閣螳螂は娯楽を求める   作:白月

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今回のメインは人間サイド(?)です 例の依頼人もいます



警戒対象

「色々理解出来ないのですが……」

「だよな……だがすまない。死体を回収する程余裕は無かった。」

 

悔しそうにハンターは俯きながら言う。

 

「注意を引いて回収するなどは?」

「報告通り、合流した場所が遠かった。」

「……分かりました。今までの功績から貴方達の実力は認知されています。おそらく調査隊は派遣されるでしょう。」

「分かった。あったらでいいが笛とかの回収も頼んでくれ……」

 

 

ハンター達がBCから落とされてから1日後の朝。

 

 

ここは砂原に近いギルド。

砂漠に向かうハンターの大体がここを使用する。

また、砂原や砂漠へ向かう古龍観測隊も物資補給の為に経由するため、朝や夕は研究者や学者の数も多い。

早速受付嬢はのんびりと談笑している研究者達に簡潔に複製したアトラルが取ったという行動を書いた紙を渡す。

ある程度顔見知りだからこそ出来る事だ。

 

「すいません、アトラル・カが奇妙な行動をとったらしいので確かめて頂けますか?」

 

「アトラル・カがそんな行動を?嘘では…?」

「まさかぁ……おそらく死体からたまたま笛が外れただけでは?」

 

言葉からは正確な映像が思い浮かばない。

普通は考えられない可能性ならば除外してしまう。

 

「BCから突き落とす……これは初めてのパターンだな。」

「……一応観察対象として申請しておこう。ワシが今から送ってくる。」

 

年寄りの研究者は手紙を書き、ギルドを出ていった。

 

「アトラル・カはそんなに知性あるか?」

「無いはずじゃ…岩を振り回す力などを除くと、アルセルタスと同レベルの強さだしのう。」

「まぁ、それはラージャンと同じことをしてるのだから、実はヤバいモンスター説の一つの根拠ですね。」

「特異個体がこの地域で生まれたのか……?」

「いや……アトラル・ネセトという存在がいるらしい。」

 

ある研究者が、知っている情報をとりあえず出してみた。

 

「噂か?」

「ギルド側が隠してる話だ……財宝を身に纏う強大な存在。」

「……で、アトラル・カとどういう繋がりだ?」

「それはわからない……ただ、名前がアトラルなんだ。」

「しかし、いたとしてもこのアトラル・カは……」

「知能あるアトラル・カをアトラル・ネセトと言うのか?」

 

余りにも漠然とした言葉に、話題は逸れていった。

 

 

 

古龍観測隊 気球

 

 

上空では乾いた涼しい風が吹く。

 

「今週の調査対象は少ないのう。」

 

ベテランの竜人が言う。

横には対象の名前と観察すべき内容が纏められた紙、大量のノートだ。

 

「しかし、何故かアトラル・カが重要視されてますね。」

「そうなんじゃ……実は昨日のラングロトラとの争いから見つけておらん。BCは見落としておったわ……」

「もしかしたら私達を警戒してるかもですね?」

「まさかのぅ。ただ地上隊が来るからモンスターの位置ぐらいは把握しないといかん。」

 

 

 

砂原のギルド

 

 

先程の研究者が議論している反対のテーブルではアトラルに襲われ、なんとか生き残った一人が美化しながら話をしていた。

 

「それでさ、気づいた時には殺られてたんだ。余りにも行動が早く俺はギリギリ回避したが2人は盾ごと両断されたんだ。」

「なんだそれ。嘘じゃねぇのかぁー?」

「そうじゃなきゃティガと渡り合える俺達が壊滅する訳ないだろ!」

「疑わしいぞー!」

「じゃあお前、明日どちらが先にソロでクックを狩れるか競うか?」

「あぁ受けて立つさ!」

「「おぉっ!」」

「賭けだ賭けだ!1000zからな!」

 

酒場は騒ぎ立つ。注文が増え、皆の酒が進む。

興奮した輩は腕相撲を経て殴り合いになる。

 

 

 

それを横目に、余りにもギルドには場違いな服装をした少女が傍観しているギルドマスターに近づく。

 

「……ん?あぁ、君、どうしたんだ?迷ったのかい?」

 

白のドレスを着た少女は言う。

 

「ふふふ。大丈夫よ。一言、言いに来たの。」

 

ギルドマスターはいきがった女と思い視線を乱闘を抑えるハンター達にもどす。

 

「『警戒すべきは特異の弱者』よ。警告はしたわ。じゃあね。」

 

中二病か……と聞き流す。

しかしギルドマスターはいつかこの言葉を思い出す。それを悔やむのは……それほど遠くないかもしれない。

少女は青の古びたローブを着た女性の元に行く。

 

