閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

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50人の村と50000人の村

それぞれの村の一般人が
一人消えるとより効率に響くのはどちらですか?

『馬鹿』は『50人』と答え、
『普通』は『50000人』と答え、
『愚者』は『命は平等』と答え、
『世間』は『どうでもいい』と答える。


それはさておき、

『SSSクラス職員の異世界転生』
第5―話 ―だ――ゥ――えt―――



相対的な価値の低下が適用されます

ネセトを埋めた砂の小山で目を覚ます。

一つ欠伸をつき、遠くで登り始めた陽の光を見ながら元の姿に戻り、砂の中でネセトを点検する。

 

一通りチェックが終わったため周りをウイルスで索敵してから出る。

夜間の間に砂漠は冷えているためウイルスが使えるのだ。

 

「おはよう、ルカ……」

 

体操をしている王女が挨拶してきた。

人間の姿になり、

 

「あぁ。」

 

と返事を返す。

 

私は王女に無理をさせているのではと思ってしまう……

というどうでもいい感情を抱きながら村へ向かう準備を始める。

 

「いきなりだが、本当にあれは村なのか?」

「街じゃな。」

 

ふむ、この事への私の認識は人間と大差ないかもしれない

……王女では比較対象にならないか?

ガレオスのフードを一度振って砂を落とし、再び羽織る。

そしてロックラックに歩き出す。

 

夜間の間に出来上がった壁と、そこから伸びる多種多様な武器はあまりにも物々しく、眩しい。

 

もはや城門の様な門……の柱に設けられた小さな石扉を開けて入る。

 

 

 

 

そこは余りにも静かな通りだった。

人がいない。

店先に並ぶ鮮やかな色も無い。

 

ただ閑散とした住居が広がっていた―――

 

 

ブォォォンと回転し、止まれと書かれた看板を表示した物以外は。

 

 

「なんだあれは?」

「あぁ……あれは神選者の召喚物じゃな。大体が対人でかつ性能が良くないのじゃよ。」

「ふむ。」

「とは言っても、召喚してる奴を殺そうにも無差別殺人においては強烈な強さじゃから出来ないのじゃよ。」

 

看板が回転し始めた……岩の絵?

理解できない私を放って王女は走り出す。

一体何事かと周囲を見渡すが、特に異常は――ん?

 

「ふん!」

 

笛で岩を弾き飛ばす。

なるほど、看板の絵と共通した現象で攻撃してくるのか。

そして突然攻撃し始めるのは確かに危険だな。

 

再び回転し、矢印と車のマークが現れる。

すると遠くから音が聞こえ始めた。

車を飛んで避ける。

 

「シンボルは動けないから逃げるのじゃ!」

 

地上から王女が叫んでくる。

 

「折ればいいのでは?」

「めっちゃ硬いんじゃよ!!」

 

詳しくは分からないが、無理そうだ。

大人しく距離をとろう。

 

 

 

 

と、離れたのはいいが今度は道の中央に何かが置いてある。

 

「あー……あれは彫刻じゃ。誰も視認していない、つまり瞬きをしたら音速以上で首を絞めにくるぞ。」

「あの風貌で動くのか……」

 

 

一度目を閉じる。

王女が瞬きをすれば動くはず。

 

ザッ。

 

目を開くと確かに近づいてきた。

しかし手足を動かした痕跡は無いが……

 

「良かったな王女。」

「え?」

 

元の姿に戻る。

虫には瞬きは無いからだ。

そしてウイルスを使って周りを把握出来るのだから周囲の警戒も大丈夫だ。

 

「あーなるほど、その手があったのじゃな……」

 

彫刻に近づき、触る。

かなりすべすべしており、腐った液体が滴っている。

視界から外さない様にして、回り込み、そのまま別の方向へ行く。

 

視界から外れた後で人間の姿に変わる。

彫刻が追ってきたりはしなかった。

 

「本当にモンスター対策か?」

「普通のモンスターなら一分で殺せても、鏖邪には効果薄いじゃろうなぁ……」

 

