閣螳螂は娯楽を求める 作:白月
あの者に断罪を!
「「「断罪を!!!」」」
「ライナウ アワッシュフィーリンナウ。」
何か王女が歌いながら踊っているが放っておこう。
シャンデリアに火を投げ込み、糸でその火を引き戻す。
事前に注いでいた油に火が灯り、私が引っ張り出した書類を照らす。
『神に選ばれる者』
そう大きく書いてある。
目をつけられたかもしれないのだ、事前に規模などを知っておいた方がいいだろう。
そして次のページを開いた瞬間、私は驚いた。
「……この文様は、あの遺跡の一室にあったな。」
「daisuke……」
「ちょっと黙ってろ。」
つまり、既に規模は大きいのか。
ランゴスタと共に潰したとはいえ、確か銃だったか?
その武器を持っているのは非常に脅威だ。
選民思想を持っている人間はとてつもなくウザイ。一体何をしてくるか分かったもんじゃない。
「え、アトラルその宗教に興味あるのかの?」
「神か何だかは知らないが、人間より圧倒的強者なのに無償でずっと助けるのはおかしいだろう。」
「ふーん……まぁ、わらわは若干信じているだけで努力しないと人生変わらないから、神様に貢ぐ気は無いのじゃ。」
「努力の結果で今ここに居ると……帰れ。」
「あんなクソブス豚家畜塵灰汁なんて婿に迎えられるかこのやろぉぉぉぉっ!!」
「夜間だ、叫ぶな。」
モンスター……じゃなかった、近所迷惑になる。
そういう私もしばらくは眺めていたが、『人は――』という文章が多いせいで苛立ってきた。
寝よう。
既に生物臭さは無くなり、ふかふかしたダブルベッドに横になる。
王女も私の横に潜り込む。
「明日出かけるのかの?」
「明日の様子を見てからだ。」
交わす言葉は少ない。
私も王女もさっさと寝るからだ。
しかし、明日の様子を見る前に私は起きる。
ウイルスが騒ぎ出したからだ。
「ねむ……じゃが、ふぁぁ……戦闘準備しないとのう?」
王女も起きたようだ。
寝起きで戦闘のことを口走るのは暗殺者を警戒してか。
「そういえばお前の側近は?」
「きちんと警備が働いても、暗殺の抜け道はかなりあるのじゃぞ。」
「なるほどな。」
だが、私の家では話が別だ。
元の姿に戻り、事前に張っていた私の糸と今の私の糸をくっつける。
どうやら玄関から真っ直ぐにこちらへ歩いてくる。
撃龍槍を一度持つが、ここで殺すのはイメージが悪くなるため笛に持ち替える。
王女は懐から麻痺ナイフを取り出した。
扉の前に敵が立つ。
ウイルスで明確な位置が分かる。だから……
扉がこちら側に開く。
扉ごと敵を叩き潰す。
王女が麻痺ナイフを構えながら仰向けの影に馬乗りになり、片方の手をナイフで床に縫い付けもう片腕を捻り持つ。
「ナイス拘束。」
「意表を突く行動ばかりするのう。」
「やはり悪魔だ……っ!」
「正当防衛で悪魔扱いとは……低脳未満だな。」
帽子を見ると、『神に選ばれる者』の紋章が書いてあった。
「さぁ吐くのじゃ。何をする為に侵入したのじゃ?」
「そこの神を乏す悪魔を滅する為だ!」
「だとしてもこんな短剣で私を殺せるとでも?」
「聖なる加護の―――ぎゃぁっ!?」
「ふむ、かなり切れ味はいいな。」
敵の腿を突き刺す。
その時、二階からこちらにやってくる何者かが居た。
「王女、何かくるぞ。」
「……あぁ、お主か、どうした?」
突然現れた人間は王女に何かを囁く。
「ふむふむ……アトラル。」
「なんだ?」
「いだだだだだ!」
捻り上げながら王女は私の目を見て言う。
楽しそうな顔だ。
「この信者を傷つけたとして、集団がやって来るようじゃぞ。」
「面倒くさいな、殺し尽くす訳にもいかない。どうする?」
「ククク……」
「悪魔を滅ぼせ。」
「「「悪魔を滅ぼせ。」」」
「助けを請う。」
「「「助けを請う。」」」
「平和への助力を。」
「「「平和への助力を。」」」
「神の導きに値する者に我々はなる。」
「「「神の導きに値する者に我々はなる。」」」
160人程の集団が歩く。
先頭の司祭は人を助け、悪魔を滅する事で神からの天啓を受けた者だ。
悪魔は許されない。
この世に居てはならないのだ。
悪魔の家を囲み、呪紋を地面に描く。
呪文を唱えながらぐるぐると回る。
「愚かな悪魔よ、冥界に還るのだ―――っ!?」
バァッ!!ガラガラガラガラ!!
