

『超狂暴走状態』

 

 

容姿は完全に生物ではない。

足以外の体の全部位に血管が浮き出ている。

本来血は通っていない角まで赤い線が走り、血がにじみ出て滴り落ちている。

口からは黒い煙と白い息を吐き出しており、体からも常に水蒸気が発生している。

 

 

圧倒的な破壊力とは別に『咆哮』が戦闘時に最悪な壁となる。

行動の合間合間に行い、耳栓強化をしないと立ってもいられない。

また近距離でくらえば耳栓強化があろうと衝撃波に吹き飛ばされ、前方向でくらえば平衡感覚が狂う。

そして水蒸気の爆発により、囮が攻撃されている間にも体勢立て直そうにも吹き飛ばされやすい。

 

 

つまり勝てない。

不自由無しに音を、空気を阻害する方法などないのだから。

例え出来たとしても―――

 

 

「バリア!……っ!?きゃぁぁ!?」

 

 

水蒸気で推進力を強めた突進に吹き飛ばされるだろう。

 

 

 

う、うぅ……!?

 

アアアアアア!!

 

く、くう……しかし先程の爆発で遠くに飛ばされたのか、立ち上がる事は出来ます。

吐き気を我慢し、四つん這いの肘が着いた体勢で先程の風景を見ました。

 

一切抵抗の光が無い……

いや、ある!

 

遠くに吹き飛ばされ方か分かりませんが、青い光が放たれました!

鏖邪には当たりませんでしたが……一体誰が?

視線を移します。

 

ヴヴヴヴァァァ!!

 

くっ、耳が……しかし、一体誰が放ったのか確かめないと―――

あれ、鏖邪が見える……どういう事?

 

視線を戻すと水蒸気が舞っていた……

と、次々に人が立ち上がり、不思議な光を空に向けて発射しました。

お、おぉう……体が癒され、耳を撫でられた感覚が走ります。

 

「ゴォオオオオオ!」

 

……!うるさくない!これで反撃が出来ます!

咆哮に悩まされないなら本体の速度に気をつけてやりましょう!

よし……

 

「光速!」

 

一気に走りより、鏖邪の腹にナイフを突き立てました!

このナイフは彼女の作った岩に突き立てれる至高のナイフ!

よし、刺さった!振り抜く!

 

返り血を浴びましたが―――

 

ぁぁぁぁぁぁ!?

 

 

 

愚かな神選者は体が焼けていく。

沸騰した血液を浴びた人間はその場で痛みに悶え、大声を上げた。

 

「……ヴヴヴヴゥゥゥアアアアアアアア!!!!!

 

音圧に体を押し付けられている。

肉が千切れ、骨が折れ、臓物が潰れ、血を浴びた所からしゃぶしゃぶになる。

 

そして鏖邪は一度離れ、人間を口に含み、すり潰す。

流れる血液、細胞の汁、尿を飲み、肉と骨の混合物を吐き出す。

 

 

僅かな水分を得た鏖邪は―――

 

「ヴゥゥゥゥ……」

 

先程まで血が滲み出る程に膨らんでいた血管がほぼ見えなくなる。

そしてある方向に歩き出した。

 

 

 

 

村へ。

 

 

 

 

「村の人が!アル―――」

「待てレム!皆も聞いてくれ!」

 

―――スバルは叫ぶ。

 

「鏖邪の狙いは分からないが、村へ向かっている!その時は家は壊すが走り出したりはしない!村の人は全員避難させた!ここで体勢を立て直そう!」

 

『説得』補正発動

 

 

比較的彼は有名な為、死に戻りが出来ることは彼以外の口から知れ渡っている。その為に信用されやすい。

それに補正が加われば―――

 

「よし、作戦会議だ!」

「救援要請します!」

「攻略方法の相談を始めようじゃねぇか!」

 

彼らは崩れかけた士気を取り戻す。

一致団結すればきっと乗り越えられる。

そう信じて。

 

 

 

 

 

「ヴゥゥヴゥゥゥゥ……」

 

コッチダ……ジャマハコロス……ミナゴロス……

シネ……シネ……イマハ……ジャマ……

 

ミズ……ダレカ……ぁぁ……

 

「ゴォゥゥァァ……」

 

かわ……ウミ……チカ……

 

 

 

 

 

 

 

王女……遅いな。

一体何をやっているんだろう。

 

まさかSCPや獣人間に絡まれたりしているのか?

……まぁいい。

私が危険になったらさっさと逃げるだけだ。

 

……鏖邪に気を取られすぎではないだろうか?

いくら音を立てないようにした所で音は鳴るし、ネセトの姿が消える訳では無い。

明らかに防衛をする気がないよな?何故だ?

 




初手の総攻撃が全員氷属性で互いにぶつからなかったなら死ぬ確率がありました。
とはいえ、打ち消し合いながら狂暴走状態をとばす程の威力は流石ですね……

さて、超狂暴走状態ですが、例えるなら『極征LV9999の水蒸気爆発する最低二倍速極限ティガレックス』みたいな感じですかね?
とりあえず被弾=死です。

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