閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

50 / 107

「……今度は何するんだ?」
「ルパンゲームとアニメ視聴ー。」
「MHFZで極ラヴィするわー。」
「……何このカオス……インクは何処だろう。」
「自衛隊に入ったらゲーム出来るってマジ?ピアノやめる。」
「新作ゲームのぉ、ポッキーゲェェェエエエム!!!」
「うるせぇ、耳割れ起こすわ!☆マジカル☆ハンター☆俺☆を呼ぶぞ!?」

「見て見てこれ!首絞めハムタロサァン……」
「違うわ、マルタ・ロトだわ。」
「マム・タロトだろうがぁぁぁっ!!」
「些細な事でラース化しないで、熱いわ……」



Selfish princess runs

その王女は退屈だった。

侍女に特注の服を渡され、されるがままに羽織る。

 

 

 

「おはよう……」

「「おはようございます!!」」

 

兵士が盾を構えながら扉を塞ぐように挨拶をしてくる。

 

今日は面会だったかの……嫌じゃなぁ。

どーせあのブッサイクで一人で思い上がってる醜い雄じゃろう。

 

はぁぁ……

 

朝日が差し込む窓から、大量の兵士が訓練しているのが見える。

また私が抜け出すかもしれない、と父上がここに移動させたのじゃ。

 

なーにが政略結婚じゃ……

なぁーにがっ!政略結婚じゃぁぁ!!

 

わらわに人権はないのかのぅ!?

 

よくも我が子を、あの、ババコンガとバゼルギウスを交わせて生まれ変わったみたいな人間の所に送ろうと思う両親の精神が分からんのじゃが……

 

「わらわは非常に機嫌が悪い!」

 

「「ひぃぃ!?」」

 

「新大陸のドスジャグラスの皮を持ってこさせるのじゃ!」

 

「し、新大陸!?」

「恐れながら申し上げます!新大陸との交易はまだ出来ませ―――」

 

「は?出来ぬと?」

 

「「はいぃっ!」」

 

兵士達は土下座する。

 

分かっておる。

余りにも航路が危険で、人を送り迎えするだけで精一杯と言うことは。

 

「……ふん、分かった。確かに無責任な発言じゃったな。だから……」

 

「だから……?」

 

…………

 

「えっと王女?」

 

…………

 

兵士達は顔を上げる。

いつの間にか耳栓をはめられていた事に驚き、外すと開いた窓から外から兵士達の叫び声が聞こえた。

 

 

 

あははは!楽しい、楽しいぞ!!

わらわも兵士らも、互いに殺しはしない。

だからこそ舞えるのじゃ!!

 

ドレスの悪い点は動きにくくなる事じゃ。

しかし、同時に相手にわらわの動きを予測させない事が出来る。

 

私を抱き倒そうとする兵士を蹴り上げ、一回転しながら後ろの兵士に組み付く。

ペシリと気絶させ、倒れる勢いを使って正面の兵士に踵落としをくらわせる。

 

やはり兵士の訓練が足らんの。

わらわが直々に稽古をつけてやろうかと思うのじゃが、そうすると城から抜け出せなくなるからのう……

 

油断している兵士達の横をすり抜けて走る。

時折対処してくる兵士は肘を叩く。

失敗から学んで皮をつけていても、体重をかけたわらわの手刀を防ぎきる訳ではないからの。

 

そのまま外壁を勢いのまま駆け上がり、ドレスをハサミで断ち切って電気が通っている柵に手際よく結ぶ。

そのまま柵を跳び越し、するするっと降りれば今度は騎兵隊と水堀が待っておる。

 

下着のポケットからケムリ玉を取り出す。

 

ぽいぽいっと投げればあっという間に無能兵隊の完成じゃ。

再び横をすり抜け、そのまま水堀に飛び込みポケットから酸素玉を取り出して口に放る。

 

よし。

 

そのまま潜っていき、堀に水を入れている穴を見つけて流れに逆らって泳ぐ。

暗く、冷たい水が体を覆う。

 

 

 

 

 

「ぷはぁっ!」

 

ふぅ、ふぅ。

事前に地図から計算通りの長さじゃった。酸素玉も予定通りの数が余っておる。

 

「なっ!誰だ……お、王女様!?」

 

槍を向けた事によって不敬罪になると思ったのじゃろう。

兵士は泣きそうな顔になっておる。

 

だが、大丈夫じゃ。

お父様は既に私の度重なる脱走で、この場合は不敬罪はほぼ無いものとして扱っておる。

 

抵抗が強いから脱いでおったドレスを絞りながら走り出す。

 

流石にここまでは私が脱走した事は届いてないようじゃのう。

 

さぁこの上質な布を売って、今日も遠くに行くのじゃ。

王族社会なんてババコンガがやっておればいいんじゃ!

 

 

 

 

一方その頃。

 

門の前に網を広げて神選者は待っていた。

 

 

「……王女来ないなぁ。」

 

 

 

 

 

スリンガーと軽い服を購入し、活気溢れる街の屋根を転々と走る。

やはり気分爽快じゃ。

 

と、ライダーがリオレイアと共に空へ飛んでいく。

厚かましいが、乗せて貰う事にしてもらおう。

 

 

 

 

「ガゥッ!?」

「どうした、リオレイ……アッ!?」

「すまぬすまぬ。金は払うから乗せてってくれんか?」

「……先に金を払ってくれるならね。」

「よっと。」

 

現金な奴らが多くて助かる。

遂に空の旅じゃ。

 

 

 

パッとリオレイアから飛び降り、周りを確かめる。

 

久しぶりにこの村にきたのう……

 

おや?

何やら沢山の声が聞こえる……まずは行動じゃ、近づいてみようかのう。





「えー?ラージャンをパーティで狩れないとかG級ハンターやめた方がいいんじゃないかのう?」

「王女、お前がおかしいんだよ!!」
「ツインヒプノックでハメ殺すぞ!?」

「やれるものならさっさとやるがよい!ほれほれ、わらわに当ててみい!」

「流石一騎当万の王女……」
「雇っている兵士より強いとか悪役じゃないか……」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。