閣螳螂は娯楽を求める 作:白月
※注意!
この閑話には、
『モンスターハンターワールド』
のネタバレが入っております。
また、今はアトラルに関係ない話です。
「さぁ。安心して眠りなさい。」
その言葉に雰囲気が緩み、死体と見間違そうな龍が死体となる。
そして地に触れている所から溶けるように肉が消えていく。
「………。」
「そうね。遂に生まれるから、迎えに行かないといけないわ。」
「………(コクコク)」
姿の違う二匹の龍はある地点へ飛び立つ。
ギコ……ギコ……
結晶に覆われた洞窟の川を一隻の舟が進んでいく。
「しかし、よくこんな所を見つけたな。」
「あぁ、ゾラ・マグダラオスが地形を変えたお陰だ。」
「なるほどなぁ?やはり生きているうちは未知の事に沢山ぶち当たるな。」
「何があろうとこの腕と武器で乗り越えてやるがな!ドハハハハ!」
「………だな。」
そして舟が川の終わりに着き、総司令が固定する。
竜人とハンターを守るように二人が先導する。
そこは幻想的な空間だった。
1箇所のとても大きな結晶が放つ光で周りの結晶もキラキラ反射している。
しかし結晶は余りにも純度が高い。
そのため場所によっては足が地面から浮いている錯覚さえしてしまう。
「まさか……コイツが――!?」
その時だった。まるで誰かが入ってきたのかが分かっていたかの様に結晶の光が強くなる。
「なっ!?」
「おっと!」
そして無数のレーザーが、結晶を焼き切りながら放たれる。
運悪く竜人が爆発に巻き込まれる。
「いかん!?大丈夫か!!」
「!……これ。」
大団長とハンターは気絶した竜人に駆け寄り、ハンターは回復薬グレートを取り出す。
「来るぞ……!」
「土産話になりそうだ……!」
もう一度結晶が光った――そして奴は現れた。
まるで動物が産まれる様に。
まるで抱かれた赤子が降ろされた様に。
ビタンッ!!
「くっ!」
「!……待て。」
大団長は謎の龍に駆け出すが、ハンターに止められる。
「ドハハハハ!ここは任せな!だよなハンターさんよぉ!?」
「バハハハハ!未知の龍が一匹や二匹、最低でも2時間は持つわ!!」
「……そういう事。」
「……分かった。お前達を信じる。頼んだぞ!!」
大団長は気絶した竜人を担ぎ走り出す。
そして三人はそれぞれ武器を構える。
未知の龍はまだ見えぬ天に向かって吠える。
「こちら、新大陸上空に入りました。どうぞ。」
「了解。『結晶爆破・未来生体兵器捕獲』計画を実行せよ。どうぞ。」
「前方に熱源反応。イャンクックの様です。どうぞ。」
「新大陸にイャンクックは始めてだ。素通りか破壊してください。どうぞ。」
「了解。エンド。」
5機の爆撃機を守る3機の戦闘機が固定銃を放つ。
イャンクックは見切り避け、一度のモーションで8つの火球を放つ。全て一直線に航空機を狙う。
航空機も火球を避け、爆撃機をイャンクックから守る様に戦闘機が飛び回る。
避けたはずの火球が3機の航空機を爆破する。
「っ!?」
すかさず後方の確認をすると、火球が追ってきていた。
爆撃機は慣れない回避行動を取り続ける。
戦闘機はイャンクックを倒せば無くなると思い、攻撃を続けながら本部に連絡を入れる。
「こちら新大陸航空隊、03!イャンクックの火球がホーミングしていて、爆撃が2、戦闘が1ロスト!退却か援軍を!どうぞ!」
「了解。そのまま爆撃機は進め。戦闘機はイャンクックを食い止め、援軍の到着を待て。どうぞ。」
「了解しました!2分は持って見せます!我が帝国に光あれ!エンドッ!」
戦闘機の銃弾は回避され、時には翼で弾かれる。全くダメージは通ってないようだ。
イャンクックがイャンガルルガの様に咆哮しながら後ろへ飛ぶ。
すると、エンジンが不調を示す。
見るとたった今バードストライクを起こしたかの様に異音を立てていた。大量に鱗が刺さっており、穴も空いていた。
死を悟り1機の戦闘機がイャンクックに突撃する。
