閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

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古代林は犠牲となったのだ……




その存在、討伐不可能

気球に糸を放ち、上から乗り込み、着地する前に人間の形になる。

首尾よくマネルガーの船に入る事が出来た。

どうやら2人とも外出している様だ。

 

笛を持つ力はある。

恐らく、私の体に準拠した力なのだろう。

 

後ろの扉を開ける。

見えた階段をゆったりと降りる。

 

ささくれが足に刺さろうとして潰れる。

柔らかい皮膚なのだが、傷はつかないのか。

 

 

そして今更気づく。

人間の姿でも狂竜ウイルスが反応した視界が見えていた。

とは言っても、この飛行船は人為的に温めている様だから区別がつかないが。

 

下には部屋があった。不審者がいないか確かめる意味もこめて、全ての部屋を覗く。

キッチン、書斎&ベッド、空き部屋だ。

恐らく空き部屋はモンスターを入れたりする用途だろう。

 

キッチンに入り、探索する。

皿が汚いが、水は貴重なのだからしょうがない。

箱を開けると携帯食料や長期の保存がきくような食べ物ばかりだった。

 

 

謎の機械が床を移動している。手に取り、裏返すとブラシが回転していた。何故片方にしかついてないのだろう。

それ以外は分からない為、床に置く。

再び動き出した。何の目的で動いているのだろう。

 

 

最初に降りたベッド&書斎の部屋に入る。

 

今までは図鑑や本を持ってきて貰っていたが、いない間に入る事で自由に選んで読める。

 

 

 

ふと机を見ると、一枚の紙が置いてあった。

 

そこには――

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな建物が村を見下ろしている。

 

細長い雲が、青空を更に美しくしている。

 

 

村は活気に溢れ、ハンターはパーティを作っている最中だ。

普段はのどかな道も、今は活気に溢れ、鍛冶屋からはひっきりなしに音が鳴っている。

 

 

また新たな飛行船が降りてくる。

迎えに行った人間が言う。

 

 

「ようこそ、私はこのベルナ村の村長だ。」

 

 

 

勿論、龍歴院にも大量の飛行船が停泊している。

 

次々に降りてくるギルドのハンター達に龍歴院のハンター達は散歩をしようと持ちかける。

大量のハンターが、応援に来た受付嬢を含めたカウンターへ並ぶ。

 

 

またメゼポルタからの職員も降り立ち、龍歴院職員と一通りの挨拶をした後に会議場へ誘導される。

 

 

大型探査船と入れ替わる様に飛び立つ飛行船の中で、ハンター達は情報を共有し合う。

 

龍歴院ハンターはここの土地やモンスター等を。

ギルドハンターは今回の狩猟対象に関する情報を。

 

 

古代林に近づくにつれ、それに気づくだろう。

 

草食竜が普段以上の数で固まっているのを。

リモセトスはその長い首を最大限に活かして遠くまでそれぞれの方向を見ている。

 

 

「あれがディノバルドか……」

 

双眼鏡を覗いたハンターが言う。

 

「そうだ。余裕があれば尻尾で弾丸を弾く行動さえする。」

「知能は高い方なのだな。」

 

 

上空から見れば大まかな地理と、大型モンスターの位置が分かる。

 

 

しかしベースキャンプに降下を始めた時、それはいきなり姿を現す。

 

 

 

 

 

 

 

なるほど、今からコイツを見に向かうからマネルガー達は二人がかりで資材を集めに行ったのか。

当たり前の行動だな。

 

コイツも図鑑で読んだ事はあるがその脅威は計り知れない、一度も見た事がないなら気になり、見に行きたくなるのも普通といえよう。

勿論、リスクがとても高いが。

 

 

 

 

 

 

 

 

土煙が巻き上がり、ゴミのように木が吹き飛ぶ。

電気と爆破を走らせながらソレは地面を縫いながら吠える。

 

急いで再び飛行船は上昇、既に降りていたハンターも稼働し始めた飛行船に避難する。

 

 

バシリと赤黒い稲妻が走った途端、大地は抉れ、岩盤が隆起し地下水が虹を作る。

 

 

「うそ……だろ?」

 

固まっていたリモセトス達は呑まれ、威嚇するマッカォやホロロホルルも口に消える。

 

ブチ切れたディノバルドは恐らく尻尾である部位に溜め攻撃を炸裂させるが、逆に吹き飛ばされ、倒れた所を上から食われる。

 

金銀夫妻が顔面に毒キックとサマーソルトを食らわせるが、赤黒い稲妻を走らせる咆哮により気絶、落下する所を食われる。

 

 

遠くに見える火山が噴火し、あらゆる地面と壁に亀裂が走り、逃げるケルビは落下していく。

 

 

 

 

夕方。そこに地獄はあった。

 

噴火している火山に巻きつき、軽く吠えている。

肉食竜も、草食竜も激減しただろう。

 

 

Z級の防具を身に纏うハンターが呟く。

 

「……何故黒いままなんだ。まるで猛狂期のままじゃないか。……違う。体が大きいから足りてないんだ。でもここは奴の住処ではない……」

 

 

 

燼滅刃の防具を身に纏うハンターが言う。

 

「ここは多分地上まで近いから……でも、あのモヤは、獰猛化……あの怪物、獰猛化で更に気性が荒くなっているんだ。」

 