「我々の教会が!?」
「走れ!急ぐのだ!」
呪文を一時中断し、拘束の呪紋を描いてから倒壊する教会に走る。
見上げた信仰心だな。
私は扉を開けて外に出る。
お絵描きで私を閉じ込めようとするのか……寄生虫に乗っ取られた虫の方が合理的な動きをする。
そして何故見張りを一人も残さないのか。
さて、王女が時間を稼いでくれた。
いい場所を探そう。
撃龍槍を引きずる。
「神を汚した悪魔に粛清を!」
「「「粛清を!」」」
広いところに奴らが走ってきた。
「悪魔が居たぞ!滅するのだ!」
「「「おおお!!!」」」
「なんで私が悪魔なんですか!?」
「人間の皮を被った悪魔の言う事に耳を貸すな!」
「「「全ては神の為に!!」」」
流石に気持ち悪いな。
撃龍槍を横に持ち、走る。
「ぐうっ!」
「避けろ!」
これさえ対応出来ない素人が戦闘を仕掛けるのか……
それ以前に、周りより神に助けを求める弱者が戦闘を仕掛ける時点で脳が死んでるな。
「ルカ、大丈夫かの!?」
王女が飛び込んでくる。
互いに囁く。
「意味が分かりません!何故こんなことに―――大丈夫だ。ジャギィより弱い生物に負けるわけが無いだろう?」
「お主ら!少し見境が無さすぎるのじゃ!―――流石、というべきかの?」
「悪魔に乗っ取られた人だ!」
「助けるぞ!!」
「「「神よ。我らは人救いの業をする!」」」
「そんな……戦うなんて!―――こんな奴ら討伐した数を数える価値もない。」
「そちら側は任せたのじゃ―――ボロボロに言っておるの。」
撃龍槍を頭の上で回転させる。
私の身長が低い為、不用意に近づくと頭が吹っ飛ぶだろう。
「来ないで下さい!私の話を聞いてください!」
「矢を撃て!」
「ぐあっ!」
さて、私は矢に当たり撃龍槍を落とし跪いた悪魔だ。
だとしたら馬鹿共はどうするだろうか?
「「「悪魔を滅するぅぅぅっ!!!」」」
やはり走ってきた。
それより悪魔を滅するしか言えないのかコイツらは。
「ルカぁっ!助けてぇぇ!」
「っ!?」
王女の方を見ると、拘束されていた。
だが助ける必要は……イメージが下がるから助けないと駄目か。
「お……あ。」
王女って叫ぶのはおかしくないか?
とりあえず撃龍槍を投げつける。
「悪魔めぇぇ!?」
「彼女を返せ……返せぇぇ!!」
笛を構え、振り回しながら飛び込む。
時折短剣を私に投げてくる敵がいるが、手を犠牲にして受け止める。
「いたーい。」
……あっ。つい演技が切れてしまった。
笛を脇に抱え、短剣を引き抜き投げ返す。
「うぉぉぉお!!」
「っ!?」
抱きついてきた、なんだこいつ――――
大爆発が起きた。
若干放心した後に、痛みを感じながら起き上がる。
自爆テロによって周りの信者ごと消し飛んだ様だ。
王女の方を見る。
「daisu……あ、起きたのじゃ。」
……生きてたのか。
「いやーほんと、あっちの建物で突然犯されそうになって恐怖したのじゃ。」
「?それは普通……」
「人間の世界だと犯罪じゃ犯罪。」
「……そうか。」
「しかもわらわが産んだ子を神への供物として捧げるんじゃと。」
「自分から子孫を殺すのか……人間は基本一匹、じゃなくて一人ずつしか産まないのだろう?間引きにもならない。」
とりあえず若干息のある信者を集める。
そして家の中から縄を持ってこさせ、縛りつける。
爆心地の中心に置いておこう。
「さて、後は大人に任せるとしようかの?」
「そう……だな。」
考え方が見事なまでに相容れないと、ここまで酷い事になるとはな。
王女によると、160人の半分はこっそり後ろから側近が気絶させていったらしい。
自爆する人間も数十人居たため無力化していたが、間に合わずに爆破が起きたのだと。
「……お前が捕まるとはな。」
「下半身露出した信者の群れにとてつもない嫌悪感を感じて身が縮こまってしまっての……薄い本になるところじゃった。」
「もっと王女らしい内容に偽装しろ。あと薄い本とは?」
「人間の性欲を増進する書物じゃよ。」
「……は?無意味な書物に感じるが、増進してどうするんだ?」
「う?うーん?まぁわらわは王女だし?使用用途は知らないなぁ?」
「……ふん、都合の良い時だけ王女しやがって。」
あれは誰だ?誰だ?誰だ?
あれは「私の名前はアトラル」マーン
「アトラル」マーン(女の子やぞ)
裏切り者の名を受けて(50話・村娘)
全てを捨てて……捨てて?(笛)戦う男ー
デビルアローは撃龍槍
デビルイヤーは脚にある
デビルウィングはゴアの翼
デビルビームは出来るわけがないだろう、ディオレックスじゃないのだから
悪魔の力ー(狂竜化ウイルス)身ーにーつーけたー
正義のーヒーロー
天使たーん……すマーン!
まぁ正義も我儘も似たものだろう……
私は我儘だが。