閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

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天の川ぁぁぁっ!!インタビューですっ!

瓦礫を掃除する少女
「……一つ言っていいか?私からしてみればやっていることは他人のプライベートを侵害して騒ぎまくっているだけだ。大体ありきたりな話なのに天体をモチーフにすればロマンチック?意味が分からない。」

ガレオスの皮の上でラノベを読む少女
「うむ、ロマンチックじゃのー。このあと多分取引所の悪女が仕事を奪ったりして仲を割いたりして、最終的にキスしながら天から落ちる所でENDじゃろ?」

コスプレの羽が凄い綺麗な女性
「七夕セールですよ!ハム、モムモム……美味しー!……えっ、七夕が男女の組み合わせだからって交尾の日ではない!?」

少女を見守るガレオスの皮を羽織った青年
「……彼女の幸せそうな顔が見れるだけでも私は嬉しいです。将来での王族としての楽しい居場所は無いのですから……彼女の未来が幸せである事を願います。」

劈星龍バルファルク
「龍気をー操作してー白くしてー彦星をー二つにしてー不倫現場ー」

真っ赤な着物を来た女性
「……!?あ、ァ、ぅえ……道行くィとに声かけぇ吸う。アルコール入った血は不味い。」


楽観と絶望の入り交じる村

「ブァッサァァァァ!」

 

王女は何を言っているんだ。

月明かりの中でネセトを止め、解体し、操核の入った血管を取り出す。

日にちが経ち、糸で無理やり繋げていたが今日で終わりになる。

 

ネセトを再び構築、しばらく走って今度は入口近くで停止する。

そして操核を担ぎ、王女についていく。

 

 

王女が作ってくれた私用のガレオスのフードを羽織る。

王女も同じフードを羽織った。腰までの長さなのは当たり前だがありがたい。

 

なにやら街は夜間なのに騒がしいな……

というより、予想より規模の大きい村……いや街だ。

向こうでは資材の搬入が行われている。

また兵器なども構え、即席の防衛線を敷いているようだ。

 

案内してもらった加工屋からは音が鳴り響いている。

王女は走っていき、大声で叫んだ。

 

「龍力玉を作って欲しいだが!!」

「ちょっと待って下さい!」

 

口調を変えた王女の呼びかけに反応したのは少年の声だ。

操核を入れた血管を持った私が王女に追いつき、しばらくすると大人と子供の境目ぐらいの少年が出てきた。

 

「はい、龍力玉……え、ひやかし?」

 

至極真っ当な反応だろう。

古龍の素材を使う事は相当大きな仕事になる。

心の準備をしてきたのに目の前にはチビな少女しかいないのだ……そういう反応になるだろう。

 

「はぁ!?きちんと素材はあるし、小切手はここにあるのだぞ!」

 

対して王女は乱暴な言葉使いで素材と金を提示する。

条件は満たしたという証明だ。

そして私は一本の血管を破り、血を漏らしながら操核を出す。

 

「残りの血管にも操核が入っているので、お願いできないでしょうか?」

 

フードをとりながら話す。

 

「――っ!あ、うむ、分かりました!」

 

突然息を呑んでから承諾した。だが操核をチェックしていない。

……2人の少女という事で何か卑しい事を考えているのか?

確かに人身売買で売るなら、少女~成人女性が人気だが。

 

「お客様ですー!龍力玉の精製だそうです!」

「うい、ちょっと待っとれ!」

 

年季の入った男性の声だ。

私は血管を一本千切り、操核を取り出す。

……王女の側近が駆け寄り、大きな箱を渡してくる。

 

「一体何が入っているんだ?」

「古龍の浄濃血と、古龍の大宝玉じゃ。わらわも古龍は何度も狩っているからの。」

「年齢と経験があってないな……」

「とは言っても、ギルドナイトが殺したハンターから側近に盗らせた物もあるのじゃがな。」

「やはりそうか。」

 

その時、口が髭で覆われている男性が出てきた。

後ろには先程の男性もついている。

 

「おう、嬢ちゃん達がお客様だな!素材を確認させてくれ!」

「よろしく!ほら、カロも操核を全部見せな!」

 

か、カロ?……あぁ、偽名の偽名か。

逃走している身だ、名前を変えるのは当たり前の事か。

 

「分かりました、セス。」

 

プリンセスのセスでいいだろう……

 

王女が金や素材の処理している間に、私は全ての血管を破り、操核を取り出す。

緋色の球が月明かりに煌めく。

 

「これでよろしいでしょうか?」

「……大丈夫だ。品質もこんなにいいなんてな。ん?ちょっといいか?」

 

私の背負っている笛を触り始めた。

嫌悪感はあるが、拒絶はしないでおこう。

 

「まさか……この笛は誰から貰った!?」

「えーと……覚えてないですね……」

 

突然生産者を聞いてきた。

分かる人間にはそんなに価値があるのか。

 

「……とりあえず明日の夜にまた来てくれ。それまでに終わる。」

「分かった。」

「よろしくお願いします。」

 

私達は加工屋を離れた。

加工屋から大きな歓声があがったが、何故だろうか……まぁいい。

 