 

 

バシリと光が走る。

顔が飛行船を向いている。

 

 

「ガァァァァッ!!」

 

 

アカムトルムのソニックブラストを余裕で超える衝撃波は、まだ残っている森を抉りながら飛行船に衝突、くらった飛行船が一瞬で瓦礫となり吹き飛ばされる。

 

「見た事のない技だ!早く全速力で!」

 

ハンター達は若干戦意喪失しながら帰っていった。

 

 

 

空が夜に染まっていく。

 

まるで勝利したかの様に唸りながら、仮眠に入る。

 

 

 

巨躯で肉食。この世界でも指に入る凶暴さ。

 

その者の名は。

 

 

 

 

「ォォォオオンー!」

 

 

 

大地ノ化身

『ラヴィエンテ』

 

 

 

 

 

の、獰猛化猛狂期個体。

 

 

 

 

 

 

 

 

獰猛化……聞いたことはある単語だ。とりあえずここら辺の本を漁っていれば出てくるだろうか。

 

 

時間がかなりかかったが、本の山から当たりを引っ張り出せた。

 

『現在確認されているモンスターの異常強化現象について』

 

かなり時間がかかったが、やっと情報が得られ――

 

 

ガタン

 

 

「ただいま戻り……」

 

 

扉を開けたイチビッツと目が合う。

私は学術雑誌を後ろ手に隠す。

 

「は……はくぁ、博士っ!船内にかわいい女の子がぁぁっ!!」

 

そう叫びながら飛び出していった。

笛を引っ張り、雑誌を片手に階段を駆け上がる。

その後飛行船から飛び降り、ネセトの繭に潜り込む。

たまたま飛行船の入口がネセトの反対方向で助かった。

 

 

 

『現在確認出来ているモンスターの異常は3つだ。狂竜化・狂気化・獰猛化。この中の2つは発生の原因が確定しているが、唯一獰猛化だけは解明されていない。現在、支持されている説は【モンスターの老齢化による生体機能の故障】と【多量のストレスによる鬱病と同じ立ち位置の病気】である。しかしどちらとも例外がある上、発生範囲がある程度決まっているという事実を説明出来ないため、この説達はまだ不完全だと声を上げる学者も多い。』

 

 

読み流しながらページを何枚かめくり続ける。

そしてやっと欲しい情報が目に入る。

 

 

『一般的な獰猛化の特徴と見分け方。

 

・黒いモヤがかかっている。

・モヤが全身を覆う事はなく、時折移動する。

・モヤを纏った部位に力が入ると赤黒い稲妻が走る。

・稲妻が走った際の攻撃はとても強くなる。

・纏ったモンスターの体力がとても多くなる。

 

である。』

 

 

よし、欲しい情報は手に入った。

元の姿に戻る。

 

後はタイミングを見てこの雑誌を元の位置に戻せばいいのだが……直ちには不可能だ、小型繭の中に保存しておこう。

 

 

 

マネルガーが叫ぶ。

 

「アトラル・カ!お主、村に降りて虐殺したのじゃろう!」

 

濡れ衣だ。

説明の為、雪に字を書く。

 

『アイルー1匹のみだ』

「大体何故襲撃したのかね!?」

『家庭栽培を始めたかった』

「いつから空を飛べる様になった!?」

 

……は?

それは……

 

ちょっと待て、何故脳裏にあの神選者の顔が浮かぶ?

 

『私に空を飛ぶ機関などは無い。』

「……あっ。失礼、私は冷静さを欠いていた様だ。ん、でもそしたら誰が……?」

 

助けてくれたミラボレアス亜種が、『きょうだい』と言っていた。

……まさか、アイツは、ミラボレアス亜種の白か?

 

爆散した体を治して生き返らせるなんて、一般常識では考えられない話だ。記憶も壊死するな。

あと部屋の中に現れる時、雷と共に現れた。

一般的な人間を皆殺しするのは簡単そうだ。

 

情報は余りにも足りないが、仮定としてはいいかもしれない。

とにかく二度と会いたくないな。

 

「とりあえず、今から私達は遠くへ出かける。乗るか?」

 

頷く。

こいつらならラヴィエンテに殺されないように気をつけるだろう。

リスクにリターンが見合っていないが、ラヴィエンテ……私も気になる。ついていく以外に選択肢は無い。

 

 

 

笛、三本の撃龍槍、小物を飛行船の中に。

あとクイーンの爆発玉を首に巻き付けておく。事故で死にそうだが。

 

私のネセトにしばしの別れを告げる。

ガタリという音と共に飛行船が揺れる。

 

 

 

……嫌な予感がする。

 




「上手くいかないなぁ……」
「何をやっているんだ?」
「絆石ってあるじゃん。互いの依存による必殺技だろうから、人間とモンスターを合体させてるの。」
「下半身を切断して植え付けても意味無いだろ。」
「いや、依存じゃん。」
「人間を寄生虫にしたら、モンスターから人間に頼る事がないだろ。」
「そっか……じゃあモンスターの頭を潰して人間を視界として働かせる?」
「いや、五体満足じゃないと無理だろ……」
「むぅ……しょうがない、食べよう。」
「ヒィ、イヤダァァァァァ!!」

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