イャンクックの背後から突撃し、爆炎に呑まれる。
「……くそっ!」
しかし強く羽ばたき煙を飛ばしたその姿には、一切の傷を負っていない様に見えた。鬱陶しい蝿が消えたイャンクックは、点にしか見えない爆撃機にバルファルクが亀に思える速度で正面に回り込む。
「なっ!?くっそぉっ!」
未だに続いているホーミング火球を避けながらイャンクックの攻撃を避け続ける事が出来る訳もなく、遂に一つの爆撃機が撃墜される。
通信が繋がる。
「はい!こちら新大陸航空隊03!」
「こちら新大陸航空隊02。後1分で――」
「ヒュッ」
謎の音と共に通信が切れる。
爆撃機がまた一つ爆破される。滞空しているイャンクックにミサイルを放つが――
「うわっ――」
両翼で掴み、半回転する間に照準を合わせ最後の戦闘機を落とす。そして、爆撃機が生き残れる筈もなく……
「流石だわぁ〜!」
「……お酒の分は働きました。では私はこれで、本日の出張講師は終わりです。」
「ありがとうね。ウフフ、あの双子、意外に皆から注目されてるんだから……」
「目標地点ロックオン!」
「エネルギー濃縮系統オールグリーン!」
「振動に備えよ!3、2!」
1、0の後にとてつもない力のレーザーが放たれる。目標は龍結晶の地があると思われる場所。
――しかし突如横から放たれた黒の光線がレーザーを軽く飲み込み、届く事はなかった。
通信が届く。
「謎の通信です!?」
「全体受信しろ。」
カチッ。
巨大な衛星全体に重い声が響く。
「我が名は『破滅』 今、貴様らの運命は我の手にある。」
「誰だ。」
「……理解できないのか?低能が。貴様らからの呼び名は『ミラボレアス』 さて、今チャンスをくれてやろう。」
「全砲門、放て!」
一匹の黒い龍に大砲やレーザーが放たれる。
「眩しいからやめて〜wwwちょっ無意味スギィwww」
「チッ!」
「眩しいwwwスポットライトあざっすwww さて、貴様らの選択は二つだ。『衛星を捨てて生き延びる』もしくは『抵抗して死ぬ』どっちかだ。」
「我々は屈しない!宇宙戦闘機用意!」
「「帝国に民の加護あれ!!」」
「………あのぉ、答えは?流石にマッサージされるとは思ってなかったんだけど。」
ミラボレアスは気持ちよさそうだ。
大量の爆弾、大量の銃弾。そしてレーザー。それを受けてマッサージと呼んでいるのだ。
「あぁ、えっとこっちの翼のつけ根が痒いからお願いする。」
そして心の底からマッサージと信じている。
そして見兼ねた1人が動く。
「僕が、行きます。」
「!?神選者、お前が行くのか!?」
「えぇ。もしかしたら一瞬で殺られるかもしれませんが……アイツから離れて下さい。」
「……分かった。頼んだぞ。総員!北へ全速前進!」
ドローンが飛ぶが、破滅の前には何も出来ずに屑になるだけ。
拡散弾が飛ぶが、無傷。
「……逃げるのか?」
「…………」
「……あっはははは!あぁっはっはっはっはははははぁっ!!雑魚だっ、潰す、潰してやるぅ!ころっ、殺す殺すぅぅっハハハアハハキキキハハハアアアァァァァぁぁぁァァァッ!!」
「………っ!!」
本性を現したミラボレアスが無い空気を深呼吸し、口に恐らく龍属性のエネルギーを圧縮する。
そして――
「死ぃなぁないでぇぇえ!!」
「やらせるかっ!!」
殺意に溢れたブレスが衛星に向かって放たれるが、盾を構えた巨大なロボットが受け流す。
「おおおっ、凄いかっこいい。反吐が出そう。」
「皆を僕が守る―――」
一瞬にしてミラボレアスがロボットの3m前に近づく。
「そして可愛い。抱きしめたくなりゅぅぅぅ!」
「たぁっ!」
冷静にビームソードで抜刀斬りをする。
「痛っ!!……あーなんかゲームしたくなるわー。まだWiFi持って来れてないんだよなぁ。」
「くらえぇぇ!」
再びの斬撃で少し胸に傷が入る。
「なるほど。かなりその剣は高威力だな。ふむ。」
「はぁっ!」
「えっと……」
バチィッ!!
