閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

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あのねあのね!トラブルで調整が遅れてるの……それでね、機械の部品が足りなくてね……

SDVXが直せないの……

何故お前は自力でやろうとする……
そういう事はボレアスに任せろよ。


『幻想殺――狩猟生―!!』
第―8― 死にた――い な――なん―


過剰な量

あの神選者を殺した後、私達は村の中央へ歩いていた。

しばらくすると街の中心の方から大量の人間が流れてくる。

 

「うわぁぁぁ!準備遅れたぁぁぁ!」

「早く持ち場につけぇぇ!」

 

まさかあの人間がいない状況は独断でやっていたのか……

酷い話だな。

 

しばらく路地に移動して、人混みが通り過ぎるのを待とう。

 

 

 

カタカタカタッ。

 

「ほー、上空のドローンからの映像がライブ配信されておるぞ。」

「ライブ?」

「現在を映像にして全世界に配信してるんじゃ。」

 

王女はパソコンという物を側近から借りて使っていた。

回線状況がとても良いらしく、それはラヴィの時に遥か上空から光の柱を放った機械が近くに来ている事を示すらしい。

 

……熱が鏖邪に聞くとは到底思えないが。

 

「エネルギーを変換して雷にしたり、魔力を作って凍死ビームを放てるのじゃよ。」

 

……殺しにきてやがる。

まぁ弱肉強食だから仕方ないな。

 

では、そろそろ――ん?

 

 

 

「あれ、お姉さん達はここで何をしているの?」

 

なんだこいt……

 

 

「なんだこいつ!?」

 

 

ウイルスを少量撒き、体温を確かめる。

 

「あぁ、ルカは知らなかったかの?ロックラックは獣人が多い事で有名なんじゃ。」

 

王女が耳元で教えてきた。

顔の左右に耳が無いが、頭に長い獣の耳がついている。

尻にあたる部分からは尻尾が生えており、ふさふさと揺れている。

 

そして、それには血が通っていて全体的に人間の乳幼児レベルの体温がある!?

理解出来ない……あの気持ち悪いルーツが自分の力で人間を喜ばす為に能力をぶちまけているとは考えられない。

 

「ねぇ、お姉さん達はここで何をしていたの?ここは私の縄張りだよ!」

「……すまなかった。出ていく。」

「出ていけ、なんて一言も言ってないよ!?」

 

なんだこいつ!?

 

 

 

 

「えっ……お姉さん達があの人をこ、殺したの……?」

「想い人だったか?」

「え!?そっち!?いや、その……殺すって事に躊躇は……」

 

私と王女は顔を見合わせる。

 

王女が何を考えているかは知らないが、私は基礎的な考え方から違う為、殺してはいけない理由が余り理解出来ない。

というより守りたい物以外は皆殺しにしても構わないと思っているからな……同族を殺すのを躊躇する思考が分からない。

 

「私にその躊躇は無いな。」

「こほん、貴女は何故ここを縄張りに?」

 

王女が口調を変えて質問する。

もし私が答えるとしたら『そこが過ごしやすいから』以外の理由が思いつかないが……

 

「実は、私のご主人様と出会った場所なんだ……」

「ご主人様?」

 

まさか……思い出が理由!?

余りにも馬鹿げているな……

 

「ほぉー、ロマンチックですね。」

「……へぇ。」

「えへへ……と言ってもそこまで来ないですけどね。」

 

は?

……来ない!?

縄張りは住む所だぞ……いや、考え方が人間を基盤としているのか?

