閣螳螂は娯楽を求める 作:白月
報告
謎の微動確認
古代林への調査を要請
キャラが分からないのに出す事になるとは……
性格は変わる可能性が非常に高い事をここに報告します。
夕方。
足跡が余り目立っていない場所が非常に綺麗だ。
山の麓は雪が余り無く、所々に木が生えている。
撃龍槍を置き、木に糸を張り付け、自分を空に跳ねあげる。
そして周辺を確かめるとかなり遠くに、明らかに人為的な赤い光が見えた。
一度ネセトの所に戻り近くに使える物がないか確かめる。今からやろうとしている事は撃龍槍を持っていく事が出来ないからだ。
……ここに洞窟があったのか。
後で調査しておこう。
岩の影に朽ちた飛行船があった。
投げナイフを調達。
双眼鏡を調達。
ペイントボールを調達。
携帯食料を調達。
腐った地図を調達。
ペッコ人形を調達。
破れたケージを……
とりあえずネセトに小物入れを作って入れとく。
やはり余り使えない物しか残ってないのか。
……いや、一つだけ明確に使える物があるか。
太陽が落ち、闇が覆う。
月が雲から顔を出す。
ガラガラッガシャッ!!
村にある沢山の店の雨戸が閉まる。
「結界展開!!」
神選者が警戒線を張り家に入る。
そしてガラスと鉄の箱から音が鳴り、夜間に外出している人間を監視する。
ドォンッ!!
よし。船はここに置いておこう。
村を囲うように薄い膜の様な物が見えるな……龍は全てを見透かす、とでも言えそうか。
恐らく動く物に対して感知か、熱源を感知か。
風が吹いたりして物が飛んでくる事を考えたら恐らく後者だろう。
ならば無視していいな、虫だけに。
虫の体は気温と同じで……いやまて。セルタス種は興奮時体内の一部で高熱を発する。
いや、それも興奮時だから大丈夫か。
何故私は0℃以下で動ける?
それもモンスターの進化の結果か?
沢山の熱源が遠目に見える。
対岸だが、この角度に放てば……よし、想定通りにくっついた。
月に照らされ、等間隔に山になっている場所が見える。
その畑に近づき、鎌を畝に当てながら歩く。
すると等間隔に何かが生えている事が分かる。
匂いは……余り無い。色は分からない。さっそく採っていこう。
他には恐らく無いだろう……虫の羽音が煩い。
おや、何かが近づいてくる。
「にゃ!?誰かいるのかにゃ!!」
叫ばれる前にアイルーを斬り捨てる。
神選者に依存して警戒心が弱まっているのだろうか。
リフトに糸をつけ、ぶら下がって移動する。月に照らされる事を考えたらこれが一番安全だろう。
村に人の姿は温泉以外に見えなかった。
夜中では湯気で私の姿は見えないだろうから放っておけば大丈夫なはず。
ふんっ。
バギィッ!
笛で雨戸を砕く。
よし、食料品店だ。野菜ぐらいはあるだろう。
……あ、駄目だ。
明らかにこの地域の野菜ではない。人間の生息範囲と運搬技術を失念していた。
しかし倉庫なら何かあるのでは?地下に行こう。
モニターから自警団は見ていた。
「アトラル・カです。」
「どうやって結界を越えたんだ!?」
「撃退に向かうから神選者を起こしてきてくれ!」
倉庫奥まで行ったが結局果実程度しか見つからなかった。
壊した穴の手前まで戻る。
外には大量の何かがいる。まぁこの村のハンターだろう。
大きな音を立て、恐怖を煽る。
しかしハンター達は動く様子はない。
「アトラル・カが来るぞっ、構えろ!」
人語が分かるって非常に便利だな。裏口から脱出しよう。
モニターにはその姿が映っていた。
「あっ!裏口から脱出しました!」
「伝えてくる!」
ワァァァッと私の背後から雄叫びが聞こえる。
植物を大量に集めそれを壁として逃げおおせる予定だったのだが、この笛より大きい程度の量では貫通しない徹甲榴弾ぐらいしか防げない。
グサッと私の頭を矢が貫く。かなり痛い。
痛みを堪え、走りながら笛を振り自己強化の旋律を吹く。
船の所にたどり着き、急いで叩き割って小さい箱を作り、持っていたのを全て入れて蓋をする。
それを背中に背負ってしまえば私の動きを阻害する物は無い。
アラームが鳴り始めた村を後にする。
雪山を登り、一息つく。
人間のスタミナと狂竜化したモンスターのスタミナは天と地ほど差があるため、逃げ切るのは容易だった。
明日は盗った物がどういうのか調べなければ。
次の日 日が登る前
嫌な予感で目が覚める。
昨日はネセトの所には戻らなかった。
何故なら洞窟の上にある崖の方が見つかりにくく安全で、見つかった際も逃げる場所が存在するからだ。槍を取りに行くのを忘れたが――
ブロロロロ……
ん?