ビームソード同士がぶつかり合い、衝撃が走る。
「なっ!?」
「こんな感じですか?セ・ン・パ・イ♡」
女声で喋るミラボレアスの手からは同じ様なソードが生成されていた。
ロボットはマシンガンを放つ。
「痛い痛い!もう!後輩クン、ボクは怒っちゃうぞ?」
突如ミラボレアスの背後の空間から黒いレーザーが放たれ、防ぎきれなかったレーザーが足を貫く。
「くっ、足が……!てゃぁぁぁっ!!」
「やっ!」
首への斬撃を防がれるが、顔面に銃弾を撃ち込む。
ミラボレアスは大きく怯む。
追撃で胸に深々とビームソードを突き立てる。
そしてそこから切り払う。
「ぐはーー」
「はぁっ……はぁっ……」
「……ちぇー。しょうがない、帰ってお人形遊びしよっと。」
ミラボレアスが地上へ戻っていく。
「ふぅっ……なんとか凌いだ――」
「お人形さん、帰りますよ?」
遂に未知の龍を追い詰める。
「産まれたばっかなのにすまんな……」
黒鬼が大剣を片手で叩きつけ、狩猟笛を更に叩きつける。
赤鬼が機関銃弾を撃ちながら太刀を研ぐ。
ハンターが双剣でフィールドを駆け回りながら着実に部位破壊をしていく。
未知の龍が岩盤爆破をするが、誰一人当たらない。
未知の龍は朝焼けの空に吠える。
自らの死を悟った故の咆哮か。
薄れゆく意識に喝を入れたのか。
まだ感情を表現出来ない龍は泣いた。
それに呼応する様に空から二匹の龍が突進してくる。
「……っと!」
「…バハハハハ!!」
「………」
ドゥレムディラが立ち塞がり、ゼスクリオが龍を支える。
「お久しぶりだなぁ!」
「本気を出さないと死ぬなこれは!」
「……!?」
挨拶がわりの巨大ブレスが放たれる。
ハンターは巻き込まれ気絶するが、二人は一閃。ブレスを正面から断ち切る。
騒動を聞きつけたテトルーがハンターをすかさず運ぶ。
赤鬼がテトルーの言語を喋り、アイルーを呼んである事を伝える様に頼む。
一匹のテトルーが頷く。
「……さぁ一戦を交えようか!」
「尻尾ぐらいは切らせてもらうぜ!」
ドゥレムディラの咆哮で周りの結晶が吹っ飛ぶ。
「地上捕獲部隊01、バゼルギウスを捕獲しました。」
「了――通信が―安定―――気をつけ―――――」
白い龍と透明な龍が眺めていた。
「いいんですか?」
「えぇ、研究は許すわ。でも……ね?」
バチィッ!!
「ひぃぃ、怖いっ!」
日が昇る頃、再び大半の生物は活動する。
確実に世界は傾いてきた事を知らずに。
ルーツ「神選者負けばかりねー?」
クック「……あの、なんで私の家に?」
「暇だしいいじゃない?」
「はぁ……テキストに触れないで下さいね。」
「でも先生。やっぱり強いわね。なんで年越しの時に来なかったの?」
「……夫と過ごしていますから。」
「最近、モンスターの知能が高いのは貴女のせいかしら?」
「絶対に違います。喋る事が出来るのが私の生徒です。」
「そんな本気にならなくて大丈夫よ。だって私には理由は分かってるもの。」
「……はいはい。」
「人の姿には大分慣れたかしら?」
「……一応。お陰で人間の機械が使えるようになって仕事が楽になりました。」
「頑張ってね?」
「あの双子は大丈夫なのですか?」
「悲劇の双子は今は幸せそうよ。」
「なるほど。」
閑話 が かん になっているのを直しました……