だとしたらこいつはもう人間だ。

 

「お前のご主人様はどういう奴だ?」

「ちょっと阿呆だけど、かっこよくて勇敢な人。」

「いや、それじゃあ分からない……」

「えっと……そう、能力を打ち消す能力を持っていて、殴り合いではとても強いよ!」

 

なんだ、脅威では無かった。

『とても強い』程度で殴り合いで私に勝てるとは思えない。

 

「では私達は出ていっていいな?」

「えー、もうちょっと話そうよー。」

「ごめんなさい、私達はここを見て回るから。」

「むぅ……」

 

 

奴から離れる様にしばらく歩いていると、人が少ない所に出た。

さて、厄介な人間から離れたから周辺を見てまわ――

 

「グォォォォォォオンッッ!!」

 

……闇を撒き散らしながらドラゴンが立ち上がり、強烈な羽ばたきで色々吹き飛ばしながら空へ上がっていった。

……村を見て――

 

「――イ――くはミハイルー♪腐ったお肉も大好きー!」

「大体の戦力はここに来たようだミカ。」

「我が爆裂魔法と邪王真眼の力で一撃で葬り去ってくれよう!」

「夢咲ー。『想像を実体化させる程度の能力』を使わないのか?」

「焦るなルーミア。」

「召喚、シーサーペント!」

「召喚、リヴァイアサン!」

「うぉぉおあああ!」キーボーノーハナー

 

「キュィィィッッッ!!」

「ヴルォルォルォルォォォォ……」

 

……なるほど?南西の方角で戦闘するからここで準備していくのか。

ネセトは北東だから丁度反対側で助かる。

豪雨と水の竜巻を起こしながら二匹のドラゴンは浮いて、南西の方角へ飛んでいった。

 

「王女……なんだここは?」

「私の中では神選者にかなり蝕まれた街、という認識じゃよ。」

 

……それにしても私は鏖邪を軽く見ていたかもしれない。

これほどの戦力を注ぎ込んでやっと討伐出来るのか……

 

「あ、そういや鏖邪ディアブロスはとても速いから、接近戦がすぐに出来ない者は死じゃぞ。恐らく撃退さえ困難じゃないかのう。」

「なるほど。」

「まぁ予備動作は命反ゴア・マガラより物凄くあるがの。」

 

よし早く村を見よう。

 

 

 

 

ロックラックは壁に囲まれていた。

即席とはいえ、撃龍槍では複数回叩きつけないと壊れなさそうだ。

所々の穴からは様々な機械が顔を出し、少し内側にある巨大な塔からは射線が出ていた。レーザー砲台らしい。

 

更に内側には榴弾を撃つ戦車と追尾ミサイルを撃つ戦車がずらりと並んでいる。

壁越しに攻撃する様だ。

 

南東から北西までの180°は内側も封鎖されており、かなり後方から双眼鏡で確かめるしかなかった。

私達とは世界が全く違う……何故かそんな事を思った。

 

 

今度は街の中央へ向かう前に、大分が日が高くなってきたのだから昼飯をとることにした。

 

 

ガレオスのフードで高級料理店に入るのはおかしいと判断し、そこら辺の屋台で焼き肉を食うことにした。

水は貴重な為、蕎麦や寿司など大量の水が必要な物は金がかかるらしい。まぁどうでもいいか。

 

 

食事が終わり、指と唾液で軽く口内を掃除しながら歩く。

王女が嫌悪感を露わにするが、肉でぐちゃぐちゃなのも心地よくは無いだろう。

 

 

 

……遠くに見える。

 

大多数の住民が湖畔に避難していた。

悲観的な事を叫んで、掻き乱している様な奴は見えない。

 

 

集団に近づくと同時に、真後ろから走ってくる熱源がいた。

明らかに停止する様な構えはしていない。

 

しかも……先程の獣人だ。

 

「ふん!」

 

握り、振り返りながら笛を叩きつける。

 

「てやぁぁ!」

 

しゃがんで躱され、頭突きを私に食らわせようとした所を蹴りあげる。

跳んでかかと落としをし、笛で押さえつける。

 

「ぐふぅ……」

 

 

 

なんじゃろう、こっちを見ながら歩いている男がいるのう……前を見て歩きなさい。

 

「ふん!」

 

おっと!?突然ルカが交戦を始めた、と同時に先程の方向から走ってくる音が聞こえるのじゃ。

 

「うっ!?」

 

殴りかかってきた拳を避け、蹴りあげてきた足を受け流して持ち上げる。

頭から落下する所を蹴り飛ばす。

 

「がっ……」

 