「主よ、これだけでいいのですか?」

「明後日は毎月の黒焉に会う日なのだから今からお土産を選ばなくちゃ!」

「あぁ、はいはい……お金は装備品を闇市で売った分があります。」

「妃も悪よのぅ?」

「いえいえ、祖なる主には遠く及びませ……って何を言わせるのですか!?」

「意外にノリいいじゃないかこのこの〜!」

「はぁ……先に市場に行きますよ?」

「主を置いていくとは何様!さぁついてきなさい!」

「……我々以外に知能持つ者が現れたからといってテンション上がりすぎです。」

「我々、かっこ 我々の中でも選ばれた者 かっことじ。」

「一々揚げ足を取らないで下さいませ……」

「そういえば姿や話し方変えたの?」

「若作りとかお婆さんって呼ばれるのが嫌になりました……」

「あ、そ、そう……」

 

 

少女は愚かな人間をからかい、楽しんだ。

 

 

 

砂原

 

 

「キィァッ…シャッ!!」

 

何か喉につっかえた気がした。……しかし、昼に仰向けで空を眺めれる様になったか……

今までならここまで疲れてまで努力する事は危険すぎた。

しかし今なら重い岩を振り回す練習が出来る。願わくば習得するまで誰も来ないでほしい……しかし、ラングロトラが居なくなった為、そこに変わろうとする奴が来るだろう……明日にも来るかもしれない。

ハンターに襲われる事を避けるため気球からも隠れているが何かしら他の索敵方法があったら困るな…

索敵方法?あ。私なら糸でどうにか出来るかもしれない。

 

 

 

密林

 

 

 

好奇心は時に自身を滅ぼす。理性は逃げる事を遅らす。

 

 

「オァァァァァァ……!」

 

 

弱者の縄張りの主張など、

 

 

ゴオオォォ……ミシミシバキッ!!

 

 

圧倒的強者には聞こえない。

見る必要も無い。

 

 

大木さえ折り、吹き飛ばす風は移動する。

縄張りを巡回する時期だ。

 

 

 

 

砂原のギルドに書類が送られる。

ギルドマスターは読み、一部を破りとって掲示板に貼ってから受付嬢を裏方へ行かせ、クエストの処理事務をさせる。

 

 

 

──────────────

<厳重警戒>

古龍観測隊から各ギルドへ。

密林から移動するクシャルダオラを確認。

砂原、旧砂漠のどちらかに移動すると思われる。

現地のハンターを即刻退避させ、

討伐パーティを作りなさい。

 

また、クシャルダオラの強さから砂原は上位ハンターでいいが

旧砂漠においては必ずG4以上のハンターを。

鏖邪ディアブロスが確認されている。

──────────────

 

 

 

 

下位、上位のハンター達はざわつく。初めて見る文字だ。

 

「なんて読むんだ…ごみじゃ?」

「ちりじゃかもよ?」

「わっかんないや!」

「なんにせよこれが噂の二つ名か……まさかこうやって知るとはな。」

「会ってみたいぜ。もしかしたら部位破壊ぐらいは出来るかもよ?」

「まぁ古龍ぐらいなんだろうなぁ。」

 

ギルドマスターは言う。

 

「鏖邪……なんだそれ?鏖魔の上位互換なのだろうけど……」

 

そう、このギルドマスター。ギルマスに向いてない無能である。

 




重要資料 血塗れのノート:鏖邪ディアブロス

王者。彼はそれで表現出来るのか?
鏖魔。彼は本当にその二つ名か?
もしかしたら、他にもこういう馬鹿げた生物はいるかもしれないが…

我々は鏖魔の討伐に出向いた。順調に進んでいた筈だった。
しかし彼は狂暴走状態の上があった。
全身に赤く血管が見え、その状態に移行した時の咆哮は
円状に砂が吹き飛びお椀の様になってしまう程。
ハンターは一瞬でラージャンに殴られたケルビの様になってしまった。禁忌とされる黒龍の装備さえ紙切れと同じだった。
さらに彼は我々の気球へ爆発と共に飛来、突進し、一瞬で気球を破壊してしまった。
落下し一時的に意識を失った私だが今生きている。
このドームみたいな岩の後ろには重い足音が聞こえる。私も合わせて見つからない様に移動する。(小さくたわんでいる箇所がある。咳による唾と思われる。)
しかし本当に彼は生物な

(この下は大きな穴と血で読めなくなっている。)

何処にいようとこの生物の第四形態時に場所を知られたら殺される、つまり人間もアイルーも生き延びた者がいない。
そのため明確な危険度は分からない状態。

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