閣螳螂は娯楽を求める 作:白月
バゼルギウス
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外で爆音がした。恐らく船が落ちたのだろう。
まぁ、私は繭の中でじっとしていればいいのだけどな。
モンスターと人間の叫ぶ声が聞こえる。
医療船という事は回復薬で治らない深刻な傷だ、大体の患者は長くはもたないだろう。
しばらくすると、沢山の熱源が来るのを感じた。
「おーい、ルカだろー?」
奴の声だ。私がフードを被っている事を確かめ、笛で槍を叩いてテントを倒す。
「みんなに紹介するよ。彼女はルカ、ア……クシュンッ!槍と笛を特別に渡される程の強者だよ。」
「……よろしく。」
今、絶対にアトラル・カと言いそうになったな。
後日仲間に刃が振り下ろされたく無ければ言わない事だ……伝えてないが。
「みんな自己紹介よろしく。」
「ナタミ……力が主。」
「リナです、みんなのお世話役でーす!」
「サクラである。刀を武器にしている。」
「シャーリですっ!機械をいじるのが好きです!」
四人が軽く自己紹介してくる。
なんでこいつ女しかパーティに入れてないのだろうか。
流石に引くな、男の方が力を出せる体の構造をしているのに……
「ナナツ。武器のメンテナンスはどうしている?」
「吸収して放出すれば新品になるよ。」
なんだそれは……今更か。
「ここからどうするの?」
「まずは余り戦えないリナとシャーリを空間に入れる。後は固まって行動してオストガロアを倒す。」
「了解した。」
「分かった……」
え、こいつら逃げるという思考は無いのか。
明らかに連携した動きをする三匹の古龍だぞ。
ラヴィエンテの事もあるし勝ち目は無いぞ?
ふと思ったが、三匹の古龍……
カム・オルガロンが返り討ちにあいそうだな。
どうでもいい。
奴が何気なく近づいて、耳打ちしてきた。
「ルカは元の姿には戻らないでね。」
「分かってる。」
そりゃそうだろう。何のために不便な人間の姿をしているか察しろ。
呆れていると、奴はドラギュロスの様な尻尾を生やした。
「よし、掴まって!飛ぶよ!」
……え?
風が頬を撫でる。
私は別に大丈夫なのだが、二人は腕が痛まないのだろうか。
時折走る赤黒い稲妻は私には効かないが、人体を破壊するぐらいの威力はありそうなのだが……
「おい、腕は大丈夫なのか?」
「仲間は攻撃できませんからね!」
……うん、もう何も言うまい。
さて、劣勢にたたされた神選者達が荒ぶっている所の近くまで来た。
手前のオストガロアはブラキとウラガンキンの骨を纏っている。
「おい【吸収】!オストガロアの動きは止められないのか!」
「待ってて、今考える。【電磁】の力を溜めていてくれ!……って!?皆、俺の後ろに下がれ!」
オストガロアはブラキから粘菌塊を中に浮かしてガンキンで殴り散らす。
私は全て笛で受け止め、粘菌が降り終わったら放り投げる。
周りの人間も盾で受け止めたり出来るだけ回避している。
笛が爆発する。
「「ぎゃぁぁぁあ!?」」
残念ながら運がいい奴以外はほんの少しの粘菌で大ダメージを負っただろう。
粘菌を手で払おうとすれば手が弾ける。
盾で防げば不意の爆発がどのように力をかけてくるか分からない。
増殖してから爆発、これほどまでの攻撃性を越える生物は居るだろうか。
いや、いない。(私の記憶の中には、だが。)
「キシャァァァァ!!」
今度は粘菌塊がそのまま投げられてくる。まぁ……
「吸収っ!!」
粘菌塊が消える。助けてくれるまでは想定通りだ。直撃しても私なら死にはしないだろう。
奴が私に何か叫んでいるが、とりあえず笛を取りにいく。
そういえば吸収で敵の半身を取ってしまえば死ぬのでは?……謎の制限でもあるのだろう。
「―――ォォォォン」
遠くでラヴィエンテが鳴くのと同時にオストガロアが三匹とも地中に潜る。
そして大地が震えると共に……火山が噴火する。ラヴィエンテが岩を飛ばしてきたか。
「ルカ、早く!」
「分かった。」
奴のそばに走り寄る。
そして少し後ろに後ずさる。
火山による地震と違う揺れを感じた次の瞬間。
青い光が走ってから粘液が噴水の様に放出され、奴らを打ち上げる。
空中の奴らを見ると、粘着性が高いのかお互いにくっついているようだ。
「ルカッ!?」
「いや相手が地中に潜ったんだ。それぐらいは予測できるだろう。」
私は笛を振りながら言った。
ディアブロスやハプルボッカの縄張りに居たんだ、地中に潜る奴の脅威は身に染みている。
吹いて、再び振って、また吹く。
火山岩が降り出す前に間に合った。
「ディオレックスの頭!」
奴の頭が青い光に包まれ、ビームを放ちながら何処かに吹き飛んでいった。
岩を壊す予定の威力を、自分が踏ん張れない状況でやったらそうなるだろうが……
私は避ける。火山弾が不規則に跳ねながら向かってくるがそこまで大量ではないのだから焦る必要はない。
それにしてもラヴィエンテはよく狙ってこっちに火山弾を吹き飛ばす事が出来るな。
火山弾が終わると、再びオストガロアが顔を出す。
では、私は戦線を離脱しようかな。周りの人間はオストガロアに夢中だし大丈夫だろう。
「援軍だー!!」
誰かが叫ぶ声が聞こえた。
周りを見渡すが、別に変わった奴は……皆、空を見ていた。
私も見上げる。
大量の赤と黒が混じった飛行生物が飛んで――
「円環の蛇隊列!」
「「ォォォォォァッ!!」」
……何か落ちてくる?