 

 

 

「きぃぁぁぁぁぁぁ!!」

「ふんっ!!」

 

出会って5秒で戦闘。

 

これまた人がいない所を、高身長の人の形をした何かが歩いていた。

そして音に気づいたのか私達の方を向き、顔を抑えて喚いてから襲いかかってきた。

 

敵の長い腕を笛で抑え、ゴアの翼で移動を抑える。

怪物らしく押したり引いたりを乱雑に繰り返す為、そこまで知能が高くないかもしれない。

 

「こいつは何だ!」

「シャイガイじゃ!怪物じゃが自分の風貌にコンプレックスを抱えていて、自分の姿を知った全てを殺しにかかる!」

 

対人間用の生物ばかりじゃないか!

なんなんだ?もしかしてここに人間がいないのはこいつらに殺されたからか?

 

「ぁぁっ!ごぅぅぅぅ!!」

「うるさい!」

 

一度弾き飛ばし、再び組み付きにかかってきた所を笛で迎え撃つ。

思いっきり回転しながら倒れたが、何事も無かったかの様に再び掴みかかってくる。

 

「あーもう!王女、頼んだ!!」

「了解じゃ!」

 

私は疲労が無い。

敵には負傷が無い様だ。

終わりはどちらかに欠点が出来た時だ……早々来ないだろう。

だから大元を殺してもらわないとならないな。

 

王女はとんとんと駆け上がり、屋根伝いに走っていった。

 

 

 

 

 

という訳じゃ、さてさて何処に居るのじゃろう……

おっとそうじゃな、まずは判断出来る事を並べ立てようかの。

 

……恐らく召喚者の名は『カイト』。かっこよさそうだからと神選者にありふれている名じゃな。

能力は召喚。SCPの場合は消費魔力軽減が発動するのじゃ。

 

魔力ってなんじゃらほい……見当はついているがの。

よし、殺意的にこっちじゃろう……

 

まぁそれはいいとして、聞くところによると少なくとも2000を越えるSCPがあるらしいの。

国によって違ったりと、とてつもない規模の創作じゃな。

 

しかぁし!

あの神選者は精々、十数種類!

無能じゃな……

そして自作SCPとかよくわからない怪物を生み出したりとやりたい放題じゃから殺害対象ではあるのじゃ……殺れないが。

まぁ専門的な訓練をすれば簡単じゃがの。

 

 

 

 

王女はカチャリと瓶の蓋を開け、ナイフを浸す。

そして柄で蓋をし、固定する。

 

毒の名前は『壊毒』

ドゥレムディラが作る比類なき強さの毒。

 

余りにも強力なそれはどんな人間でも気絶、もしくは衰弱させ、処置を施さないと高い確率で衰弱死する。

事前に効力を弱める術もあるが、打ち消す方法は見つかっていない。

 

そして無許可で個人が携帯する事は禁じられており、罰せられる。

 

そのルールを王女は無視をした。

大量の前金と裏ルートと相互利益の交渉という王女らしくない行動をしてまで壊毒を手に入れた。

 

 

 

そして。

 

幼女を従え、ベンチに座っている男性を王女は捉えた。

幼女はアイスを食べ、男性はそれを眺めるという平和な光景だ。

 

王女は屋根の上から一つ、ナイフを投げる。

信じられない腕力とコントロールで綺麗な孤を描きながら飛ぶ。

 

警戒を怠っていた神選者に刺さり、さっくりと死んだ。

 

「ひっ……!?」

 

幼女はアイスを落とす。そしてバニラがかかった足から青い光と共に消えていく。

怯えた目で見渡し、王女を見て更に顔が引きつる。

そして消えていった。

 

王女は満面の笑みだった。

どちらが恐怖の対象なのか。

 

 

 

 

「きぃぃぃぃぃぃ―――」

 

地面に突き刺して抑えていた頭から消えていく。

 

……楽しかったな。

 