喧嘩が上手は嘘じゃったか……

 

 

 

 

王女も男性を倒していた。

まぁ人間なんてラージャンの下位互換なのだろう。

 

「なんだ?答え方によっては頭を潰すぞ。」

「えっ、嫌だ!」

 

……力が未知数の敵に、敗北を考えずに来たのか。

ムカつくな。

笛に力をこめる。

 

「死ね。」

「えっ、えっ!?ちょっと待って、ぁぁぁああ――」

 

バコッ

 

「コリンーっ!?」

 

男性が叫ぶ。

……まぁ私には特殊能力などないし、私も王女も肉弾戦なら簡単に負けるわけが無い。

敵を間違えたな。

 

「じゃあよろしく。私はコレを持っていく。」

 

とりあえず路地裏に持っていって解体しよう。

着ている物は洗えば使えるか?

笛を吹いて身体能力を上げて跳ぶ。

 

 

 

 

 

よっと。

体格的にわらわが抑え込むのは無理じゃから、振り払われる。

幻想殺し(笑)さんが立ち上がる。

 

「なんで、コリンを殺した!!」

 

ルカが潰した時に周囲の人間は怯えて逃げた。

早く中央に向かいたいのう。

 

「くそっ!」

 

石を投げてきた。キャッチボールでもしたいのかのう?

パシリと取ると、手には痛みが走る。

 

「馬鹿じゃの?お主の力はこの世界では意味がないじゃろう?」

「いや!悪い仲間や、普通のモンスターは――」

 

わらわは一気に走りよる。

奴も咄嗟に私を掴むが、慣性で金的へ攻撃は思いっきり突き刺さった。

 

「あははは、どうした?女子に負けるのかの?転生場所を間違えたのう?」

「ふぐっ、はぁ、はぁ……」

「……呻き方が気持ち悪い。」

 

確か原作じゃと、無意識下のうんたらかんたらを感じ取る……らしいの。

まぁ……

 

「ぐわぁぁぁぁっ!!」

「はーい、ゆっくりと右腕を切り落としますねー」

 

基本となる才能が無いなら死ぬだけじゃがな。

さてさて、さっさと『竜王の顎』を出してわらわ達が負けた様に演出しないと村人が逃げるからのう……

あ、そういえば……

 

「どうしてわらわ達を襲ったのじゃ?」

「あがぁぁぁぁっ!!」

「…………」

 

剥ぎ取りナイフで腕を切るのを途中で止める。

ただ痛みに悶える雑魚が一匹……

勝手に殴ってくるのに抵抗する精神力が無いのじゃな。

 

 

思い直した。

自己中なこいつは生きる価値も無い。

 

 

「お前は何処の世界でも要らない。」

 

首にナイフを当てたが、しまう。

その間はひたすらもがくだけで罵詈雑言の一言も無い。

ただ恐怖と恨みに潰され、冷静な思考が出来てないようだ。

 

 

 

弱者の気持ちが分からぬ強者が……!!

 

 

 

わらわは久しぶりに鎌を取り出し、すっぱりと刈った。

ごとりと落ちた顔は死を悟りかけたあほ面だった。

 

 

 

蹴り飛ばす。

 




薔薇創バルラガルと 血小板の!

『素朴な体の疑問』!

……何をすれば?

えっと、えーと、そう、今日はアトラルさんの狂竜ウイルスです!

あー、それか……彼女が翼を消していても体内のウイルスは消えていない。極限化しているから撒き散らされるウイルスで周りが狂竜化する……となるはずだ……

でも、何故ウイルスが飛んでないかというと、翼からウイルスが体をルカさんの体内で作ろうと本来翼から出るウイルスを移して、それとは関係ない結晶のウイルスが消化して、その栄養を含むウイルスを極限化した細胞が吸収して、その蓄えられた栄養が再び体と翼に分け与えられるんです!

体内の攻防が酷い……吸いたくない……というか精子の様な仕組みだ……はわぁー……

あっ、お姉さん!?お姉さん!?……ね、寝ちゃった!?

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