閣螳螂は娯楽を求める 作:白月
それは紛れもなく、奴さ〜♪(最強とは言ってない)
定番な能力だからこそ使用者の知識と技量が多分試されますよね
ふと窓から外を見たら――
一人の少女が瓦礫から這い出していた。
『第31話 救出すべきではなかった少女』
俺は驚き、部屋を飛び出して走り、甲板に駆け上がる。
「ど、どうしたの!」
リナが走りながら問いかけてくる。
「……リナ。ちょっとみんなを頼んだ。」
「……分かったわ。」
俺はライゼクスの羽を生やし、少女の元へ滑空する。
マグマの影響が広がる前に辿り着く。
そして、突然目の前に飛んできた俺を見て彼女は言った。
「何をする気だ。」
その問いに勿論俺は、
「君を助けに来た。」
と答えた。
そう言うと奴は……っ、痛い。ウイルスが反応しているのか。
奴はゴア・マガラの腕に見える物を背中から生やして私の槍と笛を持った。
他者の狂竜ウイルスを見るのは余り良くなさそうだな……
「返せ、それは私の――」
待て。どうすればいい。
武器と名言するか?……いや、いきなりそれを明かすのは駄目だな。
「私の、なんだ?」
「私の……変わった武器を使っていた親の形見なんだ……」
「……は?」
笛はまだしも、槍は無理だ……
撃龍槍なのだから……
いや、お前はアトラル・カだな。撃龍槍についてる糸で分かる。
だが元の世界では、この世界で生まれたオウガやナルガ、レイアが色々あって人間の姿をする物語があったはず……
だからきっとお前も……
だとするとこの笛はなんだろう――まさか!?
いや、まずは、少女として保護しないと……
「とりあえず捕まって。あの船に飛ぶよ。」
「あ、あぁ。有難い。」
奴に助けられ、しばらくして。
「では、体を診させてもらいま――」
「断る。」
「し、しかし……」
「問診だけで十分だと私は聞いたのだが?」
「……容姿と性格が合ってない女子ですね。」
「子供だから馬鹿にするとは、お前も子供っぽいな?」
「……」
席を立ち、扉を開ける。
奴は扉の前の椅子に座っていた。
「大丈夫?」
「えぇ、何も問題は無い。それは自分自身が一番分かっている。」
「採血はしたの?」
「見ず知らずの人間に体を触れさせる訳がない。」
「なら俺の助けにどうして答えたんだい?」
「必要に応じて触るのは当たり前だろう。」
マグマが広がっていて、助かる方法を与えられたら普通すがるものだろう。
それとも私の考え方なら拒否するのが普通だったか?いやそれは自分の状況を理解できない阿呆だろう。
採血に反対したのは、血液中のウイルスの存在に気づかれる可能性がある。
それに、触られた時点で背中の結晶に気づかれたらおしまいだからだ。
「服が汚れているな……リナ!」
「はい!なんでしょう!」
「この人の服を……あ、名前は?」
答えないでいいだろう。
手遅れな気がするが、嘘の物語は作るものではない。
「……」
「……名前が無いのか?じゃあ……ルカ、でどう?」
……っ。やはり騙せてなかったか。
とりあえず……
「う……それで、いい……」
「良かったー。じゃあリナ、ルカの服を洗ってあげて。」
「分かりましたー!こっちだよ!」
長身の女性に腕を引っ張られる。
アトラ『ル・カ』……単純な名前だけど顔を背けたって事は少しは喜んでくれたのかな?
金髪の少女はいいぞ。
さて……
『空間』を開いて覗く。
槍は鈍く光を反射する。
これを早く返さなきゃいけないけど、周りの人への説明とかどうしよう……
危なかった。
一室に入れられ、唐突に服を渡してきて、「はい、服を脱いでー」と言われたのには驚いた。
しかも勝手に服を脱がそうとしてきという。
女同士ではあるが、デリカシーの欠けらも無いのかコイツは……
とにかく背中を見せない様に服を脱いで、渡された服を――
「えっ、下着もパンツ穿いてないの!?またはふんどし!」
…………つい私の動きが止まっていた。
そうか。人間は下着も着なきゃいけないのか。
「……知るか。密着感は強いし、風を感じたり出来なくなるだろ。」
「えっ、そういう……性癖?」
「服を渡されてなんなんだがぶっ飛ばすぞお前。」
「駄目よ!年頃の女の子かそういう言葉や服装は駄目!」
グチグチと五月蝿いな。
顔を近づけてきたから、急いで一番生地が厚い服を着る。
「……意外とパーカー似合うね!」
この余計な布は……帽子の代わりか。首を絞められそうだ。
「はい!ズボン!」
「あ、あぁ……いや、それよりお前のような下のがいい。」
「え、スカートがいいの?」
「膝ぐらいの長さで。」
「あ、パンツ穿かなきゃね。」
……まぁ、人間ならば穿くのがマナーか。放られた物を穿く。
奴は引き出しを探りながら話しかけてきた。
「私の名前は、リナっていうの。貴女……いや、ルカと同じであの人に名前をつけてもらったの。」
なるほど、アイツは名前という固有名詞で人間を手懐けるのか。
いや、流石にそれは早計で深読みしすぎか……
「元々奴隷だったけどー、あの人が助けてくれたの。」
金で駒を獲得するのか。だとすると恐らく……他にもアイツの仲間が居る。
「あったあった。はいどうぞ!」
「ありがとう……他にも仲間がいるのか?」
「居るよ!後で紹介するよ。」
……私がアトラル・カだと気づいた恐れがある人間は今は殺すべきなのに、難しそうだ。
さて、そろそろ着替え終わったかな?
