閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

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チョイ役(ヤバい奴)



王と王女

まだまだ私の体はもつ。

殺しきれなかったライダーに飛びかかりを再び切りつけ蹴り落とす。

笛を糸に絡める。

 

敵同士の友情を使えばなんとかなるか。

 

まずは笛をリオレウスに投げる。

頭に当たらず足に当たる。

 

見せつけるようにゆっくり、ゆっくり乗っているリオレウスの頭を糸で吊り上げる。苦しそうにリオレウスは呻く。

見かねたリオレウスが突っ込んでくる。鎌で斬りかかるが回避され、さらに雷ブレスを放たれた。狭い為私は回避を諦め耐える。やはりかなり痛い…あと三、四発でまともに動けなくなる。リオレウスは更に雷ブレスを放とうとする。

私は笛を巻き上げ、1度キャッチし再びリオレウスに投げつける。

 

リオレウスはブレスをキャンセルし、避ける。しかし目を離した瞬間尻尾の違和感をリオレウスは感じる。と、同時にアトラルが乗っていた仲間は凄まじい音と共に墜落していく。

リオレウスに乗ったライダーは呟く。

 

「危険度4とか言ってた奴は誰だよ…誰なんだよ。」

 

後ろに何かが乗っかる音がする。

 

ライダーは太刀を抜刀する。

 

「この化け物がぁぁぁぁ!!」

 

と叫び、振り向きながら切り払う。

アトラルはいない。

ライダーは勘違いだったのかと一瞬思うが後ろ、先程の前から抱きつかれた。

 

「あぁぁ!嫌だぁぁぁ!死にたく――」

 

 

殺しに来なきゃ殺さないのに。

 

抱き殺したアトラルの正面は血に染まっていた。

密猟者達を怖がらせるには十分だった。

 

「チッ!お前らは下がってろ!」

 

群れのリーダーか。

私は狩猟笛を背中に乗せ、鎌を片方振りかざす。

大剣を持つリーダーがこちらに飛び移ってくる。

鎌を振る。太刀のいなし?みたいなアクションをする。そのまま振りかぶった為私は下がる。

すると敵はシートをはった。大剣でリオレウスに傷をつけないためか。少し屈んだ体制になったそいつに鎌を薙ぐ。

再びいなされる。相手も大剣をすくうように斬ってきた。私は体を引きながら糸を放つ――

ぐぅっ!雷が降る。今戦ってる大剣のリオレウスか。……なるほど、このシートを使えば雷ブレスが下に通らないのか。シートを外すか?いや、外したら逃げられるかもしれない。しばらく膠着状態になればいいが。

 

怯む私に大剣を振り下ろしてくる。笛で受け止める。

鎌・いなし 鎌・いなし 薙ぎ払い・回避 笛・回避。

次はリオレウスが放つ雷ブレスを避ける。流石群れのリーダー。強い……お互い信頼してるから合図も出す必要がないのかもしれない。

試してみるか。後ろを向き今乗っているリオレウスの頭を笛で叩く。大剣が走ってこようとする為、当たるように糸を放つ。大剣は全て回避するが近づく事が出来ない様だ。その間にリオレウスの意識をとばす。

 

 

意識を失ったリオレウスは落下を始める。

リーダーのリオレウスは咄嗟に動く。

すかさず、気絶したリオレウスに糸を繋げているが、宙を浮いているアトラルに雷ブレスを放ちライダーを助けようと急降下する。ライダーは再びリオレウスの背中に乗り四方を確認する。

アトラルの姿は見えない。

 

しかし鎌は落下してきて頭をぶった斬ったのだった。

アトラルは落下し始めたリオレウスの上で両翼に糸を繋げ自分をパチンコの様に撃ち出し、再び上昇していたのだ。

 

「う、うわぁぁぁぁ!!」

 

密猟者達が私から視線を外す。そして全力で逃げる。

私は追わずに今乗っているリオレウスを折る。そして地上に落下する。

密猟者から攻撃を仕掛けてきたのだ。この惨状を見ていた気球も警戒を促すだけで狩猟対象にはしないだろう。

息があるリオレウスを1匹ずつ終止符を打つ。

草原は血の海と死体の山で埋められた。

 

ライダーのオトモンかつ危険度5の存在を大量に狩る危険度4は果たして危険度が正しいのか?

