閣螳螂は娯楽を求める 作:白月
オストガロア……何故寒い所に居たのだろう?
ウラガンキンは生息域からして海に近い火山だから熱い所へは行ける可能性は高いが……
まぁ、古龍という生物は簡単には予想が出来ない。
「おーアトラル!戻ったか!」
「ね、ネセトが壊れている……だけ!?」
どうやら船は多少壊れただけで、余り被害は無かった様だ。勿論燃え上がっていたら契約は破棄になるが。
「イチビッツ君。」
「ポチッとな!」
ボルボロス亜種が飛散した部品を雪ごと集める。
いくつかの機器が吹っ飛んだ様だ。
「修復は勿論ワシらがやる。周辺の警戒をアトラル、君に任せる!」
命令?……まぁいい、二次的にそれをするのだから。
さて、周辺にネセト修復に使える資材はあるだろうか。
一時的にならオストガロアの様に骨でもいいかもしれない。
ネセトはここに置いておこう。
思ったよりこの目、使えるな。視覚より先にブランゴがいる事が分かる。背後から飛び出してきたブランゴに鎌を振り抜く。
うん?ここより更に高い場所で熱源があるな。
温泉でも沸いていたらなんとなく嬉しい。
アトラルは断崖を登る場所を探す。
しかし見つけた穴は余りにも小さく、ジャギィ程でないと通れなかった。
他に探してみるがどうやら彼女が通る道は無い事が分かる。
あ、そうだ。
背負っている槍を振りかぶり投げる。
バギィッ!
予想通り積み重なった雪に槍が刺さった。
自分を蜘蛛の様に引き上げる。
そして私は少しの期待を持ちながら見るが。
「ァァ!」「ワァァ!」
謎の小さい白い生物がこちらに叫ぶだけだった。
しかし黒い鉄の様な物も見える。
「ァァァ!」「キュゥゥ!」
「キィェァァァァァァァァ!!」
私が一声叫ぶと小さい生物は離れていった。
さて、なんだろうこの鉄は――ッ!?
触った時に、とてつもない悪寒がした。
私はコイツを知っている……?
慎重に雪を掻き分け、全貌を確かめる。
その姿はとてつもなく大きいクシャルダオラ。
の抜け殻だった。
なんだ抜け殻か。
柔軟性はまだあるから持って帰ろう。
槍を支点に定滑車を作る。
抜け殻はそこらの岩よりは硬いため雑に扱っても傷が入らない。
それでも慎重に引き降ろす。場所によっては完全に錆びて折れかけているからだ。
そして抜け殻を地に降ろした時に、熱源が速い速度で向かってくるのを感じた。振り向いて確かめる必要はないと判断し、突進を回避する。
「ウゥゥ!!」
……またウルクススか。恐らくウカムで吹っ飛んだのと同じ個体だろう。
ウルクススは雪玉を投げる。笛で破壊し、そのまま振り続ける。
再び突進……いや、ドロップキック!?
すかさず回避。
このウルクスス、急に攻撃的になったな。
「ウゴォォォ!!」
しかも常時怒っている。思考回路に支障をきたしたのだろうか?
とりあえずいつも通りに笛を吹く。
早く、早く!
死んで!早く!お願い!
突進を回避。そろそろこの個体の能力値が分かってきた。
次の突進には反撃が出来るだろう。
なんで回避するの!
死にたくない、死んで!
投げてきた雪玉を打ち壊しながら近づく。
引っ掻こうとする腕を背後に滑るようにかわし、糸を放つ。
糸は頭に張り付いた。
なにこれ!?
外す……っ!?これ伸びるせいで切れない!?
うぅぅっ!
一気に頭をこちらに引き寄せ、振り抜く。
流石に骨が外れたりはしないか。
吹き飛んだウルクススを再び引き寄せ振り抜く。それを頭が潰れるまで繰り返す。
あぁぁっ!
痛いっ!痛い痛い!
し、死にたくないっ!
……あ!
「レイジゼウス!」
ついどう振り抜くか考えていたら上空に奴がいた。
運がいい。撃龍槍かクシャルダオラの抜け殻に雷は流れたようだ。
「くそぉっ!焔の鉄槌!!」
炎の塊が私の頭上に発生する。
念の為。抵抗が少なくなったウルクススを引き寄せ、構える。
「グァッ!?グォッ!!」
暴れるウルクススに糸を出し続ける。
そして繭に……ネセトの繭ではなく、蜘蛛が獲物を糸で巻くのと同じ繭にする。
そして盾にし、炎が収まった後に崖に投げ捨てる。
「アイシクルブリザード!!」
大量の鋭利な氷が出現、私を狙っている様だ。
逆の熱源の感じ方でこちらに飛んでくる氷を見分け、笛で弾く。
「
……奴は私の前に降り立つ。そして大量に氷が生えて隙間あるドーム状になる。
閉じ込めた……つもりなのか?というよりその氷を私に刺せば良かったのでは?
これなら爆破攻撃が当たる。
ふっ、アトラル・カは演奏しだした。遅い!
「フレイムマシンガン!」
貫通する炎を沢山発生させる!
「はぁっ!」
笛を振りながら打ち消し、回避する。
軌道がわかりやすい……
私からしてみればハンターの様な近接の方が苦手だな。
3、4個の炎が私を貫くが狂竜化のおかげですぐに治り始める。
さて、どういう攻撃がいいだろうか。
防御技術は無いのに防御力が高いから……埋めるか。
糸を放つ。
何度も飛んでくる糸を切る。やはり耐久戦なら俺が勝つ!
「喰らえ!『コールドエレキ』!!」
氷と雷が吹き荒れ、アトラル・カへそれを飛ばす。
この至近距離ならズレないっ!
速度の遅い嵐……奴もこっちに来れないし、時間もある。
刺さったままだった撃龍槍を荒く引き寄せ、檻を壊す。そのまま檻から抜け出し、クシャルダオラの抜け殻を引っ張る。
そしてゴロゴロと小さい雪崩が、檻から抜け出せない奴を飲み込む。
このまま死んでくれると嬉しいが……やはり生きているか。
「はぁぁっ!」
氷を吹き飛ばした奴に撃龍槍を投げる。
上手に刺しましたー。
ネセトの足にクシャルダオラを張り付ける。
ボロボロの遺跡だが、固定さえしてしまえばほぼ同じ強度だろう。
抜け殻を、私の体液をしたらせる鎌でなぞり切る。
「なんと……」
マネルガーはクシャルダオラの抜け殻を普通に扱っている私に絶句した様だ。
イチビッツは撃龍槍を見た瞬間船内に戻っていった。
三本の足にはクシャルダオラの皮が足りたが、鉄が晒されている部分にはまだ張る事が出来ない。早く直さなきゃ……私の巣なのだから。
結局足を直す資材は見当たらなかった。
先程まで槍を握りしめていた人間を槍から抜く。
人間は人間を食うことに抵抗があるらしいが……死んだらナマモノなのだから腐る前に食べておかないと勿体無いのでは?それとも灰にして肥料にでもするのだろうか。
……そうだな、ネセトは大きいのだから内部で野菜を育ててもいいかもしれない。
よし、近くの村から野菜を盗るか。
たす……け………
ブチッ
繭から赤い液体が流れ出る。
そして女はチェックをつける。
「せんせー。この記号はなんの意味なのー?」
「
「ありがとー!」
「先生、自分も分かりません。」
「それはフェルマータですよ
「セプテット!」
「亡き王女のための……パヴァーヌ!?やはり