閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

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どうせならー屑じゃなくー
星屑のよーうにかーがやーきー
こーの惑星をぶち壊してやーれー



飛行妨害絶対不可、その名は劈星龍

高地の村だから気温が低いとはいえ、多少はあったかくなってきた。

 

あれから何度も雪山のクエストを受注し、気球がいない時にネセトを調節していた。

クエスト内容は採取が多かったな。

 

一時は古龍を狩り、装甲にしようかと思ったがハンターが狩る対象は注目されている以上、現在は無理だと理解し今は大人しくしている。

 

 

そんなある日。

早くネセトと共にドンドルマを襲いたいなと考えていた私に、一通のクエストをギルド側から頼まれた。

 

 

──────────────

銀翼の襲来?

 

観測目標・劈星龍バルファルク

クエスト目標・対象を確認した後にチケット納品

 

契約金・報酬金

13000z(特例、ギルド建て替え)・52000z

1500Gz(特例、ギルド建て替え)・25000Gz

 

受注条件

G2以上

 

依頼者・青く光る左目の神選者

私の目には見えた……奴が来る。

万物を突き抜け、世界を飛び回る隕石が。

迸る緋色の弾丸が来ると私は予想した。

ポッケ村のあなたには雪山を警備して欲しい。

見つけたら、焦らず逃げてくれ。

追ってきても武器を出さなければそこまで苛烈な攻撃は仕掛けてこない様だ。

 

──────────────

 

「もう内部的にはG2以上なのか。」

「訓練してない人間の感覚では、あの舌の軌道さえ分からないじゃろうしの。」

「……だが、表に出てない依頼か。G級昇格には厳しい。」

「これからも良い様に使われそうじゃの。」

「ふん……」

 

撃龍槍を磨く。

生きてない物に感情は出来ない。だが、私の体が形を覚える。

普段から丁寧に扱い、乱雑に使用し続ければ限界の使い方が出来る様になる、と勝手に考えてみたからきっちりと磨いている。

 

撃龍槍を持ち上げ、キラリと光を反射させる。

 

「して、受けるのかのう?」

 

王女はニコニコと見てくる。

 

「勿論だ。内部でのランクは数値になっていないがゆえに、些細な事で上下する。今は上が狙えるタイミングだろう?」

「そうじゃな。」

 

足を伸ばしパタパタし始めた。

ご満悦のようだ。

 

「ところで……Gzとはなんだ?」

「あ、ギルド内通貨じゃな。とてつもなく価値は高いが、ギルド関係の中でしか使えないのが当たり前とはいえ欠点じゃの。」

「ふむ……どちらにしろギルドが払ってくれるならありがたいな。では行こうか。」

 

槍と笛を持つ。

宿が軋むがまぁどうでもいい。

 

「そういえば撃龍槍をどう持ってるのかと思ったのじゃが、あちこちに切れ込みを作っていたのじゃな。」

「当たり前だ。」

 

笛を納刀し……鈍器は納刀と言うのか?

……細かいことはいいとして、槍を担いで行くとしよう。

 

 

 

 

受付嬢に人差し指で口を塞ぐ動作をしながら紙を渡す。

彼女は頷き、裏の方に直ぐに行った事から紙の内容を理解した事が伺える。

 

しばらくすると受付嬢が別の紙を持ってきた。

 

ふむ……『個人情報秘匿権利主張紙』?

頭を傾げると王女が耳元で喋ってきた。

 

「実はの、昔こういう神選者が深く絡んだ事から各地のギルドが乗っ取られかけた事があったんじゃよ。それでの……」

「なるほど。」

 

短く返事をし、サインをする。王女もだ。

受付嬢は再び頷き、笑顔で言う。

 

「しばらくあちらでお待ち下さい。それでは行ってらっしゃいませ。良い狩りを!」

 

ふん……ネセトが触れるならどんなクエストでもいい。

だが、笑顔を忘れずに返事を返す。

 

「ありがとうございます、行ってきます。」

 

その後、ギルドマスターは

『本日は雪山に超強大な古龍が現れた為に雪山への航行は限られた方にのみ行っております。』

という張り紙を出した。

 

「古龍とかマ?」

「卍。」

 

……ハンター達は落胆こそすれど騒がない。

やはり古龍とはそれほどの脅威なのだろう。

 

消費期限切れの回復薬を捨て、

新しい回復薬を買って出発だ。

 

 

 

 

 

 

 

山を登る道中に野生のモンスターは居た。

ゴアの翼を出せば逃げるが、がむしゃらに突進してくるのは相変わらずの様だ。

 

原種でさえ高速で空を飛ぶのだ、今回のバルファルクなら尚更事前に逃げる事は不可能だろう。

 

洞窟の上に登り、ゴアの翼でネセトを雪の中から出す。

気球はバルファルクから逃げる事が出来ないから飛んでいない。

 

