閣螳螂は娯楽を求める 作:白月
規則正しく、そして憂鬱になる音が響く。
「……」
「ふぅ、ふぅ」
「はぁっ、はぁっ」
「……」
「ふぅ、運搬辛っ」
「うるさぁぁい!!」
ここはバルバレに近い未知の樹海。
対策本部の指令により着々と対ネセト兵器が積み上がる。
「オーライ!オーライ!はいOK!」
「後は頼んだぜ。」
「おう。任せとけ。」
即席の土塁の上に大砲がズラッと並ぶ。
「来てるのが分かりやすいぜ。」
「地面が揺れるからな。」
「角度よーし!試験杭撃ちます!……了解サイン確認!発射!」
「……よし。大丈夫だ。バリスタの弾はここに置きます。」
「さっさと帰れ。」
「……(受け取り方に困る)」
正面から見て大砲の右と左にバリスタが設置され、今試験で発射された杭がどこまで飛ぶかの目印となる。
更にライダーもやってくる。
「いいか!ネセトが行動不能な状態になるまで自分から突撃するなよ!」
「サーイェッサー!」
「俺が合図を出す!その時に、事前に打ち合わせした順番通りにお前達のバディとの必殺技を決めてやれ!」
「了解っ!」
「ではそれぞれのバディと共に待機しろ!くれぐれも喧嘩するなよ!グッドラック!」
ハンター達が配置につき、ライダー達がオトモンと触れ合い終わる。
そして、遂に木を折る音が聞こえ始める。
「大砲用意!」
「拘束弾用意!」
ハンター達が発射用意をする。
足音が段々と近づいてくる。
――近づいてくる程、その速度に違和感を感じる。
リーダーが叫ぶ。
「今だぁぁぁ!!」
ハンター達は反射的に放つ。しかしネセトの姿はまだない。
リーダーが大失態を犯した……ハンター達はそう思った。
突然、空中で球が爆発する。
ハンター達が気づいたら、そこにネセトが居た。
「えっ……!?まさかあの巨体で走って……!?」
既に放たれていた大量の砲撃により勢いが弱まる。
「バリスタ!放てぇぇぇ!!」
大量の対ネセト拘束弾がネセトの遺跡に食い込む。
バリスタが嫌な音を立てる。
しかし無事に勢いが止まり、ネセトは拘束弾によって動けなくなる。
「号令はまだですか?」
「良く見ろ。ナルガクルガをバディにしてるライダーは背中にある小さな繭を狙え!」
だが、ただ振りほどこうするだけの単純なアトラルではない。
体全体を揺らしながらゆっくりと、一歩ずつ回転する。
「あいつは一体何を――」
バンッ!!
「!?」
「か、体にバリスタを巻いた!?」
バンッ!ドゴッ!
バリスタが曲がり折れる物もあれば、土塁ごと引き剥がされる物もある。
そのまま体を揺らし始める。
「大砲!うてぇぇぇ!」
ネセトは酸の様なフェロモンを放ちながら怯む。
しかし、そのフェロモンは黒みがかっていた。
「うっ!?」
「この感覚は……狂竜ウイルスか!本当に狂竜化個体だったとはな!」
それを眺めていて痺れを切らした短気なライダーがセルレギオスと共に突撃する。
「あぁ焦れったいぃぃ!行くぞ!」
「ピャァァァァ!!」
絆石が光を放つ!
「シューティングッ!スタァァァァ!!」
大量の刃鱗が舞い、その全てがネセトの背中に着いている小さな繭を狙う。
そしてセルレギオスが突進するのと同時に刃鱗がセルレギオスを追随する様に動き出し、まるでほうき星の様になる。
ネセトが顔を向けてくる。
「遅い!間に合わねぇだろう!」
そのまま繭までまっしぐらに――
突然ライダーが放り出される。
セルレギオスがバランスを崩し墜落する。尻尾が根元から撃龍槍に切られたからだ。
そして、影が地に落ちた一人と一匹を覆う。
足を振り下ろしたネセトを見ながら、ハンター達は大砲の合図を待つ。
「………」
バリスタ側から合図が送られる。
「大砲!うてぇぇぇ!」
再び大砲が火を吹く。
まだ機能するバリスタからも絶え間なく足の糸を狙って弾が発射される。
またネセトは怯み、体を支えるために足を固定したためほぼ全ての弾が糸を切り裂く。
バチィッ!!