道中の自販機でコーラを三本買った。
ガチャリと扉を開ける。
「あ、終わりましたよ!」
「そうか。うーん……」
「お前……ジロジロと何を見ようとしている。」
フード、金髪、睨みつける上目遣い……うーんっ!
「最っ高にハイって奴だぁぁ!触らせ――」
「触るな!!」
全力のグーパンをされ、扉まで戻された。
「……傷つけたっ!?貴女っ!」
「自衛の何が悪い。」
「このっ!」
リナが立てかけていた刀に手を伸ばす。
「やめろ、リナ!」
「ふんっ!」
危ない!
間に入り込み、キリンの硬さを纏った腕で刀を弾く。
そのまま押し倒す。
「落ち着け!大丈夫、今のは俺が悪いから!」
「で、でも……」
「そのまま斬りかかってきたら私はお前の指を折る所だったぞ。」
「……っ!」
ただの嫌味にしか聞こえない言葉。
しかし、ルカは座った体勢から少しも動いていないのは事実だった。
一体彼女は……アトラル・カはどういう生き方をしてきたのだろう。
俺は――
「ルカ、少し話し合おう。」
「……従うしかないか。」
「リナ、少し離れていてくれ。」
「分かった……」
説得する事に決めた。
撃龍槍と笛さえ手元に戻ればいいのだがな……
「ルカ、君はアトラル・カなんだろう?」
……やはり気づいていたか。
「それも残奏姫、なんだよね?」
槍と笛があるなら普通はそう繋がるだろう。
「だったらどうする?ここで殺すか?今なら簡単に殺せるぞ。なにせ笛と槍はお前に何処かにしまわれたからな。」
「……君は、誰の船に乗っていたんだ?」
「マネルガーの船だが。」
「えっ、いいか!マネルガーはモンスターを操作、使役する悪い存在だ!」
「……」
「だから、君もきっと洗脳されている!俺と一緒に……人間として生きれる様に頑張ろうよ!!」
「……」
なんだこいつ。気持ち悪い。
モンスターを操作する事は私も賛同していたから尚更気分を害する。
というか本人に許可を得る前に名前をつける時点でおかしい。
明らかに弱みに漬け込もうとしているだろう。
だが。
一々反抗するのも面倒くさい……適当に感動路線へ持っていこう。
「くっ、私は……私は……っ!」
「……!」
「私はっ、モンスターなんだ!人間になれるだけで、普通のアトラル・カと大差無いんだ!いいか!
「なら!俺がお前の巣を与える!捕獲されたモンスターみたいな扱いは絶対にしない!いいか、ルカ!君は普通のモンスターとは違って頭がいい!理性がある!それなら平和に生きれる様になる!」
あぁぁ、むしゃくしゃする。
今すぐにでもコイツの首を跳ね飛ばしたい。
大体ネセトはただの巣じゃない、安心して生きる為の武器でもある。
種族的な考え方の違いなんてお前の頭でも察する事ぐらいは出来るだろうが……
「でも……でも……」
「大丈夫。俺からみんなにルカの元の姿は言わない。武器も返す。」
……馬鹿かコイツ。脅迫の手段を自ら無くすのか。
とりあえず最後まで話を進めてさっさと逃げよう。
「だから、手を握ってくれ。」
「はい……!?」
いきなり腕に光が走る。
な……っ!?
「ルカ、君は今から俺の家族だ。【
「
マーキング(群れの一人、配下・下僕)!?
ぶち殺す……絶対に殺す!!
誰がお前の所有物だっ、生き地獄とかそれこそマネルガーよりタチ悪いだろうが!!
斬殺、絞殺、毒殺……本気でコイツを殺す方法を組み立てなくては!
私を怒らせたな……っ!!
……顔が赤いけど、どうしたんだろう?
まさか俺に気があるとか?それとも怒りかな?
でも、大丈夫。
ルカ、君も幸せにするよ――
【
謎の場所 書類
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『……はい。分かりました。では遭難に見せかけてからP施設で圧殺します。』