 

人々が行き交う道を通りネセトの元へ帰る――

 

 

 

「よう嬢ちゃぁぁぁっ!?」

 

はい制裁。完全に引き止める力の入れ方だった為、さっさと組み伏せる。

 

「何の御用でしょうか?」

「この……っ、こいつらを捕らえろぉぉっ!!」

 

路地の暗がりから様々な得物を持った人間か出てきた。

突然の事に通行人は距離をとり、私達を見ている。

そして人間共が私達を囲む。

私は地面と接吻をしている人間を蹴り飛ばし、人間に向かって言う。

 

「もう一度聞きます。何の御用ですか?」

 

「捕らえて売りさばけ!!」

 

私達に向かって走ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「その程度で私を捕まえる事が出来るとでも?」

 

笛を振り回し、汚れを払う。

王女は気絶した人の山に腰掛け、足をぶらぶらと振っていた。

 

「少女に向かって大の男が多数とか笑えないのじゃが。まぁ負けるのは必然じゃから煽る必要もないがの。」

 

自警団がやってくる。

軽く挨拶を行い、状況を説明すると納得してくれた様だ。

昏倒している人間を縛り、アプケロスの荷台に乗せて何処かへ行った。

そうだ、騒ぎ始めた民衆から離れるついでに私達は情報を収集しよう。

 

 

 

 

ガタリ、ガタリと壁が建てられていく。

心配そうに眺める親子を見つけ、話しかける。

 

「すいません、どうして即席の防壁を―――」

 

 

 

「っ!?子供は早く家に帰りなさいっ!!」

「うっ!?」

 

私はヒステリックに弾き飛ばされ、尻餅をついた。

私自体は軽い。不意をつけば簡単に吹き飛ばせるのだ。

 

そのまま組み伏せてこようとする。

勿論、私が人間に力負けするはずがない。

 

「早く、早く帰りなさい!」

「………」

「早く、早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く……」

 

そして人間は肘を折り曲げ、私の体に力なく体を落とす。

……人間の拳を見ると、何か白い物が飛び出していた。

 

「……」

「あ、れ、え?かえ、帰ってきたの?あ、おかえり、今日は外食を―――」

 

突然立ち上がり、何処かへ歩いていこうとした人間を呼び止める。

 

「今日、何があったのですか?」

「あ、はい?きょ、今日ですか?今日はですね、朝にこの子が警戒に出て………あ、ぁあ、あ?????」

 

……人間は骨を落とす。

そして顔を掻き毟り始める。

 

「あ、れぇw?君はwどうし……て……ぇ?あはっ……あはははw。あははははははははははははぁぁぁぁぁ!?ヒュー、ヒュー、ほ、ね?」

 

役に立たないな。

もう放っておこう。

 

足を動かし別方向に―――

 

「きぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいい!!!!」

 

耳を貫く金切り声をあげて襲いかかってきた。

笛を振りかぶる。

 

どこかに行っていた王女が突然横切り、私の笛の軌道から人間を吹き飛ばした。

そのまま王女は手刀で首を叩き、気絶させる。

 

「あ、危なかったのじゃ……」

「……っ!」

 

笛を投げつける。

王女は身をかわし、王女に向かって短剣を刺そうと突進してきた子供の首があらぬ方向に曲がった。

 

絶命したか、安心だ。

 

「あぁ……殺っちゃったのう。処理を頼んだぞ。」

「「承知いたしました。」」

 

側近がバキリと人間の首を折り、二つの死骸を何処かへ持っていった。

そして王女は私の方を向く。

いつになく真剣な顔をしていた。

 

「情報を得たぞ。」

「そうか、教えろ。」

「はいはい。

今回、ロックラックが総力を上げて対抗しようとしているのは……

『鏖邪ディアブロス』じゃ。」

 

聞いたことの無い名前だ。

しかし、古龍よりも厳重に警戒されてないか?

 

「おっと、奇妙に思うのはよーく分かるぞ。じゃが、本当に神選者が束になっても勝てないレベルなんじゃよ……だから昼間にあった車は索敵用の奴じゃな。」

「戦闘をふっかけてきたのに索敵なのか……」

「あはは、あれはプログラムがおかしいんじゃよ。

それで鏖邪ディアブロスじゃが、途中までは鏖魔ディアブロスと同じらしいのじゃ。じゃが本気を出したら、命反ゴア・マガラと同等、もしくはそれ以上と言われている。」

「…………」

「気になるかの?」

「いや。会いたくないとは思っている。」

「ふぅん……」

 

私はガルルガではない。わざわざ死にに行くのは身の程知らずだけでいい。

 

さてさて、今日はネセトを砂漠に埋めよう。

そして砂の上で寝よう……ククク……




『私の巣を強くするから手伝え』

『次世代クイーンはよ』

『もっと推進力を』

『我が妻が無病息災でありますように』

『映画で流星群を流したい』

『ルカと結婚したい』

『麗しき金色の彼女と付き合いたい』

『ボレアスが正気に戻ります様に』

『お前達を殺す』

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