ゴアの翼を消し、地面に座り込む。

私はガルルガの様な戦闘狂では無いが、完全に力に訴えてくる奴は面白い。

だが、それにしても予想よりとても早く終わった。

数時間戦うものだと思っていたが。

 

「やっほー!」

 

王女が走ってくる。

私に抱きついてこようとした為、脇腹を叩いて吹き飛ばす。

 

「やっぱり神選者が馬鹿で助かるのう!」

「危険意識が足りないのだろうか。」

 

ゴロゴロ転がり、立ち上がって私の方を向いて話しかけてきた。

 

「世界はあいつら程度じゃ回らないし。神選者に合わせなさいと心に刷り込まれた人間以外は正面から――」

 

……!?

 

「ちょっと待て?神選者に合わせるとは?」

「……わらわの集めたデータとそこからたてた考察じゃが……神選者の過剰な権利は分かるかの?」

「……あぁ、何処かで感じたな。」

 

 

その後王女が喋り出した事は余りにも空想的だった。

だが、言われてみればそうかもしれないと考慮出来る。

 

 

「そうなんじゃよ……各国の主要人物、奴隷商人、鍛冶屋、そしてギルドに関わる者達が15年前と比べて余りにも態度がおかしくなってるんじゃ。

例えば『この功績が凄い、表彰しよう。』

以前はギルドの有用性を認める為、その国のギルドへの依存、もしくは下ることを意味していたんじゃ。自国の軍隊の練度が足りない事も意味するしの。

以前の例外は『ギルドも国も対応出来ない事を成し遂げた偉人』レベルだけなんじゃよ。」

「……」

「王が直接与える場合、勲章一つに大きな意味があるんじゃ。」

 

ここで一つ疑問が浮かぶ。

 

「……なんで王女は大丈夫なのだ?」

「うん?どうやら『うざい、死ね』の対象らしく、実際に何度も殺されかけただけで洗脳的な物の対象にはならなかったらしいのじゃよ。それに第三王女なんて成人した後に政治的な立場は余りないしの。」

「つまり有用な人間は神選者に、それ以外はどうでもいい……一体何がそうする?」

「知らん。そしてわらわが生まれた時には既に神選者を受け入れる体制が出来ていた……余りにも異物を受け入れるまでのインターバルが短いとは思わないかの?」

「確かにな……まぁ、人間社会はよく分からないが。」

 

王女は暗い顔で笑顔を見せた。

 

 

神選者を殺した。

 

王女はランポスを殺したぐらいの喜びしかないのだろう。

そしてすぐに記憶から消えてしまう。

 

残るのは不快感だけか……

 

 

とはいえ、奴らの元々の命はその程度の価値なのだから。

 

 

 

 

 

 

砂煙がロックラックを覆い始める。




今回登場したSCPの原作者様とリンクです。

これはSCPを登場させたのである以上は義務ですので、運営からの警告などが無い限り消しません。
そしてこの物語での変化も足しました。よろしくおねがいします。


『SCP-173』
作者:Moto42
http://ja.scp-wiki.net/scp-173

召喚者の命令が無い限り完全に停止した、ただの『物体』となります。


『SCP-910-jp』
作者:tsucchii0301
http://ja.scp-wiki.net/scp-910-jp

元々より機械的な側面が強く、自由のききにくい◼◼◼◼◼は封じられているようです。


『SCP-096』
作者:Dr Dan
http://www.scp-wiki.net/scp-096

一人に顔を認知された場合、その対象を駆逐する時まで他の者から認知されても気にしません。


『SCP-053』
作者:Dr Gears
http://www.scp-wiki.net/scp-053

殺意の蓄積速度の大幅な上昇がされており、双眼鏡やスコープ越しであろうと30m以内での肉眼で見た場合の大きさ以上で視認すると2秒で殺意に犯されます。


『SCP-040-jp』
作者:Ikr_4185
http://ja.scp-wiki.net/scp-040-jp

ねこです よろしくおねがいします ねこはどこにでもいます あとうるさくいうとねこは040じゃないです 040はいどです よろしくおねがいします

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