オストガロアの触腕の攻撃範囲内に入らないようにしながら観察する。
ボトボトボトボト!
私達の周りに落ちてきたそれは明らかに危険な匂いを出していた。離れる――
ドガガガ、バァンッ!!
赤い物体の爆発によって黒い物体も赤くなり、連鎖的に爆発が広がる。
黒も赤も大量に振り続ける為、爆発が途切れない。
まぁ頭上に落ちてくる物は笛で弾けばいいのだが。
「ワールドツアー隊列!俺に続け!」
そして飛行生物は横三匹の隊列で飛び始める。
「キッキシィ……シャッ!!」
怒ったオストガロアは触腕を換装し、ガンキンの頭にブラキの粘菌をべっとり塗りつけてビームで打ち上げた。
大爆発と共に数匹と数人が落下、すかさずオストガロアは近づいて片方の腕を潜らせながらブラキ触腕でグシャグシャに叩き潰す。
ガードしようにも爆発する為、乗っていたライダーでは対応出来ないようだ。
他の飛行生物が立ち上がるが、オストガロアは潜らせていた腕にハサミを……ゲネル・セルタスの色違い、亜種か。
それで飛行生物を掴み、触腕を切ろうとする敵を吹き飛ばし、続けて他の飛行生物に叩きつける。
「音爆弾!!」
キィィィンと音が響くが、全く効いていない。怒りなのだろう。
そしてそれを投げたライダーに飛行生物を投げ返した。
「ぐわぁぁっ!」
投げつけた衝撃か、飛行生物の爆発物が大きな火柱を作る。
そしてまたボトボトと空から爆発物が降ってくる。
手前のオストガロアは潜る。
つまり向こう側のオストガロアが―――
バシィッ!!
コォォォォォォ――
とてつもない雷の音の後に、強い風の音がする。
音がする方を見るとラヴィエンテが何かをしていた。
「うわぁぁあ!またあれだぁぁぁ!」
そしてラヴィエンテが口を開くと―――
飛行生物の半数は消えていた。
どうやらとてつもない衝撃波が放たれた様だ。空に向かって撃っていたようだからそれが私達を襲うことは無かったのだろう。
続いて空から細長い何かが降ってきていた。
「ルカっ!」
後ろから声をかけられる。
奴が飛んで戻ってきた様だ。
「なんだ?」
「下がれ!衝撃を吸収!!」
変な形をしたそれは、今まさに顔を出そうとしたオストガロアの居る地面に当たる。
ドッ――――
「キシャァッキュィァァァ!」
「まさか、弾道ミサイルを使うなんて……いや、本来の使い道か。」
「……なんだそれは。」
人間側もやはりおかしいな……流石にあの大爆発はオストガロアにも効いたようだ。
背中に纏う骨がボロボロになって出てくる。
『無駄な努力はやめたまえ!波動砲、発射!』
空を鉄の塊が飛ぶ。
飛行生物と同じ様に爆弾を撒く。
私達がオストガロアに近づけないがまぁいいか……
触腕からビームを放ち、飛行機械を撃墜していたオストガロアを次は青い光が飲み込む。
そのまま紅蓮の大爆発を起こす。
一体ここはなんなんだ?やはり異世界か……というよりミラボレアス紅に助けてもらった時から既に異世界に来たのでは――
「駆逐してやるぅっ!」
あ、馬鹿だ。
なら大丈夫だな。気持ちが安定する。
「まずは手前のオストガロアだ!行くぞ!」
「「了解!」」
いや了解じゃないよ。
どう立ち回るか、相手の注意を誰が引くかの大まかな作戦を……
「ラージャンパンチ!!」
バァンッ!!
奴は普通に殴る。骨の破片が飛び散る。
その時に合った攻撃方法を考えてるならそれは無自覚脳筋だ……環境を見ろ。
確かにお前の機動力ならオストガロアの触腕を避けられるだろう。
だがそんなに派手な音や光を出したら……
「うわぁぁぁっ!!」
やはり奴は赤いビームに吹き飛ばされる。
他のオストガロアまで攻撃してくるだろうが……
さて私は地道に笛で骨を剥がそう。すぐ纏うだろうが攻撃させにくくすればいい。
大量の飛行生物と飛行機械が空を覆い、墜落した船の炎と煙が天を焦がす。
轟々と音を建てながら異世界の想像物は排除対象にその艦砲や鳥雷を向ける。
大きくその怪物達は叫ぶ。
一瞬にして大量の命を奪い、今なお命を食い消そうとしている。
紅の稲妻と赤黒い煙が自分達を圧倒する。
……そういえば私は全く古龍に臆してないな。足が全く震えていない。
恐らくウイルスのお陰か……恐怖という本能を破壊されたのはありがたいのか、危険なのか。
そして大体のライダーは逃げてしまったか、モンスターに依存している以上しょうがないか。
その頃……
ヘビィボウガン
「ひゃっほう!ライゼクスの羽で広範囲に雷を流すとは恐れ入ったぜ!」
「羽の付け根に撃て!」「ピィィィィッ!!」
中二病
「ぜぇ……流石に眠い……『暗黒変化・neutron star』!!」
「さ、猿夢は駄目……睡眠不足解消の伝説は知らない!」
記録者
「なんなのだこれは!?どうすればいいのだ!?」
「見るのではありません、感じるのですよ……」
弾道ミサイルの威力は直撃で大樽G3が20個分(9000)です、環境に考慮して核弾頭ではありません。