謎の音が聞こえる。恐る恐る崖から下を見てみるとそこには……
「どるぁぁぁぁぁぁ!!」
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
バォンバォン!ブォォォォォォンッ!!
「あ、そこに居る!!アトラル発見!!」
「HEY!HEY!HEY!」
私の横を何かが通り過ぎる。一つの奇妙な形をした輪がついた何か、までは理解出来た。
それは爆音を出しながら反転し、崖を削りながら突撃してくる。
私は糸を放って崖から飛び降り、ゴムの様に跳ね返って登る。
ガリガリガリッ、ブォォォォォォンッ!!
本当になんなんだあれは!?
格好いいが仕組みが分からない。
平地に移動、一度箱を置き、笛を構える。
バリバリ言わせながら謎の機械に乗った人間が集まる。
その数、5人。
(なんか格好いいテーマがバイクから流れる)
「悪を知り善を知る!ヤンキーヒーローとは俺の事!ファイアブラック!!」
よく見たらこいつら全身に着ている服がおかしい。
ただ、全身に服を着ることによって防御力を上げているとしたら首を狙えない……
「生命を愛し生命を絶つ。生態系の頂点の責務を果たす!ライトエメラルド!!」
あれだけ隙を晒しているのにこちらからは手を出せないのが辛いところだ。
槍があれば安全に攻撃出来るのだが、生憎投げる物が無い。
箱を投げて爆散させられたら困るのは私だ。
「私の魔法は弱きを助ける!副次的に強者を挫く!バブルマリンブルー!!」
もしかしてその機械も魔法なのか。
という事は神選者が絡んで――
「いあ!いあ!はすたあ!はすたあくふあやくぶるぐとむぐとらぐるんぶるぐとむ あい!あい!はすたあ!
我はスパークダークネス。神々とその従者の権能を世に伝える者!!」
謎の単語の序列を詠唱し終わった時、空中に幾何学的な模様が浮かび上がる。
そこからまるで『私は神です』の様なポーズをしながら奇妙な姿のランゴスタが出てくる。
いや、よく見ると全身から違うか。
「ワタシハビヤーキー。マタノナヲバイアクへー!!――ハスター様の従者にして光速の存在!!」
喋るのか!?
「貴様を滅ぼし、友と酒を飲む為に来た!そう、私はブラッドホワイト!!」
おや?五人目は何処に――
その時、何処からともなく強烈な光が発せられ、周りが見えなくなる。
視覚が治り、周りが見える様になる。
先程までの山は何処にも見えず、地平線まで白く染まった謎の場所に居た。
……本当になんでもありなのか。
突然地面が揺れ始め、何も無い空間から声が聞こえる。
「劇場は雪原より来たれり。」
……駄目だ。アイツらの世界についていけないせいで思考を止めてしまっている。
警戒しろ、一瞬にして殺される可能性がある。
……いや、ならば殺しにこい!?
「これが極上のアウローラ!ふっふっふっ……豪奢!荘厳!しかして流麗!ん?あ、あれは誰だ!?美女だ!ローマだ!?
勿論、余だよ☆
\カカン/
これぞ誉れ歌う黄金劇場『ラウダレントゥム・ドムス・イルステリアス』!!」
……かなりの数、密度の光が飛んでくる。
っと危ない、放心していた。笛を構え、私に向かっている光線を受け流し、耐え凌ぐ。
その最中、点にしか見えない何かが……人間がこちらに飛んでくる。
そいつだけ顔を出している。
「我等は5人と1匹で!」
「宿命を背負いし究極の部隊!」
「苛烈を極めし戦場を駆け抜ける者!」
「未来に起こる大戦争を乗り越える者!」
「私はそういう事に余り関係ない者!」
「そう、余輩はっ!」
「「
ドゴォッッ!!
5人と1匹を、爆発が背後から彩るっ!
向こうに見える大きな輝く建物、広がる雪原、そして綺麗な空によって通常より+60%以上格好良く決まったのであった!!
流石に爆発は防げず、普通に傷を負った。
勝てる気がしないのだが……
というよりネセトが……槍も……
一つ、ため息をつく。
弱気になった所で敗北のシナリオは変わらない。
私は笛を振り戦闘準備をする。
相手を一人ずつ仕留めていけば勝てる可能性はあるかもしれないのだから。
まぁ、それを実行している私を想像する事が出来ないが。
デン!
次 回
遂に余のマスター、別名引きこもり指揮官の案であるスオー……ゲフン、スノーバイクを実戦投入!
アクセル全開で気持ちよく雪山近くを駆けるついでに、警戒しておったのだが……見つけてしまった。
まぁ余輩は完璧であるがゆえに敵は逃れる事が不可能なのである!
余輩に対峙するは村を襲撃したアトラル・カ!
しかしどうも様子がおかしい……まさかお主は!?
NEXT!
『圧倒的な笛の防御!
貫け、紅蓮のアクセル!』
次回も会おうぞ!そして刮目せよ!余の活躍を!