「ホットドリンク飲むかの?」

「いらん。」

「素で耐暑・耐寒かぁ……羨ましいの。」

「夜はかなり寒いからな。」

 

勿論砂漠より寒いが、別に飲むほどでは無い。

というよりこのホットドリンク飲めた物じゃない。

 

 

 

しばらくネセトを操作していたら、遠くに紅の光が見え始めた。

 

 

雲があるため、流石に形は分からないが……

バルファルクの直撃に、このネセトは耐えられないだろうから洞窟の方に寄せる。

 

人間の姿になり、王女の横に立つ。

 

「……」

「……」

 

互いに無言だった。

 

 

 

突如、赤い波動が光から放たれる。

そして光の尾が見えなくなったと感じた時にはもうかなり接近してきていた。

 

つまり、こちらを補足して直線で突進してきたという事。

 

 

まずは直撃を避ける。

 

 

全力で飛び退く。

バルファルクは衝撃波で私達が吹き飛ぶ程の速度で雪山に突っ込み、様々な物体を破壊する音と共に遠ざかっていった。

 

「……想像以上だ。」

「じゃろー?」

「知っているのか?」

「いや初対面じゃ。」

 

軽いやりとりをしていると、地響きが発生し、急速に大きくなってくる。

とりあえず飛び退くとバルファルクが氷を吹き飛ばしながら出てきた。

急停止し、駒の様に回転を始める。

 

「なんだその攻撃は!?」

「バルファルクのブレスじゃ!」

「翼からブレスなのか!?」

 

驚愕の事実と大量の龍属性の弾丸が飛んでくる。

固形に近い物はダメージを受けるため、私に直撃する物だけ笛で弾く。

 

10秒程で周辺の雪が赤黒くなった後、再びバルファルクは急加速して空に飛んでいく。

空中で円を描きながら更に加速する。

その速度に雲は散り散りになり、空気が巻き上げられ始める。

 

王女の元に近づく。

 

「おい、どうする?」

「素直に逃げようかの。」

 

 

ゴォォォォォォォ!!

 

 

段々うるさくなってきた。

バルファルクの方を見ると……

 

 

 

 

 

 

―――ギィィィィィィィッッツ

―――ゴォォォォォォォッッ

 

 

 

 

 

機械音というのだろうか?

高速で何かが削られる様な音だ。

 

……一体どういう事だ?

 

見上げた空には紅い光と青白い炎の輪が出来ている。

発生した原因……もとい、維持しているのはあそこに居るバルファルクだろう。

 

 

熱風が吹き荒れる。

 

「暑っ!?暑い、暑いのじゃ!!」

 

雪が急激に溶け始め、あちこちで雪崩の音がする。

王女は直接風に当たる事を避けるため、私の影に移動する。

 

……誰が思っただろうか?

雪山で砂漠以上の気温に会うなんて。

 

「まぁしょうがない。風避けは認めよう。」

「クーラードリンクを持って――」

 

 

 

――――っ!?

 

「死にたくなきゃ掴まれ!!」

 

王女は、何故と言う前に私の背中をがっしりと掴む。

 

 

 

私は感じた。

対処の出来ない攻撃が来ると。

 

そして恐怖した。

古龍への恐怖ではない。

 

この嫌悪感と絶望はあの時のイビルジョーか。

 

ゴアの翼を出し、四本の腕で笛を構える。

 

赤い波動が再び空を飛ぶ。

地平線にまで届いたであろうその波動が見えなくなる。

 

 

 

 

──────────────

王女も、アトラルも察知出来ない速度で事象は次々と起こる。

 

 

音より何十倍も速い速度でバルファルクは進路を変えて雪山に突っ込んでいた。

 

紅の龍の力と青白い炎の嵐が雪山を覆い尽くす。

 

バルファルクは既に数千メートルを貫き、後を音が追っていく。

 

 

赤黒くなった雪が、先程落下してきた隕石に共鳴する様に龍雷を放つ。

灼熱の炎と山にヒビを入れる龍雷が走り、周辺のモンスターが死滅した。

 

 

 

 

そして音は追いつく。

 

 

バルファルクはとてつもない速度を出した翼を雪山のあった所に向け、エネルギーを充填する。

 

大地の暗闇の中から黒と白が混じった紅の光が放たれた。

 

 

 

アトラル達が衝撃波により気絶した数秒後。

 

 

 

ヒビが入っていた雪山のみならず、その山の麓どころかポッケ村の対岸までを龍のエネルギーが噴水の様に吹き飛ばす。

 

オストガロアより圧倒的に強いその龍のエネルギーは、遠くに浮いている人工衛星からもハッキリと映った。

 

 

 

 

これが『劈星龍バルファルク』だ。

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

……ただただ驚愕する。

 

 

 

気がつくと私は宙を浮いていた。

 

先程はおどろいた、だがさっさと心を入れ替えて取るべき行動が沢山ある。

既に相当な速度で落下している、元の姿に変わっておこう。

 