遂に糸が切れ、ネセトは動けなくなる。
「いくぞっ!!」
「「了解っ!」」
「シューティングスター!!」
違うライダーのセルレギオスが飛び立ち先程と同じ絆技を放つ。
先に刃鱗が飛び、それに紛れて滑空する。
再びネセトの顔が妨害しようとするが撃龍槍がまだ回収出来ていないため、素通りする。
そして小さい繭に全ての鱗が刺さった後、蹴りがクリーンヒットする!
沢山の破裂音と共にネセトが大きく怯み頭がぐらつく。
グラビモスに乗ったハンター達が絆石を光らせる。
「「マグマライザー!」」
本来は火属性の絆技が電気を発しながら放たれる。
二つのレーザーは同じ箇所を攻撃し、ネセトの首を破壊して大きな繭に直接当てる。
狙いやすくなった大きな繭に対して更に沢山の青い光が掲げられる。
ネセトは煙に包まれ見えなくなっていた。
何かが地面に倒れる音がする。
「……」
「……」
しかし。いや、ハンター達の予想通り。
煙の中から紫色の光がみえる。
そして堂々と煙を裂き、大砲が設けられた方に歩いていく。
ミキミキッ、グシャッ。
不快な音を立てながら傷が治っていき、撃龍槍を背負う。
迫ってくる普通より小さな個体は、ハンター達に恐怖を植え付けた。
「撃ちますっ!」
「来るなっ!」
砲弾が舞うが、目標が小さいため当たらない。
バリスタが数発アトラルを狙うが撃龍槍で弾く。
そうこうしているうちに土塁を登り始める。
ハンター達は武器を構え、ライダー達はそれぞれの特技を放とうとする―――
突如、全員の視界が紫にがかり更にオトモンが呻き出す。
「うわっ!?体が、重い……!」
「お、落ち着け!ウチケシの実を!」
「駄目だ!これは発症状態だ!」
「えっ、なんで絆石で解除出来ないの!?」
「大体狂竜化ってなんだよっ!!」
「ぎゃぁぁぁっ!!」
ハンター達は比較的冷静に現状を確認するが、ライダー達は余り関わった事が無い事例に大混乱を起こす。
ドンドルマ・対策本部
「アトラル・カが感染源の様です。」
「極限化か……」
「いえ、狂竜化の様です。」
「なんだと……!?」
「待ってください。こちらの方が推測してくれました。お願いします。」
「どうも〜」
「……お前か。」
「はい。えぇ今回何故こんなに感染しまくったのか。それはアトラルの行動が関係してます。体液感染がありますが、アトラルの場合フェロモンが空気中に放たれた後、中々薄まりません。よって感染してしまいます。」
「ふむ。」
「ゲネル・セルタスは臭い匂いが近くのオスにまで届けばいいので噴出してる体液自体はそこまでないのです。」
「まぁ、それは予測だろう。だがそうだとすると……」
「うおおっ!!」
ハンターが狂竜化フルフルに大剣を振り落とそうとする。
「やめろぉぉっ!」
しかしライダーが自分のオトモンが狩られるのを見過ごす訳がない。片手剣の盾で全力で抑える。
「邪魔だっ!さっさと狩らせろ!」
「やめろぉっ!絆石!」
「ヴェァァァァァァァァァァァァ!」
ヌチョッ、ゴクッ。
フルフルが叫んでから飛びかかり、自分の主人を呑む。
「くっそ!おるぁ!!」
アトラルがついに大砲を撃つ場所にまでやってくる。
「閃光玉!!」
アトラルは大きく怯む。
「はぁぁっ!!」
「てぃやぁぁっ!!」
1人は走って近づきハンマーを振り、1人は操虫棍で飛び上がり回転しながら切りつける。
すぐにアトラルが二人に向かって適当に鎌を振った為、当たらない様に一度離れる。
「キィィェェァァァァ!!」
そしてアトラルは怒り状態になる。
MHWが始まりましたね。アトラル・カの登場を心から願っております。
「うるさい。カマキリオンラインになって私達の数が減る可能性が高い。」
「代わりに私が出てあげる〜♪」
黙れ、見た目幼女中身バ――ギィィィィン!!
その日、一人の人間が直線上の何もかもと共に蒸発した……