閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

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虫は凹凸があれば天井も歩ける

※死に姿を白黒と墨で考えればグロさは抑えられるかもしれません。



暗雲を刺す糸

馬鹿らしい。

 

余りにも馬鹿らしい。舐め腐っている。

生肉が無造作に置いてある。丁寧に骨付きだ。

だがこれで分かることは私を狙う何者かがいるという事だ。

見せつける様に警戒し、生肉を調べ食べる。

 

 

馬鹿らしい!

 

また生肉が置いてある。

次はさっさと食べる。次に何かあるかもしれない。

 

 

……今すぐに仕掛けた馬鹿を殺したい。

 

青い色をした生肉だ。

ここは砂原の中でも完全な砂漠。

なるほど。ここで捕まえる気か。

 

知能がある。その噂が広まってるのは前に……クシャルダオラから助けてもらったハンターがこぼした一言から予測出来る。

 

ゲリョスするか……私が初めて使う技に対策するのか見物だな。

食べたフリをしながらすかさず地面に埋める。

 

 

「知能あっても所詮は子供程度だろうな。」

「期待外れかもしれませんね〜」

「お前ら、きちんと鎌、足を縛っとけよ。」

「20人で来る必要もありませんでしたね。」

「鉄の檻を載せた台車もある。楽だったな。」

 

縛った私を入れた檻は布で隠された。

気球は今日はいない。

 

「お前ら。大人数じゃ怪しまれる。先に帰れ。」

「了解っす。」

「いつも通り、俺が用心棒、お前が商人な。」

 

そういう思慮を私に活かさないのか……

いや、もしかしたらこれも罠かもしれない。しかし……揺られるのは気持ちいい……

 

 

「本当に馬鹿なモンスターですね。」

「あぁ。あの殺られたハンターは更に馬鹿だったという訳だ。」

「15人も帰ってしまいましたね。」

「残す必要は無かったという訳だ。」

「まぁ帰った事にもきづかねぇだろこいつ。」

 

ハッとした時ずいぶん涼しい所に来ていた。

なんだ、ちゃんと活かしてたのか。……そうか。私に意識があると言っても『人語を理解する』なんて気づく訳ないか。私は喋れないからな。

本来なら霧状に噴射する体液を少し痛むが液体としてゆっくり檻に擦り付ける。縛っていた縄は普通に溶けた。

鉄が腐食しはじめる。次に体を伸ばす。いきなり動いて筋肉がつったりでもしたら負けるから。

準備は終わった…わざと腐食させなかった檻をガンガン鳴らす。

 

「あ、起きたようです。」

「じゃぁ麻酔スプレーくれ。」

「お願いしますね。」

 

息を止める。

目標が布に手をかけ、スプレーを突き出す。首の位置は…そこだ。

 

一閃。檻も布も首も切断する。

 

首の骨を容易く切る鎌に腐食した鉄を切ることは簡単だった。

頭がなくなった体はスプレーを落とす。倒れる音がする。

残り4人か。

すかさずスプレーを挟んで持ち腐食を始める。

檻を切り裂き外に飛び出る。

太刀、ガンランス、笛、弓。

太刀を地面に擦り付けながら来る。笛も歩いて走る速度でくる。

スプレーを地面に叩きつける。太刀はまともにくらい、倒れる。

笛は空中回転しながら突撃してくる。鎌を振るが再び空中回転で避ける。弓が腹に刺さる。

ガンランスは寝た奴を踏みつけ高く跳んでくる。切り上げる。二つに体が割れる。弓が足に刺さる。

笛が叩きに来る。鎌を再び振る。弓が刺さる。空中回転して避けた先に再び鎌を振る。……笛で防がれた。弓が刺さる。

寝てる太刀を絡めとり振り回して弓に投げつける。

しかし弓は納刀しながら後ずさりする。更に太刀が起きる。

笛が足を叩く。痛い…キレそうだ。

太刀を縦に切る。いなして私を通り抜けるように切りつける。

 

……落ち着け。怒りを通り越して落ち着け。

……いい物があるじゃないか!

 

私は走り檻を何度か切りつけ切断する。腐食させてない物も無理やり切る。糸で巻く。弓に投げつけ自分を糸の力を合わせて一気に近づく。

檻をいなした弓に鎌を振る。ヒット。更に鎌を振る。回転して回避されたが檻を叩きつける。 ハンターの立つ姿は見えない。

抜刀しながら太刀が走ってくる。

鎌を適当に振り回す。太刀は近づいてこない。笛が旋律を吹く。

太刀が突っ込んでくる。鎌を振るフリをする。太刀を縦に構えたのを確認し脛を狙う。切断完了。

笛が正面から頭を狙ってくる。檻を振り回す。1回目、回避。2回目も回避。3回目、回避しながら突っ込んでくる。

四回目、宙返りしながら檻を下から飛ばす。攻撃をしようとしていた笛は回避出来ず檻に当たる。遠くに吹っ飛ぶ。

……笛が立ち上がる。しぶとい……薬を飲もうとしている。すかさず糸をとばし引き寄せ檻の鉄柱に叩きつけて刺す。

 

終わった。やはり私は周辺に物がないと非常に厳しい。

ハンターの戦い方は多種多様だ。このような攻防ではいつかは殺されてしまう。

 

そして私も馬鹿だった。

ここが何処か分からない。ここは草原だが……近くに森が見え、レンガも見える。もしかしたら自分は寝た振りしている間につい気を失ってたのかもしれない。乾いた風ではない。つまり相当離れたという事……

何処だここは。帰れそうにもないが……生物には帰巣本能があるらしいが私には巣がないから尚更不可能か。

 

ここには私が狩れる様な獲物はいるのか?