空気抵抗によりガクッと速度が落ちる。

 

ちょうど上から落ちてきた撃龍槍に糸を放ち、王女を探す。

撃龍槍が垂直に落ちているからか落下速度が速く、しばらく周りを見ていると下から気絶している王女が近づいてきた。

糸で引き寄せる。

 

ゴアの翼で飛びたいところだが、岩や石が雨のように降っている所を悠々と飛ぶことは出来ない。

 

糸で丸まった状態の傘を作ってから、撃龍槍に糸を三重に括り付ける。

その糸を繋げたまま、私は周囲を見渡し脱出方法を考える。

何故なら、着地した後に落ちてくる岩に潰される可能性がある。

 

まぁ、それ以前に山があった所には陽の光が全く届いていない闇の大口が空いている、底が無いかもしれない。

さて……

 

 

 

……遠くに雲の壁が見える。

つまりその高さは過ぎたという事だ。そろそろやるとしよう。

 

まずは糸を乱射する。

そして撃龍槍を私の背中に括り付け、王女を腹に拘束する。

 

糸を全て引き寄せて撃龍槍ごと私が移動する。

再び糸を撒き、同じ様に引き寄せて飛ぶ。

 

それをしばらく繰り返していると、ネセトの骨組みを見つけた。

周りの岩は全て吹き飛んだ様だ。

 

ネセトに飛びつき、笛を振って吹き、自己強化する。再び振って吹き身体強化する。

 

息を吐いて、吸う。

 

 

失敗すればネセトを失う。

だから失敗しなければいい。

 

 

まずは撃龍槍を投げる。

しばらく待つ間、ネセトに糸を大量につけておく。

岩を弾き飛ばしながら突き進む所を私がついていく。

 

途中で距離が足りないと分かり、撃龍槍につけた糸で更に私を吹き飛ばす。

陸の上に着いた所で傘を開き、減速する。

一度閉じて落下し、王女が逝かない様に再び傘を開き減速する。

 

着地した後、穴に落ちた撃龍槍を引き寄せながらゴアの翼を生やす。

王女をむしり取って置いてから、撃龍槍を地面に深く突き刺し、私を縛り付ける。

 

そして、思いっきりネセトを引っ張る。

一気に引っ張った事により私が滑るのを、撃龍槍が止める。

突然の負荷により、ネセトの噛み合いの弱い所が外れ引っ張りやすくなる。

 

糸を生成、遠隔で強化しながら引っ張り続ける。

 

 

 

 

土くれの雨は終わり、時折水や氷が落ちてくるだけになった時にようやくネセトを引き上げ終わる事が出来た。

すかさずネセトを組み立てる。

本来なら補強しかしないが、私はもう慣れたものだ……

 

 

 

鉄のネセトが再び立っている。

 

 

その時、突然吹いた風に飛ばされそうになる。

すかさず王女をゴアの翼で掴む。

 

黒く変色したバルファルクがホバリングで私の前で浮く。

 

首が痛くなる程に見上げていた山は、底の見えない谷へと変わっていた。

それを一瞬で行ったバルファルクの前に、果たして逃げ道はあるだろうか?

 

私は笛を構え、撃龍槍を引っこ抜く。

 

 

 

「あれー、もしかしてークイーンがー言ってたー、アトラルーカー?」

 

 

そして、流暢に話し始めた事に私はとても驚いた。




クイーンとー私はー同じーくらいーだよー

『劈星龍・バルファルク』

見た目は黒ずんだ天彗龍。
体格は一回り大きく、翼の龍気の噴出口周辺は異常な形をしている。

白統虫に比肩する脅威。
陸海空、そして宇宙を自由に飛び回るが故に、全ての属性が素で効かない。

陸・大地を貫き、マグマは突っ切り、凍土では雪崩を起こす。あらゆる素材を貫通する為、停止させる事が困難。

海・渦潮を起こし、津波を起こし、龍雷の影響で水が変質して大量の生物が死滅する。

空・普段なら影響は薄い。本気を出すと、とてつもなく圧縮された空気による高熱により、紫色の光を放ち始める。最終的にその余波によって大地が溶け、蒸発していく。

宇宙・自由。数週間なら龍エネルギーによって生きていける。その為、隕石破壊ゲームをしてる。

弱点・一瞬で完全に止まらせる事が出来れば自傷ダメージを受ける。
また、翼の力が余りにも強いだけで、翼を除いた実際の近接格闘戦はそれほど強くない。
しかし、龍脈とは関係無く龍気を生成している為、簡単に翼の使用を止める方法は無し。
また、チャージした龍気の放出は、オストガロアの必殺技を優に超える。

性格はかなり温厚(暇だと通りすがりに生物を殺すが)非戦闘時に話が出来れば、乗せてもらう事も可能(マッハに耐えれる体が無いと死ぬ、伝達手段も決めないとならない)。


覚えてーおいてねー☆

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