数日後から学者達はしばらく危険度を議論するのだった。

 

 

 

血の匂いに釣られてくる生物は沢山いる。今回は余りにも匂いが濃すぎて大体の生物が危険を感じてよってこないが、

更に強い。しかもこの世界を脅かす二つ名の1匹が来てしまうなんて誰が思うのか。

 

!?……微妙に怖い気配が近づいてくる。なんだ……クシャルダオラに似た雰囲気?しかし弱い……いや、余りにも、余りにも実力を感じる。

私は1歩踏み出そうとした。その瞬間……

 

ドゴォォッ!!

 

「クァァァァ!!」

 

地面を砕きながら降りてきた存在。空に黒い跡を残し落下してきた生物。

それを見た気球に乗っている書士隊はある資料を思いだす。

 

 

砂まみれのノート

 

全ての生物は世界にそれぞれ小さな、でも確実な存在として生きている。

古龍も例外ではない。人間が種の存亡にかかるため狩ってはいるが生き残った古龍がまた数を増やしながら自然に干渉する。

 

しかしあいつは駄目だ。

全ての生物を無造作に殺せる。あれは生物ではない。古龍なんて枠に収まらない。

手を伸ばしただけでダイミョウザザミが粉々になるだろうか。

走り回っただけで村一つが壊滅するだろうか。

これは聞いた話だ。クシャルダオラでも同じ事になるだろう。

しかし、今、私が見たのは

 

『ダレン・モーランを一撃で殺した』姿だ。

 

ダレン・モーランが鳴き声と共に砂上にあらわれたと同時に、空から白黒の塊が落ちてきた。

一瞬でダレン・モーランの首から先は破片になって消えた。

 

あれは駄目だ。早く最強の狩人、設備で一方的に殺さな

(これより下は何も書いていない。おそらく落としたか。)

 

 

「まさか……命反ゴア・マガラが来る、なんて。」

双眼鏡を使わなくても感じる殺気に恐怖する書士隊。

 

 

駄目だ。クシャルダオラなんてゴミだ。後何秒私は生きていられる?

己の死を確信するアトラル。

 

 

命反ゴア・マガラ。

本来ならすぐに死ぬ悲しい運命の 渾沌に呻くゴア・マガラ。

シャガルマガラに代謝を阻害され育つことない体を古龍という圧倒的な力が蝕んでいく。

しかしこの個体はシャガルマガラの力に体が対応した上で、幼体の爆発的な成長する力が残ってしまった。

永遠に子供。永遠に成長。本来の運命に反する生き方をする個体。そして今は――

 

「ゴァァァァァァッ!!」

 

バキィッ!

 

叫ぶ時に足に力を入れるだけで地に亀裂が走るという天災を鼻で笑う力を持つ。そしてかなりの巨体だ。

 

ちなみに性格は無邪気で喧嘩好き。強い存在を感じると殴りに行くだけ。

物が気になったら触る。腹が減ったら好みの食料を探す。ただそれだけ。

 

 

命反はアトラルに一瞬で近づく。アトラルが影に入る距離だ。匂いを嗅ぐ。乾き始めた血の匂い……

どうやらお気に召さなかったようだ。近くの新鮮なリオレウスの肉を食らう。

 

 

い、い、今ならに、逃げ……

私はふらつく足を動かしながら豪快な音がなる草原を後にした。

私はなんとか何故かどうしてか、た、助かった?らしい。

……なんだあの生物は。滑るように近づいてきたが、途中は私が全く反応出来る速度ではない。

 

……

1度見逃されたのだ。再び追ってくることはないだろう。自分の食料問題を解決しなければ。

今はモンスターが1匹も見当たらない。当たり前だ。私もあんな奴がいない砂原に帰りたくなる。

 

危険とはいえ、とりあえず何とか私はこの場所(遺跡平原)での生活をはじめられそうだ。

殺戮は気をつけないといけない。運良く、深く理解した。




アトラルは運良く助かった。
何故なら命反は虫も食うのだ。
乾き始めた血の匂いと、絶対新鮮な生肉の匂い。それの違いが生死を分けた。
殺戮で呼び寄せたが殺戮で助かったというなんともいえない結果に終わった。

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