しばらく過ごす以上食料は避けられない問題だ。

そう思い歩きだす。

 

炎のブレスを頭から浴びた。 温かい。

ではなくまた上空かと視線を上げる。

そこにはリオレウス達に跨ったハンター達がいた。

 

リオレウスとの実力差。ハンターの頭数。今の私に勝てる訳がない。

……しかし降りてこない。今考えた方法なら勝てるかもしれない。檻に近づく。

 

 

「炎は効かないのか。」

「とりあえず相手は何を仕掛けるか分かったものじゃない…しばらく警戒!」

「ははっ!アイツら死んでやがる!」

「俺らに献上か!無様なこった!」

 

上空で余裕をかますライダーをよそにアトラルは檻を糸でパチンコのような状況にする。

斜めに飛ぶように力をかけながら撃ち出す。リオレウス達の近くまで檻が飛ぶ。

しかしいきなり減速し届かない。

ライダー達はアトラルを馬鹿にする。

 

距離感無いのかあいつは。

一人のライダーはにやけながらその発言をしながら後ろのライダーに振り向く。

 

返事は鎌だった。

 

 

さっきの戦いで私は弓に対し檻を投げてそれについて行って殺した。

余り考えずやった行動だが空中でも再現出来るはずだ。

失敗しても更に警戒させるだろう。私は着地に思考を変えればいい。

幸いに時間はある。丁寧に仕掛けを作ろう。…ついでに刺さっていたこいつの笛も頂こう。

 

私はリオレウスの後ろに行くように檻を中心に振り子の様に跳んだ。

高い上に裏返って足が中を浮いているが冷静にリオレウスの背に糸を放つ。

リオレウスが警戒して後ろを向く前にハンターを斬り抜く。

勢いのままさらに前にいるハンターを斬る。

 

「ぐわぁぁぁっ!」

 

流石に二人目は無理だったか。ハンターもリオレウスも私の位置に気づく。

 

「アルトぉぉ!?ハリアぁぁぁ!!」

「おいライダーの面汚し!大丈夫かぁ!?」

 

……モンスターに乗ってるのはライダーか。知識が増える。

殺したライダーのリオレウスに飛び移る。

 

 

リオレウスは激しく身をよじる。アトラルは気にせずに張り付く。

ライダー達は距離を置く。ライトボウガンが貫通弾を撃つ。アトラルは笛で弾く。

 

リオレウスの尻尾と頭を力を込めた糸で繋げる。縮小させる。リオレウスは海老反りになる。

 

2つ折りになったリオレウスを後目にライトボウガンのリオレウスに糸を放ち正面から乗る。他のリオレウスが炎を放つ。アトラルが炎に包まれライトボウガンは弾が尽きるまで後退しながら徹甲榴弾を撃つ。

炎に包まれた影は傾く。アトラルは落ちる。

ライトボウガンのライダーが安心しかけた瞬間リオレウスの片翼が折れる。

ライダーは転落時の為の腰のパラシュートに手をかけようとするが首に糸が巻き付く。

 

「野郎ども!雷ブレス用意!」

「「ひぁっ…」」

「アンタらっ!用意っ!!」

「「あぁぁはいっ!」」

 

あ、なるほど。糸の感覚からライダーが死んだ事が分かる。人間は首に力がかかる事でも死ぬのか。これはいい事を知った。

私はライダーを他のライダーに叩きつけ――

 

「ァァァァァ!」

 

痛いっ……雷…だと!?リオレウスは炎……いや、今はそういう存在と理解しよう。

 

「効いた!」

「距離をとれ!すまないがリオレウス達でお互いに撃つ事になるが理解してくれ!」

「アォ!」

 

ライダーのモンスターは人語を理解するのか!?……いや『なんとなく』ぐらいだろう。

 

そんな事より今は雷ブレスをどうするかだ。

雷の性質……あの頃に入れた知識を……思い出した。いやブレスだと使えないか。中々知識が通用しないから私達はモンスターなのかもしれない。

糸に当てられたら感電してダメージを負う…非常に行動は制限された。

 

まだまだ私の体はもつ。

殺しきれなかったライダーに飛びかかりを再び切りつけ蹴り落とす。

笛を糸に絡める。

 

敵同士の友情を使えばなんとかなるか。




私は私を最大限に活かす。

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